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雲仙天草国立公園(PC表示) 雲仙天草国立公園(SP表示)

雲仙天草国立公園 特徴

水陸景観・歴史・文化

三方を海に囲まれた雲仙岳の登山道や車道からは、様々なパノラマが楽しめます。また、海からは優美な曲線のシルエットが心を捉えます。天草の多島海は、穏やかな海面と荒々しい断崖が対照的で、上島の東海岸沿いは、鋭い稜線がすぐ海に迫る山容から観海アルプスと呼ばれています。西は外洋の東シナ海に面し、東は九州各方面へのアクセスルートである有明海に面した島原・天草地域には、古来、様々な海外文化がいち早く到来し、花開きました。

雲仙岳から眺望した有明海と天草諸島
天草松島の多島海景観
観海アルプス
有明海から眺望した雲仙岳のシルエット

島原半島は、国内で最も早く(縄文晩期)稲作が大陸から導入された地域のひとつとされ、関連遺跡が点在しています。仏教も大陸伝来ですが、名高い僧・行基によって大宝元(701)年に開山され(温泉山満明寺)、その後に開山された比叡山・高野山とともに “天下の三山”と称されました。中世には、ヨーロッパからキリスト教が両地域に伝来し、布教と南蛮貿易の拠点として栄えました。キリスト教弾圧が始まると、雲仙地獄は信者拷問の場所となり、寛永14(1637)年には「島原・天草一揆」が勃発し、多くの住民が原城に立てこもりました(翌年、幕府軍によって鎮圧)。他方、雲仙岳の伏流水と有明海の塩で名産となった島原素麺は、中世に中国大陸から直接伝来した可能性が指摘されています。明治以降は、上海航路(上海~長崎)の開通と相まって、中国大陸駐在のヨーロッパ人などが避暑地として雲仙に来訪し、雲仙温泉街は日本初の海外向けリゾート地として、海外文化を積極的に受け入れました。

島原素麺
満明寺
雲仙温泉街

成り立ち・巨人伝説

成り立ち

雲仙岳を中央に抱える島原半島は、約40万年前までは火山島でした。約430万年前、半島南端の天草に最も近い早崎において、海底火山の噴火により火山島ができました。その後、小笠原諸島の西之島のように、噴火を繰り返しながら大きな島になっていきました。約50万年前には雲仙岳(雲仙火山)が形成され、噴火活動を開始し、約40万年前には噴出物が流れ下って九州本土とつながって半島となりました。その後、島原半島を南北3地域に分けるような東西方向の断層(千々石断層など)が形成され、その中央部は北部・南部に対して沈降し続けていく構造となりました(雲仙地溝)が、それ以降の噴火は地溝内に集中するようになりました。東西に並ぶ小浜温泉・雲仙温泉(地獄)・島原温泉も、地溝内の噴火活動の一環で形成されました。噴火のパターンとして、粘性の高いマグマが噴出し、こんもりした溶岩ドームを形成しては、やがて自重に耐えかねて地震などの際に崩壊する、ということを繰り返しながら、急峻で立派な雲仙岳が出来上がりました。有史以降の噴火活動は、少なくとも3回記録されており、江戸時代の普賢岳噴火に伴う眉山崩壊は1万5000人の犠牲者を出しましたが、その後には豊富な湧水と良好な漁場・港湾が生じました。平成2~7年の普賢岳平成噴火では、火砕流と土石流によって多大な被害が発生しましたが、その後には最高峰の平成新山(1483m)が誕生しました。このような火山の災害と恵みの両面を知って楽しむ公園として、平成21(2009)年、島原半島は世界ジオパークに認定されました。他方、天草地域は、約1億年前(中生代白亜紀)から約4700万年前(新生代古第三紀)に堆積した地層が海底から隆起してできたと考えられています。地層から二枚貝等の海洋生物や恐竜の化石が見つかる御所浦の島々は、「恐竜の島」「化石の島」と呼ばれています。

雲仙岳そびえる島原半島(手前)と天草諸島(奥)
崩壊で生じた妙見カルデラ
眉山の崩壊で生じた九十九島

巨人伝説

実は、島原半島各地や対岸の天草北岸には、「みそ五郎」という巨人の伝説が残っています。味噌好きな大男が農家や漁師のお手伝いをしながら地形を作り出す民話ですが、元々「未曽有or無双+御霊」という言葉が「みそorむそう五郎」に転じたとされ、「かつてないほどor並ぶ者のいないほど力を持った霊魂」=「雲仙岳の化身」と推察されています。みそ五郎による “お手伝い” は、雲仙岳の噴火による様々な恵みを表現したもの、というわけです。

生態系・動物・植物

雲仙地域では、標高950m以上の落葉広葉樹林帯(本土で最西端)、600m以下の照葉樹林帯、600~950mの混交林帯の3つの植生帯が見られます。1000m級の普賢岳一帯では秋の紅葉が美しく、国の天然記念物「普賢岳紅葉樹林」に指定されています。普賢岳の平成噴火で誕生し、未だ植生がまばらな平成新山も国指定天然記念物です。地下から火山ガスが噴出する雲仙地獄では、硫化水素を含む火山ガスで熱せられた、温泉藻の生える湯だまりから、ツクシテンツキ、ススキ、シロドウダン、アカマツの順に距離をもって分布する様子が観察できます。また、かつての地獄の噴気が弱まってできたとされる原生沼には、ミズゴケ湿原が広がり、カキツバタやレンゲツツジなどが生育しています。野鳥の豊富な本地域では、夏にはオオルリやキビタキ、ホトトギスなどが多く渡来し、山にさえずりが響きます。また、冬には諏訪の池などにカモ類が多く渡来します。

普賢岳広葉樹林
平成新山
雲仙地獄
シロドウダン
オオルリ

雲仙岳を広く彩る代表的な花と言えば、5月に山をピンクに彩るミヤマキリシマと、6月に白色に彩るヤマボウシです。ミヤマキリシマは、九州の火山に固有なツツジ類ですが、毒性があって牛馬が食べないため、かつての放牧草原(池の原や仁田峠、宝原)や放牧草原(田代原)では綺麗な群落を形成しています。雲仙・天草両地域では、このような農業と関連した景観も多く、水陸のパノラマには棚田や棚畑が含まれて美観を呈しています。天草地域の陸上では、ハマオモトなどの海浜植物が特徴的で、希少なハマジンチョウも生育し、アカウミガメの産卵地もあります。海中では、対馬暖流の影響で色鮮やかなサンゴ類が見られ、色とりどりの亜熱帯性魚類が泳ぎ回ります。下島は国内最西端の野鳥の渡りルート上に位置し、六郎次山などではアカハラダカやナベヅル、マナヅルなどの渡りを観察できます。

仁田峠のミヤマキリシマ群落
雲仙岳北面のヤマボウシ群落
放牧黒牛
南島原の棚田
ハマオモト
ルリスズメとホウライヒメジ

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