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第3章 環境にやさしい経済社会への変革

 地球環境問題は、「議論の段階」から「行動の段階」に入った。世界の国々や人々は、地球環境に関する調査研究を継続しながら、今できることを実行し始めた。国際協調への議論は条約交渉へと歩みを進めている。地球環境問題への対応をすべく国内の取組も始まった。地球環境問題と国内の環境問題への同時的取組や環境政策と経済政策の連携強化の認識も深まるとともに、環境にやさしいライフスタイルへの転換が国民に浸透しつつある。
 地球と地域の環境を保全していくためには、経済社会活動を環境にやさしいものへと変革し、環境保全型社会を形成していかなければならない。その基本となるのは、人類がその中で生存している地球の生態系を健全に維持していくことである。そして、都市に住む人が多くなり、自然と隔てられた生活空間で過ごす時間が多くなっていく中で、環境保全の行動の基礎となる地球生態系に対する理解と保全のための心を養っていくため、意識的に自然とふれあう機会を増し、自然を総合的に感じる感性を取り戻していくことが必要である。そのうえにたって、都市・地域構造、交通体系、生産構造、エネルギー供給構造からライフスタイルに至るまで、環境にやさしいものへと変革していかなければならない。
 この章では、地球環境問題を巡る内外の取組について記述し、環境保全型社会の形成にとって本質的な地球生態系と人類との関係を人間と自然とのふれあいの観点からとらえるとともに、変革の求められている諸分野のうち、現代の人々の生活様式を規定し、二酸化炭素の排出によって地球環境問題と、窒素酸化物の排出によって国内の環境問題に大きく関与している交通体系の中心をなす自動車に焦点を当て、環境保全型社会の形成のひとつの方向について検討する。

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