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[F−1 野生生物の生息適地からみた生物多様性評価手法の研究]

(2)動物群集にとっての生息地の評価手法の開発に関する研究

独立行政法人国立環境研究所

 

 生物多様性研究プロジェクト プロジェクトリーダー

椿 宜高

 生物多様性研究プロジェクト 生物個体群研究チーム    

辻 宣行

 <研究協力者>国立環境研究所 生物多様性プロジェクト

竹中 明夫

 

[平成15〜17年度合計予算額]

 平成l5〜17年度合計予算額 22,007千円
 (うち、平成17年度予算額 7,658千円)

[要旨]

  自然環境保全基礎調査(1998)の植生データをもとに2次メッシュに含まれる植生タイプの割合を計算し、動物分布との対応関係を解析した。自然環境保全基礎調査における動物分布情報は2次メッシュ単位の生息情報が公開されている。ここでは、国土の主要四島に生息するトンボ全種の分布情報を用いた解析を行った.自然環境保全基礎調査のデータにはかなりの質的な不均一性があり、そのままでは解析が困難であったが、生物種の在/不在データが信頼できるグリッドを抽出する方法を開発することができた結果、生息要因の検出力が格段に高まった。これまでは、2次メッシュ単位の環境データと動物分布データの対応関係からは、これまでは種の分布と気温条件との関係しか検出できなかったが、植生被覆との有意な関係が検出できる場合がかなり多くなった。その結果、トンボでは解析前の予想よりも、はるかに多くの種が森林、それもスギヒノキなどの針葉樹植林ではなく広葉樹林に依存していることが明らかになった。また、水田や湿地に依存する種も少なくないが、森林の場合は必要とする面積が大きく、湿地の場合は小面積でも生息地が確保されることも示唆された。正確な生物分布が分かると、次にどの場所を保全すれば良いのかという問題を考える事が出来る。ある地域が幾つかの小区画に分割されているとする。地域に存在する全種を含む区画の組み合わせ(全種表現組み合わせ)より保全の優先度(置換不能度)が計算できるが、全種表現組み合わせを求めるためには、計算時間が長い事が指摘されている。我々は計算効率の高いアルゴリズムを考案した。これは、最も効率の良い区画の組み合わせを選び出す(最小の区画数の組み合わせで、地域生物全種を、生物1種につき最低1か所の区画で表す)ものである。ところが実際の保全区画決定のためには、1種最低2区画、3区画などの条件や、選ばれた区画がなるべくまとまっていた方が保全をやりやすい等の空間的条件もあろう。これらの複数の条件を同時に満足する解を厳密に求めるのではなく、複数の準最適解を手早く求め、その中から他の条件を満たす最も良い解を求める実用的計算手順を提案する。全ての条件を同時に満足する厳密解の計算には、しばしば非現実的な計算時間がかかるからである。

[キーワード]

 自然環境保全基礎調査、トンボ、ハビタットモデル、置換不能度、保護区選択アルゴリズム