5 オゾン層保護対策
オゾン層の破壊を未然に防止するために、「オゾン層の保護のためのウィーン条約」(昭和63年9月22日発効)及び「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(昭和64年1月1日発効)が採択され、我が国においてもこれを的確かつ円滑に実施するための制度として「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(以下この項において「法」という。)を昭和63年5月に公布した(第2-2-4図)。
また、法に基づき、我が国におけるオゾン層保護対策の基本的な道筋を示す「基本的事項」を昭和64年1月4日に告示した。
法を中心として、我が国としてこの地球規模の大気汚染問題に積極的に取り組むため、環境庁、通商産業省、気象庁において組織体制の強化を図るとともに、次のような施策を実施した。
(1) 特定フロン等の製造等の規制
法に基づき、モントリオール議定書に規定されている5種類のフロン(フロン11、フロン12、フロン113、フロン114、フロン115(以下「特定フロン」という。))及び3種類のハロン(ハロン1211、ハロン1301、ハロン2402)の生産量及び消費量を、モントリオール議定書の削減スケジュールに即して段階的に削減することとなっており(第2-2-5図)、特定フロンの製造等の規制を平成元年7月から実施した。
(2) 特定フロンの排出抑制・使用合理化
特定フロンを使用する事業者がその排出の抑制及び使用の合理化を図るための「特定フロンの排出抑制・使用合理化指針」を昭和64年1月4日に告示したことに伴い、マニュアルやパンフレットの配布等により、その周知普及を図るとともに、昨年度より特定フロンの使用削減の推進等オゾン層保護対策を的確かつ円滑に進めるため、毎年7月を「特定フロン使用合理化推進月間」として位置づけ、官民挙げて、その啓発普及に努めた。また、指針において特に排出抑制・回収設備の導入を図ることとしている洗浄用の特定フロン使用設備については、法人税、所得税の特別償却、固定資産税の課税標準の特例といった税制上の措置や、日本開発銀行、公害防止事業団等による低利融資等の金融上の措置を実施している。
(3) オゾン層の破壊に係る調査研究等の推進
オゾン層の適正な保護を図るため、特定フロン等によるオゾン層の破壊のメカニズムやオゾン層破壊により生ずる影響等について詳細な研究を実施するとともに、オゾン・レーザー・レーダーを用いたオゾンの高度別分布の測定、将来のオゾン層の消長を予測するモデルの開発等に取り組んでいる。
また、使用済みの特定フロンの破壊技術に関する技術開発及びそのための知見の収集、整理、評価を行った。
(4) 特定フロン等の一層の削減対策の検討等
平成元年5月に開催されたモントリオール議定書締約国会議に際し、特定フロンを今世紀末までに全廃すること等を内容とするヘルシンキ宣言が合意されたことを踏まえ、同議定書に基づく作業部会において規制強化等のための議定書改正が検討されている。我が国としても、この国際的な検討作業に積極的に貢献するため、特定フロン等の一層の削減対策の検討を進めている。
なお、ウィーン条約及びモントリオール議定書への開発途上国の参加を促進するため、平成元年5月に東京で「オゾン層保護アジア太平洋地域セミナー」を開催した。