環境省自然環境・生物多様性風力発電施設と自然環境保全に関する研究会

風力発電施設と自然環境保全に関する研究会(第2回)議事録

1. 日時

平成19年5月10日(木)10:00~12:20

2. 場所

経済産業省国際会議室(経済産業省本館17階)

3. 出席者

大野 正人 
(財団法人日本自然保護協会保護・研究部主任)
大村 昭一 
(日本風力開発株式会社執行役員開発本部長)
岡安 直比 
(財団法人世界自然保護基金ジャパン自然保護室長)
鹿野 敏  
(鹿島建設株式会社環境本部新エネルギーグループグループ長)
古南 幸弘 
(財団法人日本野鳥の会自然保護室長)
下村 彰男 
(東京大学大学院教授)
長井 浩  
(日本大学准教授)
中村 哲雄 
(葛巻町長)
祓川 清  
(株式会社ユーラスエナジージャパン代表取締役社長)
原科 幸彦 
(東京工業大学教授)
松田 裕之 
(横浜国立大学大学院教授)
由井 正敏 
(岩手県立大学教授)
上田 隆之 
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)
安藤 晴彦 
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課長)
市川 類  
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー等電気利用推進室長)
黒田 大三郎
(環境省大臣官房審議官)
星野 一昭
(環境省自然環境局野生生物課長)
神田 修二 
(環境省自然環境局国立公園課長)

4.議事

○星野野生生物課長 定刻になりましたので、第2回風力発電施設と自然環境保全に関する研究会を始めたいと思います。
 私は、本日の司会進行を務めさせていただきます環境省自然環境局野生生物課長の星野でございます。よろしくお願いいたします。
 なお、環境省の黒田審議官、所用のため遅れて参ることになっております。資源エネルギー庁上田部長は、もう間もなく到着する予定でございます。
 それでは、議事に先立ちまして、配布資料の確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第をお配りしてございますけれども、その下の方に配付資料一覧、資料1から5まで書いてございます。資料1は、研究会のメンバーの名簿でございます。資料2は「風力発電施設における自然環境保全の課題と提言」という冊子でございます。1枚紙の別紙がついてございます。資料3「Win-Win実現のためのリードタイムは残り少ない」と題したWWFジャパンの冊子でございます。資料4「風力発電施設の自然公園内への設置の要望」と題した資料でございます。資料5は「21世紀の課題・食糧・環境・エネルギー」ということで、5-1と5-2に分かれてございます。
 お手元の資料で欠けているものがございましたらお配りいたしますが、よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入らせていただきますが、本日、研究会のメンバーの方々は全員ご出席でございます。前回、岩手県葛巻町長であります中村委員がご欠席でございましたので、冒頭にご紹介させていただきます。

○中村委員 中村でございます。よろしくお願いいたします。

○星野野生生物課長 よろしくお願いいたします。
 次に、議事録の公開についてお伝えしたい点がございます。
 第1回研究会の議事録につきましては、現在、委員の先生方に送付してございます。修正点等ございましたら、明日5月11日までに事務局にご連絡いただきたいと思います。
 この議事録につきましては、資源エネルギー庁と環境省のホームページに掲載したいと考えております。委員の皆様方、そのように進めてよろしいでしょうか。

(異議なし)

 特にご依存ございませんので、内容を確認した上で、資源エネルギー庁と環境省のホームページで第1回会議の議事録を公開したいと思っております。よろしくお願いいたします。

○原科委員 ちょっとお願いがあります。今の議事録の件で、この会議のときに前回の議事録がないと具合が悪いですね。わずか二、三日の差で間に合わないのはもったいなので、会議のときには必ず手元にあるようにしていただけますか。

○星野野生生物課長 わかりました。会議の時点で公開できるように、その前に調整を。

○原科委員 資料としてあれば、前回どんな議論をしたかがわかりますね。

○星野野生生物課長 わかりました。では、次回からそのようにさせていただきます。
 それでは、議事の2に入らせていただきます。風力発電施設と自然環境保全に関する課題等ということで、本日は4名の委員に発表していただく予定でございます。
 発表時間につきましては、後ほどの質疑の時間の関係もございますので、15分から20分程度、できれば15分程度におさめていただくようお願いしたいと思っております。
 まず初めに、日本自然保護協会保護研究部主任の大野委員からご説明をお願いいたします。

○大野委員 おはようございます。
 本日のトップバッターということで、日本自然保護協会の大野から「風力発電施設における自然環境保全の課題と提言」ということで、お話しさせていただきます。
 まず初めに、本日の話題についてですが、1番目に自然環境保全に関する基本的な考えをお話しし、次に、風力発電施設に対する課題認識、また、風力発電施設が自然環境に及ぼす影響、また解決すべき問題点について提言を行い、最後にといった順番でお話ししたいと思います。
 まず、1992年、地球サミットで気候変動枠組条約とともに生物多様性条約が採択され、日本では、この2つの条約の締約国としてさまざまな取り組みがなされております。生物多様性国家戦略については、現在3度目の見直しが進められております。第10回生物多様性条約締約国会議が2010年に日本で開催されるに当たり、「生物多様性の損失速度を著しく減少させる」という2010年目標に日本としてどこまで応えられるのかが世界的に問われています。
 このように、生物多様性保全も、地球温暖化対策と同時に取り組まなければならない緊急課題です。そこで、新・生物多様性国家戦略で第1の危機として挙げられている「人間活動による種の減少、絶滅、生態系の破壊、分断」は、現在、最も避けなければならない命題であるはずです。
 日本の置かれている状況をご説明しますと、自然保護団体コンサベーション・インターナショナルが2005年に発表しました地球上の生物多様性に重要な地域─ホットスポットでは、日本全体がホットスポットとされています。日本列島は地球の地表面積のわずか2.3%でありながら、最も絶滅が危惧されている哺乳類、鳥類、両生類の75%を有することから、ホットスポットに特定されています。このように、世界の中でも日本というのは、ヨーロッパ、アメリカとか生物多様性の置かれている状況が異なるというのが世界的な状況です。
 では、日本の野生生物種の状況を見てみますと、日本は南北に長い島国であります。また、標高差も大きく地形も複雑です。もともとそれに応じた固有種が多い環境にあります。しかし、昨年度、環境省が発表されたレッドリストの見直しによりますと、その絶滅危惧種の傾向を見ても、その割合は増え、状況は悪化しています。日本に比べてヨーロッパは、気候帯や大陸という違いはあるものの、固有種が既に失われてしまっていることは上の表からもわかると思います。ヨーロッパの方では、それにもかかわらず生物多様性保全への取り組みが積極的に行われ、自然環境の状況や都合を基調とした土地利用や開発を計画する制度が整備されております。風力発電についても積極的に導入されている背景として、無秩序につくられるのではなく、自然環境の条件整備がなされております。
 三、四年ぐらい前から風力発電の規模、基数が大規模化してきました。それに伴い、日本自然保護協会の会員の方を中心に、各地から風力発電の問題が寄せられるようになりました。それらに共通する問題として、バードストライクの懸念や自然環境・景観の改変、基本的な環境調査・影響予測の不足、住民への情報公開・説明不足などにより風力発電施設への不安を抱かせております。事業者として、基本的な取り組みである地元住民、自然保護団体の意見の反映、調査、評価結果の情報公開が徹底されていれば、これだけの問題になったのだろうかと思います。
 狭い国土の中、現在の3倍の設置目標を2010年までに掲げられていますが、このままでは各地で問題が増える一方であり、何かしらの対処が早急に必要だと考えています。
 その条件整備が求められていることは、今、2つあります。1つ目は、可能な場と可能でない場をはっきりさせる。2つ目は、合意形成、環境影響評価のプロセスを明確にする、その2点に尽きると思います。
 ある事業者が市民団体に回答したコメントをご紹介します。「風力発電事業による改変区域は点と線であるため部分的な改変に抑えられ、生息環境に大きな変化がないことなどから影響は小さい」といった回答がされております。
 実際に風力発電施設を建設するには、基礎工事、資材置場の造成、工事用道路の新設や既設林道の拡張、送電設備の建設など関連施設の工事が伴います。規模や基数が大規模化したことによって、関連工事による自然環境の改変の規模が大きくなり、先ほどのように改変面積が小さいという状況には、今、決してありません。
 商業的売電用として建設される大型の風力発電は大きな面積の土木工事を伴い、完成した風力発電施設は、帯状の広大な面積と高さを占有することになります。例えば、長野県峰の原の計画では、高さ110メートルの風車1基の基礎工事では、切土量として10トントラック230台分、埋め戻し分を差し引いた土砂の排出量として、10トントラック70台分という量が事業者の見解として出されております。これが1基ですので、それが16基分、6,400立方メートルという量の残土処理が必要となってきます。このような規模の工事を平坦地でない山岳部、稜線で建設することは、環境に対する影響が軽微でないことは明確です。
 このような土地、環境の改変を伴う工事による自然環境の影響は、これらの4つです。1つ目は生息地・生育地の破壊、2番目は水系の変化、土砂の流出、3番目は生息・生育環境の質の変化、4番目としてバードストライク・利用空間の分断です。
 今、画像で示しているのは、東伊豆の風力発電の予定地内に風況ポールが立てられた現場の状況です。
 このように、風力発電施設を建設した場合に、まとまりで保全すべき地域の重要な自然を改変・分断し、生物相全体、地域の生態系に影響を与えることになります。
 解決すべき問題点ですが、1つ目は、立地選定のプロセスを適正化する、2番目は、SEA・環境影響評価法の対象事業化という2つが挙げられます。
 風力発電施設の開発条件しとて、事業者からよく挙げられることが4つあります。1つ目は、6.5メートル以上の風が吹く。2番目は、広大な土地がある。3番目は、輸送路として幅員5メートル以上のものがある。4番目は、送電のしやすさです。しかし、風が強い土地の規制がない場所ならばどこでも計画していいわけではありません。
 NACS-Jでは、SISPAというGISを使った戦略的保護活動のプロジェクトがあります。そのプロジェクトにNEDOの風況マップのデータと、環境省が2004年に各省庁連携のもと希少猛禽類の生息分布を示したデータがあるんですが、そのイヌワシの生息分布のマップを重ねてみると、イヌワシの生息地と風の強い所が重なっていることがよくわかると思います。これを見ても、狭い国土の中、風力発電の立地を選択することの難しさがよくわかると思います。
 今、風力発電の可能な場と可能でない場、また慎重に扱う場を国土レベル、地域レベルで明確に示す必要があると思います。前回も野鳥の会の古南さんから、スコットランドのセンシティビティマップが紹介されました。そういった海外事例も参考になると思います。今、環境省が主導して日本版のセンシティビティマップをつくるべきだと思います。
 作成する際には今、日本の生物多様性、多様な自然環境は法制度だけでは十分にカバー仕切れていませんので、必ずしも法制度上、規制がある場所だけではなくて、大型猛禽類や絶滅危惧種の生息・生育地、特定植物群落、重要湿地500、IBAや鳥の渡りのルートなど、国がとられているデータや民間がとられているさまざまなデータを組み合わせて、風力発電のリスク評価のゾーニングを行うべきだと思います。
 また、今後、海岸域でのさらなる計画、また海洋上に風力発電の適地を求めるならば、海岸部から沿岸域、海洋の環境要素と現況の調査についても十分把握すべきだと思います。今、それらが十分評価されているかというと、そうではない状況ですので、まずはそういった環境情報を集めることから始めなければならないと思います。
 地域版のセンシティビティマップとしては、長野県のアボイドマップがあります。長野県は、自然環境や景観等に少なからず影響を及ぼすおそれがある場所への中・大型風力発電施設の建設は慎重に検討を要するとして、問題となっている入笠山、峰の原を優先させてアボイドマップを作成されております。そのときに、1番目として水源かん養・山地災害防止、2、景観、3、自然環境や生態系、4、希少種の生育・生息地からレベルを分け、レベルI、除外地域、レベルII、慎重に検討すべき地域、レベルIII、それ以外といったゾーニングをしています。また、希少種の生息・生育地の要素として、イヌワシ、クマタカ、希少猛禽類の営巣地周辺をレベル1、行動範囲をレベル2とされています。また、ハチクマやサシバの渡りのルートも対象としております。
 こういったゾーニングだけではなくて、長野県では風力発電の条例アセスの対象化、住民への情報公開、意見の反映を定めたガイドラインも現在、策定されております。
 このような経過を経ていれば、自然環境や地域を考慮しない風力発電開発は避けられるはずです。他県でも、条例アセスの対象としたり、ガイドラインを導入している所も出始めております。ですが、手続が簡略に済む都道府県に計画が集中することも考えられますので、そのためには国で早急に日本版のセンシティビティマップを示して、アセス手続を義務化すべきと考えます。
 国立・国定公園での扱いについては、2004年に環境省が「国立・国定公園内の風力発電施設のあり方に関する基本的な考え方」を出しております。NACS-Jがそのときに出した意見としては、基本的に、国土のたった9%しかない国立・国定公園では、景観と生物多様性の保全から、人為的な影響、開発を極力抑制する地域として考え、風力発電の計画には慎重な判断をするよう求めております。
 2002年の自然公園法の改正では、生物多様性の確保が国と地方自治体の責務として加えられております。第2次生物多様性国家戦略でも、国立公園は日本の生物多様性の屋台骨だと位置づけられております。環境省では、今後の国立・国定公園の指定・管理のあり方が昨年度に検討されました。今後、それをもとに国立公園の拡大・拡充が図られることが期待されております。今年度、各国立公園の点検作業をもとに自然公園法の改正作業が進み、その中では、観光や林業との調整だけで区分されている地種区分についても見直されていくものだと思います。
 そういった状況にある中、地種区分が普通地域、第二種、第三種というだけで風力発電の立地が無条件に認められるわけではないと考えます。風力発電について、今以上の規制緩和をする必要はないと考えています。
 続いて、環境影響評価法の対象事業化に向けた話題に移ります。
 NEDOのガイドラインに基づいた自主アセスには、3つの問題点があると思います。1つ目は、現地調査と評価が不十分であること、2番目として、事業者の認識の低さ、3番目が、手続が不十分であることです。
 1番目の、不十分な調査方法と内容についてですが、一つの事例としては、イヌワシの生息地での風力発電の計画で、事業者側が実施した調査では230日かけてたった3回の出現しかとらえておりません。ですが、日本イヌワシ研究会が実施した調査では、51日間の調査で37回の出現が出ております。このような結果の差が出ていまして、これは明らかに事業者側の調査設計の誤りや、技術・能力の不足だと思われます。このように調査が十分でなければ、地域の環境の特質、現状はつかめるはずがなく、的確な評価には至りません。
 このような問題の背景には、2番目の、事業者の自然に対する認識の低さがあると思います。ある事業者が地元市会議員に提案した内容では、イヌワシを餌付けすることにより繁殖の機会を増やし、行動圏を風車群から積極的に遠ざけることも可能ということを真面目に検討していることが明らかになっています。すべての事業者の方がこういった認識にあるとは思いませんが、このような発想自体が地元関係団体、市民団体に不信感を抱かせてしまっているという一つの事例であります。
 自主アセスの手続、実際起こってしまっている話として、前回も少しお話ししましたが、東伊豆にある風力発電事業の事例では、方法書が2006年に縦覧される前年、少なくとも2005年5月に調査が着手され、2006年5月末に補助金申請をしてから、その8月に評価書が縦覧されるというおかしな順序で手続が行われています。それでも補助金申請が通り、既に着工されております。しかも、計画地の直近の別荘地住民に対する説明会は、補助金交付決定後に初めて開催されております。事業者側に、住民の合意形成をしようという意思があるとは思えない状況も見受けられます。このような地域では、風力発電施設の合意形成はなかなか難しいものと思います。
 このように、NEDOのガイドラインではあくまで自主的なアセスのため、手続の進行管理も事業者の手に委ねられており、おかしな過程を経ても第三者によるチェックがないことから、書類さえ揃っていれば補助金申請が通ってしまう状況があります。この状況を改善するには、早急に環境影響評価法の法令に基づく対象事業にする必要があると思います。
 また、センシティビティマップによって絞り込まれた計画検討段階で、戦略的環境アセスメントを実施すべきと思います。4月に環境省がまとめた戦略的環境アセスメント導入ガイドラインでは、発電事業が事業者、経済産業省の反対によって対象事業から外れてしまいました。ですが、位置、規模等の検討段階で環境影響を把握し、複数案の比較検討をするというこのガイドライン、住民意見の反映を計画段階から行うことは、今、風力発電事業にこそ求められていると思います。
 最後になります。
 自然を壊す「自然エネルギー」という社会認識にならないために、世界的な課題である生物多様性と地球温暖化の責任を果たすために、国はまず条件整備をする必要があると思います。また、1度壊れてしまった自然環境は、戻すことができません。耐用年数が限られた風力発電施設を計画し、管理する事業者、またそれを支援する国がどこまで地域の社会と環境に責任を負うことができるのかが、今、問われております。
 以上です。ありがとうございます。

○星野野生生物課長 ありがとうございました。
 ご質問等は、後ほどまとめて行いたいと思います。
 続きまして、本日2つ目の発表、「Win-Win実現のためのリードタイムは残り少ない」という題で、WWFジャパン自然保護室長の岡安委員からご説明をお願いいたします。

○岡安委員 おはようございます。WWFジャパンの岡安でございます。
 本日、私どもは「Win-Win実現のためのリードタイムは残り少ない」ということで、お話しさせていただきます。
 まず、話に入ります前に、WWFがどんなことをしているかご紹介いたしますけれども、WWFというのは3つの使命を掲げておりまして、その3つと申しますのは、1つは生物多様性の保全、2つ目は再生可能な自然資源の持続的な利用、3番目は、自然環境を支えます無機環境の汚染の防止ということで有害化学物質の削減と気候変動問題というテーマを持って、この3つの使命をもちまして、世界大体100カ国に広がったネットワークとして活動しております。WWFジャパンはその中の1つ、支部という形ではなくて、それぞれの国で独立した形で、財団としての活動をしております。
 今日は、前回の意見のところでも申し上げましたけれども、WWFのやっております2つのテーマにまたがるところで、世界の気候変動問題がどういうところにあって、それが日本に反映されると、今、例えば風力発電施設の開発あるいは問題についてどういう条件が求められているかというところを、まとめてお話しさせていただきたいと思います。
 前回のお話の中で、例えば経済産業省の上田部長あるいは環境省の黒田審議官からお話がありましたけれども、日本の風力発電事業はまだ開発途上にあって、逆に言えば、悪いことをしているのではないからWin-Winの実現に非常に大きな可能性があるので、開発促進と保護というかなり両極端に見える2つの立場であっても、その落とし所によってはWin-Winの実現が可能であるというお話がありました。あるいは由井委員から、景観問題も1つ風力発電事業の開発に伴って出てきている問題ではあるけれども、景観を大切にする余り地球滅亡となるような状況が発生すれば、それは結果的には非常にまずいことになるというお話がありましたけれども、それを防ぐために、今、どれくらい残り時間があるのかというお話をさせていただきたいと思います。
 資料の2枚目にいっていただきまして、国際気候変動枠組条約のIPCCの第4次評価報告書が今年の初めから、第1・第2・第3部会それぞれの報告が発表されておりますけれども、その認識が、やはり世界の気候変動問題についての一番のもとになります。
 まず、2月2日に発表されました第1部会「自然科学的根拠」の報告の中で今回、特に大きく取り上げられましたポイントは、温暖化は確実に始まっており、しかもそれが人為起源であるということです。また、過去100年間に世界の平均気温は0.74℃上がっているということで、0.74℃という数字を見ると余り大きいようには見えませんけれども、これが生物多様性に与える影響には非常に大きいものがあるということは、世界的にトップレベルの科学者、大体2,500人がかかわっているわけですけれども、その共通認識として、今や報告書に上がってきております。
 この結果、今後、何が起こるかというと、2030年までは10年当たり0.2℃の気温上昇が起こると予測されておりまして、これは2000年から数えて2030年までといいますと、今の状態からさらに0.6℃、つまり、20世紀の過去100年に起こった0.74℃の気温上昇とほとんど匹敵するような規模で、これから30年の間に気温が上がろうとしているわけです。
 次の資料にいっていただきまして、では、その結果、何が起こり得るか、実際に生物多様性あるいは人間の生活に何が起こってくるか。これは第4次報告として発表されているものですけれども、4月に第2部会から報告がありました。
 右の表は環境省さんや経済産業省さん、政府の方でまとめられた報告の日本語版になりますけれども、この1980年から99年に対する世界の年平均気温の変化、ゼロというところを見ますと、あと1度上がるか上がらないかのところで特に脆弱な生態系、生物多様性にどんな影響があるかということが、左の四角の中にまとめてあります。
 この研究会は特にバードストライクということで、鳥に対する風力発電の影響を最初のトピックとして取り上げておられますので、そこから始めさせていただきますと、特に世界規模で見ますと、脆弱な生態系への影響の中で1つ大きく挙げられますのは、渡り鳥の生息地が移動してしまって、行った先にちゃんと餌があると思って移動するのに、気候変動の影響で、長い時間かけて渡っていった先で餌が取れずに、絶滅の危機にさらされるといった状況が起こり得るわけです。
 次の資料にいっていただきますけれども、これは私どもWWFが昨年11月に発表いたしました「気候変動と鳥への影響」というレポートからまとめたものです。
 世界的な規模で見ますと、今、既に影響として、渡り鳥が渡りに失敗する具体的な例が出てきています。その前の表で、10年間に0.2℃気温が上がるのは植物の適用の速度、10年間に0.05℃変化があるだけであれば植物は何とかその変化についていけるけれども、その変化を飛び越したような温暖化が進むとどういうことが起こるかという実際の例が、既に具体的なものとして出てきています。
 例えば、産業革命の前後に比べて地球の平均気温の上昇を大体2℃以下に抑えないと、地球の生物にとって気候変動のリスクは急激に増加するというのがIPCCを初め世界の気候変動問題にかかわる研究者あるいは関係者の認識ですけれども、2℃上昇した場合、実際に何が起こるかと申しますと、絶滅する鳥類の比率がヨーロッパで38%、オーストラリア北部に至っては72%という予測も出ております。これは、例えば今、日本政府とオーストラリア政府が共同で行っております東アジア-オーストラリア渡り鳥ネットワークの活動─このモニタリング調査は100年かけて行うという政府の一つの大きな題目になっているわけですけれども、こちらが、2050年までに72%も絶命してしまうといったことになれば、そもそも何のためにやっているのかといった問題にもつながってくる可能性のある現実でございます。
 こちらには特に極端な例を幾つか挙げさせていただきました。例えばイギリスあるいはアジアの例を挙げましたけれども、ほかにも、例えばアメリカでは繁殖の失敗が、1度に97%も減少してしまうといった極端な例が各地で観察されております。
 次の資料に行かせていただきまして、では、今、この気候変動問題を食いとめるために何をしなければならないか、生物多様性を保全するために何が必要かという問題として、このグラフが一番象徴的なものになります。結局、残された時間はどれだけあるのかということは、このグラフに従って考えていかないといけないということでございます。
 これは温室効果ガスの排出をどういうふうに抑えていくかというスケジュールですけれども、2015年には少なくとも今の状況からピークに達して、その後に大幅な減少方向に向かわせなければいけない。つまり、今は2007年でございますから、2007年から2015年、もうあと8年しかないわけですけれども、その8年のうちにピークで、なおかつ減少方向に向かわせなければいけないという、もう時間がないと言っていい段階に来ております。
 先ほど申しましたけれども、2030年までに既に、例えば今、排出を完全にとめたとしても、空気中に残っている温室効果ガスの効果でさらに0.6℃気温が上がります。その状況の中で、全体で2℃前後に気温上昇を抑えなければならないということは、もう本当に、あと七、八年あると思っても、今、行動をとらない限り、このピークを迎えてそれから減少方向に向かわせるという措置はとれないというのが、今、私たちが置かれている状況だということです。
 では、その中で、実際に世界の状況で何ができるかというのが次の資料になります。
 これは京都議定書その他の先進国の取り組みの中での資料でございますから、これから先、特に発展途上国、インドとか中国がどうかかわってくるかというのは、これからの気候変動枠組あるいは京都議定書の議論の中で非常に大きな問題ではありますけれども、現在、私たち先進国が何ができるかということになりますと、これは世界のエネルギー資源の需要と排出ということですけれども、電気や熱の供給事業者の排出量が40%を占めているわけです。やはり一番大きな部門から大きな削減を目指すのが方向性あるいは効率から言っても一番効果が高いと考えられますし、あるいは電気や熱、特に電気というエネルギー源は、例えば運輸業あるいは製造業といったものは、もともと素材があって、その素材を加工するという事業になりますので、その素材自体の存在を何かほかのものに変えるのはなかなか難しいわけですけれども、電気というのは今まで開発されていなかった自然エネルギーという、これから開発の余地のあるエネルギーで、しかもCOを排出しないエネルギー、使っていないものを開発していくということで、ポテンシャルとしても非常に高いわけです。
 そういうわけで、WWFのネットワークとしましてはパワー・スイッチ! キャンペーンを行いまして、先進国は2050年までに電力部門の排出量をゼロエミッションにするというのを一つの目標に掲げておりまして、これは不可能なことではないということで、各国でキャンペーンを繰り広げたわけです。その結果、ヨーロッパなどでは、かなりいろいろな自然エネルギーの活用による排出量の削減が90年代から発展してきておりますけれども、では、日本の場合はどうなのかというのが次の資料になります。
 日本の発電電源構成は、これは前のグラフとは内容が若干異なりますけれども、このグラフをごらんいただきますと、新エネルギー─新エネルギーというのは必ずしも自然エネルギーとイコールではなくて、新エネルギーの中に風力を含めた自然エネルギーが入ってくるわけですけれども、発電電源というところから見ますと、日本ではまだ、これは2003年度のものですから、ここから大分変化が、例えば風力発電にしても増大していますから、若干数値は違ってきていると思いますけれども、それでもまだ1%とか、ポテンシャルとしては非常に大きなものがあるわけです。このポテンシャルが大きいところで、なおかつ自然エネルギーという今までほとんど活用されてこなかったエネルギー源を開発していくということで、日本も今なら、まだ排出量をピークにさせるまで8年ある今なら、本当の意味でのWin-Win状況を実現できる状況にある。ただ、本当に今やらないともう後はないという、瀬戸際に来ているというのが現実だと考えます。
 WWFジャパンの気候変動プログラムでは自然エネルギーの導入ということで、これは実際の表の計算の仕方とは違うんですけれども、パワー・スイッチ! キャンペーンの一環として、2010年までに第1次エネルギーの中に自然エネルギーを10%導入するという目標を置いておりました。実際にそれは可能な数字であったと思われますし、例えば中国なども、政府が主導して2010年までに自然エネルギーの10%導入を達成すると宣言しております。経済的にも非常に発展状況にある中国が、環境に対してもきちんと責任をとった形で国の発展を目指すという宣言を世界にしているということから、既に先進国である日本で同じだけの自然エネルギーで電力を賄うという目標は、決して低い数字ではないと考えられます。前回、安藤課長から、日本では2010年までに第1次エネルギーで自然エネルギーの供給を3%というお話がありましたけれども、この目標値はもっと引き上げる余地が十分あるであろうと考えております。
 次に、では、実際に風力発電施設、自然エネルギーを使っていく上で、施設をつくるときにはどんな問題が出てくるかという、この研究会の趣旨にもうちょっと近づいたお話をさせていただきたいと思います。
 WWFが既に発表しております「先行する海外のバードストライク事情」というものをご説明させていただきます。
 バードストライクの問題は、海外では風力発電事業が日本より10年以上は先行して行われておりますので、さまざまな事例が既に発表されております。これは私どもの気候変動プログラムのリーダーであります鮎川が、2003年に日本風力エネルギー協会さんが出された「風力エネルギー」という雑誌に寄稿したもので、海外の事例報告として風力発電とバードストライクの問題をご紹介しています。
 具体的な内容はそこをお読みいただければいいと思いますけれども、例えばアメリカなどでは、風力発電施設を建設する上でどんな問題が出てくるか、事業者あるいは地元の団体、あるいは環境保護団体というさまざまなステークホルダーが集まって、コンセンサスベースで持続的な風力商業市場を開発していくという団体が1994年につくられております。既に日本より12年先行しているわけです。
 そこで、アメリカにあります約1万5,000基の風車でどのようにバードストライクが起こっているかという結果が出ておりますけれども、1基について大体年2.19羽、全体といたしますと3万3,000羽ぶつかって死んでいると推定できるわけです。では、アメリカ全体でバードストライクがどういうふうに起こっているかがその次のところで、衝突死、全体では大体2億羽から5億羽、かなり幅がありますけれども、風車に対するバードストライクは大体0.01から0.02%という数字になっております。
 実際にもっと多いのは、例えば非常に高い高圧電流を流す通信用のタワー、これはそもそも高さが高いわけですけれども、その高いものでは大体100倍の1%から2%を占めていて、高さ150メートル以下のタワーでの衝突の事例報告は割と少ないという結果が出ております。これに対して、近年、携帯電話などのタワーが非常に増えておりますけれども、それは高さが非常に低いので、バードストライクは逆に少ないといった報告が出ております。
 次の送電線というのは、これがなかなか問題なわけですけれども、非常に幅があります。そういう意味で、それぞれの国の状況は、やはりそれぞれの施設が建てられる地域で非常に差があるので、一概にどうやるということよりも、まずその現地の状況をきちんとモニタリングすることが大事であろうということが、このような海外の事例から、一番大事な今やるべきこととして挙げられています。
 2003年にこのような事例報告をしたわけですけれども、日本では、今、こういう研究会が開かれているということは、もう既に4年たってしまっているということで、残り8年しかない気候変動問題についてのタイムスケールから考えますと、既に4年ロスしているというのは非常に大きな問題であると申し上げられるかと思います。
 時間もなくなってきましたので少し急がせていただきますけれども、改めてここで再生可能エネルギーのメリットを強調させていただきたいのは、この中で特に大事なのは、国産のエネルギーであるということは前回からさまざまな方が強調されていますけれども、では、その国産のエネルギーであるということをどう利用していくべきかというところで、やはりそれぞれの地域に分散型のエネルギー施設として活用していくということ、国が主導して、きちんとマッピングして考えていくというところが1つ大きなポイントになるのではないかと考えています。
 例えば、今の電力事業では、高圧送電線を張るために非常に高い塔を立てなければなりませんけれども、地方分散型にしてある程度小規模なものでも活用していけるような形にすれば、送電線やタワーにぶつかって死んでいくという風力発電以外のところで見られるバードストライクの確率が減るというメリットが出てくる可能性が非常に大きいわけです。そして結果的には、脱温暖化社会というもの自体をこの分散型のエネルギーで実現していくことができます。
 では、風力発電なり自然エネルギー発電を盛り立てていくために実際に何ができるかというのが次の資料になります。
 今現在の風力発電の日本の規模は大体100万キロワットで、2010年まであと4年しかないわけですけれども、300万キロワットにするというのはどういう状況かといいますと、左上のグラフは風力発電が非常に発展しているドイツの例ですけれども、この数字を見ていただきますと、ドイツでは、1990年に買い取り制を導入してから急激に風力発電容量が増えております。ただ、実際に2007年から2010年までに発電量を3倍にするシミュレーションをいたしますと、例えばドイツの場合、1998年に電気の市場自由化が行われまして、このとき260万キロワットだったものが870万キロワットと、約3年で3倍以上になっています。3倍にするという作業をしようと思うと、最低でも3年はかかるわけですね。
 右側は太陽光発電です。こちらは日本がリードしていましたけれども、こちらも、やはりドイツが2004年に太陽光発電を高い固定価格で買い取り制にした結果、非常に急激な伸びがありまして、大体3年で3倍ぐらいの勢いで太陽光発電が伸びております。
 こういう形で、やはり国の体制づくり、あるいは抜本的な対策が伴って初めて実績が挙がっているわけです。
 最後にまとめですけれども、2010年まであと約4年しか残っていないわけですけれども、それまでに3倍にするという目標を本当に達成しようと思ったら、実際にそれは生物多様性の保全という面で考えても必須の課題であるとWWFでは考えておりますけれども、3年でようやく3倍ということを考えますと、リードタイムとしては1年しかない。はっきり申し上げまして、今年じゅうに何らかの形できちんとした解決策を立てて、その後3年間で実践していって300万キロワットを達成するというスケジュール、アジェンダを描かないと、実際に気候変動問題を押さえながら生物多様性を保全するということは両立しないことが、過去の、あるいは海外の事例から言えるのではないかと考えております。
 特にドイツの例は、やはり必要なところ、1990年に固定買い取り制を導入し、1998年に市場開放し、さらに2004年にそれを強化するような新しい政策を入れている。その政策を入れた段階の一つ一つが非常にクリティカルなポイントとして、グラフの上での右上がりの成長が見られています。やはりそういう国でのガイドラインづくり、あるいは政策が明らかに市場にも反映して、このような伸びを見せているということは、やはりここで政府の、省庁の皆さんにイニシアチブをとっていただいて、風力発電を初めとする自然エネルギーの開発がここで停滞しないような形で、これからも進めていただく必要があるだろうというのがWWFの見解となります。
 以上です。ありがとうございました。

○星野野生生物課長 ありがとうございました。
 続きまして、風力発電事業者の方からご説明をいただきたいと思います。「風力発電施設の自然公園内への設置の要望」と題して、日本風力発電協会理事である鹿島建設株式会社環境本部新エネルギーグループ長の鹿野委員よりご説明をお願いします。

○鹿野委員 日本風力発電協会理事で鹿島建設の鹿野といいます。よろしくお願いいたします。
 前回、第1回の研究会で祓川委員から、バードストライクを中心に、自然環境に関して風力発電事業者懇話会と日本風力発電協会との連名で提言させていただきましたけれども、今回も風力発電協会と事業者懇話会の共同での要望とさせていただきます。
 発表内容については、ここに書いてある形です。
 まず、風力発電事業による貢献として「地球危機が明確に!」ということで、今、岡安委員からIPCCの報告書について詳しく説明がありましたので、私からは簡単にお話ししますけれども、1990年比で気温が1度上がれば水不足の被害人口が数億人増える。2度上がれば全生物種の20から30%が絶滅する危険性が高まるということで、温室効果ガスの削減がぜひ必要になります。地球温暖化防止は人類最大の課題になっております。そのために、まず再生可能エネルギーの利用促進が考えられます。
 地球温暖化防止には、再生可能エネルギーの導入が重要になります。右側の表は、発電単価と2010年政府導入目標量をグラフ化したものです。導入目標量については石油換算で書いておりますけれども、風力発電のボリューム、太陽光発電のボリューム、発電単価については、風力発電が大体10円前後でございます。風力発電は、再生可能エネルギーの中でもコストも安く、導入量も多く見込めるものです。太陽光発電の大体5分の1のコストになっております。
 この表は太陽光発電及び風力発電の国際比較ということで、2005年12月末現在の全世界の容量でございます。世界全体で太陽光発電については369万キロワット、風力発電については5,920万キロワットということで、大体太陽光発電の16倍もの量が風力発電で導入されております。
 各国の導入実績のグラフがここにありますけれども、世界全体で毎年約25%伸びております。ただし、一番下の赤いラインが日本の例ですけれども、日本は世界に比べて導入がおくれております。2005年現在で世界で10番目、2006年末だと13番目まで落ちております。ドイツの約18分の1程度の導入量しかありません。
 続きまして、自然公園内への風車設置の可能性ということで、日本風力発電協会独自で算定したものが、この表でございます。条件についてはこの下に書いてありますが、この条件で算定しております。
 これによりますと、第3種特別地域及び普通地域に導入が進めば約1,500基、1,500キロワットの風車だとして220万キロワットの立地が可能であります。また、第2種特別地域に対しても導入が進めば、2010年の政府導入目標値に相当し、効果は大きい。CO削減効果は、京都議定書政府目標達成計画より、新エネルギー導入によるCO排出削減目標の約6.6%に寄与しております。
 自然公園内への設置の可能性ですが、自然公園内への立地はほとんど進んでいないというか、平成16年4月に自然公園法施行規則改正で立地が可能になったわけですが、それ以後、国立・国定公園内では、ごらんの3件しか立地されておりません。合計でも約2万キロワットというボリュームです。
 そのため、国立・国定公園等の自然公園の積極的開放が必要であります。具体的には、今、事業者側とすれば、許認可のわずらわしさ等もあって、第2種・第3種特別地域及び普通地域について、原則風力発電を立地してもよいという発想の転換をお願いします。ただし、環境影響調査等の実施を前提としてお願いしたいと考えております。
 これは前回も提言していますけれども、解釈や運用についての要望ということで、景観審査の際、地元─これは住民とか自治体の意見を最優先にしていただきたい。
 まず、今、基準として「主要な展望地から展望する場合の著しい妨げ」と「視野角」というのがありますけれども、「主要な展望地」の採用基準を明確化していただきたい。そして「視野角」の規制を緩和してもらいたい。
 2番目に、「山稜線を分断する等眺望の対象に著しい妨げ」という基準がありますけれども、これについても同一視野内の人工構造物との関係を考慮し、眺望対象における自然景観の状況を踏まえて評価してもらいたい。これは後で写真をお見せしながらもう一回説明いたします。
 また、手続の統一化ということで、審査基準の浸透を全国レベルで統一化していただきたい。これは国定公園について、県レベルでの対応が若干違う場合もありますので、よろしくお願いいたします。
 次に、自然公園内への設置例でございます。
 愛知県田原市に設置しました渥美風力発電所、これは三河湾国定公園の第2種・第3種特別地域及び普通地域で、渥美半島県立自然公園に設置しております。風車は7基です。平成13年11月から事前相談を開始いたしまして、省令改正後の平成16年4月から許認可が受け付けられております。平成18年2月に許可をいただいておりまして、事前相談から見ると4年3カ月経過しております。
 これの問題点ですが、眺望点─視点場の位置設定が不明確だった。また、垂直視野角が主要な展望地より1度未満の指導を受け、風車間隔を狭くしたり─これは縦位置の場合、1度未満という指導をされた場合に風車間隔を狭くしたりしなければいけないということと、2基については大幅な位置変更がありました。また、第2種特別地域内に設置された火力発電所に隣接していたのですが、火力発電所の煙突はないものとして、風力発電所だけの景観を議論されております。また、数千羽の猛禽類が飛来する。これはサシバの渡りルートに相当する可能性があるとして、運転調整の指導がありました。
 これは、左側が着工前の現況の写真です。ここに火力発電所の煙突が見えます。右側はフォトモンタージュですが、かなり距離があるので、写真上でここに風車が設置してあるのはわかりにくいかと思いますが、こういう視点場からの指導がありました。
 これが火力発電所とでき上がった風車の関係の写真でございます。この煙突は、風車の2倍ぐらいの高さを持っております。
 次に、阿蘇くじゅう国立公園の普通地域に設置しましたウインドテック小国について紹介いたします。これは熊本県小国町です。
 現況は、牧場と畑に利用しようとして改変した原野です。平成12年に公園管理事務所に事前相談しましたけれども、受け付けられなかったということで、平成15年に小国町と共同ということで構造改革特区申請しましたけれども、風力発電は特区に馴染まないとされました。その後、平成16年4月に施行規則が改正になって、審査基準が追加されたということで申請が受け付けられまして、同時に環境影響調査も開始しております。
 景観の問題から10基から5基に変更されたり、眺望点から20キロちょっと離れた涅槃像と言われる阿蘇5岳の景観を損なわないように、阿蘇5岳にかからないように位置を低い方に移動させられております。これによって、高い方から低い方に行ったことで発電効率が落ちております。また、ブレード・タワーの色彩を白からグレーに変更ということで、これはオプションになりますから、いわゆるコストアップになります。事前相談から5年経過した平成17年10月に着工しております。
 これはフォトモンタージュですが、上が10基案のものです。二十何キロ離れているので阿蘇5岳がきれいに写る写真がなかなかないのですが、この左から一番右側のここまでで10基計画したものを、最終的にはこの部分、左から1、2、3、4、5基となっております。
 わかりやすいように線画で表現しております。涌蓋山という登山道を登っていくときに、振り返って二十数キロ離れた阿蘇5岳、これが涅槃像と言われるわけですけれども、その視野に入らないように、この位置に風車を移動させられて、5基を設置しております。ただし、ここはもともと九州電力さんの高圧線が通っておりますから、こういうふうに鉄塔は残ったままになっております。
 協議の実情と問題点の整理ですが、自然公園内に計画した場合は、協議に時間がかかっております。景観の評価ポイントが曖昧で、協議が煩雑になっております。景観上の問題から、比較的標高の高い所から低い所へ移動を余儀なくされ、ということは発電効率が低下し、経済性が悪化しております。
 ここからは、公園内ではありませんが、事業者側の自主的な取り組みということで事例を3件ほど紹介いたします。
 北海道の稚内に、さらきとまないウィンドファームがあります。これは平成13年に営業運転を開始した9基のウィンドファームです。ここについては白鳥の通過点ということで、地元の愛鳥家からの要望に配慮しまして、2基について、シーズンには夜間ライトアップして注意喚起しております。
 また、鹿児島県南大隅町にあります南九州ウィンドファーム。これは20基のウィンドファームで、平成15年に営業運転を開始しております。ここにおいては、クマタカの行動高利用域内に風車を計画しておりましたら、域外に移動させられております。これも高い所から低い所ということで、発電効率の悪化を招いております。
 最後の設置例ですが、島根県出雲市に建設が始まりました新出雲風力発電所でございます。ここは貴重な野鳥類への影響の低減及び景観への配慮ということで、設置基数を39基から27基、そして26基へと変更しております。20キロ以上離れた宍道湖東岸夕日スポットからの眺望保全を指導され、これを受けて26基中10基につき風車の設置位置の見直しをして、計画を変更しております。これについても、いわゆる発電効率が悪化しております。これはもう一つ、地元エゴというのがあって、設置自治体の出雲市は賛成ということだったんですけれども、隣接する松江市で景観について反対運動が起こっております。
 これは出雲市側から見たフォトモンタージュですけれども、風車の計画は、この辺と、こちらです。ちょうど真ん中辺に大阪航空局のレーダーがあります。先ほど問題になった宍道湖東岸夕日スポットからの眺望ですが、20キロ離れているため風車はなかなか見えないので、ここに白い枠が囲っておりますけれども、この中に風車が何基か見えるということです。
 まとめとしまして、地球温暖化防止は人類最大の課題です。温暖化防止には風力発電導入が急務となっております。立地点は限られてきており、自然公園内の積極的開放が必要となっております。自然生態系の問題については、風車の位置変更等で対応は十分可能であります。た、風力発電所と自然環境との共存は可能であります。
 最後に、風車のある風景ということで、日本風力発電協会は毎年フォトコンテストを実施しております。これは2005年の最優秀賞ですが、北海道の苫前にあるウィンドファームの冬の写真と夏の写真です。こちらは優秀賞で、江東区にある風車です。これも同じく優秀賞で、愛媛県にある瀬戸ウィンドヒルという風車でございます。もう一点、優秀賞で、これは茨城県波崎町にある波崎ウィンドファームの写真でございます。
 これは牧場に設置した例として、青森県にある小田野沢ウィンドファームの写真でございます。
 最後に、海水浴場の脇に立地する工業地帯に設置したサミットウインドパワー鹿嶋の写真でございます。
 以上で発表を終わります。ありがとうございました。

○星野野生生物課長 ありがとうございました。
 続きまして、本日最後の発表になりますけれども、「21世紀の課題・食糧・環境・エネルギー」と題しまして、風力発電推進全国市町村協議会副会長であります岩手県葛巻町長の中村委員よりお願いいたします。

○中村委員 それでは、ご紹介ありました全国市町村の風力発電推進協議会副会長の立場でお話しさせていただきます。
 風力発電推進の全国市町村連絡協議会には中山間地帯に位置する市町村が多く、風力発電に対する期待は非常に大きいわけです。また、それは立地条件として適地が多く、事業の推進を強く望み、さまざまな活動を展開しているわけであります。山村、中山間地帯における市町村にとって、風力発電というのは住民の環境エネルギーに対する普及啓蒙、あるいは意義とか意味を理解してもらうのに非常に有効であるということと、風力発電施設が建設されますと、地域住民が自分の地域に対して自信と誇りを持てるようになります。市町村にとりましては、市町村が自ら建設する場合は別ですけれども、事業者に建設していただいた場合には固定資産税収入等がありまして、市町村の貴重な財源にもなり、地域経済の活性化にもつながるというたくさんの意味を持っております。
 例えば、私の町におきましては、8年前に自分が就任した当時は10万人ぐらいの人が訪れる町でしたけれども、現在は50万人の人が訪れる町になっておりまして、これは第三セクターの活躍もあり、私の資料、5-1と5-2を眺めながらお聞きいただきたいと思いますが、そういう人を呼ぶ力といいますか、交流人口が増大するといったことを含めまして、全国風力発電推進市町村連絡協議会は風力発電施設の建設推進を強く望んでいるという立場で、葛巻町の実例などを交えてお話しさせていただきたいと思います。
 私は1999年8月に就任いたしまして、1年4カ月後に時代が21世紀となり、人類が20世紀に果たしてきた、あるいは行ってきた行為を検証しながら、21世紀はどんな時代か、自分の町、小さな山村ですけれども、どんなことができるのか考えましたときに、地球上で、北海道と東北6県を合わせたくらいの面積が農用地として、森林としての機能を失っている。これは間違っていたら今日どなたか先生に教えてほしいのですが、人類は人口が増え続けており、やがて食糧の危機がやってくる。今でも3秒に1人、4秒に1人、飢えに苦しんで死んでいっている方々がいるということ。葛巻町は、広大な面積を利用しながら食糧という課題に貢献しようということで、酪農を中心に振興しております。
 毎日120トンの牛乳を生産しております。120トンの牛乳はカロリーベースで4万人分の食糧となりますが、家畜にも穀類を食べさせるものですから、食糧自給率は200%であります。酪農、農業、畜産をしっかり守り、育てながら、後継者も育っております。人口8,000人の町で4万人分の食糧を生産し地球規模の食糧という問題に貢献しようというふうに農業者関係者に唱え、激励しております。そして森林も、地球上で北海道と東北6県を合わせたぐらいの面積が失われているという現状を考えましたときに、山に手入れをして山を守り、COの吸収力を高め、林業振興を図り、地域経済の活性化につなげようという思いを込めて森林整備に取り組んでいます。
 国の補助、例えば森林整備地域活動支援交付金が交付されているわけでありますが、それを8,000万円ぐらいちょうだいし、さらに国あるいは県の除間伐等の事業にお世話になりながら、2億2,000万円ぐらいを町内の山に投資して整備してまいりました。町は財源が乏しいわけですが、木を切ったら植えろという再造林、山に切り捨てるな、間伐材を搬出しろ、立方2,500円補助するよ、町産材で家を建てたら最大50万円補助するよ、クリーンエネルギー、薪ストーブ、ペレット燃料ストーブ等にも補助するよ、というように町単独での支援をしながら振興してまいりましたけれども、このままの財源の状況では、できなくなるかもしれないという危惧がありました。
 そういった思いから、町は寄附条例を制定し、全国の皆様方から1口5,000円でご寄附をいただいて、その寄附によって森林を整備していこうということを昨年始め、271万円の寄附をちょうだいしました。今年は再造林を10ヘクタール拡大し、明日の11日は、その寄附してくださった方々が葛巻に集っての森林環境エネルギーツアーを計画していて、町内の森林環境エネルギーの視察をしていただきます。12日には二百五、六十人で植樹祭をやる計画です。その場所は森林組合が企画いたしました企業の森といって、町とか森林組合とか山主が山を守れないかもしれない、企業の力で山を守ってもらおう、葛巻町に関係のある企業に呼びかけた結果2者で3カ所273ヘクタールに6,000万円の資本が投下されまして、企業に山を登記して、企業の力、企業の資本で森林を守っていこうという発想であります。
 エネルギーにつきましては、資料5-2の1ページ目、ここに3本の風車があります。1999年6月に建設されました。これは町も250万円出資いたしましたけれども、エコパワー社が主体となっております。このときは、環境影響等につきましては余り問題もなく、今日までバードストライク等の実例も確認されておりません。
 次に、資料5-2の6ページは太陽光発電でありますけれども、7ページはグリーンパワーくずまき風力発電株式会社、これは電源開発株式会社によって1,750キロワット、12基が建設された場所であります。このときには自然環境団体あるいは野鳥の会の皆様方との慎重な協議もあり、また、事前調査を行っております。
 その調査内容につきましては、資料5-1の4ページに記載されております。「貴重猛禽類」となっているのは「希少猛禽類」の間違いでありますが、これらの飛来等が確認されまして、また営巣木も確認されましたので検討の結果送電線を4キロ迂回するという対応をいたしております。また、風車12本を5本、3本、4本と2キロの間隔をとって、渡り鳥への対策をしております。建設の段になりまして、チャマダラセセリという希少な昆虫の繁殖地であることが確認されましたので、1号機の建設場所を移設し、また、繁殖適地の植生の移植なども実行しながら自然との共生を図り、12本の風車が建設され、平成15年12月に稼働いたしましたけれども、今日までバードストライク等は確認されておりません。
 8ページですけれども、新エネルギーの施設などもございます。
 また、バイオマスプロジェクトでは、木質ペレット燃料工場が葛巻に25年も前からございまして、岩手県内では、この木質ペレット燃料によるストーブが約1,000台普及しております。
 次は、家庭に入っているペレットストーブ、あるいは老人保健施設における50万キロカロリーのボイラー2基などの写真でございます。
 次は、酪農と林業の町らしく、家畜の排泄物からメタンガスを発生させ、37キロワットではありますけれども、畜産バイオマス発電所も持っております。また、家畜の排泄物から燃料電池をつくろうということで、平成16年に世界で初めて家畜の排泄物から純粋な水素を取り出して、燃料電池化に成功いたしております。これにはまさに産学官、東北大学の野池先生、畜産開発公社、葛巻町、清水建設、オリオン機械、岩谷産業、三洋電機などの皆様方と協働しまして、生研機構のご支援をいただき実施したものであります。
 続きまして、13ページは木質バイオマスのシステムです。14ページは木質バイオマスガス化発電所NEDO支援と月島機械によりまして120キロワットの木質バイオマスプラントが完成し、現在、稼働いたしておりまして、牧場のホテル、レストラン、牛乳工場、パン工場等の電力を賄えるような状況になっております。
 15ページは、これからの構想でございまして、畜ふんと木質バイオマスエネルギーを利用した地産地消型の施設を構築したいと考えております。
 また、省エネルギーこそが、これから住民がだれでもできる環境エネルギーへの貢献だということを地域の思想にしようということで、小学生を中心に、役場の職員が出前講座という形で指導いたしておりまして、エコッテル葛巻小学校、水道の水は鉛筆の太さぐらい出せば十分間に合うのだとか、使わない消費電力、待機電力をどんどん切ろうと指導し、家庭でお父さん、お母さんを指導するような小学生が育っております。それが17ページの写真でございます。
 省エネプロジェクト、中学校が貴重な動植物を災害で壊された川から移植して、災害復旧工事が完了してからまたもとの川に戻す。これはカワシンジュガイという貝でありますけれども、そういった取り組みなども小・中学生に浸透しております。
 次に、19ページは先ほど申しました企業の森のお話で、こいわの森、ふじしまの森という形で載っておりますが、これは昨年の写真でありまして、今年は12日に植樹祭をやります。
 また、20ページはくずまき高原環境の森づくり、寄附条例による環境への貢献ということが掲げてあります。
 総括ですけれども、先ほど来、WWFジャパンの岡安さんのお話にも皆様方のお話にもありましたけれども、人類最大の仕事は温暖化防止であろうと私は認識しており、地球は総力を挙げて、すべての手法を用いても環境を改善できない状況にあるのではないかと認識しております。
 それから、バードストライク等等も危惧されるわけでありますけれども、カトリーナの教訓は、既に人類の安全で安心な生活自体が脅かされているのではないか。日本各地における集中豪雨もその一例です。私の町は何もない町で、災害もないいい町だという話が昔はありましたが、平成14年、16年、18年と10億円、20億円、30億円という額を災害復旧工事に要しました。災害のない町であったはずの葛巻町で平成18年10月、2日間で365ミリの集中豪雨を浴びて34億5,600万円の災害復旧工事費用を要するといったことなどがございまして、人類の生活が脅かされていることを誰もが身近に感じる状況だと思います。
 それから、先ほど来のお話のとおり、ツキノワグマを含めて動植物の生存が危機にさらされているといったことを痛感しておりまして、風力発電施設を自然との共生を図りながら積極的に導入し、温暖化防止に貢献すべきである─と書いたつもりでしたが、1字余分な字がございまして、削除してホームページに掲載していただきたいと思います。
 以上が私の基本的な考えと思いと、申し上げたいことでございます。
 こういったことを進めるためには、やはり国の強力なリーダーシップ、そして何よりも国民的合意形成が大切だと思います。いろいろな場所でもっともっと普及啓蒙する必要があると感じておりますし、私はよく「日本って先進国ですか」と言います。先進国らしい目標数値を掲げて、もっともっと地球環境改善に努めるべきであると唱えております。
 どうぞご列席の皆様も含めて、国民的合意形成をどのようにして図ったらいいかということと、風力発電が自然との共生を図るために、総力を挙げて、知恵を絞ってその対策を講じながら積極的にクリーンエネルギーを推進していくべきだと常々考えているものであり、ご報告させていただきます。
 どうもありがとうございました。

○星野野生生物課長 どうもありがとうございました。
 以上で4人の委員の発表が終了いたしました。
 本日は、主に生態系、景観等に関連した自然環境にかかわる全般的な点についてご議論をお願いしたいと思っております。時間が30分少々でございます。議論に入る前に、ただいま4人の委員からいただいたプレゼンテーションの中で、特に事実関係等で議論の前に確認しておきたい点がございましたら、まずご質問をお受けしたいと思いますが、いかがですか。

○原科委員 それでは、早速ですけれども、最後の葛巻の例、大変参考になりまして、すばらしいと思ったんですが、環境配慮もかなり進められていると聞きました。そこで、ほかの3名の方はいずれも環境影響評価を充実させるということをおっしゃいましたね。特にSEAといったことを大変重要だとお考えのようなので、葛巻の場合にはどのような形で環境配慮として示されたか、簡単にご説明いただきたいと思います。

○中村委員 風力発電に関してですか。

○原科委員 はい。

○中村委員 それが先ほどの、実際に実践したのは4ページの6)に書いてありますとおり、建設の前にはこんな取り組みを。これは風力発電事業者にやっていただいたことで、今現在、町としては特に具体的な取り組みはしておりません。

○原科委員 すみません、質問の仕方が悪かったかもしれません。結果はお聞きしましたが、そのプロセスですね。どんな形でいろいろな人の意見とか、アセスも普通は大変手続が重要です。

○中村委員 6番についてですか。

○原科委員 はい。どんなプロセスを持たれたかをお願いします。

○中村委員 まず、電源開発株式会社は、ここに書いてありますとおり、平成15年の建設に対して予備調査をやっております。平成12年6月から13年3月まで自発的に予備調査をやっております間に、自然保護団体の皆様とか野鳥の会の皆様方から盛んに建設反対のお話があったわけです。それは文書で県知事宛と私宛と事業者宛にございまして、何故に建設反対かということになりまして、そういった方々と何回か協議を持ちました。
 ここにありますとおり、平成13年8月30日には、その何回かいただきました反対のお手紙等を含めて、最終的に公開討論会をやるべきだというお話で、それこそ由井委員にもご出席いただき、私も参加して、野鳥の会の皆さんと公開討論会、いわゆる報道機関も含めた公開討論会を開催いたしました。
 最終的には野鳥の会の皆様は、もちろん「よし、わかった」ということにはなりませんでした。「よし、わかった。結構なことだからおやりください」とはおっしゃいませんでしたけれども、当時のガイドラインに沿っての複数回の調査はクリアしているということも含めまして、町も県も「これでいいのではないか」といった合意点に達しまして、それから建設が進められて、平成15年12月に稼働したんですが、今日まで、幸いにしてバードストライク等の被害の実例はない、こういう経緯でございます。

○原科委員 ありがとうございました。私の理解では、アセスメントという通常の形と違いますけれども、そういう合意形成のプロセスをしっかり持たれたということは大変重要だと思います。そういう意味で大変ありがたい、いい情報でした。そういったことは大変重要だということを、ぜひこれからも維持していただきたいと思います。
 もう一つ、前回の会議では私、そういうことで、この電源立地のプロセスに関して情報をいただきたいと申し上げたんですけれども、今日は資料が出ていないですね。ですから、この点に関して事務局からご説明をいただきたいと思います。今のことと大変深くかかわってくる問題でございます。

○安藤新エネルギー対策課長 では次回、資料をご用意して、ご説明いたしましょう。

○原科委員 次回では遅いので、次回の前に早急に用意してください。

○安藤新エネルギー対策課長 では、資料を配布させていただきます。

○星野野生生物課長 そのほか基本的な点で、議論を始める前に確認という意味でのご質問は。

○松田委員 岡安委員の資料3についての質問なんですけれども、岡安委員のプレゼンには、下の方に幾つか写真が並んでおります。2枚目を見ますと、これは温暖化防止のキャンペーンのためのスライドの写真だと思いますけれども、7枚ありますね。このうち1枚が風車になっているわけですが、その隣は多分、災害が大変だとか、その右側はホッキョクグマが絶滅しそうで温暖化が大変だという写真だと思いますけれども、この風車の絵は、これはいい風景だという認識でキャンペーンに使われているのでしょうか。

○岡安委員 基本的には、自然エネルギー推進のために風力発電、先ほど時間がなくて申し上げられませんでしたけれども、太陽光発電よりはずっと効率もいいというお話も出ていますし、基本的には推進するべきだということで、写真を使わせていただいております。

○由井委員 今の岡安委員の資料の8枚目に、海外のバードストライク事情というのがあります。ちょっと細かいようですけれども、将来、バードストライクの防止対策に重要だと思いますのでお聞きしますと、「通信用タワー 1~2% 高さ150m以下の報告は少ない」とありますが、これはどういう意味でしょうか。そもそも150メートル以上の通信用タワーがたくさんある中でという意味でしょうか。

○岡安委員 これはアメリカのケースですけれども、通信用タワーと風車の比較をしております。これは2001年のデータですから、今はもう古くなっている可能性がありますけれども、風車の高さは大体60メートルから100メートル、それに比べて通信用タワーは200メートルという高さのものもあるわけですけれども、それと比較しているものです。特にこの時期に、いわゆる通信用タワーとしては、携帯通信用のタワーが非常に普及しまして、低いんですけれども数が増えるという状況が出現しております。テレビやラジオのものより低いけれども大幅に増えて、バードストライクが観察されるようになったんですけれども、それでも150メートル以下のものでの衝突死は余り報告がないというのが、この段階でのデータでした。
 ただ、まだタワーが増えている状況だったので、実際にそれが事実であるかどうかは今後のモニタリングが必要であるという結論になっております。

○由井委員 昔、アルタモンテや何かの文献を見ていましたら、アメリカのこういう衝突死の事例で、当時は80メートル以下であれば送電線鉄塔等の衝突が少ないと推奨されていたんですよね。それから、最近野鳥の会でまとめた資料でしょうか─を見ますと、40メートル以下は衝突が少ないと。そうすると、40から80メートルの間でしょうか、80メートル以下が少なくて、さらに40メートル以下は少ない、そういうグレードが出てくるような気がしますけれども、日本の鳥が特殊な飛び方をするとは思われませんし、これから日本で調べるのは大変ですので、いずれ外国の事例を正確にまとめる作業、誰がするかはありますけれども、これは多分、環境省さんがこれからやる事業でやると思います。
 もう一つ、これは多分猛禽も含むんでしょうけれども、数から言えば小鳥が圧倒的に当たっていると思います。先ほどの葛巻町の例で、先ほど町長さんがガイドラインとおっしゃったのは猛禽類保護の進め方というガイドライン、環境省の1996年のもので、その場所からネストが10キロ以上離れておりましたし、飛翔頻度が少ないので、まあやむを得ないかなということで進めたわけですけれども─私が進めたのではなくて、やむを得ないという判断をしたわけですけれども─その場所で小鳥の調査をしていたんですよ、事前、事後ですね。そうしたら、小鳥の年次変動はあるんですけれども、ちょっと低くなった尾根の所、先ほど写真がありましたけれども、そこを越えていく鳥がいるんですよね。それが建設後は減りました。
 ただし、事前の調査を1年しかやっていない。小鳥への影響は、やはり3年ぐらい見ないと年次変動をパスできないと思うんですね。そういう早期の調査が必要であることが1つわかったし、日本では事前、事後を含めて長期の調査がまだ行われていない。ただし、やはりこれも外国の事例があると思いますので、できるだけそういう資料を集めて、こういう会議で使えるようにしていただきたいと思います。

○星野野生生物課長 質問だけではなく、ご意見にもかかるような話になってきましたので、それも含めてお願いします。

○下村委員 大野委員の資料で、長野県のアボイドマップに関してお伺いしたいと思います。
 これは、ご存じであれば教えていただきたいということなんですけれども、作成されるときに使われたデータは、既に整備されている情報で済んだのか、あるいは別に調査をされたのかという問題が1つ。
 2つ目として、もっとこういうデータもあった方がいいのではないかとか、実際に影響を考えていく上でこういうデータが整備された方がいいのではないかといったような検討をされた形跡があるかどうか、ご存じであれば教えていただきたいと思います。

○大野委員 こちらで入手している情報からの回答になりますが、希少猛禽類については、日本イヌワシ研究会ですとか地元の猛禽類の研究者の方たちを集めてヒアリングをして、希少猛禽類の具体的な営巣エリアとか行動圏を把握して、検討したそうです。このために改めてもう一度調査し直すというよりは、そういった民間の方たちがとっているデータも含めて検討したと聞いております。
 また、資料の中では、希少猛禽類の繁殖状況も今、十分にとらえられている状況ではないという前提の上で、今後、新たな知見が加われば、またマップも書き直すということが書かれております。

○大村委員 大野委員の発表の中で、3番目、風力発電施設が自然環境にもたらす影響という項目がございます。私、事業者側の立場として一言申し上げたいんですが、確かに、改変の要因としては1、2、3、4ございます。ただ、これはあくまで山岳地帯での風車の建設ですね。実際は、確かに現在、山岳地帯での建設は多くはなっておりますけれども、全体の風車から見ますと、まだまだ平地での建設が多いということが1つございます。
 あと、この内容に関して、基礎工事はございますが、2番目の資材置場等の造成については、一時的には仮設ヤードとして工事用には使います。ただ、我々がやっておりますのは、できるだけ低木の植栽をして原型に復すことを考えております。なおかつ工事場所を最小限にするために、シングルブレードという工法なんですが、要は羽根を上部で取り付ける。そうすることによって下部で羽根を組み立てるスペースが非常に狭くて済むという工法も今、考えておりまして、近々それも採用する予定でおります。
 もう一つ、我々もいろいろ環境に留意せないかんという中で、例えば鳥の問題が近くにあるということになれば、工法的に低騒音、低振動、あるいはその辺の労働条件ですね、工事要件で努力して、より環境にやさしい形での工法も検討しておる状況がございます。

○岡安委員 日本風力発電協会さんのご発言の中で、風車の設置について、さまざまな環境配慮から計画地から移動して、発電効率の悪化が認められたという例が幾つか出ていましたけれども、実際に効率の悪化というのは、例えばパーセンテージで把握されているのでしょうか。

○鹿野委員 個々の例について、ここは何%、ここは何%というデータは、今は持っておりませんけれども、調べればわかるかと思います。

○岡安委員 大雑把に、例えば50%低下してしまうのか……

○鹿野委員 いや、そういうことはあり得ないと思います。

○岡安委員 10%程度なのか、感覚的に私ども全然わかりませんので、大雑把で結構なんですけれども、把握されていれば。

○祓川委員 新出雲の例でいきますと、我々が考えた21%ぐらいの設備利用率が18%ぐらいに下がるということで、全体として1割強の発電量減というような感じになる。ということは収入減でございますので、それぐらいのインパクトがあるとご認識いただければと思います。

○古南委員 鹿野委員から先ほど渥美と小国のプロセスのお話がございました。私、大野委員もおっしゃっていたアセスメントの過程に注目しながら今、聞いていたんですが、渥美の環境影響評価がどういうふうに行われたか、ちょっとご説明が欠けていたので、ごく簡単で結構ですので、どのくらいの期間をかけられたか、どういうプロセスだったか教えていただければと思います。
 それで、渥美と小国について、事前から着工まで4年から5年かけたとご説明がありましたけれども、この小国のプロセスを見ると、環境影響評価に着手したのは平成16年になっていると思いますので、環境影響評価自体にかけた時間は1年半ぐらいではないかと思いますが、それで間違っていないかどうかお答えいただきたいと思います。
 もう一つは、出雲のことに触れていただいて、景観への指摘で計画を変更されたという話があったんですけれども、実は生態系、希少猛禽類に対する影響の話が同時にあって、私が聞いているのは、景観に配慮して風車の位置を動かしたところ、そこが希少猛禽類の生息域で、要するに、景観を立てると希少猛禽類の保護の方が立たないといった計画になっていたのではないかと思うんですね。そういう指摘が地元の野鳥の会の人たちからありました。ただ、その後いろいろお話を聞いていると、この件に関して評価書の修正評価書が出たという話を聞かないものですから、プロセスとして少し足りないところがあるのではないかと思うんですけれども、修正評価書が出ているかどうかお聞きしたいと思います。
 それから、大野委員のご発表は熱川の事例でしたけれども、ほかにもこの手のことはあるかなと思って、星野さんでも他の方でも結構ですけれども、どうしてこういうガイドラインと違うプロセスになってしまうのか。特に、補助金申請がなぜアセスの終了を待てないのか、それがよくわからないんですね。せっかくガイドラインがあるのに、方法書の縦覧が後から行われるとかいうのは、やはりちょっとおかしいと思いますし、これはアセスにかけている期間もすごく短いと思うんですよね。先ほど由井委員から、3年ぐらい見ておく必要があるというお話がありましたけれども、やはり1年ぐらいしかかけていない。先ほどの小国も多分1年半だと思います。
 今年、例えば北海道電力で2件、売電契約の抽選が行われていて、今年から着手される所が2つあるそうなんですけれども、私が事業者さんから聞いているのは、まだ方法書の縦覧が行われていない段階なんですが、来年4月ぐらいにはもう着工しないといけないといったお話がありまして、もしかしたら、そういう売電の都合などもあるのかなと思うんですけれども、そこも含めて、もし鹿野委員なり祓川委員なりがご存じだったら教えていただきたいと思います。
 それから、アセスについてもう一つ、補助金の審査のときに評価書ができていないわけですよね、この熱川の事例は。それで、エネ庁さんとしては評価書がなくても補助金の審査ができるのか非常に疑問だったんですね。要するに評価書が出てきていないわけだから、ガイドラインに沿っていないのは明らかだと思うんですけれども、それでもう既に補助金がおりているというお話なので、そのあたりは安藤課長になると思うんですけれども、ご見解をいただければと思います。

○大村委員 渥美の環境影響評価についてお答えいたします。
 渥美の環境影響評価については、実は平成13年から事前相談をやっておりまして、位置が確定しないということで、2年近く費やしました。それでようやく固まりましたのが平成15年9月、それからようやく環境影響調査を行いました。これは基本的に、NEDOさんのお出しになっておりますガイドラインに沿ってやっております。所要年数としては、約2年間やっております。それを終えてから平成18年2月に着工ということでございます。よろしいですか。

○鹿野委員 小国については、事業者さんが今日来ていないのですが、一応1万キロワット以下なので、これはガイドラインに則ってはいないアセスです。今、1年6カ月なんですけれども、事前相談である程度、事業がいける見通しが立たないと、やはり環境アセス自体はやれないんですね。そういう形をとっております。よろしいでしょうか。

○古南委員 このご発表からは、環境省さんにご相談されたことを事前相談と呼んでいるのかと思ったんですけれども、公開の形でいろいろな方に相談されているのも含めて事前相談ということですか。

○鹿野委員 許認可申請の事前相談という意味での事前相談です。

○古南委員 それは環境省さんに対するご相談ということですか。

○鹿野委員 そういうふうに書いております。

○安藤新エネルギー対策課長 実は立場が事務局兼委員ということなものですから、委員として質問したかったんですが、それと兼ね合わせて申し上げたいと思います。
 1つは、お手元に補助金の関係の資料をお配りいたしました。これは事業の流れということで、今年度の国の事業者支援はこういう形でやっているということで、事業者と国との間で、こういうやり取りをしながら補助金を決めていく。
 その際の要件は様式5のところにございまして、こういう資料が出ているかどうかということで判断させていただいています。そして行政手続あるいは地元調整の実施状況、あるいはその他のいろいろな実際の計画、その他といったところを含めてでございますけれども、こうした中で、地元調整の実施状況で、地元の承諾書を要件にしております。地元の承諾書というのは、関係自治体と地元の自治会、こういったところでございますけれども、その際に、※で書かせていただいているように、環境影響調査報告書と協議結果を提出することが要件になっております。
 一方で、大野委員にお教えいただきたいところがあるんですが、岡安委員のお話、すごくよくわかったんですね。時間がない、だからしっかりとやろうではないか、風力も大事だ、それから野生生物のところもしっかり考えていこうではないかと。大野委員のお話も、大変ご努力があって私もよくわかるんですけれども、2点だけわからないところがありまして、今のお話に関連しますので、ちょっとお教えいただきたいと思います。
 1つは、資料2の後ろから6ページ目に国立・国定公園での扱いというお話があるわけですね。そしてNACS-Jの意見として、国立・国定公園では人為的な影響・開発を極力抑制するんだと。この考え方は私も非常によくわかるんです。他方で、今、求められていることはまたちょっと違う話になっていて、古代からずっと続いてきた自然を大事にそのまま守ろうという話に対して、地球温暖化ということで森林そのものが壊されていく、自然そのものが壊されていく、日本が亜熱帯化していく、そういうことのために世界が自然エネルギーをしっかり導入しようではないか、こういう流れになってきているわけです。そうした中で風力の適地を開発しないということは、ある意味で国際的な責務にもとるようなところもあるのではないかと私は正直思っています。
 世界13位まで落ちてしまって、もっと早くやれという声が非常に強いわけですが、そうした中で、このように触らないことがベストな選択なのか、何もしないことがベストな選択なのか、森そのものが壊れていく、そして鳥がいなくなっても森は寂れていく、こういうこともあり得るわけですけれども、そうしたところをどういうふうにお考えになっているのか。世界的な状況について岡安委員からご報告がありましたけれども、そういうことは非常によくわかるんですね。国際水準でちゃんとやるということについては、私も全くそのとおりだと思いますけれども、過度に保守的に何もしないということですと、これは一体どう考えたらいいんだろうか。世界的に見ても笑い物になるのではないかという感じがしないわけではありません。
 それから、これは先ほどのご質問にもかかわってまいりますけれども、後ろから3ページ目に東伊豆の事例で、こういう手続のお話を書いておられるんですが、これは意図的かどうかわかりませんが、NEDOのマニュアルを引かれているんですが、実はこれは違う案件でございます。ですから、国の補助ではこういう仕組みではありませんので、これに準じて行うことが期待はされますけれども、このとおりやらなければいかんということではないんですね。
 そのときに、1点確認なんですけれども、熱川のお話と思っていいですか。

○大野委員 そうです。

○安藤新エネルギー対策課長 熱川の話は、我々もいろいろな方から聞いています。正直なところ、どういうふうに理解しているかというと、地元の方々、自治体の方々は賛成されている。一方で、別荘の住民の方たちがこれに反対されていると聞いていまして、それは景観の問題だということですね。その景観の問題だということですが、彼らの意見は、自分たちは別荘を開発した。そこの資産価値が風車が立つことで下がるのは許せない、こういうお話のように私ども、聞こえてきておりまして、そうすると、では自然を本当に守ろうという観点からは、別荘を建てることも実は自然を壊しているわけですね。そういう人たちが、自然を守ろうということにもつながる新しい風力を排除するというのはどういうロジックになっているのか、ここがよくわからないんです。あえて違う手続をここでご紹介されている意図がよくわからないので、そのあたり、ご紹介いただけないでしょうか。

○星野野生生物課長 では大野委員、お願いいたします。

○古南委員 すみません、私の質問に他の質問がかぶってしまったので、できれば先にやっていただければと思いますが。
 今の安藤課長のお話で、NEDOのマニュアルの手順は、そのように期待はされているけれども、そのとおりにやらないからといって補助金の申請をしないわけではないというか、補助金の申請にはこのとおりやらなくてもいいというようなお答えだったと思うんですけれども、その部分は、ご説明としては理解しました。
 出雲の修正評価書の話、ちょっと細かいんですけれども、もしお答えがいただければお願いしたいんですが。

○祓川委員 すみません、私、担当ではないのではっきりしたことは言えないんですけれども、基本的には、出雲の案件の場合には、まず鳥への配慮が最初の段階で行われまして、ハヤブサあるいはタカ等の営巣地域から風車を外すということで行っております。その後、レイアウト等がある程度決定した段階において、松江市から、風車は二十数キロ先でも見えるのではないか、見えないようにしてほしいといったことで、そのために10基ぐらい移動を行ったんですけれども、基本的な考え方として、バードストライク回避については最初の段階から大きく変更したということはございません。
 そのために環境アセスを修正したかどうかということでございますけれども、立地点が10カ所ぐらい変わってはいますけれども、基本的には大きな変更はしていないと私、認識しておりまして、環境アセスの修正版は、目下、提示していないと認識しています。

○安藤新エネルギー対策課長 古南委員の話で、ちょっと誤解があるといけないんですけれども、NEDOの制度と国の制度と両方あるんですね。NEDOの方は自治体向けとNPO向けのもので、2分の1の補助をする。非常に強烈なインセンティブを与えているものなんです。
 事業者向けのものは、いろいろな仕様によって3分の1にさらに割り掛けがかかるということで、実行の補助率は30%を切るようなものが一般的になっています。ある意味で事業者の方たちは、その部分の経験もおありですし、事業採算ですとか、あるいは地元の調整等についても、ご経験豊富ですからそういう意味でしっかりやっていただけるだろう、そういう前提のもとで先ほどご紹介した国の手続があるわけです。
 一方で、自治体あるいはNPOの取り組みの場合には、ある意味採算性の取りにくいところでも下駄を履かせてやっていただく、こういうことになっているものですから、しかもご経験の面でも、その地点で1点だけとか、そういうことが多くなってまいりますので、しっかりと手続をとってほしい。こういったトラブルも過去あって、特にNEDO側でガイドラインを用意しているということでございまして、独立行政法人としてやっておる話と、国の方での事業者向けの話とは実は違う制度であるということを、事前にご理解いただきたいと思います。
 その前提で、国の制度はこういう形で実施している。やらなくていいとか、あるいは手続を無視するとか、そういうことでは全くありませんので、誤解なきようよろしくお願いいたします。

○星野野生生物課長 予定している12時になってしまったんですが、まだご意見を伺っていない方もいますので進めたいと思いますけれども、ここでご発言を希望される方を確認したいと思いますので、プレートを立てていただけますか。
 ─それでは、できるだけ簡潔な形でご質疑、ご意見をお願いできればと思います。
 先ほど安藤課長からの質問がありましたので、初めに大野委員、お願いいたします。

○大野委員 私から1つお願いしたいのは、国としての審査のプロセスはわかったんですが、例えば審査の基準ですとか、その審査委員というのは実際どういうメンバーで、どういう構成でされているのかもご説明いただきたいと思います。

○安藤新エネルギー対策課長 質問にお答えいただく前にご質問いただいたので困ってしまうんですが、審査メンバーについては、これは利益相反の話が起こってまいりますので、当然のことながら公表できません。それは国の補助制度では一般的にそういう形がとられていると思っています。ただ、私どもとして、日本を代表するような有識者の方々に審査委員になっていただいて、適切な手続をとっているとご理解いただきたいと思います。

○大野委員 どういう方たちということも。

○安藤新エネルギー対策課長 学識経験者の方たち中心です。

○大野委員 どういう分野というのもわからないんですか。

○安藤新エネルギー対策課長 当然風力のわかっている方たちですね。

○大野委員 国立公園のお話がありましたけれども、逆に国際水準から見て、本当に海外の国立公園でも風力発電ができる状況にあるのかどうかというのが、まず1つあると思います。その辺は国立公園課の方からもお話を聞きたいと思うんですけれども、基本的に国土の9%しかないわけですから、その中で、日本の国立公園というのはすぐれた風景地、生物多様性を保全する場だと位置づけられていますから、何の条件もなくつくっていい場所ではないと考えています。
 熱川の件については、これはお話しすると多分長くなると思いますので、次回もし可能であれば、その問題点を整理したものを説明する等したいと思いますけれども、先ほど課長は「別荘地の方たちが自分たちの資産価値で」とおっしゃっていましたけれども、実際それだけではなくて、自然環境の問題も住民の方たちは意識した上で反対されていると思います。

○安藤新エネルギー対策課長 ここで言い合いする気はないので、これでとめますが、実はアセスの問題も大事だと思っているんです。でも資産がどうしたということが含まれている。それから、今、この場で議論しているのは地球環境あるいは自然を守る、それから野生生物、希少なものを守っていく、こういう崇高なことと風力発電との調整を図ろうとしているわけですね。

○大野委員 そうですね。

○安藤新エネルギー対策課長 そうした中で、何か個人の権利の侵害みたいな、これはむしろ別途司法手続があるわけですけれども、そちらで争えばいいような話をこういった中に持ち込むとすると、過度に時間もかかるし、本当にやらなければいけないことがどんどん後送りになってしまう。そうした点についてどうするんでしょうかと。この熱川事例は必ずしもこの議論にふさわしくないのではないでしょうか。なぜこれを出されたんですかと。非常に大事なことを議論されているのに、この資料自体がクレディビリティを少し落とされていませんか。そういうことですので、ご理解いただきたいと思います。

○大野委員 実際行われた手続の順番のおかしさを示した事例であって……

○星野野生生物課長 私、進行役の立場で申し上げますが、その問題はここで続けるとかなり時間がかかってしまいますので、一応そういう問題、両方のサイドから指摘があったということにとどめさせていただきたいと思います。

○松田委員 まず、今回、環境団体にもいろいろなご意見があるなというのが率直な感想です。
 最初に、前回のオジロワシの死亡所見、剖検について、風発以外の事例も提示いただきたいと申し上げたんですけれども、今回、風発だけということで、風発だけ非常にオジロワシの衝突死を大写しにしているのは変だと思います。これは多分、野鳥の会の方もそうおっしゃると思います。すべて平等に、そういう衝突死のようなものは扱うべきであると思います。
 ただ、せっかくこの剖検をいただいたんですけれども、死後何日たっていると見られるか全く書いていないんですね。そうしますと、発見されたのが全部ではないとしますと、どのぐらいの頻度で回って死後何日たったものが発見されたかというのは非常に重要なデータになるんです。それがないのは大変残念です。
 それから、皆さんの議論を伺っていますと、戦略アセスというのは、私はトータルに見ることが非常に重要であると思っているんですが、みんなご自身の大事なことをおっしゃっていて、相対的に比較できる材料がなかなか見られないということは、やはり非常に残念であると思います。

○由井委員 今日のメインテーマは生態系と景観と書いてありまして、いずれ生態系と景観に関して大事なところを守るというのは、前回も申し上げたつもりなんですけれども、ただ、ぎりぎり地球温暖化防止のために自然エネルギーを進めていく場合に、どうしても前回あったコンフリクトといいますか、どうしても立てなければいけないところ、あるいは立てるべき台数が決まってくるのではないかと思うんですね。そのときに、景観と生態系というのはある程度我慢しなければいけないところもあると思います。それは先ほど来おっしゃっているように、センシティビティマップとか、いろいろつくるのを急ぐ必要があるということですね。
 もう一つ、別の観点ですけれども、地球温暖化防止のためにやむを得ず景観を阻害して風力発電施設を立てても、うまく地球温暖化が防止できたときは、撤去すれば何とかなる。もとに戻せますよね。ところが、生態系を壊してしまうと、地球温暖化の影響も含めなかなか戻らない。その辺が自然界と景観の違いではないかと考えています。

○原科委員 これらの資料を配布しましたので一言言いたいと思ったんですけれども、もう時間を超過しましたので諦めます。ただ、これは「私の視点」という朝日新聞のコラム(4月17日)に私が書いたものを読んでいただきたいということよりも、次をめくっていただきまして、日本経済新聞の社説です。4月27日、連休に入る直前の社説で、「不正手続の発電所がアセス除外とは」という見出しで書いています。これは私の表現より随分きついと思います。こうやって見ると私は随分穏健な意見を出していまして、日本経済新聞はかなり強烈な意見ですよ。両方ぜひ読んでいただいて、考えていただきたいと思います。
 特に、今日はいずれの方も合意形成の問題とか、それから環境アセスメントが重要だと、はっきりおっしゃいましたね。特に戦略的環境アセスメント、今、松田委員も最後に言われたように、大変重要な課題ですので、これはこの機会にぜひそういったことを実現してもらいたいと思いますので、そのための準備として、これをお読みいただきたいと思います。
 今日は簡単に終わります。

○長井委員 まず、景観の問題のときに、フォトイメージとかフォトモンタージュ、いろいろ使われているんですけれども、両者の間にかなりスケールの差が見られるのではないかと私はいつも思っています。例えば、鹿野委員が出された16ページの風車のフォトモンタージュの線画、これは多分、かなりスケールに合っているのではないかと思います。逆に自然保護の、先ほどの伊豆の例の資料を見てみますと、風車と風車の間隔がかなり狭いような感じですね。ですからやはりお互いの、圧迫感があるというイメージとそうではないというイメージ、こういう論議をする中ではもっと定量的なスケールに基づいたもので審議しないと、やはり人間の感覚での話ではないと思いますので、その辺は1つ、してほしいということですね。
 それから、やはり鹿野委員のお話ですけれども、ライトアップをするということは、人間が視覚的に景観を見ようということでやるんですけれども、実際に鳥に関しては、ライトアップというのは非常に悪影響があるとヨーロッパでもずっと言われていて、必要最小限以上の照度はつけないという話なんですけれども、日本で立てられる風車はどうしても地元、ここでは愛鳥家と言われていますけれども、ライトアップを要望しているという、この辺は省エネルギーの点からも、まずこういうところではっきり奨励するようなことをしてほしいということです。
 3番目に、自然公園というのは、先ほどから国立・国定公園だけの話がされていますけれども、次回、私、事例を示そうと思っていますけれども、県立、道立の自然公園も5%あるということですので、その辺も含めて国の指針をはっきりさせていかないと、風車の適地がなくなってきているから風のいい場所を求めてどうしても山岳地に行く、それがバードストライクの、摩擦の原因ではないかと私も考えていますので、ぜひその辺も含めて、次回、お話しさせていただきます。

○下村委員 もう繰り返しになってしまいそうですが、一応述べさせていただきたいと思います。
 後で環境省さんからもご発言があると思いますけれども、基本的に国立・国定公園というのは、国民全体から現在の風景とか風致を保全する管理を付託されているエリアですので、やはりより慎重に扱う必要はあるだろうと思うんですね。だめだということではなくて、より慎重に扱う必要がある。
 そのためには、やはり環境影響評価の仕組みが迅速に行われるような基盤をつくっていく必要があるだろうと思います。先ほど長野の事例でご質問させていただきましたけれども、やはり国の方で必要最低限のデータを整備することと、当然、影響評価は地域によって違いますから、補填的にやる必要があるとは思いますけれども、できるだけ期間を短くするためにも、基本的に影響評価をするための基盤を整備することが緊急の課題だろうと思います。
 それから、景観というものに対しての理解ですが、単に見えているものだけではないんですね。景観というのは、基本的にライフスタイル、生活の反映、あるいはその時代、時代に人々が望むものの反映ですので、そういうライフスタイルの選択ということでもあると思います。それは住んでいるエリアだけではなくて、保全するエリアも含めてですけれども、景観についても、そういうことをもっとトータルに考える必要があるだろうと理解しています。

○古南委員 たびたびすみません。
 先ほど安藤課長にご説明いただいて、私、ちょっと不勉強だったので教えていただいてありがとうございます。
 エネ庁さんは事業者に対して環境影響評価までは求めていないということだと思うんですけれども、現状はよくわかりましたけれども、そうであるからこういうふうなプロセスになってしまうということですね。そこで、やはり影響評価が、あるいは影響対策が十分に行えないということが出てきているように思うので、それはちょっと問題ではないかというのが1つ。
 もう一つは、下村委員も言われましたけれども、では、そこをどうやって救うかというと、それを全部事業者にかぶせるのは非常に問題があると思うので、やはり国の責任で事前の基礎的なSEAですね、いわゆる─を早く実施しないと、両方とも立ち行かなくなるのではないかということです。

○神田国立公園課長 時間がないところで、申しわけありません。
 いろいろ幅広いご意見、いろいろな立場のご意見をいただいて、大変参考になっております。私自身、委員という形でございますが、バックグラウンドが役所でございますので、かなり限定的な範囲内で所見を申し上げさせていただきたいと思います。
 言うまでもなく、今回の研究会につきましては、地球温暖化防止のために必要な風力発電の設置を進めるという中で、自然環境の保全と両立させようというのが趣旨だと理解しております。その立場で申し上げます。
 風力発電施設については、特に私ども、すぐれた自然景観地、自然の風景地を保護するという立場、それから景観法を共管するという立場で申し上げますけれども、風力発電施設自体の性格からして、特に最近は100メートルを超える大規模なものになっているということ、要するに、地域によっては人間のスケールどころか地形のスケールを超えるものであるということ、それから、工業的な規格生産品であるため画一的な形状を持っていて、形状的な順応性がとりにくいことは言を待たないと思います。そういうことから、一般的に言えば他の施設に比べても景観、特に自然景観に対する影響がなしとは言えないものだということを、まず前提とすべきだと考えております。そこをまずこの研究会の議論の出発点とすべきであろう。
 であるからこそ、そのような性格のものについては、特に環境影響評価、景観影響の評価の対応については、立地選定が非常に重要であることも申し上げたいと考えております。
 専門家の先生もいらっしゃいますので、そういうことは恐らく議論─客観的な事実だと私ども思っておりますけれども、そういったことを踏まえれば、例えば特定の意味づけをもって景観的なプラスの面のみを強調したり─それもあるのかもしれませんが─あるいは景観への影響について、その他、多様性もそうですけれども、何か別の大義のもとに、他の公益は従である、あるいはそれに従うべきであるといった立場は今回の研究会には馴染まないのではないかというのが私どもの所見でございます。したがって、風力発電施設についての景観配慮というのは、両立を目覚しながらしっかり見ていくという立場であるべきだと思います。
 今回、自然公園内への設置の要望という形でご発表いただいております。これは参考にさせていただきまして、これについてどうこう話す場ではないと思いますので差し控えさせていただきますが、ただ一言、先ほど申し上げた前提で申し上げさせていただければ、景観配慮のために設置位置あるいは規模について配慮したという点について、好ましからざる方向であるといったトーンでお話しされたのは少し残念に思っております。そういったものも両立の上では当然必要なコストとして見るべきものだと考えますので、何%コストがかかったから云々という議論は、最初に戻ります、この研究会の「両立を目指す」という立場から少し離れてしまうのではないかと考えます。
 先ほど下村委員からお話がありましたように、国立公園や国定公園につきましては、まさにすぐれた自然の風景地を保護する制度でございますので、最初に申し上げましたように風景への影響がなしとは言えない、他の施設に比べても十分な配慮が必要であることは言を待たない、そういった施設を国立・国定公園の中に原則として設置するといったことは、まず考えられませんので、その辺は、この中で1つだけ申し上げておかなければいけないと思いました。
 また、自然環境と両立した風力発電を推進していく上で、景観上の配慮が必要なことはいろいろな所で軋轢が生じているのを見れば明らかであると思いますので、その点をきちっと整理して、国立公園の中で実績を積み重ねてそれを汎用していくのもいいかもしれませんが、国土全体の風力発電についても、そういう形で景観と両立して推進すべきというのが私どもの立場でございます。

○星野野生生物課長 ありがとうございました。現在もう12時20分ということで、予定を大幅に過ぎてしまいました。
 今回は、事業者の立場、それから保護団体の立場、それぞれの立場から幾つもの示唆に富む提言をいただいております。次回は学識経験者の委員からご発表いただきますけれども、本日の発表の中で示された考え方、また、時間の制約ございましたけれども、ただいまの意見交換の中で幾つもの重要な論点が出されたと思っております。次回はそういった点も含めて、また発表を受けて議論を詰めさせていただければと思っております。
 時間を大幅に超過しましたことをお詫びいたします。
 最後に、今後の予定について一言ご紹介させていただきます。
 今日が2回目でございますけれども、第3回目は5月29日、第4回目を6月12日に開催させていただきたいと思っております。第4回目、6月12日の会合で、それまでの議論の取りまとめを行いたいと思っております。
 次回の研究会につきましては、意見発表いただく方も含めて、詳細については後日、事務局よりご連絡させていただきます。
 本日は長い間ありがとうございました。