1 日時 |
平成17年5月27日(金)13時30分~16時00分 |
2 場所 |
新宿御苑インフォーメーションセンター 2階会議室 |
3 出席者 |
(委員)片野 修、苅部 治紀、小林 光、瀬能 宏、高橋 清孝、多紀 保彦(座長)、竹門 康弘、中井 克樹、細谷 和海 |
(環境省)審議官、野生生物課長、生物多様性企画官、課長補佐 |
(農林水産省)水産庁漁場資源課生態系保全室長 |
4 議事概要 |
飼養等について
<事務局から参考資料4の説明>
<質疑応答>
- 施設基準について。漁業権4湖では、「容易に逸出できない構造の網が三重に施してあること」とあるが、構造のことなのか、目合いの問題なのかがわからない。また、網に変わる十分な措置というのは、具体的にどのようなものか。
- (事務局)網のかけ方も目合いもある。現地の状況に応じて認めるかどうかを判断したい。網に変わる十分な措置の具体例としては、芦ノ湖の発電所がある。水が発電用タービンを3回通過するので、逃げ出すことはないと考えている。
- 三重にするというより、具体的に網目を挙げた方が良いのでは。
- (事務局)稚魚が逃げ出さない程度と考えている。
- 三重にこだわらなくても良く、多重構造という理解でよいのではないか。
- 飼養等の許可の条件として、新規の管理釣り場を認めないという点については高く評価したい。但し、これまでの拡散状況をみると管理釣り場の管理は十分ではないと考える。災害や大雨などで漏れることも考えられるし、持ち出しの心配もある。許可に当たっては、以下の3点について検討して頂きたい。
- いろいろな対策をしても漏れる可能性はある。下流域での事前調査や管理者による定期調査を実施させるなど、十分気を付けてほしい。
- 管理釣り場でも持ち出しが無いとは限らない。監視体制の強化が必要。
- 管理釣り場で標識を出すだけでは、管理というには弱すぎる。今後は何らかの形で個体にマーキングをして、漏れた時に管理者が特定できるようにすべき。
- (事務局)ご指摘の3点については、許可の際に十分に検討したい。関連する事例として、富士河口湖町では監視体制の条例を作った。飼養等の方法の告示で、「飼養等許可を受けていることを示す標識等を個体に装着している場合にあっては、この限りではない」とあるのは、将来的なマーキングを想定したもの。
- 不測の事態については、起きてから対策をとるように読めるが、予め対策をとるものではないのか。
- 下流域で見つかった場合、湖から漏れた個体なのか、もともといた個体なのかをどのように区別するのか。
- (事務局)マーキングの技術についてはこれから検討していく。一方、下流域での監視体制についても考えていきたい。
- 4湖で漏れた場合の責任はどこにあるのか?
- (事務局)河口湖では、河口湖漁協が調査をすると言っている。
- 許可条件の第7条三、「みだりに繁殖させることにより~」は、4湖にも適用されるのか。
- (事務局)4湖は特例なので、第7条ではなく第9条が適用される。
- 4湖で増えたものに対する対応が必要である。
- (事務局)漁業権の権利に増殖があるので、逃げないようにすることで対応したい。
- そうであるならば監視体制を十分にすることを許可条件にしてほしい。
- (事務局)許可の際に検討したい。
防除指針等について
<事務局から資料1・2について説明>
<質疑応答>
- 目標設定について。生物多様性保全と内水面漁業の観点から防除を行うということだが、これだけだと防除のための防除になる。個体数の低減化だけでなく環境改善を行うなど、各水域の目的に応じた目標が必要。これがわかるような一文を入れるべき。
- (事務局)目標の設定の(1)の前に、大きな目標を書くようにしたい。
- 効果的な防除手法の4)留意すべき事項の最後に「防除の実施に当たっては、漁業調整規則等関連法令を遵守することが重要です」とあるが、防除主体に対してだけでなく、第3者への防除に対する妨害への対応を明記して欲しい。
- (事務局)本法の枠組みの中の指針なので対応する必要がある。関連する内容は、(3)普及啓発の中で「地域における防除の円滑な実施に支障が生じないよう、関係者に防除への理解を求めるとともに協力を呼びかけることが必要」(P.6)としている。
- 指針とは別のもので、この部分をフォローすることは考えていないのか。
- (事務局)現場によって状況が違うので。
- 協力を呼びかけても協力してくれない人は必ずいる。一般向けだけに書くのでは片手落ちだ。
- 今まで協力を求めても得られなかったから、今のバス問題がある。
- (事務局)一般的にどの程度の妨害があるのかを調べて、後程、高橋委員に個別に相談し、これを含める表現にしたい。
- 前回の検討会のヒアリングでは、バス利用者は、生きたまま利用水域に運べるなら協力すると言っていたが、今回、これが完全に否定された形になっている。そこで、事務局へお願いだが、今後どのような形で協力してもらえるのか釣り人へ確認して欲しい。
- 実際には、駆除は何十年も前から行われていて、ものすごい努力が必要なことを改めて認識する必要がある。また、コクチバス、オオクチバス、ブルーギルの3種で状況がずいぶん違う。コクチバスは現在はまだあまり広がっていないが、生息可能な場所はたくさんありこれから拡散が警戒される。その一方で駆除マニュアルも出来ていて、3種の中では駆除しやすい。ブルーギルについては現在研究中であるが、たくさん捕れるが減らない種であり、1ヶ所に膨大にいる。オオクチバスについては、実は表立って駆除技術が開発されていない。今後、研究開発をお金をかけて大規模に推進すべき。この法が契機になればよい。
- p.5~6に書かれているような普及啓発が大事であるが、具体的にどう子供を巻き込むかが課題である。自治体を取り込まないとNGOでは手に負えなくなる。自治体から学校へ働きかけをして欲しいが、今、自治体への働きかけはどれくらい進んでいるのか。
- (事務局)昨日も自治体への説明会を行ったところだ。アンケートもかけていて結果も出ている。法が契機になり自治体もやりやすくなるだろうし、集めた情報をフィードバックしたい。
- (事務局)都道府県へ駆除事業の交付金を出している。平成16年度は34県を対象とした。昨年度までは補助事業だったが、今年度からは交付金になった。
オオクチバス等防除モデル事業について
<4委員から各地の防除事例について話題提供>
伊豆沼・内沼について(高橋委員)
- 宮城県伊豆沼では、近年のオオクチバスの急増とともに、タナゴ類、モツゴなどが急減した。ゼニタナゴ、メダカなどの絶滅危惧種も確認できなくなった。また、それらは水鳥類や二枚貝の減少といった間接的影響もみられている。
- オオクチバスは、産卵場周辺にいる2cm以下の稚魚ではミジンコ類などの動物プランクトンを食べているが、2cmよりも大きな稚魚はコイ科の仔稚魚などを食べるようになる。
- 地域の住民などとともにバスバスターズを結成し、駆除を実施している。人工産卵床(産着卵回収装置)による卵の駆除、さし網で親魚の捕獲、たも網などで群れを形成する稚魚の捕獲、定置網などで移動する稚魚の捕獲を行なっている。最近ではオオクチバスが減少しつつあり、フナ類やモツゴなどが回復するきざしにある。
- 設置した人工産卵床をひっくり返す、破壊するなど、駆除への妨害行為が頻発している。インターネットの2チャンネルでは、稀少種シナイモツゴの生息地の地図を提示し、オオクチバスを放流することを喚起するような文章を流すなど、極めて悪質な行為があり、取り締まりの強化が必要である。
犬山市周辺のため池について(苅部委員、中井委員)
- 犬山市周辺には、稀少なトンボ類、コイ科魚類などが生息するため池があるが、そのうちのいくつかではオオクチバスが侵入しており、それらへの悪影響が確認されている。
- 市民とともに、ため池の清掃、釣り糸の除去を行うときに、「お魚レスキュー」と題して、オオクチバスの駆除を実施している。
- ため池では水抜き・干し出しによる駆除が効果的であるが、水抜き・干し出しは稀少な在来生物にも強いインパクトとなるため、実施に当たっては十分な検討が必要であり、専門家の意見を聞く必要がある。
琵琶湖について(中井委員)
- 琵琶湖でのオオクチバス、ブルーギルの生息量は、それぞれ500トン、2500トンと見積もられている。
- 1980年代から駆除事業が行なわれており、現在は、滋賀県水産課、水産試験場、漁協等が連携して、有害外来魚ゼロ作戦事業を実施している。滋賀県自然環境保全課が外来魚回収のために、ノーリリースありがとう券事業を実施している。これらの相乗効果によって、駆除数は上がりつつある。
- 今後は、さらに、効果的な駆除方法の開発が必要である。また、駆除効果の科学的な検証も行なわなくてはならない。保全上重要な地域を意識した事業の展開も重要である。
- 保全上重要な地域としては、以前から細谷委員が推奨しているように、琵琶湖の周辺にある内湖があげられ、それらの場所での防除の実施が望まれる。
深泥池について(竹門委員)
- 深泥池は生物群集指定の天然記念物となっているが、オオクチバス、ブルーギルが侵入した前後で、魚類や水生昆虫などの在来生物相の変化が確認されている。
- 京都市、環境省、文化庁等の予算で、市民が参加して、えり、もんどりなどの漁具を用い、駆除事業が行なわれている。
- 現在、オオクチバス、ブルーギルが減少しつつある。将来的にいつまで事業を続けるのか、どのくらいの駆除を続ければ生息数が0に近づくのか、といったことを検討することが必要である。モデル的に行なった計算結果によれば、これまでの駆除努力を少なくとも10年以上続けなくてならないことが判明している。
- オオクチバス、ブルーギルを駆除したあとに、イトトンボ類、チョウトンボなどは復活することが知られているが、地域的に絶滅したものについては、二度と戻ってこない。それらの種については、再導入も視野に入れる必要があるかも知れないが、その際には専門家との検討は不可欠。
- 今後の課題としては、地域住民に駆除についての普及啓発を行なうこと、オオクチバスの意図的な遺棄を防止すること、集水域のなかでどのような管理体制にするかを見据えることが挙げられる。また、群集を保全するという意味では、再導入を検討するとともに、他の外来種(カダヤシ、カムルチー、ウシガエル、アメリカザリガニなど)の扱いも決める必要がある。組織や体制作りも、しっかりと構築していく必要がある。
<質疑応答>
- 駆除に対する妨害について指針にストレートに書くのは難しいと思う。座長、事務局で考えていただきたい。釣りの問題があると思うが、釣りを防除手段として計画に組み入れる方法もあれば、伊豆沼のように防除の妨害になるという問題がある。場所によって、各防除計画の中で釣り禁止やルアー禁止をエリアを決めて実施してもよいのでは。それぞれよく検討して最善の方法をとっていけば良いと思う。
- どこにそれをアピールすべきか苦慮するところだ。防除は普及啓発でもあるが、気になるのはバスフィッシング番組のTVのありようだ。個人的には、即、バス釣り全面禁止を求めるわけではないが、少なくともその撮影地になっているようなところ、例えば琵琶湖の瀬田川、徳島県の吉野川、岡山県の旭川などはいずれも希少種の生息地を対象としていることがわかっているので、少なくとも漁業権4湖に限るとか、何らかの釣る側の姿勢を示すよう水産庁や環境省からの指導が必要と考えている。
- 今回はバスに対して厳しい決定となった。メディアにも色々あって妙に危機感をあおったり、間違った情報を流したり、鹿島台の例のようにネット上のサイトでいたずら以上のことをしている人がいるのが現状。そういう立場の人は何を考え、どうしようとしているか。傍聴者の中にはそういった方々とも通じている方もいると思うが、このようになってきている一つの理由は、保全の現場では一部のバス釣り人や業界への不信感や憤りは相当なものがそれぞれの現場であるということを強く認識して頂きたい。今後、全国民の課題である自然保護を進めて行く上で、反社会的な勢力になってしまいかねない状況にまで追い込まれていることを強く認識して欲しい。
- 「Basser」という雑誌の最新号(7月号)の153ページに最近行われたシンポジウムのレポートが掲載されている。そこには、琵琶湖のレジャーに関する条例は罰則が無い、つまり禁止することに法的根拠をもたないお願い条例なので、無視すれば良い。さらに、新潟、秋田、岩手、宮城、神奈川、栃木については漁業管理委員会指示という有名無実なものなので、適当に対応すればよい」と書かれている。こういうことを平気で活字に載せる雑誌もあり、このようなことにどう対応していったらよいのかも考えるべき。
- 統制の効かない人への対応を考えるべき。この法が少しでも役に立てばと思う。また事例紹介にあったように市民活動が活発化しているようで頼もしい限りだ。
その他
- (事務局)今日の議論を踏まえて指針を修正し、公示に合わせて発表したい。モデル事業についても関係自治体を相談しながら進めていきたい。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)