1 環境の果たす大切な役割についての認識の高まり
地球環境の悪化への不安を背景として、環境保全に対する認識は急速に高まっている。まず、このような状況を示すものとして、例えば、「環境」に関する新聞の報道件数を見てみよう(第2-1-1図)。
環境の関心が高まった背景には、環境が大切であると人々に思われるようになったことがあると思われるが、人々は、なぜ環境を大切にすべきと考えているのだろうか。最近の総理府「自然の保護と利用に関する世論調査(平成3年6月調査)」によれば、自然を保護すべき理由として「自然は人間の心にやすらぎやうるおいを与えてくれるから」といった精神的な理由から、「資源確保のために重要だから」といった物質的、功利的なものを求めるものまで幅広い考え方を人々が持っていることが分かる(第2-1-1表)。
この世論調査の結果に見るとおり、環境は多様な恩恵を人々に与えており、その果たす役割は多角的なものと言えよう。すなわち、我々を取り巻く環境は、人間や生物の活動に必要な資源やエネルギーを提供するとともに、精神的な潤いと安らぎを与えてくれる役割を果たしており、また、人間等が生み出す廃物を受け入れ同化するという、言わば処分場としての役割を果たしている。地球の環境は、例えてみれば、宇宙船「地球号」の生命維持装置と言うことができる。それは、人工的な生命維持装置と同様に、地球環境が人類の必要なものを生み出し、不要なものを処理するという機能を果たしているからである。宇宙船の生命維持装置にあっては、その使用時間や積載可能な重量に応じて、適当な形式のものが選ばれている(第2-1-2図)。他方、この機能は、地球にあっては、単に限られた期間それが維持されるのでは不十分であって、子々孫々にわたって維持されていく必要がある。しかし、地球の生命維持装置を取り替えることはできない。そうである以上、人類の活動が大きくなるに従って、地球環境が、今日の世代の存在を支えるだけでなく、その期待される役割を将来の世代の人々に対しても永続的に果たしていけるかどうかに不安が生じるのも当然である。すなわち、地球環境の「持続可能性」を問題にしなければならなくなるのである。