4 国民の意識啓発と環境倫理の確立
昨年9月に政府が主催した「地球環境保全に関する東京会議」は、先進国における生活様式を含めた諸々の経済社会活動の見直しを求め、「環境倫理」の確立を訴えた。また、11月のノールトヴェイク宣言は、「すべての国、特に先進工業国は、社会経済的活動乃び生活様式を環境上健全なものに変える必要性を認識すべきである。」と述べている。これらに先立って、前述の閣僚会議申合せ事項は、「省資源・省エネルギーの推進等地球環境への負荷がより少ない方法で経済社会が営まれるよう努力する。また、国民各界各層の理解と協力が不可欠であることから、地球環境保全を進めるための普及・啓発を推進する。」とうたった。
省資源・省エネルギー型の社会の実現を図るには、3.にも述べたように、国として各般の省資源・省エネルギー対策を推進・強化していく必要があるが、他方で、それを支える企業や国民一人ひとりが自らの活動や生活と環境とのかかわりを十分認識して行動するとともに、より積極的に地域や地球の環境を改善する活動に参加していくよう、政策的に誘導していくことが重要である。後に述べるように(第4節202/sb1.4.4>参照)、環境問題に対する国民の関心は比較的高いにもかかわらず、これが自らの具体的な行動や、他の人々の行う活動に対する支援には結び付いていないきらいがある。その理由としてはいろいろ考えられるが、具体的な実践の方法が分からないとか、環境に関する情報のありかやNGOsの活動自体がまだよく知られていないということも挙げられよう。
したがって、今後国としても自ら、あるいは地方公共団体、NGOs等を通じて、地球環境問題を含め環境一般に関する正確な情報の普及に努めるとともに、新しい「環境倫理」に立脚した企業や国民の行動原則を明らかにし、具体的実践の方策を示していく必要がある。以下第2節202/sb1.4.2>から第5節202/sb1.4.5>において示すのは、その第一歩であるといえよう。
また、そのための体制の設備も重要である。環境庁においては、従来より、環境教育推進のための地方公共団体向け指針づくりや各種マニュアルの作成、環境情報の普及のための拠点づくり等を進めてきたが、平成元年度の補正予算において、各都道府県及び政令指定都市が、地域住民等に対する地域の環境保全に関する知識の普及、地域の環境保全のための実践活動の支援等地域に根ざした環境保全活動を展開するために造成した地域の環境保全に関する基金に要する経費の一部として総額116億円の補助を行った。基金の運用益により、例えば、地域環境保全活動の拠点として「地域環境センター」を設置する等地域環境保全活動のための基盤を整備するとともに、身近な暮らしの中での資源リサイクル、省エネルギーの促進等の活動が支援されることになる。今後は、こうした努力が核となって、地域に根ざしながら地球環境の視点も十分に織り込んだ環境教育や実践活動が展開されていくことが望まれる。