FEATURE [ 特集 ]
熱中症警戒アラートや
エアコンを適切に利用し、
この夏も万全の
熱中症対策を!
夏になると気になるのが熱中症。
連日のように熱中症の発症、
救急搬送などのニュースが流れています。
肝心なのは、やっぱり予防対策。
そのカギとなるのが
「熱中症警戒アラート」です。
アラートを賢く活用して、
あなたとあなたの大切な人の命を
守りましょう!
CONTENTS
クイズ!
「熱中症の予防・対策、
どちらが正解?」
熱中症を予防するためには、
まずは正しい対策方法を知ることが大切です。
2択クイズで、曖昧な認識や
誤解しがちなポイントを
楽しく確認していきましょう!
2択クイズ! 誤解しがちな熱中症の
「予防・対策」をチェック!
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Q1
気温26℃で熱中症になる?
①真夏日ではないのでならない。
②熱中症リスクの可能性はある。 -
A1
夏日とは最高気温が25℃以上、真夏日は30℃以上、猛暑日は35℃以上を指し、単純に気温だけで判断はできません。湿度や日差しなども考慮した「暑さ指数(WBGT)」が、熱中症予防に有効だとされているように、湿度、日射・輻射(ふくしゃ)*1などの「熱環境」や、年齢、体調、暑い環境に十分に対応できないなどの「からだ」の状態、そして、激しい運動、長時間の屋外作業などの「行動」といった3つの要因が、熱中症を引き起こすと考えられます。
正解=②
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Q2
湯船につかって汗をかくことは
熱中症予防になる?①入浴で汗をかくことでも予防になる。
②運動して出た汗ではないので予防にはならない。 -
A2
運動はもちろん、入浴で汗をかくことも熱中症の予防になると言われています。なぜ汗をかくのが良いのかというと、人は汗をかくことで体温を調整しているからです。暑さに慣れることを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といい、熱中症になりにくくなり、「暑熱順化」を促す基本は汗をかくこと。特に本格的な夏になる前から、暑さに慣れるからだづくりの一つとして、汗をかきやすいからだをつくることがポイントです。注意する点は、入浴の前後には水分を摂取することです。
正解=①
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Q3
暑い日には屋内にいれば安心?
①熱中症は屋外でしかならないので、屋内にいれば大丈夫。
②屋内でも熱中症のリスクはある。 -
A3
特に高齢者の場合、死亡者数が圧倒的に多いのは室内というデータもあります。「熱中症警戒アラート」が発表されたら必ずエアコンを使用するように心がけましょう。また、エアコンの設定温度と室温は異なるため、リビングや寝室には温度計を設置して確認することもポイントです。室内の冷やしすぎに注意し、適切に室温を調整しましょう。
正解=②
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Q4
水分や塩分を補給する量は?
①定期的に水分を取り、適切に塩分を摂取するのがよい。
②喉が渇いてから、水分と塩分の補給をすれば問題ない。 -
A4
熱中症予防には、日頃から水分や塩分の補給が大切と言われています。どのくらいの量を摂取したらよいかは、年齢や運動量により異なりますが、目安としては1日あたり1.2ℓがよいとされています。また、塩分を積極的に摂取したいのは、運動後です。大量の汗をかき、水分とともに塩分も失われていますので、スポーツドリンクなど塩分が含まれる水分を摂取しましょう(飲みすぎによる糖分の過剰摂取には気をつけましょう)。
[ 水分補給のポイント ]
- ・こまめに水分補給
- ・のどが渇く前に水分補給
- ・アルコール飲料での水分補給は✕
- ・1日あたり1.2ℓの水分補給
- ・起床時、入浴前後に水分を補給
- ・大量に汗をかいた時は塩分も忘れずに
正解=①
データで知る熱中症の恐ろしさ
これまで熱中症にかかったことはないから私は大丈夫!と思っている人は要注意です。温暖化の影響で年々平均気温が上がり、1898年の統計開始以来、直近4年がトップ4を記録、熱中症死亡者数も年々増加傾向にあります。環境の変化が著しい近年、極端な高温のリスクが増加するなかで、誰もが熱中症になる危険性があることを念頭に、「熱中症警戒アラート」や「クーリングシェルター」を活用するなど、日頃から熱中症予防や対策を意識して過ごすように心がけましょう。
なぜなる?
なったらどうする?
熱中症
では、いったいどうして
熱中症になってしまうのか、
熱中症の実態と対策を、
救命救急医療の現場で活躍する
三宅康史先生に解説してもらいます。
教えて! 三宅康史先生
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教えてくれる人 三宅康史先生
帝京大学医学部救急医学講座教授、帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長。著書に『医療者のための熱中症対策Q&A』(日本医事新報社)、『現場で使う熱中症ポケットマニュアル』(中外医学社)など。
熱中症ってなに?
人間は体温を平熱(約37℃)に保とうとする恒温動物です。周りから温められたり、筋肉運動により自ら熱をつくり出したりすることによって、結果的に体温が上昇したことで生じるすべての身体の障害を熱中症といいます。前提条件として、暑熱環境(暑いまたは蒸し暑い環境)にいる、またはいたことで起こります。
なぜ熱中症になるの?
平常時では、体温が上昇しても、発汗などで体温調節を行い、平熱に戻す働きがあります。ところが、外気温が高くなると、からだは熱を逃しにくくなり、体内の血液の流れも低下、最終的に体温が上昇し熱中症が起こります。
熱中症を引き起こす要因は、気温が高い、湿度が高い、日差しが強い、風が弱いなどの「環境」、高齢者や乳幼児、持病がある、体調不良などの「からだ」、激しい運動、長時間の屋外作業などの「行動」の3つがあります。
これらの要因により、体温の上昇と調整機能のバランスが崩れると熱中症になります。
高齢者や子どもは特に注意を!
高齢者は、もともと体内の水分量が少ないため体温調整をする役割の汗をかきにくい傾向にあります。さらに、基礎代謝が低いために寒さには敏感でも暑さには鈍感になっているため注意が必要です。
乳幼児や子どもは、からだが小さいため、いち早く環境の影響を受けてしまいます。乳幼児は暑くても自分で服を脱いだり涼しい場所に移動したりもできませんし、背が低い子どもは地面からの照り返し(輻射熱)の影響を受けやすく熱中症になりやすいので、まわりの大人が注意しましょう。
こんな症状が出たら要注意!
熱中症のサインは?
自覚症状としては、通常とは異なる「倦怠感」「疲労感」「頭痛」「手足のしびれ」「めまい」「吐き気」などがあります。周囲から気づくとしたら「顔色の異常(蒼白だったり逆に赤くほてっていたり)」や「パフォーマンスの低下」、そして最終的には「座り込んで動けない」などがあります。いずれも、前提条件として暑い環境のなかに長くいた、または長くいなくても短時間でも激しい運動をしたがポイントになります。
熱中症になったら
すべきことは?
熱中症の疑いがあるときは、まずは下記のチェックを行い、適切な処置を行いましょう。
からだの冷やし方のポイントは?
からだの表面近くに太い静脈がある首、腋の下、太ももを集中的に冷やすことです。保冷剤や氷枕(なければ自販機で買った冷えたペットボトルやコンビニで買ってきたビニール袋入りのかち割り氷を)タオルでくるんで当てましょう。濡れタオルを衣服の外に出ているからだにあて、扇風機やうちわ等で風を当てて水を蒸発させ、からだを冷やす方法もあります。また、熱が出た時に額に市販のジェルタイプのシートを貼っているお子さんをよく見かけますが、残念ながらからだを冷やす効果はありませんので、熱中症の治療には効果はありません。
また、水が飲める場合に、冷やした水分を摂らせることは、体内からからだを冷やすとともに水分補給にもなり一石二鳥です。
応急処置のキーワードは「FIRE」!
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【 F 】(Fluid)→ 水分補給
自力で水分を飲めるなら、しっかりと水分補給をしましょう。大量に汗をかいていたら、経口補水液やスポーツドリンクなど塩分を含むものを選びましょう。自力で飲めない場合は、無理に飲ませることはせずに、救急車を呼びましょう。
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【 I 】(Icing)→ 冷却
からだの表面近くに太い静脈がある首、腋の下、太ももを、保冷剤や氷枕、冷えたペットボトルやかち割り氷の入ったビニール袋などをしっかり当てて集中的に冷やしましょう。濡れたタオルを体表にあて、扇風機やうちわなどを使い、水を蒸発させることでからだを冷やす方法もあります。
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【 R 】(Rest)→ 安静
ベルトやボタン、ネクタイなど、からだを締めつけているものをゆるめ、症状が治るまで涼しいところで安静にしておきましょう。木陰ではなく、できるだけ冷房がきいた室内に移動することをおすすめします。
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【 E 】(Emergency)→ 119番
水が飲めない、返事がないなど、意識がもうろうとしていたら救急車を呼びましょう。救急車が到着するまでの間、体を冷やしながら注意深く様子を見守り、救急隊員に経過や状況を伝えます。
熱中症の予防に
大切なことは?
熱中症にならないためには予防が大切です。
キーワードの「HEAT」を覚えて、日頃から対策をしましょう。
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【 H 】(Health Care)→ 健康増進
ラジオ体操や散歩など適度な運動を心がけましょう。三度の食事はバランスよくしっかりと取りましょう。高齢者は体温・血圧・心拍数・体重などを毎日記録して体調管理を行いましょう。
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【 E 】(Environment)→ 環境
生活環境と社会環境のふたつの環境を整えましょう。涼しい環境を整えることはもちろん、近所付き合いなど周囲の人との積極的な交流も大切にしましょう。緊急時の早期発見にも役立ちます。
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【 A 】(Alert)→ アラート
毎日「熱中症警戒アラート」をチェックしましょう。熱中症警戒アラートが発令されたら、外出を控える、エアコンをつけるなどしましょう。
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【 T 】(Treatment)→ トリートメント
高血圧・心不全・糖尿病・腎臓病などの持病がある人は熱中症のリスクが高まります。しっかり治療しておきましょう。
熱中症に関する詳しい説明は、熱中症ポータルサイトもあわせてご覧ください。 https://www.wbgt.env.go.jp/
「熱中症警戒アラート」
が発表されたら
令和3年より全国を対象に運用を開始した、
「熱中症警戒アラート」をご存知ですか?
熱中症の危険性が極めて高い
暑熱環境になると予想される日の前日夕方、
または当日早朝に都道府県ごとに発表され、
情報はテレビや防災無線、
SNSを通じて発信されます。
熱中症の予防のために重要な情報ですので
日頃から活用し、
アラートが発表されているときは
熱中症の予防行動を積極的にとりましょう。
予防の実践 ①
熱中症予防の
ための知識
最近ニュースなどでよく耳にする用語を知り、
熱中症予防の知識を身につけましょう!
熱中症を防ぐ!
知っておきたい用語集
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KEYWORD_1
熱中症警戒
アラート環境省と気象庁によって熱中症の危険性が極めて高くなると予測された際に、危険な暑さへの注意を呼びかけ、熱中症予防行動を促すものです。従来の気象庁からの高温注意情報に代わって発表されます。
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KEYWORD_2
暑さ指数
(WBGT)「暑さ指数(WBGT)」は、Wet-Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)の略称で、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱(ふくしゃねつ)」などをもとに算出される値で、「熱中症警戒アラート」は、この予測値を使って発表されます。
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KEYWORD_3
暑熱順化
(しょねつじゅんか)「暑熱順化(しょねつじゅんか)」とは、からだが暑さに慣れることです。暑い日が続くとからだは次第に暑さに慣れて、暑さに強くなります。暑さに慣れていないと熱中症になる危険性が高くなるので「暑熱順化」は熱中症予防において重要な対策です。実際に気温が上がる前に、日常生活の中で、運動や入浴をすることで、汗をかき、からだを暑さに慣れさせましょう。なお、暑熱順化には個人差もありますが、数日から2週間程度かかります。余裕をもった備えが大切です。
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KEYWORD_4
クーリングシェルター
暑さをしのぐ場として、地方自治体や民間事業者が提供する冷房設備を有する施設(公民館、図書館、ショッピングセンター等)。地域によっては、涼みどころやクールシェアスポットなど様々な呼び方があります。お住まいの地域にて提供されているクーリングシェルターを確認いただき、お気軽にご利用してください。
予防の実践 ②
熱中症警戒アラート
発表時の行動
日頃からお住まいの地域の暑さ指数や
熱中症警戒アラート発表状況を
確認することは重要です。
実際に「熱中症警戒アラート」が発表されたら、
どんな対策をしたらよいのでしょうか?
すぐに誰でもできる3つの行動を紹介します。
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ACTION_1
適切にエアコンを
使用しましょう!熱中症は屋内で多く発生しています。「熱中症警戒アラート」が発表されたら、エアコンを適切に利用し、涼しい環境で過ごしましょう。
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ACTION_2
のどが渇く前に水分を。
汗をかいたら塩分も
摂取しましょう!1日のなかで積極的に水分を取るタイミングを決めるなど、普段よりも意識して、水分補給をしましょう。運動や肉体労働などで大量に汗をかいた際には塩分の摂取もしましょう。
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ACTION_3
家族や身の回りの
人同士で、
声を
かけ合いましょう!子どもや高齢者には意識して注意喚起をしてあげましょう。高齢者は暑さを感じにくく、体温調整能力が働きづらいなど熱中症により注意が必要です。熱中症警戒アラートの活用や、エアコンの利用など見守り・声がけを行いましょう。また、子どもは体温調節能力の発達が十分でないなど、熱中症のリスクが高くなります。そのため、積極的に水分補給を勧めるなど、熱中症予防のための配慮をしましょう。
まとめ
熱中症を正しく理解し、
予防と対策を!
- ▶ 温暖化の影響で年々平均気温が上がり、熱中症死亡者数も増加の推移を辿っています。高温リスクが増加するなかで、誰もが熱中症になる危険性があり、油断は大敵です。
- ▶ 熱中症は「環境」「からだ」「行動」の3つの要因により、体温の上昇と調整機能のバランスが崩れることで発生します。高齢者や子どもは特に注意が必要です。
- ▶ 熱中症のキーワード、応急処置は「FIRE」、予防は「HEAT」
(三宅先生による)
【 F 】(Fluid)→ 水分補給
【 I 】(Icing)→ 冷却
【 R 】(Rest)→ 安静
【 E 】(Emergency)→ 119番
【 H 】(Health Care)→ 健康増進
【 E 】(Environment)→ 環境
【 A 】(Alert)→ アラート
(「熱中症警戒アラート」)
【 T 】(Treatment)→
トリートメント(治療) - ▶ 熱中症についてよく知り、暑さ指数や「熱中症警戒アラート」を活用しましょう。「熱中症警戒アラート」が発表されたら「エアコンを適切に利用する」「のどが渇く前にこまめに水分・塩分を補給」「高齢者・子どもへの声かけ」といった行動を心がけましょう。