1 海洋汚染の現況
(1) 港湾及び周辺海域
我が国の港湾やその周辺海域は、全体的にはその水質及び底質が漸次改善の方向に向かっているが、なお、工場・事業場からの排水及び生活排水等が、河川を通じあるいは直接流入することによって汚染されている水域が多い。東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等における港湾及び周辺海域では依然として赤潮等の発生が続いている。
(2) 日本近海
環境庁では、海洋汚染の状況を把握するとともに海洋汚染の機構解明に資するため、日本周辺を流れる海流を横断するように、沿岸から「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」(海防法)で定められている重金属等を含む汚でい等を固形化したものの排出海域(A海域)の中心を通る測定線等を設け、それら測定線上の測定点において一般海洋観測項目のほか、海水及び底泥中の重金属濃度等について調査する日本近海海洋汚染実態調査を実施している。
海上保安庁では、海洋環境保全のための基礎資料を得ることを目的として、我が国の周辺海域、A海域、主要湾等において、海水及び海底堆積物中の油分、PCB、重金属等について海洋汚染調査を実施し、汚染の進行は特に認められないことを確認した。
また、我が国の周辺海域において、定期的に廃油ボールの漂流・漂着調査を実施しており、平成元年の調査結果によれば、前年に比べ、漂流については九州西岸海域で増加し、漂着については本州東岸海域で減少しているものの、全体としては、漂流については減少し、漂着については増加している。
一方、海上保安庁が確認した最近3か年の我が国周辺海域における海洋汚染の発生件数は第3-6-1表のとおりで、元年においては934件と昭和63年に比べ7件増加している。
元年における油による汚染を排出源別にみると、船舶からのものが476件と大半を占め、このうち取扱不注意によるもの180件、故意によるもの111件となっている。また、油以外のものによる汚染についてみると、陸上からのものが211件となっており、そのほとんどが故意によるものである。気象庁では、海洋における汚染物質の全般的濃度を把握するための海洋バックグランド汚染観測を日本周辺及び西太平洋海域で実施している。それによると、水銀及びカドミウムは例年と変わらない濃度レベルで推移している。廃油ボールは昭和57年以降低いレベルにある。また、プラスチック等の海面浮遊汚染物は外洋においては横ばい状況にあるが、日本近海特に本州南岸では高密度に分布している。油膜は日本周辺海域で63年、平成元年にそれぞれ4回確認された。
水産庁では、北太平洋全域における海面浮遊汚染物の分布状況調査を昭和61年から行っている。63年の観測では、発見した海面浮遊汚染物の61%をプラスチック類が占め、これらは中部太平洋、日本近海等において高密度に分布するとの結果を得た。