瀬戸内海を見渡す景観と弧を描く砂浜が美しい愛媛県今治市の織田ヶ浜海岸で、地域と連携して保全活動をしているのが、照明メーカーの東芝ライテック株式会社です。今治事業所では2010年頃から生物多様性保全を通じて地域に貢献する活動を開始し、2013年からは絶滅危惧種の保護を目的として、構内にビオトープを設け、希少野生植物のウンランやデンジソウ、トチカガミの育成をしていました。また、2015年には当時、海洋ゴミや高波などにより荒れ果てていた織田ヶ浜海岸に生育するウンランの保護のため、海岸の整地作業とウンランの移植会を中心になって始めています。
織田ヶ浜海岸での活動は、地域の生物多様性保全のほか、地元小学校の子どもたちの環境教育を目的としており、2016年からは織田ヶ浜近郊の小学校の授業の一環として環境学習会を実施しています。これは東芝ライテックのスタッフが学校に伺い、保全活動などの歴史を話し、専門家の方にはウンランなどの動植物のことを説明していただくというものです。そして、子どもたちにはウンランの移植会にも参加してもらい、愛媛県、NPO、専門家、地元の企業や住民に加えて小学校との連携を行うことで、地域一丸となった保全活動を展開しています。
織田ヶ浜海岸における活動の特徴について、東芝ライテック事業本部産業デバイス部の越智秀信さんにお話を伺いました。
「私たちの保全活動の大きな特徴は『連携』です。関わるコミュニティーにより役割があり、地元住民は通常の保全整地活動を、専門家は育成調査を含む整地活動、そして子どもたちには希少種や漂着物などに直接触れることで、自然環境に対して自ら考える機会をつくるというものです。このような連携を行うことで、一つの課題を多角的に見ることができ、保全活動に大きな価値を生むことになると思っています。また、連携活動のよいところは、みなさんが無理することなく、できる範囲で可能な時間に整地活動などを行えることです」
「今治市には織田ヶ浜海岸のほかに大西海岸や鴨池海岸などがあり、それぞれ生物多様性豊かな美しい海岸線が続きます。私たちはこれらを『日本一美しい海岸線』と呼んでいますが、これは単に見た目のことだけではなく、心が美しい人が多いためと思っています。なぜなら、美しい心がなければ一致団結して保護活動をしようとは思いませんから。とはいえ、私たちの取り組みが正しい方向に進んでいるのか、間違いがないのかを確認する必要があると感じ、自然共生サイトに申請し、審査を受けました。他に同じような活動をしている所があれば参考にすることもできますし、問題があれば見直すことも可能と思っています」
約10年間の活動の中で、この地が地域の共有財産であるという意識が定着している東芝ライテックの取り組みですが、これからの目標についてお話いただきました。
「これからは保全活動を、織田ヶ浜海岸だけではなく、今治市の他の海岸にもつなげていきたいですね。まだ見つかっていない希少動植物もあると思いますし、瀬戸内海全域で情報交換ができれば、新しい発見ができると思っています。さらには、東芝グループ内への働きかけですね。地域が変われば活動内容も変わるので、社内外へのアピールを増やし、グループ内での横の連携をすることで、より活性化できると考えています。そして自然共生サイトに1社でも2社でも多く申請できればと思っています」
「県、市、地元の住民、学校、NPO、企業など非常に多くの人たちと連携している東芝ライテックの生物多様性保全活動は、自然共生サイトの中でもとても珍しい取り組みであると伺いました。同じ地域に関わる人たちが保全活動について知っているだけでなく、実際にみんなで行動を起こし、具現化していることが大きな価値になっていると思います」
【データ】
名前 | :織田ヶ浜海岸 |
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住所 | :愛媛県今治市織田ヶ浜 |
TEL | :050-3190-5334 (東芝ライテック株式会社 事業本部 産業デバイス部 生産企画担当) |