環境省自然環境・自然公園エコツーリズム推進に関する基本方針検討会

第3回「エコツーリズム推進に関する基本方針検討会」(議事要旨)


1. 日時・場所

平成20年2月21日(木)10:00~12:30
中央合同庁舎5号館 6階 共用第8会議室

2. 出席者

<委員>
上野委員、江崎委員、海津委員、桒田委員、齋藤委員、桜井委員、清水委員、下村委員(座長)、鈴木委員、武川委員、中尾委員、真板委員、松田委員、横山委員
<関係省庁>
文部科学省生涯学習政策局社会教育課出口ボランティア活動推進専門官、農林水産省農村振興局農村政策課永嶋課長、国土交通省総合政策局観光資源課金子課長補佐、環境省自然環境局総務課自然ふれあい推進室岡本室長

3. 議題

(1) エコツーリズム推進基本方針に対する提言(案)について
(2) その他

4. 概要

 議題(1)について、事務局より説明を行い、その後、委員よりご意見をいただいた。
 概要については以下の通りである。

(1) エコツーリズム推進基本方針に対する提言(案)について

<はじめに>

○ 「目・耳・鼻・口・肌」は器官の名称であり五感の表現方法として違和感があるため、表現方に工夫が必要である。

○ 「自然を大事にする」、「ツーリズムを利用して守る」というエコツーリズムの意義について一貫して表現されると良い。

○ 「生態系」と「環境」という言葉が多用されているが「生物多様性」という言葉も今日的なキーワードとして入れてはどうか。生物多様性の低下の要因は、人と自然のつながりが希薄化してきたことである。記述されているように人と地域自然のつながりを取り戻すことは重要であり、それによって生物多様性が回復されると期待している。

<第1章 エコツーリズムの推進に関する基本的方向>

【1(1)について】

○ 国際的には、エコツーリズムは自然保護を進めていく主体(=地域住民)の意識を転換するための手段として議論されてきたという経緯もあるため、そのような「誰が自然保護の主体となるか」という視点も加えて記述すべきである。

【1(2)について】

○ 課題が多く列挙されているため、マイナスのイメージが強い。これから取り組む地域の取組み意欲を喚起するためにも、個性的なガイドが育ちつつあることなど希望となることを記述すべきである。

【2(1)について】

○ 地域固有の魅力を見直すことには以下2点のような効果があると考える。

  • 地域のオリジナリティを磨くことで、観光における競争力が高まる。
  • 地域の人にとって何が大切なのかという“地域理念”を共有する場が設けられる。

地域理念が共有され、地域の魅力を高めていくことがエコツーリズムの役割であると考える。

○ アについては、地域住民に観光事業者が含まれる場合もあるが、常にそうとは限らないため、「観光事業者」についても加筆すべきではないか。また、ウにおいて、既存の観光産業は保全に対する意識が弱い部分もある。現状の記述では「既存の観光のエコ化」というメッセージが弱いので加えて欲しい。

○ 既存の観光がありその上にエコツーリズムという仕組みを加えていくということを強調するため、ウ「地域においては、これまで行ってきた既存の観光に加えて、この自然観光資源」と加筆してはどうか。

【2(2)について】

○ [1]から[6]が順番として記載されているが、[1]から[6]はそれぞれ関わりあいながら進めるべきであるため、そのように記述すべきである。

○ 「振興」という言葉には、従来型の観光振興、地域振興をイメージし、拒否反応を示す人もいることが想定される。「(エコツーリズム推進法が目指す)本来の意味での振興」と冒頭に説明を加えるなど、より良い言葉に変更できないだろうか。

○ 4つの理念のうち「環境教育の場としての活用」についても記述してはどうか。

【2(3)について】

○ これまで「保全」という言葉は、利用しないという規制のニュアンスが強かったが、現在では適切に利用するという積極的な行為も含めた意味が強くなってきており、そのニュアンスを伝えてはどうか。

○ 「保全」という言葉の代替案として「共生」ではどうか。

○ 過度なサービスではなく、本来のおもてなしという意味で記述していることを強調するため「“おもてなしの心”」としてはどうか。

○ 「順応的管理」という言葉は、主たる読み手である地域の関係者には難しいのではないか。

【3(1)について】

○ エについて、これまでの取り組みの中にもわが国の真の魅力を伝えているものもある。そのため表現方を検討する必要がある。

【3(2)について】

○ ここで記載されている「協議会」は法定協議会、1(2)で記載されている「協議会」はエコツーリズム推進モデル事業の協議会、といったように示しているものが異なる。このように、それまでの内容とのつながりが弱い。

○ アについては、ガイドにも「資質向上」が必要である。この際、山岳ガイドや森林インストラクターはガイド個人のレベルが非常に高いため、その仕組みや制度を取り込んでいくと参考になるのではないか。また、地域のコーディネーターも「育成」していくことが必要である。国土交通省のニューツーリズム関連施策等の状況から今後は観光協会が地域のコーディネーター機能を担っていくのではないかと考えている。

○ イについて、モデル地区の課題を克服していくために、類型毎にお互いの現場の声を聞き、切磋琢磨しながら共に成長する場を設けるなど地域を「育成」していくことが必要である。

○ 「広域的な観光圏施策」という言葉は、読み手には難しいのではないか。

<第2章 エコツーリズム推進協議会に関する基本的事項>

○ 読みやすさを向上させるために、例えば法律のフローと全体構想として記載すべき事項を分けるなどよりわかりやすく記述してはどうか。

○ 市町村は手続き上の主体であり、実際の主体はあくまで地域であるということがわかるように記述するべきである。

【1(1)について】

○ 「特に、対象となる特定自然観光資源又は当該特定自然観光資源の所在する・・・・代表者の参加を確保する必要があります。」と記載されているが、代表者が協議会への参加を拒んだ場合は協議会として成立しなくなるのか。「参加が必要」と記載されることによりそれを逆手にとって「拒否権」があるように受け取ることもでき、地域によっては推進の阻害要因とも成り得る。そのため、組織化に必要な要件と、特定自然観光資源の指定に当たって必要な要件を書き分ける必要があるのではないか。

⇒【環境省】
協議会が成立しないということではないと認識している。
【農林水産省】
参加の必要性については、さまざまなケースを想定して再度調整したい。

○ 積極的にエコツーリズムに取り組もうとする地域の各主体から協議会設置の要請等があれば、市町村はその取組みに協力するよう記述しておく必要がある。

【1(2)について】

○ 市町村が事務局を担っていくことは少なからず負担であるため、外部の専門家などのアドバイザーを設置することの有効性についても考え方を記述してはどうか。

<第3章 エコツーリズム推進全体構想の作成に関する基本的事項>

【1について】

○ 地域がどのようにエコツーリズムを進めていくのかコンセプトにかかわる部分であり、記載事項のうち背景・目的、現状課題、方針は分けて記載するべき。

【3(2)について】

○ 従来使用されている「おもてなし」と主客関係において対等性や双方向性を有している「ホスピタリティー精神」は意味が違うことに留意する必要がある。

【3(4)について】

○ 地域では、地域のコーディネーターが最も求められており、その育成についてふれておく必要がある。また、地域の住民の取組みに対する理解がなければ取組みが進まないため、地域住民の育成も併せて必要である。

○ ガイドの認定や資格については、できるだけ既存の認定・資格を活用していくべきである。

【4(1)について】

○ エコツーリズム推進法は罰則規定が設けられていることが特色である。本提言においても罰則の存在と運用について記述すべきではないか。

⇒【環境省】
罰則については、市町村に運用通知として事務的な連絡を行うことを想定している。基本方針の中でも記述すべきかどうかは検討したい。

【6(1)について】

○ 学校教育は広い概念であり公民館といった特定分野の活動と並列に記載されるものでないため、どのように記述すべきか検討が必要である。

○ 自然の神秘にふれあう、自然の不思議さに気づくという記述を「自然の奥深さ」としてはどうか。

【6(3)について】

○ 農山漁村においてエコツーリズムが進められていく場合、農家に対して営農に関する事業に環境への配慮が求められると大きな負担になる場合もある。そのため、「理解を得ながら実施していくことが必要です」と記述するべきである。

<第4章 エコツーリズム推進全体構想の認定に関する基本的事項>

  • 特になし

<第5章 生物多様性の確保等のエコツーリズムの実施に当たって配慮すべき事項その他エコツーリズムの推進に関する重要事項>

【1について】

○ エコツーリズムは本来は資源の持続的な利用と管理に主眼を置いた考え方であるため、「資源の持続的な利用と管理に基づく生物多様性」としてはどうか。

【その他】

○ 地域の取組みが広く認知される必要があるため、各方面から広報を進めていくべきである。

○ 地域において都道府県との関係が活動にブレーキをかけてしまう場合もある。都道府県は市町村の取組みを積極的に支援するよう協力義務を記述してはどうか。

○ 政府、関係省など主体が書き分けられているが、表記の方法を統一、もしくは工夫する必要があるのではないか。

○ これまでの本検討会の議論の中で、エコツーリズムが地球環境の保全方策につながるものであるという点が指摘されていた。この部分でもその旨を記述してはどうか。

<その他>

○ 地方財政が厳しい現状にあっては地域の取組み意欲が高まりにくい。地域が本気で取り組む場合は国が支援をする姿勢が見えると良い。

○ 教育と関連させて事業を実施すると、実施する地域の側にも意欲が出てくる。教育的な観点から子どもの参加を進めることは継続性を確保する意味においても大きな力となる。

(2) その他

事務局より本検討会の今後のスケジュールについて連絡