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ESGファイナンス・
アワード・ジャパン
1.ESGとは
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を組み合わせた言葉で、投資活動や経営・事業活動において「環境課題の解決」「社会への貢献」「コーポレート・ガバナンス(=企業統治、公正かつ健全な企業活動のための仕組み)」の3つが揃っていることを示します。投資者に対して投資先のESGへの取り組みを評価し、ESGに向けた課題解決を促すことを求める国連・責任投資原則(PRI)が2006年当時のアナン国連事務総長によって提唱されました。このPRIは、ESG課題と金融業界の関係に光をあて、安定的で持続可能な金融システム構築に寄与することで、20世紀までの大量生産や環境負荷の高い物質の使用によって発生したさまざまな環境問題を反省し、持続可能な社会の実現への貢献を目指すものです。このPRIによってESGの考え方は世界へと広まっていきました。
2.ESGファイナンス・アワード・ジャパン
環境省では、金融機関や企業による優れた組織や先進的な取り組み、他の模範となるような取り組みなどを評価・表彰し、広く社会に共有することにより、ESG金融のさらなる普及・拡大と、その質の向上につなげることを目的として、2019年よりESGファイナンス・アワード・ジャパンという表彰制度を実施しています。2023年度には5回目が開催され、2024年2月19日(月)に各賞の授与が行われました。
3.受賞企業の紹介
第5回ESGファイナンス・アワード・ジャパンで金賞を受賞した企業のうち、事業活動や金融支援を通じてESGを普及する2社の取り組みをご紹介します。
飲料メーカーなどを傘下に持つキリンホールディングス株式会社では、製品を作ってから流通するまでに資源をどの程度使用し、温室効果ガスやごみ、工業排水を出しているかを詳細に開示しています。水質汚濁が発生したり農産物の収穫量が落ちたりするなどの影響を数値でわかりやすく示した上で、水資源や飲料の原材料となる作物の生産量を上げるために水源地や農地を保護する活動を進めています。人権の面においても、農園などの原材料を生産している団体の労働状況を調査して、見つかった課題の解決に向けてコミュニケーションを図るなどして改善へ働きかけています。
金融機関の株式会社三菱UFJ銀行は、企業の脱炭素に向けた中長期的な計画を支援するトランジション・ファイナンスを推進し、ESGファイナンス市場全体の発展に取り組んでいます。また、2022年より「MUFGトランジション白書」を発刊し、日本のカーボンニュートラルの方向性や必要とされる取り組みを世界に向けて発信しています。さらに、国内外の企業に対して情報提供や各種支援を行いながら、さまざまな分野における再生可能エネルギーの導入やカーボンニュートラル実現に向けたサポートを行っています。これらの取り組みを通じて、日本およびアジアを中心に、それぞれの環境に根差した資金調達の枠組みの構築に注力しています。
その他多くの企業が、それぞれの領域でESGの取り組みを精力的に行っています。ESGファイナンス・アワード・ジャパンの受賞リストにある団体名や、普段から触れることが多い金融機関・企業のESGへの取り組みを検索して、理解を深めてみてください。
イラスト/丹下京子