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[キーワード]京都議定書、第一約束期間、炭素吸収、3条3項、3条4項

[B-60 京都議定書吸収源としての森林機能評価に関する研究]

(1)森林の炭素吸収量計測システム・評価モデルの開発

6)国レベル森林吸収量評価モデルの開発[PDF](709KB)

  早稲田大学人間科学部

天野正博

  東京大学大学院農学生命科学研究科 助手

広嶋卓也

<研究協力者>

 

  東京大学大学院農学生命科学研究科 大学院生

中島 徹

  [平成14~18年度合計予算額]  79,322千円(うち、平成18年度予算額 16,109千円)

[要旨]

  本研究の目的は、補助金、伐採量などの変動を見込んだ政策シナリオに応じて、2008~12年の第一約束期間に、京都議定書3条3項(AR・D林)および4項(FM林)に定められた人工林が、どの程度の炭素吸収を達成できるかを、国レベルで予測することである。はじめに森林と他の土地利用との間の転入・転出面積、育林補助金予算額、林業労働者平均賃金などの因子に対して、過去の傾向をもとにいくつかのシナリオを作成し、それらを回帰モデルへ入力して、第一約束期間までのAR・DおよびFM人工林面積を予測した。つぎにそれら人工林面積を資源管理モデルへ入力し、別途、第一約束期間の伐採量を予測することにより、第一約束期間期首および期末のAR・DおよびFM人工林における地上部、地下部バイオマス量を計算した。さらにそれらに容積密度、炭素含有率を乗じて炭素蓄積量に換算し、最後にそれらの第一約束期間期首、期末の差をとって、蓄積変化法により炭素吸収量を計算した。計算の結果、転入・転出面積の過去の傾向を延長すると、第一約束期間のAR・D林地上部・地下部バイオマスの炭素吸収量は、約0.76Mt-C/年の排出と予測された(1Mt-C=1,000,000t-C)。また補助金や労賃といった林業活動に影響を与える因子が、若干の変動を含みつつも概ね過去の傾向を延長する形で推移したならば、FM人工林は第一約束期間に11.55~12.26 Mt-C/年の吸収量を獲得できると予測された。これはマラケシュ合意で上限を定められた炭素吸収目標値の約85%に相当し、FM天然林の吸収量を加味すれば吸収目標を達成する上で十分な量といえる。なお参考までに、2012年時に収量比数が0.85以下のFM人工林は、FM人工林全体の82%と予測され、10.40~10.81Mt-C/年の吸収量を第一約束期間に獲得できると予測された。これは炭素吸収目標値の約75%に相当し、この場合にはFM天然林の吸収量を十分に活用するとともに、第一約束期間終了まで、十分な育林補助金を計上すること、および壮齢~高齢の森林へ間伐や複層伐といった育林施業を実施する必要があろう。