4 公害防止のための融資助成税制措置等

(1)　公害防止事業団による助成
ア　事業団の業務
　公害防止事業団は、昭和40年10月に発足して以来、公害防止の専門助成機関として、大気の汚染、水質の汚濁等の公害を防止するため、建設譲渡業務及び貸付業務を行い、事業者等が講ずる公害防止対策に対する助成を積極的に推進してきた。
(ア)　建設譲渡業務
　建設譲渡業務は、?集団設置建物、?共同福利施設(緩衝緑地、公園施設)?大気汚染対策緑地、?国立・国定公園施設、?工場移転用地に大別される。事業団は、これらの施設を設置しようとする事業者等からその業務を受託し、工事施行に伴う業務全般を行い、完成施設は建設原価をもって長期かつ低利の返済条件で譲渡するものである。
(イ)　貸付業務
　貸付業務は、?産業公害防止施設、?市街地土壌汚染防止等事業、?合併処理浄化槽の設置に係る貸付事業に対して資金を貸付けるものである。
イ　昭和63年度の事業
　昭和62年度の事業実績(新規契約額)は530億円(建設譲渡事業400億円、貸付事業130億円)、63年度の事業計画(新規契約額)は600億円(建設譲渡事業400億円、貸付事業200億円)であった。
(2)　その他の政府関係機関による融資
ア　中小企業設備近代化資金制度による融資
　設備近代化資金貸付制度は、「中小企業近代化資金等助成法」に基づき中小企業の設備近代化の促進を目的として都道府県が窓口となって個別中小企業に対して貸付けを行うものである。この一環として公害防止施設に対しても融資(通達で定める施設のみ)が行われており、昭和63年度貸付は総資金枠400億円のうちで行った。また、小規模企業者等に対しては、各都道府県に設立されている貸与機関から設備を貸与する設備貸与制度が設けられており、昭和63年度貸付は総貸与枠526億円のうちで行った。
イ　中小企業金融公庫及び国民金融公庫による融資
　昭和63年度は、中小企業金融公庫及び国民金融公庫による産業公害防止施設等に対する特別貸付、過密解消及び公害防止のための中小企業の工場移転等に対する特別貸付、公害防止のための事業転換を行うのに必要な資金に対する特別貸付を行った。
ウ　中小企業事業団による融資
　中小企業事業団による資金助成は、中小企業者が共同で公害防止事業を実施する場合に助成するものであり、原則として組合の設置する共同公害防止処理施設等に貸付けを行うとともに、公害防止機器を組合が共同購入し組合員に買取り予約付きリースを行う公害防止設備リース事業に対しても所要資金を融資した。
エ　日本開発銀行による融資
　日本開発銀行による産業公害防止施設等に対する融資は昭和35年度から実施され、40年度には特別貸付制度が設けられた。その融資対象は公害防止施設、公害予防施設、工場環境整備である。63年度融資は公害防止枠700億円のうちで行った。また、公害防止に寄与するものとして、工場移転、公害防止技術の企業化に対する融資を行った。
オ　北海道東北開発公庫による融資
　北海道東北開発公庫においては、北海道及び東北における望ましい環境水準の維持達成に資するため、公害防止施設の整備に要する資金の融資を行った。
カ　農林漁業金融公庫による融資
　畜産経営に起因する環境汚染の防止を図り、併せて生産性の高い畜産経営の育成に資するため、農林漁業金融公庫から畜産経営環境保全に係る資金として、地域及び経営の実情、環境汚染の実態等に応じた環境保全対策に必要な家畜排せつ物処理施設の設置等に要する資金を融資した(昭和63年度融資枠10億円)。
キ　金属鉱業事業団による融資
　「金属鉱業等鉱害対策特別措置法」に基づく使用済特定施設に係る鉱害防止事業に必要な資金(休廃止鉱山に係る抗廃水処理に必要な資金を含む。)及び「公害防止事業費事業者負担法」による事業者負担金に対して融資を行った(昭和63年度融資枠22億円)。
(3)　税制上の措置
ア　国税関係
(ア)　「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」の施行に併せて、フロンの排出抑制設備等を公害防止用設備の特別償却措置の適用対象に追加した。
(イ)　公害防止用設備の特別償却措置について、適用期限を2年延長するとともに、エマルジョン燃料の使用等により、窒素酸化物の量を低減する装置を適用対象に追加し、償却率を22%から21%に引き下げた。
(ウ)　公害防止事業団が建設譲渡した集団設置建物に移転する場合、旧工場の譲渡等による譲渡所得について買い替え等に係る課税の特例措置を適用した。
(エ)　事業協同組合等が公害防止事業団から譲り受けた土地を組合員等に再譲渡する場合の登録免許税の特例措置について、適用要件を緩和した上、その適用期限を2年延長した。
イ　地方税関係
(ア)　フロンの排出抑制及び使用合理化に資する設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置を新設した。
(イ)　公害防止用設備に係る固定資産税の課税の特例措置について、更新投資に係る設備については処理能力に注目した重点化を図ったうえ、適用期限を2年延長するとともに、エマルジョン燃料の使用等により窒素酸化物の量を低減させる措置を適用対象に追加した。
(ウ)　窒素酸化物に係る元年規制に適合する車両が、当該規制施行前に開発・販売される場合、自動車取得税及び自動車税を軽減した。
(エ)　メタノール自動車に係る自動車取得税及び自動車税の特例措置の適用期限を2年延長した。
(オ)　公害防止事業団が、建設譲渡業務のため取得した土地等に係る不動産取得税及び特別土地保有税の非課税措置を拡充した。
(カ)　事業協同組合等が公害防止事業団から取得する建物に係る不動産取得税及び事業所税の特例措置の延長及び拡充を行った。
(キ)　工業用水道等への転換設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置並びに特別土地保有税及び事業所税の非課税措置の適用期限を2年延長した。