3 浮遊粒子状物質等対策
大気中の粒子状物質は「降下ばいじん」と「浮遊粉じん」に大別され、さらに浮遊粉じんは、環境基準の設定されている粒経10μm以下の浮遊粒子状物質とそれ以外に区別される。これらの粒子状物質の発生源は、工場、事業場等産業活動に係るものだけでなく、自動車の運行に伴い発生するもの、風による土壌粒子の舞い上がり等の自然環境によるものもある。これらの各種発生源のうち、工場又は事業場における事業活動に伴って発生するものについては、「大気汚染防止法」に基づき?燃料その他の物の燃焼又は熱源としての電気の使用に伴い発生する物質を「ばいじん」とし、?物の破砕、選別その他の機械的処理又は堆積に伴い発生し、又は飛散する物質を「粉じん」として規制している。また、自動車の運行に伴い発生するものについては、同法等に基づき「粒子状物質(ディーゼル黒煙)」として規制している。
(1) 浮遊粒子状物質対策
浮遊粒子状物質については、昭和48年5月に環境基準が設定され、その達成率は向上してきているものの依然として低い状況にあり、その対策の確立が急務となっている。このため、浮遊粒子状物質についての総合的な調査解析を実施している。これまで、ばいじん、粉じんの発生源調査、二次生成粒子(大気中で硫黄酸化物等のガス状物質が物理的、化学的変化を受けて成長する粒子)の生成についての調査、浮遊粒子状物質の環境濃度についての総合解析を行ってきており、61年12月には浮遊粒子状物質汚染状況解析・予測手法についてとりまとめた。平成元年度からは、汚染の現状を分析するとともに、予測手法の精度向上に係る検討を行い、今後とるべき対策を取りまとめるために、浮遊粒子状物質削減手法検討会を開催し、調査・検討を行っており、平成2年9月には中間報告として、汚染の現状把握及び今後の課題の整理を行ったところである。
また、自動車の排出ガスに含まれる粒子状物質については、平成元年12月の中央公害対策審議会答申に示された短期目標に沿って5年及び6年に、従来から規制対象となっていたディーゼル黒煙の規制強化及び粒子状物質に対する新たな規制が実施される。さらに、長期目標についても早期達成を目指して検討が開始された。(第2-4-9表参照)
(2) ばいじん及び一般粉じん対策
ばいじんについては、施設の種類及び規模ごとに排出基準が定められており、さらに、施設が密集し、汚染の著しい地域においては、新・増設の施設に対して、より厳しい特別排出基準が定められている。平成2年11月にはこれらの規制の対象にガス機関及びガソリン機関を追加し、3年2月から規制を実施している。
一般粉じん(粉じんのうち「特定粉じん」(現在、政令で石綿を指定)以外のもの。特定粉じんについては「5(1)石綿対策」の項参照。)については、堆積場、コンベア等の粉じん発生施設の構造、使用及び管理に関する基準が定められている。
(3) スパイクタイヤによる粉じん対策
近年、積雪寒冷地域においてスパイクタイヤを装着した自動車が道路を損傷することにより発生する粉じん(以下「スパイクタイヤ粉じん」という。)による大気汚染が深刻な社会問題となっている。スパイクタイヤ粉じんは、生活環境の悪化をもたらすのみならず、人の健康への影響についても懸念されており、昭和63年8月に公表された環境庁による動物実験結果においても、実験動物(ラット)の肺やリンパ節への異物沈着、肺における繊維化の発生等が確認されたことからスパイクタイヤ粉じんの発生の抑制に努める必要があるとされた。
このスパイクタイヤ粉じん問題に関しては、これまで国、地方公共団体、タイヤメーカー等において各種の取組が行われてきたにもかかわらず問題の解決には至らず、依然として厳しい状況にあることから、平成2年4月、中央公害対策審議会は、スパイクタイヤの使用規制等の措置を定めた法制度が必要である旨の答申を取りまとめた。
この答申を踏まえ、「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律案」を第118回国会に提出し、同法は平成2年6月に成立して公布、施行された。
同法は、スパイクタイヤ粉じんを発生させないよう努めることを国民の責務として規定するとともに、国及び地方公共団体においても、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する啓発、知識の普及等の関連施策の推進、実施に努めなければならないとする一方、環境庁長官が指定する地域においてスパイクタイヤの使用を規制することとしている。
環境庁としては、同法の円滑な施行を図り、国民の理解と協力を得てスパイクタイヤを使わない脱スパイクタイヤ社会を早期に実現するため、地方公共団体における脱スパイクタイヤ関連施策の実施に資するための「ノースパイクタイヤまちづくりマニュアル」、啓発用パンフレット等を作成し、配布した。
地方公共団体においても、平成元年に引き続き、12月を「脱スパイクタイヤ運動推進月間」とし、関係23道府県で構成する「スパイクタイヤ対策行政連絡協議会」及び関係198市で構成する「ノースパイク都市づくり推進協議会」の主催、環境庁ほか関係6省庁の後援による各種キャンペーン活動等を一斉に展開した。
また、平成2年12月には、スパイクタイヤの使用が禁止されない自動車等を定める施行令を公布するとともに、環境庁は平成3年1月宮城県等の8県において、2月秋田県等の3県において、3月北海道等の5道県において、それぞれスパイクタイヤの使用を規制する地域を指定したところである。