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[H−3 サヘル農家の脆弱性と土壌劣化の関係解明および政策支援の考察]

(1)環境変動に対する農家家計の脆弱性の評価

農林水産省農林水産政策研究所

 

 国際政策部 アジアアフリカ研究室

櫻井武司

独立行政法人 国際農林水産業研究センター    

 

 国際情報部

内田 諭

 

[平成15〜17年度合計予算額]

 平成l5〜17年度合計予算額 17,388千円
 (うち、平成17年度予算額 4,359千円)

[要旨]

  西アフリカのサハラ砂漠南縁の内陸国ブルキナ・ファソを取り上げ、隣国のコートジボワールで発生した内乱(コートジボワール危機)が農家家計を一時的な貧困状態に陥れ、それが土壌劣化・砂漠化を引き起こす可能性について検討した。分析には、危機発生前と発生後に調査した農家家計レベルのデータを用いる。まず、危機はブルキナ・ファソで帰村者による家計サイズの増大と送金受け取りの減少を引き起こしていることを確認した。そのいずれもが耕作面積の拡大を招いている。分析の結果、家計サイズの増加は一人当たり0.32ヘクタール、送金受け取りの減少は100,000セーファー(約2万円)当たり1.91ヘクタールの耕作面積の拡大を引き起こすことが判明した。地域的には、送金受け取りの減少はギニア・サバナ地帯南部で、家計サイズの増大はスーダン・サバナ地帯北部で顕著に見られ、それらの地域における耕地拡大の影響が懸念される。一方、農家は減少した収入を補うために家畜を売却しており、ギニア・サバナ地帯南部とスーダン・サバナ地帯南部で家畜保有額の減少が起こっている。家畜保有額の減少は、100,000セーファー当たり0.31ヘクタールの耕作面積の拡大を引き起こすため、これらの地帯では、家畜の減少によっても耕作面積の拡大が起きている可能性がある。平均値でみると、家計当たりの化学肥料と厩堆肥の投入量はショックの後に増えている。そのため、農家の耕作面積は拡大しているものの、ヘクタール当たりの肥料投入量は危機の前後で同じ程度に保たれていた。しかし、家畜の減少が顕著なスーダン・サバナ地帯南部では、家畜保有額と単位面積当たりの堆肥投入量に有意な正の相関が見いだされ、家畜の減少により堆肥投入割合が低下していることがわかった。すなわち、スーダン・サバナ地帯南部では、家畜の減少が耕作面積の拡大と堆肥投入の減少を同時に引き起こしている。したがって、同地帯では危機に起因する土壌劣化が生じる可能性がある。本研究により、同地帯に対して選択的な政策支援をする必要があることが明らかになった。

[キーワード]

 サヘル、砂漠化、土壌劣化、貧困、ショック