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[D−2 有害化学物質による地球規模の海洋汚染評価手法の構築に関する研究]

(3)有害化学物質の地球規模での時空間変動機構および分解過程に関する研究


独立行政法人国立環境研究所

 化学環境研究領域動態化学研究室

功刀正行・原島 省

愛媛大学沿岸環境科学研究センター

田辺信介・岩田久人

東京薬科大学生命化学部

藤原祺多夫・熊田英峰


[合計予算額]

 平成12〜14年度合計予算額 62,381千円
 (平成14年度予算額 23,014千円)

[要旨]

 有害化学物質による地球規模海洋汚染の動態を把握するために、日本−ペルシャ湾間、日本−オーストラリア東岸間の太平洋における観測を実施した。日本−ペルシャ湾間における観測結果は、広範な海域においてβ-HCHが検出されたが、太平洋においても全ての観測地点からβ-HCHが検出された。一方、日本−ペルシャ湾間ではαおよびγ-HCHは一部の海域からのみ検出されたが、太平洋では両異性体とも全ての海域から低濃度であるが検出された。さらに、初年度は固相抽出剤のバックグランドが高く明確でなかったt-クロルデンおよびt-ノナクロルが、2年度の観測結果から極めて低濃度ながら太平洋海域の全観測地点から検出された。β-HCHは、ペルシャ湾航路においては陸域に近い海域で高く、海洋の中央付近では少なくなる傾向が観測された。また太平洋海域では極めて特徴的なパターンを示し、日本(大陸)から遠ざかるにつれ、濃度は漸減し、赤道付近でほぼ極小となり、以後オーストラリア沿岸域まで低い状態が継続する傾向が見られた。しかしながら、最終年度に実施した連続観測では、北半球より南半球の方がβ-HCHが高いときもあり、大気や海流との関係により変動していることが示唆された。さらに外洋域から100〜300pg/Lのparental PAHが検出されており、種々の化学物質が広域に拡散していることを伺わせる。PCB類は本観測においては、通水総量の不足(感度不足)および固相抽出剤のブランクなどにより検出ず、これらに対応するためにはより総通水量を増やせる固相抽出剤と洗浄法の開発が必要である。一方、PAHの光分解は海水中で最も早く、NaCl溶液よりも早いことから海水中のNaCl以外の共存物質が分解を促進していることが明らかになった。沿岸域では諸条件によりこれらの有害化学物質は複雑な動態を示すが、外洋域においても変動が見られ、太平洋の南北間の観測は短期に異なる季節変動を捉えることができ、化学物質の起源および動態を解析する上で極めて貴重な情報を提供することが明らかとなった。


[キーワード]

 有害化学物質、時空間変動機構、動態解析、POPs、光分解機構