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ecojin interview

物事のすべてはつながっている。
私たちの小さな選択が、世界を変える。

トラウデン直美 | NAOMI TRAUDEN

モデルとしての活動だけでなく、
環境問題やSDGsについても積極的に発信を続け、
環境省サステナビリティ広報大使も務めるトラウデン直美さん。
私たちの小さな気付きや選択が世界を大きく変えると言います。

みんなで連携して、循環させながら
豊かさを見つける旅をしていきたい。

 トラウデン直美さんが環境問題に関心を持つようになった原点は、京都での高校時代にありました。
 「私が通っていた高校はスーパー・グローバル・ハイスクールに指定されていて、学校として掲げるテーマが『環境』でした。授業でCO2排出や海洋プラスチックなどについて学び、これは私たちの未来に直結する問題だと感じました。将来、自分の子どもや孫にいま私が見ている美しい風景を見せてあげられないかもしれないと思った時、それはとても悲しいことだなと直感したんです。
 高校では、生徒会の活動としてフードロス削減のためのフードバンクも実施しました。フードバンク京都さんに通って活動の理念や意義をお聞きして全校生徒にプレゼンをしたところ、多くの生徒が賛同してくれてたくさんの食材や食品が集まりました。小さなアクションでも、何かを変えることができる。そう思えて手応えを感じた体験でしたね」

 2020年には環境省のプラごみゼロアンバサダー、2021年からは環境省サステナビリティ広報大使にも任命され、さまざまな場面で情報発信を続けているトラウデンさん。カギになるのは自分自身の納得と共感だと言います。
 「あくまでも一消費者として、自分が納得し、共感した物事を紹介したいと思っています。環境にいいアイテムをSNSで発信すると、『いいですね、私はこれを使っています』とか、『環境には良さそうだけど値段はちょっと高いですよね』といったリアルな声を知ることができます。私自身も学びながら、一緒に取り組んでいきましょうという感覚で発信をしています」
 環境問題について発信をしながら、人気女性ファッション誌で史上最長の専属モデル歴を保持するトラウデンさんですが、製造過程で環境に負荷をかけることも少なくはなく、絶えず流行が移り変わることから大量廃棄も問題視されるファッション業界に身を置く立場としての葛藤もあったそうです。
 「モデルは、常に新しい服を買ってくださいという立場なので矛盾しているのではと自問していた時期もありました。でも、近年さまざまなブランドが環境への負荷が少ない素材や、より長く使えるアイテムづくりにも積極的に取り組んでいます。そうしたアイテムを紹介していければいい、モデルという立場だからこそ言えることもある、と考えるようになりました。
 今、専属モデルを務めている雑誌ではSDGsについての連載もさせていただいています。雑誌は人々の消費を促すメディアですが、そこで『買い過ぎず、一つのものを長く使うという選択もサステナブルでは』と書いたところ、却下されることなく掲載していただき、さらに共感するブランドさんも現れたんです。企業側にも、『買い過ぎないという選択』が受け入れられる時代になってきたんだなと実感しました。その一方で、単にサステナブルという言葉を使っているだけでなく、きちんとした裏付けやデータに基づいているのかどうかを買う側は注視しています。消費者側のリテラシーも高まってきていると感じますね」

 トラウデンさんは、2022年4月に施行予定の「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環法)」のPRも担当しています。これは、設計段階から排出・リサイクルに至るプラスチックのライフサイクル全般でプラスチックの3R+Renewableに取り組むことを目的につくられる新たな法律です。
 「こうした法的な仕組みができることで、みんなで取り組んでいこうよという機運も高まるのでは。負担に感じるのではなく、無理なく楽しんで取り組んでいけたらいいですよね。誰かだけが負担するのではなく、みんなで連携して取り組んで、気が付いたらそれが当たり前になっていたというのが理想です。
 『えらんで、減らして、リサイクル』というこの制度のキャッチフレーズは、消費者は環境に負荷の少ない品物を選び、なるべくごみを減らし、行政はそれを適切にリサイクルすることで資源として活用するという一連の循環を端的に表していると思いました。モノには、私たちが手にする前、手に入れる時、使った後という流れがありますが、その過去・現在・未来がこのフレーズの中に入っています。物事のすべてはつながっていて、私たちの日ごろの消費も、実は大きな循環の中の一つと考えると、自分自身の行動や選択もおのずと変わってくるのではないでしょうか。
 上の世代の方たちは日本の経済成長を支えたさまざまなノウハウを持っていますし、若い人たちにはパッションがある。みんなで連携しながら、循環させることによって豊かになる社会をつくっていけたらいいなと思います。 豊かさを見つける旅を一緒にしていきましょう」

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トラウデン直美 (とらうでん なおみ)

1999年生まれ、京都府出身。同志社国際高等学校卒業、慶応義塾大学法学部政治学科在学中。「2013ミス・ティーン・ジャパン」でグランプリを獲得。13歳で女性ファッション誌『CanCam』の史上最年少専属モデルとしてデビュー。現在同誌で最長モデル歴を誇る。モデルだけでなくキャスター、コメンテーターとしても活躍中。20206月から環境省プラごみゼロアンバサダーを務め、20211月から環境省サステナビリティ広報大使に就任中。

写真/千倉志野、スタイリスト/橘内茜、
衣装協力/MES VACANCES / CHARLES & KEITH

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