環境省自然環境・自然公園日光国立公園那須地域保全整備検討会

第3回日光国立公園那須地域保全整備検討会 議事概要


1.日時

平成20年3月12日(水)9:30~11:30

2.場所

中央合同庁舎第5号館 第8共用会議室

3.出席委員等

岩槻委員、小倉委員、進士委員、田部井委員、養老委員、渡辺委員、関係機関(環境省、宮内庁、栃木県、那須町)

4.議事概要

 事務局より、会議資料に基づき、日光国立公園「那須の森(仮称)」の保全整備構想(案)について説明を行った。
 那須地域の保全整備構想(案)について、委員からの主な意見とそれに対する事務局回答の概要は以下のとおりであった。

【「那須の森」等の名称について】

○「那須の森」は良いが、「○○の森」は全国のあちこちにあるので、他との差別化が図れないのではないか。記念的な色あいを出した名称など、さらに研究してほしい。また、「源泉の森」「体験の森」「観察の森」という各ゾーンの名称も、地区全体の名称と区別がつかないし、「源泉」と「体験」「観察」では全体の並びがとれない。名称は、当該地区のコンセプトを伝える上で大事な要素。シンプルで、性格づけでき、かつ全体の中の一部ということがわかるような名称の工夫が必要。

○仮称であっても、公表されると一人歩きする。早急に検討した方がよい。

○「森と温泉」、「森の体験」など、「森」を最初に出してはどうか。

○役所の言葉は名詞中心で堅くなりがちだが、教育基本法は「愛国心」を「国を愛する心」と表現した。本来、日本語は動詞が中心なので、日本語の語感を活かすような名称にしてはどうか。

→(事務局)本構想では、対象地域を自然環境や機能により3つのゾーンに分けるということが重要。各ゾーンの名称はまだ暫定的なもので、基本計画段階でさらに検討したい。

【保全整備構想の全体像・理念について】

○保全整備構想の「整備」とは、単なる歩道や施設の整備ではなく、ソフトを含めた(場の)「創設」「創造」「創出」に近い意味だと考える。一般には前者の意味で捉えられかねないため、自然とのふれあいのための全国的な拠点を目指すという本地区の特徴や意義、性格付けをもっと前面に出し、強調することはできないか。

→(事務局)「保全整備」の意味するところは、ご指摘のとおり、具体的な施設整備ではなく、理念的なものを意図している。それをさらに明確にできるかどうか、見出し等の表現を検討したい。

【生物相と保全整備構想について】

○那須地域は昆虫相としてはむしろ乏しい地域。生物全体の豊かさとしても同様ではないかと感じている。指導者の研修等を行うなら、昆虫相が豊かな南会津地域など周辺地域も含めた活用方針を考えてはどうか。

○今回の所管換予定地は必ずしも生物相が豊かとはいえないが、山麓部の湿地等には貴重な植物があり、山頂部には高山植物が分布する。山麓部から山頂まで含めると生物相が豊かといえる。

○所管換予定地周辺は、生物多様性は必ずしも高いとは言えないが、利用が制限されたためにむしろまとまった自然が残っているという特徴があり、原生度は高い。自然と人の営みが深く関係し合っている場所なので、プログラム内容を検討する際には、那須地域を広域的にとらえてほしい。

○このエリアだけで利用が完結するとは考えるべきでない。植物園さながらの閉ざされた施設として考えるのではなく、人と自然が共生する社会の実現のため、自然体験の指導者育成の全国的な拠点としてこのフィールドを活用する、と発展的にとらえるべきだ。

→(事務局)那須地域でのみ完結することなく、この森を経て、全国に自然体験・自然学習の場を広げていくという視点で今後も検討を進めていきたい。

○外来種の影響が少ないということだが、ニュージーランドでは、フィールドに立ち入る前にマットで靴を拭いた。ここでもそういった配慮を検討してはどうか。

【里山体験とゾーニングについて】

○標高1000mを越える中部ゾーンで里山体験を行うのは疑問。この場所では放牧としての利用はあったが、一般的な里山林管理はされていないため、無理が生じるのではないか。里山としての利用は標高600~800mまでなので、下部ゾーンの東端あたりで行うのが適当ではないか。

○ゾーンの呼称が「体験」と「観察」になっているため、動的な利用と静的利用という対立的な関係でとらえられてしまう。どちらのゾーンでも体験と観察は両立するもの。里山体験は、中部ゾーンだけでなく、下部ゾーンやエリア外でも実施するとすれば良いのでは。

○ゾーン名称を「森の手入れ」や「里山の手入れ」といったように動詞化し、行おうとしていることをそのまま示せばよいのではないか。

○環境省は里地里山の定義を幅広い意味で使っている。ネーミングで工夫できる問題だと思う。

→(事務局)過去の土地利用の実情とは食い違いがあるものの、二次林であり広義の里地里山にはあてはまること、近年まで人為が加わっていたという実情、そして利用のコントロールの容易さの観点等から、中部ゾーンを里山体験活動を行う場としたい。ゾーン名称の表現などを工夫したい。

【那須ゲート・エリアについて】

○那須ゲート・エリアとなる競技場跡地は、管理拠点を置くには狭いのではないか。指導者等の研修はゲート・エリアで行うのか。

→(事務局)競技場跡地は約3ヘクタールあり、広さは十分と考えている。研修施設等は中部ゾーンに設けたい。

【下部ゾーンについて】

○余笹川は谷が深く、歩いて渡ることが困難な地形であるため、川の北側を利用する場合には橋をかける必要がある。自然度の高い林に誘導するのか、里山的な管理をするのか検討すべき。南側は保全し、北側を利活用することも考えられる。

○余笹川では約10年前に大規模な水害が発生しており、橋を架けることは危険を伴うので慎重にすべき。

【利用調整について】

○期間やグループの人数を限定するなど、利用をコントロールする方法はいくつかある。那須の森における利用調整について具体的に考えているのか。仙洞御所では申し込み制をとっていたが、その価値がある場所。日本の自然にもそのような手法をとる場所があっても良い。

→(事務局)主に下部ゾーンおいて、利用期間、人数制限、ガイド付き等の利用のコントロールを考えている。吉野熊野国立公園の西大台では昨年9月から法的な制度に基づく利用調整を行っており、利用者総数や一グループの人数等を管理している。当該地域でこの制度を活用するかどうかはわからないが、具体的な手法は来年度以降検討していきたい。

【那須地域の植物調査について】

○那須地域全体の植物相の調査は昭和天皇が始められ、精力的に調査された。県立博物館の調査もこの調査をベースにしており、どこかで触れてほしい。

○昭和天皇の調査結果をまとめた「那須の植物誌」の序文を紹介してはどうか。

○通常のビジターセンターの整備も必要だが、「那須の植物誌」や那須御用邸等の認知度の高さから考えて、記念館的なもののほうが国民への広報力がある。他の行政機関等による整備なども含めて検討してはどうか。

○国立科学博物館の昭和記念筑波研究資料館がすでにあるので、資料を借りてきてビジターセンター等で特別展示を行うことも考えられる。

【今後のスケジュールについて】

○平成23年度の供用開始までは、現状同様、一般に利用させない状態にするのか。

→(事務局)整備の進捗状況にもよるが、基本的に平成23年度に供用開始という計画。

○慎重に丁寧に準備することは良いことだが、国民に利用してほしいという陛下のご意志が忘れられてしまうと困る。整備が完了する前であっても、ガイド付きやキャパシティが適正かどうか等、できるところから試行的にやってみてはどうか。