開発途上国は、砂漠化、熱帯林の減少等人口圧力や環境資源の不適切な管理に起因する環境問題のほか、経済社会開発の進展に伴い、先進国が経験してきたような環境汚染の問題に直面している。開発途上国では、開発と並行して環境行政機構、環境法制の整備等に取り組んでいるが、通常、技術的経済的基盤が不十分であり、環境保全対策を効果的に進めるためには先進国からの援助が必要となる場合も多い。特に、環境保全対策に数多くの経験と実績を持つ我が国に対する期待が近年高まっており、開発途上国から我が国に対する環境技術協力の要請件数は増大しつつある。このため、国際協力事業団の技術協力の一環として環境技術協力を推進するとともに、より効果的な協力事業の推進の方策について検討を行い、その成果を踏まえて人材の養成・確保等の取組を実施している。
昭和63年度には、次の分野に技術協力が実施された。
(1) 開発調査
? メキシコ市大気汚染対策調査
メキシコ市の大気汚染の現状と発生源について調査し、自動車排ガス、工場ばい煙に関する総合的は大気汚染対策を提言することを目的として、昭和62年2月より、同市の大気汚染対策に係る技術協力が行われ、63年12月に最終報告書が提出された。
? パラグァイ国イパカライ湖流域水質汚濁対策計画調査
パラグァイ国イパカライ湖に係る水質汚濁の現状と発生源について調査し、同湖流域の総合的な水質汚濁対策を提言することを目的として、昭和63年1月より同湖の水質汚濁対策に係る技術協力が行われている。
? ボゴタ市大気汚染対策調査
コロンビア国ボゴタ市の大気汚染の現状を調査し、汚染対策の基本計画を策定することを目的とした開発調査に係る事前調査団が、平成元年1月に派遣された。
(2) 研修員受入れ事業
開発途上国には、環境保全全体に関する専門的な知識経験を有する行政官・技術者の絶対数の不足に直面している国も多い。
このため国際協力事業団は、環境庁、建設省、厚生省等の協力を得て、集団研修を実施している。昭和63年度には環境行政(8か国8名)、環境技術(水質保全)(13か国13名)、環境技術(大気保全)(7か国8名)、下水道技術(14か国14名)、廃棄物処理(9か国10名)、産業環境対策(4か国7名)及び産業公害防止(5か国5名)の研修を実施した。また、同事業団は特定の問題に焦点を合わせた個別研修を各国のニーズに応じ随時実施している。
(3) 専門家派遣
開発途上国の行政機関・研究機関等に環境分野の技術移転を行うために、韓国、タイ、マレーシア、インドネシア、チリ等に専門家を派遣した。