環境省自然環境・生物多様性ラムサール条約湿地候補地検討会

第1回ラムサール条約湿地検討会議事概要


1.概要

1) 日時:
平成16年7月23日(金)10:00~12:00
2) 場所:
経済産業省別館1115会議室
3) 出席者
検討員/
呉地委員、小林委員、辻井委員、中須賀委員、風呂田委員
(欠席:林委員)
環境省/
名執野生生物課長、鈴木課長補佐 他
4) 議事次第
(1)開会
(2)議事
(3)ラムサール条約候補湿地の基準について
(4)その他
5) 資料
資料1
ラムサール条約湿地検討会開催要領 [PDF 16KB]
資料2
ラムサール条約湿地の新規登録について [PDF 92KB]
参考資料1
ラムサール条約の概要
参考資料2
日本の重要湿地500について

2.議事概要

1)ラムサール条約検討会開催要領について、事務局より資料1を用いて説明をし、辻井委員を座長に選出。ラムサール条約の概要(参考資料1)、日本の重要湿地500(参考資料2)について事務局より説明。

委員:海洋種は希少種や絶滅危惧種のリストが作成されていないため、選定基準の考え方が難しいが、どう考えているか。

事務局:本検討会は来年11月の次回締約国会議までに登録すべき候補湿地を検討することを目標としている。このような課題は認識している。

委員:現在、自然環境保全基礎調査の干潟調査でデータを集めているので、活用すべき。

座長:締約国会議は3年ごとにあるので、今回は日本の重要湿地500の中から基準をクリアしている湿地を選ぶということでよいか。

2)ラムサール条約の新規登録について、事務局より資料2を用いて説明。

2)-1 事務局より基準1について事務局案を説明。

委員:自然環境保全のための保護地域の有無の予定について「保護区となる予定」とあるが、どういうことか。

事務局:具体的には、第9次鳥獣保護事業計画で予定されている国指定鳥獣保護区特別保護地区を含めている。

委員:水田は事務局案の湿地タイプに入っていない。水田は多くが私有地なので保護区として法的に担保するのは難しいが、生物多様性の高い水田もある。第10回締約国会議はアジアで行われる可能性が高いため、次回の候補地選定の際には、遊水池などを追加できないか。

座長:棚田も入るかもしれない。

事務局:水田は湿地タイプに入れてないが、鳥類の基準で挙がるかもしれない。

委員:水田は境界がはっきりせず、鳥類のデータが活かしにくい。アジアのモンスーン地域の水田は生物多様性がとても高い。第10回の締約国会議にアジアから発信できるテーマでもある。

事務局:第3回検討会の際に、将来の課題についても議論してもらいたい。また、鳥類の渡来地としてだけでなく、水田としての選定基準とはどのようなものか提案してもらいたい。

2)-2 事務局より基準2について事務局案を説明。

事務局:「IUCNのレッドリストは日本産昆虫についてはトンボ、チョウに偏っている。環境省のレッドデータブックの方が日本の実情を反映しており基準として好ましいのではないか。」との、委員より事前に聴取した意見を紹介。

委員:資料2の基準2についてのデータだけでなく、基準に該当する種のリストを見せてほしい。

委員:福岡湾、有明海については、指定範囲をどう考えるか。

事務局:例えば有明海で国指定鳥獣保護区特別保護地区の指定を考えているのは大授搦だけである。ただし鳥類については移動能力が高いため、その区域だけ指定すれば十分かどうかは今後の課題である。

委員:有明海について、全体を指定するのか、それとも部分的な指定になるのか。

事務局:部分的な指定になると思う。次回、図面を示す予定。

委員:基準2について、植物種がないがなぜか。

事務局:結果としてこうなった。基準2に該当する植物生育地について、提案してもらいたい。

2)-3 事務局より基準3について事務局案を説明。

座長:専門家アンケートにより挙がっているとしても、データのない湿地はどうするのか。

事務局:湿地を登録するときにはデータが必要である。

座長:八丈島周辺海岸、小笠原諸島周辺は生物多様性が豊かなのか。

事務局:日本の重要湿地500では藻場として選定されている。

委員:アントクメならば、大島周辺等もっと重要なところがある。裏付けとなるデータが必要。

委員:屋富祖井は生物多様性が高いのか。

事務局:希少種のチシマチスジノリが生育している。

座長:多様性というよりも特殊性ではないか?もう一度精査してみる必要がある。

委員:アンケートの質問の「生物多様性」について、生物多様性が高いという理由で湿地を挙げた回答者と、ある希少種がなくなると生物多様性が低下するという理由で湿地を挙げた回答者がいるのでは。

2)-4 事務局より基準4について事務局案を説明。

委員:基準4は生物の生活史が分かっていなければならないが、鳥類が入っていないのはなぜか。基準4の取扱いについては藤前干潟を指定したときにも議論となった。その後に検討は行われたのか。

事務局:鳥類について渡りの時期のデータが不足している。モニタリング1000では渡りの時期にも調査を実施することとなっているので今後の課題としたい。また、今回は水鳥については基準5、6で検討することとした。

委員:沖縄はウミガメの産卵地が多いが、入ってこないのか。

事務局:アオウミガメの最大の産卵地は小笠原であり、その次に八重山諸島が挙がってくる。今回は最大の場所を選んだ。

委員:渡りの中継地のガンカモのデータが不足しているとのことだが、環境省にデータがないだけであり、データが全くないというわけではない。重要湿地500の選定時にも利用しているので環境省にもバックデータとしてあるはずだ。オーソライズされたデータだけを利用するのであれば限られてしまう。

座長:他国の条約湿地で基準4に合致しているものの根拠の例を次回提示いただけると参考になる。ガンカモのデータについては検討が必要。

2)-5 事務局より基準5と6について事務局案を説明。

委員:宍道湖・中海、福島潟・瓢湖は生態学的にみて分けた方がいいのか、併せて考えた方がいいのか。

事務局:福島潟と瓢湖は湖のタイプが全く違うこと、データが別々に存在することを理由に分けた。

委員:三番瀬は生物学的には谷津干潟と一体と見なした方がよいと思うがどうか。

委員:ラムサール条約湿地を22箇所に増やすことを考えると細かく分けた方がよいかもしれない。

事務局:自治体の考え方にもよるが、異なる自治体にまたがっている場合は分けて欲しいとの意見が多いのではないか。

座長:行政区画の問題はある。

委員:基準6について、ガンカモは何のデータを使ったのか。

事務局:ガンカモ科鳥類の生息調査報告書である。

委員:重要湿地500選定時の情報があるはずなので活用してもらいたい。中継地についてもデータがあるので活用してほしい。

座長:水鳥は非常に重要なので呉地委員に協力をお願いしたい。

2)-6 事務局より基準7と8について事務局案を説明。

座長:魚類はとても難しい。

委員:魚類にとっての空間の重要度を図るのは難しい。また定点での継続的な調査もなされていない。NGOも含めてデータ収集をした方がよい。ハゼ等では昔のデータがかなりある。もう少し情報収集をお願いしたい。

事務局:努力したい。情報があれば教えてもらいたい。

委員:第6回締約国会議の時に魚類についてのガイドラインが示されたが、専門家にそれを示した上でアンケートを行ったのか。

事務局:示していない。

座長:日本の重要湿地500の検討委員には魚類の専門家が非常に少ない。

委員:魚類の専門家に聞いた方がよい。魚類学会もあるのだから連携して情報収集する必要があるのではないか。

座長:魚類に関してはこの結果だけで推すのは難しい。もう少し情報を集めてもらいたい。鳥類については呉地委員にデータ提供をお願いしたい。新しいデータ、その他の質問等があれば8月6日までに事務局まで連絡してもらいたい。

委員:選定候補地を多く増やした方がいいのか。

座長:候補地が倍に増えると行政との意見調整が倍に増えるのでこれ以上あまり増やさない方向で考えている。

委員:基準1のマングローブ林候補地に奄美大島の住用川が入っていないのは何故か。

事務局:自然環境保全基礎調査のマングローブ林面積が基準に達していなかったため。

委員:住用川は湾と河口を全部含めるとかなり広い。

座長:事務局でもう一度チェックしてもらいたい。他にも具体的な候補地があれば後で構わないので挙げてもらいたい。ただあまり候補地が増えるのには問題があるのでその点は斟酌いただきたい。データがなくてもよいところがあれば提示してもらいたい。

委員:ラムサール条約事務局にいたものとして、意見を言わせてもらいたい。日本政府として条約湿地を倍増するという方向性を打ち出しているが、これまでの締約国会議における日本の発言量、存在感を考えると条約湿地を倍増するというたった一つの目標を達成するだけでは足りないような気がする。条約においてイニシアティブを取るという意味でも、日本政府として他にどのような施策を考えているか。

事務局:アジア地域における湿地管理計画作成の支援や湿地管理ハンドブックの翻訳などを実施しており、今後も引き続き貢献していきたい。また登録湿地倍増は第7回締約国会議において掲げられた大きな目標であり、日本として努力をしている姿勢を発信していくことも重要な役割だと考えている。

委員:登録するだけでなくその後の管理が重要となる。登録されると地域住民が近づけなくなり適切な保護管理がされず放置されるという懸念もある。長期的な戦略として考慮してほしい。

委員:ラムサール条約湿地になると何もできなくなるという誤解が多い。ラムサール条約は地域にとっても役に立つ道具になり得るというプラス面を積極的に伝えていくことが必要。

事務局:環境省としてもご意見については十分に認識しているつもりである。例えば三番瀬の場合は厚岸湖を例に出して、ラムサール条約湿地に登録されても漁業活動に今までと何ら変わらないということを伝えている。