自然共生サイトってなんだろう?

今月のテーマ

東京ガーデンテラス
紀尾井町 光の森
[株式会社西武リアルティ
ソリューションズ]

東京ガーデンテラス紀尾井町 光の森

東に皇居、西に赤坂御用地や新宿御苑があるなど東京の都心に位置する東京ガーデンテラス紀尾井町は、オフィスとホテル、商業施設、レジデンスなどを有する複合市街地として2016年に誕生しました。敷地全体の約45%が緑化されており、一画にある『光の森』は緑が生い茂っています。また、敷地内にはホタルの生息域外保全(※)のための場所として利用されているビオトープがあるなど、夏でも涼しい風が通り抜ける都会のオアシスといえます。
(※)生き物を安全な施設で保護し育てることで絶滅を回避する方法。

多摩川の水が使われている皇居の外濠にならい、『光の森』では多摩川水系の植栽をしています。

多摩川の水が使われている皇居の外濠にならい、『光の森』では多摩川水系の植栽をしています。

『光の森』は皇居などの都心の緑地をつなぐエコロジカル・ネットワーク(生態回廊)として機能しています。さまざまな緑地を樹林や草地、水辺などでつなぎ、空間に連続性を持たせることで多様な動物が行き交い、エサの確保や繁殖がしやすい環境を創り出しています。東京ガーデンテラス紀尾井町の周辺では、清水谷公園や弁慶濠といった水辺とのつながりがあることで、トンボやチョウなどの生き物が生息しています。これらの地域特有の生態系を維持するために『光の森』がつくられました。

皇居と赤坂御用地を結ぶ間に東京ガーデンテラス紀尾井町があります。

皇居と赤坂御用地を結ぶ間に東京ガーデンテラス紀尾井町があります。
※「地図・空中写真閲覧サービス」(国土地理院)をもとに株式会社西武リアルティソリューションズ作成。

『光の森』を運営するうえで大切にしていることは、他の企業や学校との地域連携です。施設の管理や運営を手がける株式会社西武リアルティソリューションズ 運営企画部の渡邉麻希さんにお話を伺いました。

「私たちの活動の目的の一つは、地域の人々に自然との触れ合いの機会を提供することです。東京ガーデンテラス紀尾井町には、都心ではなかなか見られない絶滅危惧種の動植物を身近で感じられるなど、都市における生物多様性保全活動の役割があります。特徴的な取り組みは、ビルにご入居されているテナントの方やホテルのスタッフたちと協力して行う月1回の清掃活動です。平日の昼に30~40分ほど、毎回20~30人の方に参加いただいています」

月に1回紀尾井タワーオフィステナントなどと共に清掃活動を実施。

月に1回紀尾井タワーオフィステナントなどと共に清掃活動を実施。

「清掃活動では、敷地内のビオトープの雑草を抜いたり、落ち葉などを集めたりしてコンポストボックスに入れます。そこに溜めて腐葉土にしたものは、たい肥として近隣の中学校の屋上庭園で活用していただいています。私たちは自然環境をつくるだけでなく、地域の皆さんと協力関係を築きながら、自然と関われるようにしています」

コンポストボックスを開けるとヤモリが出現!

コンポストボックスを開けるとヤモリが出現!

「コンポストの隣には、アズマネザサやアシボソが茂っていますが、これらは絶滅危惧種のヒカゲチョウやヒメウラナミジャノメの食草です。自然共生サイトの審査の際にご意見をいただいたことをきっかけに、景観に配慮しつつ、除草の対象から外すことにしました。このように、自然共生サイトの審査を経て、より良い環境となるよう改善をしています」

コンポストボックスの横にあるアズマネザサやアシボソ。

コンポストボックスの横にあるアズマネザサやアシボソ。

施設内で確認された絶滅危惧種のヤマガラ(左)とヒメウラナミジャノメ(右)。

施設内で確認された絶滅危惧種のヤマガラ(左)とヒメウラナミジャノメ(右)。

都市における生態系保全活動の難しい点について、植生の管理をしている西武造園株式会社 東日本統括支店 みどり環境部の猪股秀樹さんと戸川かおりさんはこう話します。

「ビオトープは基本的に無農薬のため、大きな毛虫が現れて驚かれる人もいます。オフィスやビルにも隣接しており、多くの人が通行するため、見栄えの点や安全面も気を付けないといけません。虫が苦手な人に迷惑をかけないようにするのも、都心ならではの気遣いかもしれません」(猪股さん)

「ビオトープを見に来る人も理由はさまざまなので、定期的な点検と管理が必要ですね。週に3~4日はホタルの頭数確認のために直接見に行きますが、ビオトープの水の中に入ろうとする人や、ホタルを採取しようとする人がいます。そのときは丁寧にお声がけして、ホタルの生態や保全の目的などを説明させていただいています」(戸川さん)

都心の一角でホタルが自然に繁殖するには、ホタルが生息しやすい環境を整備するほかにも、まだまだ課題があると渡邉さんは話します。

「私たちは皇居に生息していたヘイケボタルの子孫を守っていくことを目的の一つとして活動しています。そのため、フラッシュをたいての撮影など、ホタルの生育に影響を与えるような行為についてはお断りさせていただいております。ホタルのおすすめスポットとして、賑わうことはありがたいことではありますが、本来の目的からしますと本意ではない部分もあります。施設にお越しいただく皆さまに、私たちの取り組みを丁寧にお伝えし、ご理解いただけるようにしていきたいと考えています」

左から西武リアルティソリューションズの渡邉麻希さん、西武造園の猪股秀樹さん、戸川かおりさん。

左から西武リアルティソリューションズの渡邉麻希さん、西武造園の猪股秀樹さん、戸川かおりさん。

最後に、これからの『光の森』の活動について渡邉さんにお話しいただきました。

「自然共生サイトに登録されてより多くの人たちに知っていただく機会が増えたので、東京ガーデンテラス紀尾井町周辺だけでなく、四谷、赤坂エリアにも都市における生態系保全活動を広めていけたらと考えています。清掃活動も東京ガーデンテラス紀尾井町だけでなく、地域の皆さんと協力しながら広めていきたいですね。また、千代田区と新宿区、港区にまたがる外濠周辺の企業が集まり、水質浄化と水辺の魅力向上・文化遺産としての価値向上を目的とした『外濠水辺再生協議会』にも参画しています。緑を広めるだけでなく、水辺などのさまざまな自然を守るための連携をとっていけたらうれしいですね。そして、西武グループとしても協働でビオトープの見学会などのイベントを開催できたらと思います」

西武グループの取り組みの一環で小学生にビオトープの見学会を実施。

西武グループの取り組みの一環で小学生にビオトープの見学会を実施。

下記の「関連リンク」に「東京ガーデンテラス紀尾井町 ビオトープ」のホームページがありますので、興味がある方はご覧ください。

【データ】

名前 :東京ガーデンテラス紀尾井町 光の森
住所 :東京都千代田区紀尾井町1-2 他
TEL :03-3288-5500(東京ガーデンテラス紀尾井町)

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