国務大臣 環境庁長官 地球環境問題担当
愛知 和男
平成3年の環境白書をここに公表いたします。昭和46年に環境庁が発足し、日本の環境行政を一元的に進めるようになってから、今年の7月1日で20年を迎えます。さらに、環境庁発足の翌年の1972年には、世界中の国や国際機関などがストックホルムに集い、「国連人間環境会議」が開催されましたが、これを契機に国際的な環境政策も大きく進展しました。そして、この20年後の来年6月には、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで「環境と開発に関する国連会議」、いわゆる地球サミットが開催されます。このように環境行政は内外ともに新しい発展を刻む時を迎えています。
地球環境問題に対し、わが国としては「地球温暖化防止行動計画」を決定するなどの取組を開始しています。今後、これを着実に実行していくとともに、地球温暖化防止などのための条約づくりや開発途上国への環境協力にも積極的な役割を果たし、さらに、湾岸の環境汚染問題に取り組み、かかる環境破壊行為を二度と起こしてはならないという国際的合意の形成を図るなど、国際的な貢献をしていかなければなりません。
それと同じに地球環境と日本の環境は連続した一つのものという認識を持って、私たちは日本の環境問題の解決に立ち向かっていかなければなりません。地球と私たち人類とが末永く付き合っていくためには、環境を慈しむ心を育むことが不可欠であり、広範な環境教育の推進と国民参加による環境保全活動の普及拡大を図っていかなければなりません。とりわけ、都市・生活型公害などの環境問題に対処していくためには、経済構造や国民のライフスタイルにまで遡って我が国の経済社会のあり方を見直して行く必要があります。
環境保全は、平和国家を標榜する我が国が世界に貢献するに最もふさわしい分野であります。先進国における資源多消費型の経済社会活動と、開発途上国における貧困や人口の増大が、ともに地球環境への負荷を増大する要因になっています。このような中で、我が国は、国際的地位にふさわしい積極的な環境外交を進めていくとともに、世界に先駆けて「環境保全型社会」を形成していかなければなりません。
本年の白書は、以上のような考え方に立って、環境行政のこれまでの経験を振り返り、新しい発展の方向を展望しています。この白書が、地球と地域の環境保全に関する国民各位の御理解の一助となれば幸いに存じます。
平成3年4月