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(2.03MB)

[C―1 北半球における越境大気汚染の解明に関する国際共同研究]

(1)東シベリア及び沿海州地域の大気環境評価に関する研究

独立行政法人国立環境研究所

大気圏環境研究領域

村野健太郎

日本環境衛生センター・酸性雨研究センター

大泉 毅

[平成14〜16年度合計予算額]

 平成l4〜16年度合計予算額 21,053千円
 (うち、平成16年度予算額 7,262千円)

[要旨]

  平成14年度から平成16年度に、欧州からアジア地域への長距離越境大気汚染の評価において
重要な位置にある東シベリアおよび沿海州地域の大気環境を把握するため、同地域で湿性沈着お
よび大気中ガス・粒子濃度の通年観測、移流指標物質として環境試料中の水銀と鉛濃度、さらに
鉛同位体比の測定を行った。東シベリアおよび沿海州地域における降水中主要酸性成分は硫酸で
あり、その濃度は日本や欧米より高いが、降水量の少ないことを反映して沈着量は他地域と同程
度か少ない。一方、塩基性成分濃度は他地域と同程度か高く、これらによる中和作用が他の地域
より大きいために降水pHは比較的高い値を示すと考えられる。降水中成分の濃度と沈着量の季
節変動は地点および成分によって違いが見られるが、硫酸イオン、アンモニウムイオンおよび水
素イオンについては夏季に沈着量が多い。大気中の主要な酸性成分は二酸化硫黄と硫酸エアロゾ
ル、塩基性成分はアンモニアとアンモニウムエアロゾルであり、二酸化硫黄は冬季に、アンモニ
アは夏季に高濃度を示す。これらの成分の年平均濃度は、沿海州地点のアンモニアを除き日本の
低濃度地点と同程度かそれよりも低いが、インファレンシャル法によって求めたこれら成分の乾
性沈着量の湿性沈着量に対する割合は、降水量の少ないことを反映して日本における見積もりよ
りも高い。積雪の鉛同位体比は、日本における観測結果を強く支持する測定値を示し、同地域と
日本の大気環境が密接に連携していることが確認された。さらに、同地域の清浄地点であるモン
ディにおける流跡線の解析から、二酸化硫黄濃度の高い冬季には欧州からの汚染気塊は約3日で
同地点に到達し、さらに日本までは約3日で到達する可能性があることが明らかとなった。これ
らの観測結果および解析手法は、東アジア酸性雨モニタリングネットワークのデータ解析にも活
用できると考えられる。

[キーワード]

 東シベリア、沿海州、大気環境、湿性沈着、長距離越境大気汚染