南極地域は、1961年に発効した南極条約に基づき、領土権の凍結、軍事利用の禁止が図られ、科学観測の場として利用されてきました。特に最近は、地球環境モニタリングのためのフィールドとして、その重要性への認識が高まっています。
しかし一方で基地活動や観光利用の増加による環境影響も懸念され、1991年には南極地域の環境の包括的な保護を図るための「環境保護に関する南極条約議定書」が採択されました。この議定書の発効には南極地域で継続的に観測活動を行っている26ヶ国(南極条約協議国)すべての締結が必要ですが、平成9年6月時点では、未締結国はロシアと我が国のみとなっています。
議定書は環境影響評価の実施、廃棄物の適正処理など幅広い義務の履行を求めており、締結のためにはこれらの義務を国内で実施するための担保法が必要なため、環境庁が中心となって法案を取りまとめました。法案は平成9年3月11日に閣議決定され国会に提出、4月4日に参議院を通過、5月20日の衆議院本会議で全会一致で可決成立しました。
制定された「南極地域の環境の保護に関する法律(南極環境保護法)」は5月28日付の官報により公布されています(平成9年法律第61号)。
この法律の基本的な骨格は、南極地域における各種の行為の制限及びこれらの制限に各種活動計画が適合することを確保するための確認制度から構成されています。
(1)南極地域における環境保護のための行為の制限
南極地域活動計画の確認制度フロー |
┌──────────────────┐ │確認申請書の提出(活動計画の主宰者)│ *原則としてすべての活動 └────────┬─────────┘ │ ┌────────┴─────────┐ ┌───────────┐ │ 計画の審査 │ │ 環境影響の検討資料 │ ├──────────────────┤ ├───────────┤ │○議定書の禁止行為がないこと。 │ │○必要に応じ環境影響の│ │ │ │ 検討資料を添付 │ │○議定書で条件付で認められている行為│←│ │ │ の場合条件に適合すること。 │ │ │ │ │ │○影響の程度が軽微でな│ │○議定書の環境原則に適合すること。 │ │ い場合、締約国等の意│ │ │ │ 見聴取手続きを実施 │ └────────┬─────────┘ └───────────┘ │ (すべての要件に適合) │ ┌────────┴─────────┐ *必要に応じモニタリングの │ 計画の確認 │ 実施を求める。 └────────┬─────────┘ ┌────┴────┐ │ 行為者証の交付 │ └────┬────┘ ┌────────┴─────────┐ │ 活動実施 + モニタリング │ └──────────────────┘