環境省総合環境政策環境と経済の好循環HERB構想

I 環境と経済の好循環ビジョンの概要


1 要旨

 2025年を一つの到達点として、環境を良くすることが経済を発展させ、経済の活性化が環境を改善するという「環境と経済の好循環」を実現することにより、「健やかで美しく豊かな環境先進国」を目指すビジョンです。

(1)「環境と経済の好循環」を実現する基盤は、「環境の価値を積極的に評価する市場」です。このような市場をつくるのは、以下のような人々です。

[1]環境を大切に思う価値観を持ち、環境に良いかどうかを見極めた上で商品・サービスを購入する消費者。
[2]環境に配慮する事業者に資金を提供する投資家。
[3]環境に良い商品・サービスを市場に出し、事業からの環境負荷の排出削減に努める事業者。環境技術を研究し、人材を送り出す教育機関。
[4]コミュニティのつなぎ手を担うとともに、住民や事業者と行政をもつなぐNPO等の民間団体。すべての施策に環境の視点を組み込み、住民や事業者をバックアップする行政。

 環境情報の充実や、好循環を呼び起こす人づくりは、すべてに共通する課題です。

 そして、それぞれが問題意識を共有し、環境に良いことに向けて協力しあうパートナーシップ社会が構築されることによって、環境と経済の好循環が生み出されます。

(2)環境と経済の好循環に向けた歩みは、既に始まりつつあります。

[1]くらしを彩る環境のわざ:先進的な環境技術や環境に配慮するための方法や仕組みが、日本で次々に生まれ、消費者の支持を得始めています。
[2]「もったいない」が生み出す資源:ごみの減量、再使用、再生利用をすすめる取組があちこちで始まっています。
[3]自然がはぐくむ心と力:自然とのふれあいは、私たちの心身を健やかにし、人々が環境や自然に関心を持つきっかけともなります。自然の力で化石燃料などを代替することは、世界が限られた資源を使いながら平和に暮らす上で必須です。

(3)2025年の日本の将来像として、理想の姿を描きます。

[1]日本の経済社会
ア.環境志向の消費と環境を良くする技術力が、多くの雇用機会をもたらし、資源が循環しエネルギー効率の高い循環型社会を構築しています。また、環境負荷を減らすサービス産業が発展しています。
イ.燃料電池車などが普及し、安心で利用しやすく環境への負荷が少ない交通システムが整備されています。
[2]地域とライフスタイル
ア.自然の恵みが人を呼ぶ里:休日を自然豊かな里で過ごす人が増え、そのような地域に雇用が生まれるとともに、人々の環境保全意識がさらに高まっています。
イ.ものづくりのわざが循環をつくる街:環境配慮型製品の生産やリサイクル等が雇用を生み出しています。そのような街の住民の環境意識は高く、事業者などと連携して資源の再使用や循環を進めています。
ウ.環境の心で生まれ変わる都会:日本の大都市は、最先端の環境技術を生み出す市場として世界からも注目されています。都市にも緑が増えて環境が良くなり、環境保全活動を通じた住民の交流も活発化しています。
[3]世界と日本
 日本の環境技術と環境にやさしいライフスタイルが世界に広まることで、世界の環境保全に貢献することが望まれます。

(4)このような理想の社会を実現するため、次期環境基本計画に具体的な施策を盛り込み、日本全体で様々な動きを活発化させて世界に広げることを期待します。