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[B‐14 動物プランクトン群集組成の長期変動データに基づく海洋生態系の気候変動応答過程の解明に関する研究]
(4)プランクトン群集構造変動のメカニズム解明とそれに伴う生態系機能変化の評価
独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター
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千葉早苗
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東海大学海洋研究所
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田所和明
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[平成15〜17年度合計予算額]
平成l5〜17年度合計予算額 8,067千円
(うち、平成17年度予算額 2,260千円)
[要旨]
親潮・黒潮及びその混合域の二次生産者及び生物ポンプの担い手として重要な動物プランクト
ンであるカイアシ類群集の変化を過去40年にわたり調べることにより、十年〜数十年規模の気候
変化に対する低次生態系の応答過程が明らかになった。群集構造解析の結果からは、低次生物生
産タイミングのずれといった生物季節的変化に加え、海流の変化にともなう分布域の変化も見い
だされた。生物季節的変化に関しては、70年代半ば〜80年代終盤には寒冬暑夏の影響で生物生産
に適した時季が短かったのに対し、90年以降は逆に暖冬冷夏傾向となり生産時期が長期化した。
春の生物生産のタイミングはアリューシャン低気圧や極渦の勢力変化に伴う冬季の寒冷化・温暖
化によって左右されていたが、夏の生産は冬季とは異なる周期を持つ気候フォーシングに影響を
受けていることが示唆された。また、70年代半ばのアリューシャン低気圧の強化に伴う沿岸親潮
南下と黒潮流量増加の影響により、大型冷水種の分布域が沿岸寄りに南下したと同時に沖合では
小型暖水種の生物量増加が顕著となり、混合域の低次生態系の空間的構造が大きく変化した。メ
ソ動物プランクトン現存量の経年変動を見ると、親潮・混合域共に80年代に顕著な減少が見ら
れた。さらに現存量で主要なNeocalanus属カイアシ類3種について見ると、親潮域ではN. plumchrusの現存量は概ねメソ動物プランクトンと同じパターンで変動していた。一方混合域では
Neocalanusの変動パターンはメソ動物プランクトン現存量とは必ずしも一致しなかった。80年
代のメソ動物プランクトン現存量の減少要因として1)マイワシによるトップダウン制御、2)
18.6年の潮汐混合の強度の変動におよび中層と表層の水の交換の衰退トレンドに伴う栄養塩供給
量の変動が基礎生産量を変動させるといったボトムアップ制御の両面から変動している可能性が
考えられた。本サブテーマの結果から、長期保存されている動物プランクトン標本の詳細解析が、
気候変動と海洋生態系のリンクを解明する上で有用であることが実証された。
[キーワード]
動物プランクトン、気候変動、カイアシ類、生物ポンプ、西部北太平洋