国務大臣 環境庁長官
北川 石松
平成2年の環境白書をここに公表いたします。今年の白書は、「地球にやさしい足元からの行動に向けて」をテーマとして取り上げております。
地球環境は、かつてない勢いで大きく変化しつつあります。地球をとりまく大気や地表に降り注ぐ雨の組成の変化、大地を覆う緑の減少などにより、今や人類は、自らの活動の結果、生存そのものが脅かされていると言ってもけっして過言ではありません。一方、身近な環境に目を向けると、窒素酸化物による大気汚染、生活雑排水による水質汚濁等の問題は改善がはかばかしくなく、様々な有害化学物質による環境汚染問題も広がりを見せています。
環境問題は、いずれも人間の活動が環境に過大な負担をかけることによって起こるものです。中でも、化石燃料を中心とするエネルギーの利用は、地球温暖化を引き起こす二酸化炭素や、窒素酸化物の排出と深く結びついており、環境への万全の配慮が常に必要となっています。また、森林は地球の生態系の重要な要素ですが、熱帯林等の減少は地球環境に取り返しのつかない影響を及ぼすのではないかと危惧されています。このため、今年の白書はエネルギーと森林の問題を重点的に取り上げ、その望ましい利用のあり方を検討しております。
経済大国となった我が国の社会経済活動は、それぞれの地域の環境のみならず地球環境に大きな係わりを持っています。このため、地域的な環境問題に対処するためだけでなく、地球環境問題への対応が手遅れにならないようにするためにも、国、地方公共団体、民間企業、国民のそれぞれが直ちにできることから実行すること、すなわち「地球にやさしい足元からの行動」を実践していくことが必要です。このような観点から、それぞれの主体が今何をすべきかについても提起しました。
国は異なっても地球は一つです。美しく住みよい地域や地球の環境を将来に引き継いでいくためには、皆様の御理解が欠かせません。本白書がその一助となれば幸いです。
平成2年5月