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今月のキーワード 復興再生利用
ポイント!
2011年3月11日に、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生してから15年。福島県では環境再生に向けた取り組みが着実に進んでいます。その中でも、今後の重要な取り組みのひとつとして、除染作業によって生じた大量の除去土壌のうち、資材として安全に活用できるものを公共事業などで活用する「復興再生利用」があります。
1. 環境再生へのあゆみから生まれた、東京ドーム約11杯分の土
2011年、東日本大震災にともなって東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生して以来、世界的にも前例のない規模で環境再生に向けた取り組みが進められ、除染作業などによって環境中の放射線量は大幅に低減しました。
しかし環境再生へのあゆみはまだ道半ばであり、帰還困難区域の除染作業も継続して行われています。除染作業によって県内各地で生じた東京ドーム約11杯分の除去土壌は、福島県の大熊町と双葉町に設置されている中間貯蔵施設に集められ、一時的に貯蔵・保管されています。この中間貯蔵施設は、原発事故による影響が国内でもっとも深刻であった福島の皆様に、これ以上の負担が生じないよう、保管開始から30年以内に福島県外で除去土壌の最終処分をする約束の下で、地元住民の皆様の大変重い決断で受け入れていただいた経緯があります。その約束を果たすには、最終処分する除去土壌の量をできるだけ減らす復興再生利用が鍵となります。
2. 放射線の影響は大丈夫?
宇宙から、そして大地から受ける自然放射線や、食物や空気中のラドンといった自然由来の放射性物質から受ける放射線など、放射線は身の回りに存在します。日本では日常生活の中でも年間2.1ミリシーベルト※1を浴びる(被ばくする)とされています。また、胃のX線検診などの医療被ばくによる平均被ばく線量は、年間2.6ミリシーベルトと推定されています。一般の人々の健康を守るために、これらに追加して被ばくする線量について、国際的な安全基準ではICRP(国際放射線防護委員会)が勧告する、年間で1ミリシーベルトまでとされています。
現在、中間貯蔵施設に保管されている除去土壌の約4分の3は、放射能濃度が基準以下のものです。この基準は1kgあたり8,000ベクレル※1で、この数値以下の土であれば、最も影響を受ける埋め立ての作業者であっても、年間1ミリシーベルト以下の被ばく量となることが確認できており、国際的な安全基準に合致しています。こうした基準に従い資材として安全に活用できる、1kgあたり8,000ベクレル以下の土壌を復興再生土と呼んでいます。
※1 シーベルトは放射線による人への影響を表す単位、ベクレルは放射性物質が放射線を発する能力(放射能)の強さを表す単位です。電球に例えると、シーベルトは明るさ(ルクス)、ベクレルは光の強さ(ワット)に当たります。
加えて、復興再生土を利用する際には、飛散・流出防止のための覆土を実施することが復興再生利用の基準で定められています。覆土により、90%以上の放射線が遮へいされることから、周辺住民や土地利用者への追加被ばく線量はさらに小さくなり、放射線による人体への影響は無視できるレベルになります。
また、放射性物質であるセシウムは、一度土壌に付着すると剥がれにくい性質があります。そのため雨水が浸透しても溶け出さず、地下水などへの問題は生じないという知見も、実証事業などから得られています。
安全性や具体的な管理方法を検証するため、福島県飯舘村の長泥地区や中間貯蔵施設などで除去土壌を用いた実証事業を実施し、施工前後の空間線量率の測定や、地下水の放射性セシウム濃度の測定などを行い、放射線に関する安全性を確認しています。
3. 首相官邸や中央官庁でも活用がスタート
中間貯蔵施設は除去土壌などの最終処分場ではなく、あくまでも一時的に貯蔵・保管するための場所です。2045年3月までの福島県外での最終処分を実現するため、最終処分量を減らす復興再生利用が鍵となっています。政府が率先して復興再生利用の事例を創出するために、2025年には首相官邸の前庭や中央官庁の花壇などで復興再生利用を実施しました。モニタリングの結果、放射線量の人体への影響は無視できるレベルでした。
東日本大震災から15年。福島の復興は大きく前進しましたが、環境再生事業を進展させるには今後も全国の皆様のご協力が欠かせません。復興再生利用もそのひとつです。まずはこの取り組みについて知り、考えることから始めてみませんか。
原稿/久保寺潤子
イラスト/丹下京子