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第5節 先端技術に関する環境保全施策の推進

 近年、マイクロエレクトロニクス、新素材、バイオテクノロジー等のいわゆる先端技術を中心に技術開発の進展が著しく、それに伴って我が国の産業構造も変化を遂げつつある。
 このような技術の開発・利用に伴い、発生源、排出形態、影響の面で新たなタイプの環境汚染の可能性が指摘されている。
 こうした状況の変化を踏まえ、先端技術の産業利用に当たっては、環境面への影響を事前に十分検討して将来環境問題が生ずることがないよう配慮していくとともに、先端技術の成果の環境保全分野への応用を積極的に図っていくことが重要である。
 このため環境庁では、先端技術の進展に対応した環境保全の基本的方向について、昭和62年4月「環境技術会議報告書」をとりまとめるとともに、先端技術のうちでも、環境影響の可能性について関心の高まっているIC分野について技術情報資料の公表、環境庁、厚生省、通産省、労働省の4省庁合同の「IC産業環境保全実態調査」(61年度)を行ってきた。新素材分野についても、技術情報の収集・整備を進めており、平成元年12月「機能性高分子環境保全関連資料」を公表した。
 遺伝子組換え技術等バイオテクノロジーについては、従来より、実験段階における安全確保のための指針が策定されているが、近年産業利用動向の高まりに伴い、内外において産業利用段階での安全確保のための検討が行われている。我が国では、組換えDNA技術の産業利用に係る指針が関係省庁より公表され、組換え体の閉鎖系利用が行われている。さらに、組換え体の開放系での利用についても、米国等で野外実験が始められており、我が国においても安全の確保について、63年12月、組換えDNA実験指針の運用(科学技術庁)が改訂され、植物を用いた非閉鎖系実験について考え方が示されたところであり、これに基づき一部の実験が行われた。その後、農林水産省の指針に基づき、平成3年2月から組換え植物の野外試験が実施されつつある。なお、これまで、遺伝子組換え技術等バイオテクノロジーの開発・利用により、環境保全上特段の問題が生じた事例は報告されていない。
 また、平成元年2月には、環境庁において開催された「バイオテクノロジーと環境保全に関する検討会」の意見を中間的にとりまとめ、(「組換え体の開放系利用に伴う環境保全の基本的考え方」)を公表し、その中で組換え体の開放系利用については、段階的な安全性確認、野外試験等による生態系影響評価を行う等慎重な配慮のもとに実施していくことが適当である旨指摘した。さらに、平成元年3月には、バイオテクノロジーと環境保全に関し審議するため、中央公害対策審議会企画部会に専門委員会が設置された。
 環境庁においては、特に、遺伝子組換え微生物等の開放系での利用に対応した環境保全への配慮のため、微生物農薬の安全性評価法の確立のための調査を実施するとともに、昭和62年度より、微生物の監視手法、バイオテクノロジーの環境保全への活用等に関する基礎的な調査を行っている。また、昭和63年度から、組換えDNA技術の開放系における安全性を事前に評価・管理する技術の確立を図るための研究が産、学、官の連携により科学技術振興調整費(科学技術庁)により実施されている。また、国立環境研究所においては、バイオテクノロジーの環境保全への利用の取組として、バイオテクノロジーを利用した光化学スモッグ等の複合汚染に対して感受性の高い植物の開発に関する研究を実施するとともに、系統微生物維持施設を設置し、環境保全研究に有用な環境の汚染及び浄化に係る微生物の遺伝子保存を図っている。

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