1 環境にやさしいまちづくりの推進
国民の大半が生活し諸々の活動を営む都市において、膨大なエネルギーと資源が消費され廃棄されて、環境に大きな負荷を与えている今日、環境問題は都市問題と密接にかかわっていると言える。昨年の当日書(平成元年版環境白書「人と環境の共生する都市を目指して」)は都市を一つの系としてとらえ、その中でのエネルギーや水その他の物質の循環を分析して、それらがバランスを保ちつつできるだけ循環的、効率的に利用されるようなシステムを有するとともに、豊かな自然が保たれている都市−「エコポリス」−の形成を提唱した。
今後は、そこで提案されたような中水道、雨水の貯留・利用システムや地域冷暖房、エネルギー効率の向上につながる形でのコージェネレーション、廃棄物の回収・再生利用システム等の導入・普及を図るほか、水力、地熱、太陽熱・光、風力等の自然エネルギーの利用、ごみ焼却施設、下水処理水等の余熱利用を需要者、地域住民等との連携のもとに推進することによって、都市全体としての資源・エネルギーの利用効率を高めていくことが重要である。また、都市内に残された自然の保全、都市緑化、自然の状態に近い河川や涌水の保護、小動物の生育環境の創出を進め、都市に豊かな自然を取り戻すとともに、それらが有している自然浄化、気象緩和、防災等の多様な機能を活用し、都市の生態系循環を再生していくことも大切である。さらに、市民自らの手によるリサイクル等の環境保全活動も、まちづくりの重要な要素であり、地方公共団体においてもこうした活動を積極的に支援していくことが期待される。
都市の交通システムについても、国の行う施策との連携を図りつつ、自家用自動車から鉄道、バス等の公共輸送機関への転換を図ると同時に、工場、倉庫、卸売市場等の物流需要発生施設の移転、共同輸配送システム、バイパス、環状道路や交通管制システムの整備促進等による物流の合理化、自動車交通量の抑制、交通流の分散・円滑化を促進していくことが望まれる。特に、自動車の交通渋滞が著しく、二酸化窒素の環境基準の達成状況が悪いなど交通公害に悩む大都市地域においては、自動車排出ガスの総量を抑制する方策の可能性の検討と併せて、総合的な駐車対策、マイカー通勤の抑制等の一層強力な対策を検討することも期待される。
また、都市への人口集中や生活様式の変化に伴い、生活排水による水質汚濁が問題となっているが、これについても地方公共団体、とりわけ地域住民に密着した立場にある市町村が生活排水対策に係る施策の実施主体の中心となって、下水道等の生活排水処理施設の整備や日常生活において身近にできる対策の住民に対する普及啓発を推進していくことが期待される。