大気汚染状況の常時監視は、環境基準の達成状況の把握、大気汚染防止対策の確立等のために不可欠であり、大気保全行政の基盤をなすものである。
(1) 国説大気測定網
大気汚染の態様を全国的な視野で把握するとともに、環境基準の設定、公害防止計画の策定等に必要な基礎資料を得る目的で国設大気汚染測定所及び国設環境大気測定所が設置されている。
全国の国設大気測定網の配置については、第2-3-1図のとおりである。
国設大気汚染測定所は、全国の主要地域15か所に設置されている。各測定所には、二酸化硫黄、窒素酸化物等の各種測定機器が設置されており、このこのデータをもとに大気汚染要因の解析や究明が行われている。
国設環境大気測定所は、我が国の代表的な平野部における既汚染地域以外の地域の状況を把握する目的で8か所に設置されている。この測定所は、国設大気汚染測定所に設置しているものと同種の測定機器のほかに、硫化水素、オゾン等の測定機器も設置している。
また、平成元年度から3年計画で離島に酸性雨測定所を設置することとしており、元年度は隠岐、対馬に設置した。
自動車排出ガスについても、国設自動車排出ガス測定所を東京都内の3か所及び群馬県前橋市に設置している。
気象庁は、WMO(世界気象機関)の全球的規模を対象としたBAPMoN(大気バックグランド汚染観測網)の一環として、地球温暖化に深く関係する大気中の温室効果気体である二酸化炭素、フロン、一酸化二窒素、地上オゾンの濃度の状況や、降水、降下塵の化学分析及び大気混濁度等の大気汚染の状況の定常観測を岩手県三陸町の気象ロケット観測所において行っている。
オゾン層保護の関連では、環境庁は、大気が清浄で北半球中緯度地域におけるバックグランド濃度を代表すると考えられる北海道及び排出抑制・使用合理化対策の効果を把握するために適していると考えられる大都市近郊地域において、大気中のフロンの濃度を監視している。また、気象庁は、WMOのGO3OS(全球オゾン観測組織)を構成する国内の4地点(札幌、館野(つくば)、鹿児島、(那覇)及び南極昭和基地において引き続きオゾンの観測を実施するとともに、オゾン層破壊に伴う有害紫外線の状況の変化を明らかにするため、高層気象台(つくば)において紫外域日射の観測を開始した。
さらに、温室効果気体及びオゾン層破壊物質等地球環境問題における海洋の役割を評価するため洋上大気及び海水中の二酸化炭素、メタン、フロン、一酸化二窒素の定期観測を日本周辺及び西太平洋海域で開始した。
(2) 地方大気汚染監視体制
地方においては、「大気汚染防止法」に基づき、都道府県知事及び政令市の市長が大気の汚染の状況を常時監視測定しているほか、その他の地方公共団体においても監視測定が行われている。
また、大気汚染物質を排出する発生源における二酸化硫黄濃度、燃料使用量等の常時監視を行い、その測定結果を中央監視センターに伝送するテレメーター装置等の整備も一部の地方公共団体において進められている。
なお、国においては都道府県及び政令市が行うこれらの監視測定に必要な測定機器等の整備に対して補助を行い、測定技術の高度化、効率化に対応した監視測定体制の計画的、重点的整備を図るとともに、有害化学物質の実態把握等を行うため、地方公害研究所の設備の近代化を図っている。