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第2章 地球とともに生きる人類社会

 環境問題は、1972年に国連人間環境会議が開催されて以来、この20年の間に大きく変化した。当時表明された「宇宙船地球号」の思想に基づく人類共通の環境保全への必要性は、地球環境問題による人類への脅威として今や現実の課題となりつつある。活発な産業活動や都市集中等による環境汚染は、開発途上国をも覆っている。さらに、開発途上国では、経済活動の基盤となる森林等の再生可能な自然資源の著しい減少により、将来の発展の可能性を喪失しつつある。なお増大しつつある人口と、多くの資源を消費してますます自然から離れていく生活様式が拡大していくこと等によって、地球が何十億年もかけてつくり、多様な生き物によって構成され、人類の生存と発展の基盤となってきた地球の生態系が危機に瀕している。
 今日の環境問題は、その影響の大きさとその広がりから、地球から大量に資源を採取し、気体・液体・固体様々な形態で廃棄物を排出する現在の経済社会及び人の生活様式を前提にしたままで、これを技術と投資のみによって解決していくことには限度がある。森林は、単に二酸化炭素を吸収し酸素を供給する工場や遺伝子の貯蔵倉庫としての働きを担うだけのものではなく、人類もその一構成要素である地球の生態系の重要な一部である。地球の生態系の維持と人の経済社会活動との両立を図り得るよう、人口の増大、都市化の進展、経済成長、エネルギーの消費などの経済社会活動の様々な要素に関する政策と環境政策の密接な連携の下に、経済社会及び人々の生活様式を環境に配慮したものに変革し、地球規模での「環境保全型社会」を形成していかなければならない。
 この章では、1992年に開催が予定されている国連環境開発会議のテーマである「環境と開発」、一部の開発途上国にとっては「環境と貧困」の問題を念頭において、今日の環境問題の特徴を整理するとともに、地球とともに生きる人類社会にとって重要な人口の増大等の経済社会の要素に関する状況について簡潔に記述する。

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