自然共生サイトってなんだろう?

今月のテーマ

生物多様性とは
なにか?

生物多様性

昨年12月の生物多様性条約の国際会議で、自然を回復させていくよう、生物多様性の損失を止め、反転させる「ネイチャーポジティブ」の考え方が掲げられました。そのネイチャーポジティブに向けた施策の一つとして、里地里山やビオトープ、森林施業地、企業の森といった、生物多様性を守ることにつながる民間の取り組みなどを促進するためにつくられたのが「自然共生サイト」というしくみです。聞きなれない言葉だな、と思われる方も多いかもしれません。まずおさえておきたいのが、「生物多様性」というキーワードです。

私たちの地球には、目に見えない細菌からゾウのような大きなものまで、3000万種類もの生き物がいるといわれています。すべての生き物は長い歴史の中、異なる環境下で自分たちの居場所を見つけながら、共に進化してきました。アリもハトも、ライオンもヒトも、タンポポも柿の木も、バクテリアも、それぞれの個性を認め合い、お互いにつながり、直接的・間接的に支え合ってきたからこそ、私たちはいま存在しているのです。このことを生物多様性と呼びます。

里地里山

生物多様性条約では、「多様性」には3つのレベルがあるとしています。森林や里地里山などの「生態系」、動植物から微生物などのさまざまな「種」、そして「遺伝子」の3つです。生態系にある木は花や実をつけ、これらはやがて枯れて地面に落ちます。落ちたものは生き物のエサになり、その生き物のフンが木の栄養となって、また生態系に戻ります。いのちは巡るのです。1本の木は自立しているのではなく、他の生き物とお互いに支え合いながら生きています。木々がなくなってしまうと、それらの木々によって生態系を守っていた他の動植物も、生きていけなくなってしまいます。

動植物

私たち人間もきれいな水や空気、食料や薬の原料をはじめ、さまざまな生物多様性の恵みを受け取っています。毎日の食事や医療、文化、産業のどれをとっても、自然の恵みがなければ成り立ちません。でも近年、日本では生物多様性が危ない!と叫ばれています。原因は、大きく分けて、「開発や乱獲で種が減ったり絶滅の危機が迫ったりしていること」、「里地里山などの手入れが不足して自然の質が低下していること」、「外来種などの持ち込みにより生態系が乱れていること」、「気候変動など地球環境が変化していること」の4つです。そのせいで、日本の野生動植物の約3割が絶滅しようとしているのです。

生物多様性があることが、いかに私たちの暮らしにとって大事なことか、感じていただけたでしょうか。この危機に立ち向かうために重要な役割を担うと期待されているのが「自然共生サイト」です。次回に詳しく解説します。

動植物

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