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[キーワード]砂漠化、指標植物、生理生態特性、土壌環境、北東アジア

[G-2 北東アジアにおける砂漠化アセスメント及び早期警戒体制(EWS)構築のためのパイロットスタディ]

(3)土壌・植生・水文解析による土地脆弱性の評価

2)植物の生理生態特性に基づく土壌劣化の評価[PDF](897KB)

  独立行政法人 国立環境研究所
  アジア自然共生研究グループ


陳 利軍・清水英幸

<研究協力者>

 

  独立行政法人 国立環境研究所

小林祥子・矢ヶ崎泰海

  中国科学院植物研究所

鄭 元潤

  中国環境科学研究院

于 云江

  北京師範大学資源学院

邱 国玉

  モンゴル農業大学

Undarmaa Jamsran

  [平成16~18年度合計予算額]  7,551千円(うち、平成18年度予算額 2,474千円)

[要旨]

  砂漠化地域に生育する主要植物種の土壌劣化に対する生理生態特性を実験的に解析し、砂漠化の指標と基準を設定する際の基盤情報と、各地域に適切な砂漠化回復植物種の提示を目的として実施した。中国内蒙古ホルチン沙地の7種(Agropyron cristatum、Artemisia halodendron、Caragana korshinskii、Caragana microphylla、Clinelymus dahuricus、Medicago sativa、Melilotus suaveolens)、モンゴル国セレンゲ県カラガナステップの2種(A. cristatum、C. microphylla)を植物材料として、温度、光、水分に対する発芽反応と土壌中の水分含量と窒素含量の生長に対する影響を解析した。A. cristatum、A. halodendron、C. korshinskii、M. suaveolensは温度上昇によって発芽率が抑制され、35/25℃(明/暗)処理では有意な影響が認められた。多くの種は光強度の増加に伴い最終発芽率および発芽速度は減少した。1000micro mol m-2s-1処理で、A. cristatum、A. halodendron、C. korshinskii、C. microphylla、C. dahuricusの発芽率は著しく低下し、種子発芽には砂の被覆が必要と思われた。多くの種では水ストレス増加に伴い発芽率が減少したが、A. cristatum、M. sativaは処理した水ポテンシャル(0~-2.0 MPa)でほぼ一定の発芽率を示した。多くの種は土壌水分欠乏に伴い葉面積や乾重量が低下し、特にA. cristatum、C. dahuricus、M. suaveolensの個体乾重は、-25.2 kPa処理で、-2.6~-3.4 KPa処理の50%以下を示した。C. microphyllaは-2.6~-25.2 KPaで、ほぼ一定の葉面積を維持した。地上部/地下部(S/R)比は多くの種で処理による差が少なかった。多くの種で窒素欠乏により、葉面積、乾重量、S/R比の低下傾向が認められたが、0~0.625 mg l-1処理間ではほとんど差がなかった。なお、産地が異なるA. cristatum、C. microphyllaの実験から、発芽率には若干の生態種間差が認められたが、生長には顕著な差は認められなかった。本研究成果は砂漠化評価・対策の基盤データとなり、また生態系モデル構築にも利用された。