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ecojin interview

理念だけで世界は変わらない。
行動するから、変わるんだ。

西川貴教|TAKANORI NISHIKAWA

アーティストとして活躍する一方で、
滋賀ふるさと観光大使の活動にも本腰を入れる西川貴教さん。
そのテーマのひとつに環境を掲げ、
より良い環境を未来に残そうと奮闘中です。

環境問題は、待ったなし。
「楽しみ」をフックに、まず行動を。

 2009年から毎年、故郷の滋賀県で開催している野外音楽ライブ「イナズマロック フェス」。西川さんが滋賀ふるさと観光大使に就任したことをきっかけに、滋賀を盛り立て、滋賀から日本を元気にしようと、自身で一から立ち上げたものです。当初から「琵琶湖の環境保全と地域創生」をテーマに掲げて、チャリティオークションなどの収益を、琵琶湖の環境保全のための「滋賀応援寄附」に寄付するなど、環境問題にも向き合っています。

 なぜ音楽ライブのテーマのひとつに琵琶湖の環境保全を据えたのかという問いに「滋賀は昔から環境意識が高い県なんです」と西川さん。「僕が生まれる少し前、琵琶湖に生活排水が流れ込んで淡水赤潮が発生し、多くの生物に影響を及ぼしました。そこで県民が主体となって赤潮の原因のひとつになる『りん』を含まない無りん洗剤を使う運動が始まりました。僕も小学生の頃、使い終わった食用油から固形せっけんを作ったりして環境教育を受けました。だから滋賀県民にとって琵琶湖の環境は、地域のあり方を考える上で自治体という垣根を越えてひとつにつながるシンボルになりうると考えたんです」

 滋賀県を盛り立てるために、今自分に何ができるのか、最も効果的なものを考えて即座に実行に移す。その力は、自身のデビュー時から培われたものだと言います。「デビュー当初は、大きな事務所に入っていたわけではないので、自分を含めた少人数のスタッフで、どうやって売り出すかを考えていました。その後すぐに、自分の会社を立ち上げて、自分で積極的に営業をかけながらマネジメントしてきました。少ない持ち駒の中で、どうしたらインパクトのあるものを届けられるのかを四六時中考えざるを得なかった。だから現状を見極めて、今、何をすべきかを考えるクセがついているんでしょうね」

 そんな西川さんから見ると、今の日本の環境問題への取り組み方は、理念は高くても、実行の段階がうまくいっていないように思えて仕方がない様子。「最近、さまざまな媒体でSDGsを取り上げていますよね。SDGsを理解し行動してもらおうと、いろいろ伝え方を工夫されているとは思うんですが、果たして、どれほどの人が情報に触れて、『じゃあ、今日から頑張って生活ごみを減らそう』とか、『サステナブルな意識を持って行動しよう』ってなるだろう?と思ってしまうんです。環境が危機的な状況にあるから行動を変えましょうと、環境省だってもう長い間言い続けているけれど、国民の生活スタイルはなかなか変わらない。それはどうしてなのか、その根幹にもっとアプローチしなきゃいけないんじゃないでしょうか」

 環境にやさしい生活スタイルにしなくてはいけないと頭ではわかっていても、なかなか行動を変えられない。そんなジレンマに思い当たる人は多いのではないでしょうか。西川さんはアプローチの仕方に「楽しさ」をプラスしたいと考えているのだそう。「イナズマロック フェスでは、収益の一部などを滋賀応援寄附へ寄付させてもらっています。これは『募金箱を置いておくので寄付してください』という昔ながらの寄付のスタイルではなくて、皆さんはフェスに来るだけ、楽しむだけでいいんです。楽しむ前提があれば、人って何かに協力することを惜しまないもの。環境問題もこれと同じで、楽しみながら取り組むことができるんじゃないか、僕はそう思っています」

 実際に、人々が環境問題に向き合って行動できるようなレジャーの提案を滋賀県にしているという西川さん。「今の地球の環境って本当に危機的で、子どもたちは大人が何もできないばかりに、未来に大きなリスクを背負っているような状況ですよね。頭でっかちに、環境問題を理解することから始めようとすると、行動が後手になってしまいかねない。だからまずは、行動を促すことが先決で、理念どうこうはその後からでいいんじゃないかな。みんなが環境にプラスになる行動がとれるよう、楽しいフックを考えていきましょう」

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西川貴教 (にしかわ たかのり)

1970年生まれ、滋賀県出身。1996年にソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてデビューし、数々のヒット曲を世に送り出す。2018年以降は本名の西川貴教としても活動。俳優、声優、地上波TV番組MCなど多岐にわたり新しい挑戦を続けている。

2008年に故郷の滋賀県から初代「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、2009年から県初の大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主宰する。令和2(2020)年度滋賀県文化功労賞受賞。

写真/かくたみほ、ヘアメイク/浅沼薫(Deep-End inc.)