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第1節 

4 熱帯林の保全

 熱帯林の減少については、1981年に国連食糧農業機関(FAO)/国連環境計画(UNEP)が発表した調査結果によると、毎年1,130万ヘクタール(本州の約半分の面積に相当)が減少していると推測されているが、その後の状況はこれを上回るものといわれている。熱帯林問題に対する取組については、これまでFAOを中心とする熱帯林行動計画(TFAP)の作成や国際熱帯木材協定(ITTA)などにより行われてきたが、近年、二酸化炭素の吸収源としての森林の役割が注目を浴びるようになった。さらに、1990年7月に行われたヒューストン・サミットにおいて、熱帯林のみならず世界の森林に対する脅威に対処するために1992年までに世界の森林に関する取決めないし合意作りを行うことが宣言されている。
 我が国は、このような森林問題の国際的な議論に積極的に参加し、世界森林憲章の制定の提案などを行っている。海外林業協力の分野では、これまで、森林造成、人材育成等を中心とする二国間協力を東南アジア、太洋州、アフリカ、中南米などにおいて実施してきており、このうち国際協力事業団(JICA)を通じて、平成3年3月1日現在、11か国、13プロジェクトのプロジェクト方式技術力を実施中である。
 多国間協力の分野では、国際熱帯木材機関(ITTO/本部横浜)に対し、資金拠出するなど、その活動の支援を引き続き強化した。ITTOは、国際間の木材貿易を資源保護及び有効利用の双方の観点から合理的に推進するために、熱帯木材の生産国と消費国が、木材業界、環境NGOの参加も得て、一体となって取り組んでいる国際機関である。また、FAOのTFAPの国際的推進に努めた。
 さらに、ランドサット衛星から送信されるデータ等を解析し、その成果を熱帯林の管理計画等に利用しやすい形で、東南アジアの開発途上国に対して提供する「熱帯林管理情報システム整備事業」や、我が国の国立公園や野生生物保護等の知見・技術を活かし、熱帯林生態系保全手法の策定を支援する「開発途上国(特に熱帯地域)における自然保護管理手法策定調査」を開始した。
 民間レベルでは、例えば(財)緑の地球防衛基金がタイにおいて植林普及事業を継続して実施するなどの活動を行っている。

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