地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ調査
エネルギー供給WG(第3回) 議事概要
- 1.日時:
- 平成22年2月10日(水) 15:00~18:00
- 2.場所:
- 大手町・JAビル3F 301(A+B) 会議室
- 3.出席委員:
- 大塚座長、芦田委員、飯田委員、荻本委員、倉阪委員、斉藤委員、谷口委員
- 4.議題
- (1)前回議事概要の確認
(2)再生可能エネルギーの大量導入に向けた系統対策の在り方
(3)火力発電の低炭素化の取り組みの在り方
(4)再生可能エネルギーの導入見込み量の試算結果(案)
- 5.議事概要
(1)前回議事録の確認
修正すべき点を事務局に連絡するよう依頼があった。
(2)再生可能エネルギーの大量導入に向けた系統対策の在り方
資料2について説明
(質疑)
- 系統に関する検討はどのスケール(国、都道府県、地域スケール等)で行うのか。
→現時点では特に固定していない。(事務局)
- 系統に関して、スケールの議論は意味がない。既存の電力系統でどう対応するかが問題であり、つなぐ地域とその地域でとり得る対策の検討が重要。系統対策についてはコストカーブを考慮する必要があり、系統対策のコストカーブと照らし合わせた再生可能エネルギーの導入量を議論することが重要。なお、地域と導入量によって必要な系統対策はほぼ決まってくる。
- 再生可能エネルギーの導入量により、系統対策に係る追加費用は決まってくる。
→第4回WGに向けて対応を検討する。(事務局)
- とり得る対策については資料中に挙げられているものでほぼ網羅されている。
- 系統対策を考えるにあたり、既存の電力システムとの調和を前提とすることに疑問がある。
- 表1の経済性の評価については、現状の化石燃料コストを想定した短期的な評価結果と考える。化石燃料コストが増加することを考えれば長期的には評価が変わる可能性があり、評価の時間軸を明確にすべき。
- 電圧変動は、インバーターの無効電力制御技術で比較的安価に対応可能であるが、インバーターのコストアップにつながるため、規制等がないと普及しない状況。
- 図表4の需給概念図について、曇天日あるいは弱風日が数日続いた場合の対応について言及しておくべき。
→バックアップ用の火力は必要という認識でいる。(事務局)
→火力に限らず、バッテリー等も含めて広く検討するべきである。
- 2次エネルギーの供給安定性も重要だが、1次エネルギーの供給安定性がより重要。
- 再生可能エネルギーの系統の受入可能容量について情報開示が必要。海外と比較して、日本は情報開示が不十分であり、電力会社以外は検証が出来ない状況。
- 蓄電池を含めたPVのグリッドパリティの達成時期が近いこともあり、今後10年間で再生可能エネルギーが自立的に普及する社会になる可能性がある。その場合、再生可能エネルギーの優先接続を原則とすべき。
- 系統対策コストの負担主体について議論することが必要。
- 図表6について、短期的アプローチの自然変動電源の「解列」は、長期的には必要となるが、現状の導入量レベルで特段強調すべき対策ではない。また、需要家側への蓄電池の設置は現実的ではない。
- 優先接続は国によって基準が異なるため、海外事例を確認することが必要。
- 2020年の導入目標量(7900万kW)は、既存の送配電網では対応できない量であり、系統対策のコストカーブを考慮した上で議論することが必要。
- 蓄電池に過剰に期待すべきではなく、時間的観点からも2020年までには難しい。電気自動車への充電については対策オプションとして考え得る。
- 連系点のゆとりは100万kW程度であり、太陽光を数千万kWレベルで入れる場合は、連系点の調整では対応できない。風力については対応可能。
(3)火力発電の低炭素化の取り組みの在り方
資料3について説明
(質疑)
- 石炭火力から天然ガスへの転換として、米国ではシェールガス等の非在来型天然ガスが注目されているが、賦存量は豊富にあっても開発コストがかかるため、EPRの観点から2020年レベルで実用化レベルにはならない。
- CCSは、米国は既存のパイプライン網が充実しているため導入可能性は高いが、日本はパイプラインがないことや、火力発電所と貯留場所との地理的問題等から、導入にあたっての障壁は大きい。CCSのポテンシャルについては経産省資料を参考にすべき。
- バイオマス混焼については、利用可能なバイオマス量が限られていることや安定供給が難しい点等を考慮すべき。
- 日本における石炭火力の低炭素化は石炭ガス化複合発電(IGCC)が本命となると考えられるが、2020年までの導入は難しい。
- 火力は、調整用電源としての必要量という観点から議論することが必要。火力は他電源の残分を補完するものであり、火力以外の電源が増加すれば、自ずと発電量は減少する。したがって、系統全体を最適運用する観点からは、積極的に削減するメリットは小さい。
- 石炭の天然ガス転換について、マレーシア等ではtriple firingプラント(石炭、石油、ガス全てに対応)が導入されている。日本においては既存石炭プラントで天然ガスを使用した場合は効率が落ちるため、プラントの交換が必要。
- 原単位の低炭素化という視点で資料がまとめられているが、火力発電(特に石炭火力)により排出される温室効果ガスの絶対量の削減を前提として系統全体の低炭素化を議論すべき。ガス火力については調整用電源としての有効性を考慮することが必要
- バイオマス混焼について、自身の推計では低炭素化にはほとんど寄与しないレベルであり、項目として挙げることの適切性を検討すべき。
(4)再生可能エネルギーの導入見込み量の試算結果(案)
資料4-1(太陽光発電)について説明
(質疑)
- 厳しい目標数値と考える。優先順位を考慮しながら最終的な導入量を検討していくに当たっては、費用について算出しておくことが必要。
- 施策として義務化は短絡的。投資回収年数を5年にする等検討が必要。
- 7900万kWは、メーカーの生産能力、実際の設置可能面積、購入者数等を考慮すると厳しい目標であり、再考することが必要。
- 投資回収年数は、ビジネス感覚にそぐわない。20年間でIRR8%程度を想定してはどうか。現在検討されている日本版FITでは、投資回収はできても、10年目以降買取りが終わればIRRはマイナスになる。指標として投資回収年数という概念は用いない方がよい。
- 資料P17の表中、発電単価の低減に対して「技術開発支援」が挙げられているが、国内の技術開発によりコストを削減するという視野は狭い。コストは最終的に世界市場の中で決定されていくものであり、技術開発より習熟効果の方が重要。日本においては、普及の障壁をいかに排除するかという議論が重要。
- 家庭に設置する場合は電圧問題が生じるが、工場等に設置する場合は顕在化しにくい。家庭への導入が進み、工場等での導入が進まなかった場合に、電圧問題が顕在化することに留意すべき。
- 投資回収年数の短縮による導入量の増加は、消費者の心理的なものを反映しているのか。
→昨年度の環境省「低炭素社会構築に向けた再生可能エネルギー普及方策検討会」で、アンケート結果を元に投資回収年数と消費者の購買意欲の関数を算出しており、それを用いている。(事務局)
- 家庭でCO2削減するためには太陽エネルギーの活用が最も効率的であり、利益(20年間で初期投資の1.5倍になる程度)が出る仕組みにした上で、導入を義務化してもよいのではないか。
資料4-2(バイオマス発電、バイオマス熱利用(バイオ燃料含む))について説明
(質疑)
- バイオマス技術について紹介。
- > 亜臨界水(超臨界水より温度が低い)を使った、おから、下水汚泥、魚のうろ・あら等のメタン発酵。通常のメタン発酵プロセスの数分の一のコストで済む。
- > 淡路島では下水汚泥から、アミノ酸、りん酸、メタンガスを取り出し、残りを肥料にしている。技術は実用化レベル。
- > バイオマス(ウェット系、ドライ系、プラスチック等)のフィッシャー・トロプシュ(FT)合成による分解技術。
- > 京都ではてんぷら油から製造したバイオディーゼルで市バスを10年間運行している。
- > 木質バイオマスの直接燃焼はもったいない。リグニンとセルロースを取り出して後に燃焼するのがよい。メタン発酵はコストがかかる。
- バイオ燃料について、ブラジルのバイオエタノールはEPRが8を超えているという試算もあり、国内産バイオエタノールEPRの評価は重要。(環境省)
- バイオ燃料については、輸入も積極的に検討すべき。シュガー系バイオエタノールのGHG削減ポテンシャルは大きい。
- 木材の買取価格について、論点としては言及しておくべき。
資料4-3(水力発電)について説明
(質疑)
- 1,000kW以下の小さい容量に限定すべきではない。10,000kW以上でもダム建設の必要のない流れ込み式のものはあり、コストも安いため検討対象とすべき。
- 農業用水や浄水場、下水処理場における発電を考慮すれば、ポテンシャルはさらに大きくなる。
→今後検討したい。(環境省)
- 法定耐用年数は22年だが、設備自体は50年以上の耐久性があり、この点は他の再生可能エネルギーと異なる点として考慮すべき。
- CDMでは中小水力は10,000kW以下が境界になっている。1,000kW以下という定義は日本のRPSに対応させているだけであり、変更すべき。
- 中小水力の持続可能性の判断はダム建設の有無より、本流からの取水量が重要であり、条件として考慮した方がよい。
→ポテンシャル調査では、維持流量についても考慮した上で算出している。(環境省)
- 回避可能原価を考慮しなかった場合の試算結果に興味がある。
→今回の試算は全て回避可能原価を含んでいる。(事務局)
- コスト計算について、落差×流量の説明を入れるべき。
- IRR8%について、法定耐用年数が再生可能エネルギーごとに異なるため、比較に際しては注意が必要。また、発電コスト試算条件における借入金条件(支払い期間15年、金利3%)についても他の再生可能エネルギーと異なるが、合わせる必要があるのではないか。
- 6.その他
- 第4回WGは2月23日(火)9時より、大手町にて開催する。
以上