環境省自然環境・生物多様性風力発電施設と自然環境保全に関する研究会

風力発電施設と自然環境保全に関する研究会(第2回) 議事要旨


1. 日時

平成19年5月10日(木)10:00~12:20

2. 場所

経済産業省国際会議室(経済産業省本館17階)

3. 出席者

大野 正人
(財団法人日本自然保護協会保護・研究部主任)
大村 昭一
(日本風力開発株式会社執行役員開発本部長)
岡安 直比
(財団法人世界自然保護基金ジャパン自然保護室長)
鹿野 敏
(鹿島建設株式会社環境本部新エネルギーグループグループ長)
古南 幸弘
(財団法人日本野鳥の会自然保護室長)
下村 彰男
(東京大学大学院教授)
長井 浩
(日本大学助教授)
中村 哲雄
(葛巻町長)
祓川 清
(株式会社ユーラスエナジージャパン代表取締役社長)
原科 幸彦
(東京工業大学教授)
松田 裕之
(横浜国立大学大学院教授)
由井 正敏
(岩手県立大学教授)
安藤 晴彦
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課長)
市川 類
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー等電気利用推進室長)
黒田 大三郎
(環境省大臣官房審議官)
星野 一昭
(環境省自然環境局野生生物課長)
神田 修二
(環境省自然環境局国立公園課長)

4. 議題

(1) 風力発電施設と自然環境保全に関する課題等
  [1] 風力発電施設における自然環境保全の課題と提言
  [2] Win-Win実現のためのリードタイムは残り少ない
  [3] 風力発電施設の自然公園内への設置の要望
  [4] 21世紀への課題 食料・環境・エネルギー

5. 議事概要

大野委員、岡安委員、鹿野委員、中村委員より、資料に基づいて説明。
その後、質疑応答。(質疑応答の概要は以下のとおり)

○ 前回情報提供をお願いした電源立地のプロセスに関する資料がない。次回までに早急に用意願いたい。(回答:資料を配付する。)

○ 海外のバードストライク事例が紹介されているが、もう少し詳しい情報がないと分からない部分がある。海外事例の情報は正確にまとめることが必要。

○ 風力発電施設設置後に、小鳥類の飛翔の減少が見られた事例がある。日本では、事前調査の期間が短いが、設置前後の変化を把握するためには3年間は実施する必要があると考える。

○ (資料2について)風力発電施設が自然環境にもたらす影響について、山岳地帯での設置が念頭にあると思われる整理や事例が示されているが、全体から見ると平地での建設が多い。また、事業者側でも、より環境に優しい工法を検討しているところ。

○ (資料2について)NEDO作成「風力発電のための環境影響評価マニュアル」にある手続のプロセスが、実際には守られていないという資料があるが、なぜこのようなことが起こるのか疑問。また、この資料を見ると補助金申請の際に環境影響評価書が作成されていないことになるが、環境影響評価書が無くて審査は行えるのか。

○ 風力発電施設の補助金交付については、NEDOの制度と国の制度とが別個に存在しており、それぞれが求める手続は異なることを理解されたい。なお、NEDOの制度は自治体とNPOを対象とし、国の制度は事業者を対象とするものである。

○ 国では、補助金交付申請者には地元の承諾書や環境影響評価報告書の提出を求めて審査している。

○ アセスメントの手続が迅速かつ十分に行われるようにするには、事業者に全てを負担させるのではなく、国が制度や手続などに関して最低限の基盤整備を行う必要がある。具体的にはSEAをしなければ、立ち行かなくなるのではないか。

○ (資料2について)風力発電施設が自然環境にもたらす影響について、山岳地帯での設置が念頭にあると思われる整理や事例が示されているが、実際に多く設置されているのは平地であり、山岳地帯と平地とで影響は異なってくることを理解されたい。

○ 景観について考える際には、「見えているもの」だけではなく、ライフスタイルなども含めたトータルとしての景観にも配慮する必要がある。

○ (資料2について)国立、国定公園内で人為的な影響・開発を極力抑制すべきとの意見が示されているが、地球温暖化により防止が進まなければ森林や自然そのもの壊されていく、そのために自然エネルギーをしっかり導入しようという世界の流れの中で、風力の適地を開発しないことは国際的な責務にもとるのではないか。が失われるなどの自然環境保全上の危機に陥ることが危惧される中で、森林が失われることになったとしても野生生物や景観を守ることが必要であるから国立・国定公園内には風力発電施設を設置しないという判断では、自然環境保全への配慮に欠けるのではないかと考える。

○ 国際水準から見て、海外の国立公園でも風力発電ができる状況にあるのか疑問。日本の国立・国定公園は国土の9%しかない上、優れた風景地、生物多様性を保全する場であると位置づけられているものであり、何の条件もなく風力発電を建てて良い場所ではないと考える。

○ 基本的に国立・国定公園は、国民全体から現在の風景・風致を保全する管理を付託されているエリアであり、より慎重に扱う必要がある。そのためには、環境影響評価が迅速に行われるような基盤、必要最低限のデータを国で整備することが緊急の課題。

○ 風力発電施設は地域的、人間的地域によっては地形スケールを超える大規模なものであること、規格生産品であるため形状が画一的で順応性がとりにくいことから、自然景観への影響無しとはり、風力発電施設設置にあたって、景観に関する問題が各地で起こっている。この現状から見て、景観への影響が少ないとはいえないことは明らかであり、この認識を議論の出発点とすべきに持つべきである。このような性格のものであるからこそ、環境影響評価においては立地選定が非常に重要。
その上で、風力発電施設と自然環境保全をどのように両立させていくのか、両立に当たって必要な措置は何かを考えるのがこの研究会の目的である。風力発電の公益だけを主として強調し、他の公益を従とする主張は、本研究会に馴染まない。

○ 景観への配慮のためにによって風力発電施設の設置場所や規模を変更したことによるコストは両立のための措置であるが、これについて「好ましからざること」というトーンで話があったことは残念。は、風力発電施設と自然環境保全の両立の上では当然必要なコストとして見るべき。

○ 基本的に国立・国定公園は、国民全体から優れた風景地として風景の管理を付託されているエリアであり、また、その面積は国土の9%に限られている。国立公園内への風力発電施設設置の要望が示されたが、このため、国立・国定公園内への風力発電施設の設置を原則可能とする整理ができるとは考えられず、より慎重に取り扱う必要がある。

○ 景観とは単に「見えているもの」だけではなく、ライフスタイルの反映、あるいはその時代、時代に人々が望むものの反映である。景観については、ライフスタイルの選択ということを含め、トータルに考える必要がある。

○ オジロワシの剖検所見について、風力発電施設でのバードストライク以外の個体の所見も必要。また、バードストライクによる実際の(発見されないものを含めた)死亡個体数を推定するために、死亡個体発見までの死後経過日数の情報が必要である。

(文責:研究会事務局 速報のため事後修正の可能性有り)