環境省>地球環境・国際環境協力>地球温暖化対策>地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ検討会
中長期ロードマップ調査 第四回全体検討会
議事録
- 日時:
- 2010年3月19日(金)9:00~12:00
- 場所:
- TKP 大手町カンファレンスセンター WESTホールA
- 出席者(委員):
- 西岡座長、飯田委員、大塚委員、荻本委員、伴委員、藤野委員、増井委員、村上委員、草鹿委員(大聖委員代理)、松橋委員(屋井委員代理)
- 議事:
-
- 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)の検討について
- 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)(案)について
■ 議事
1.議題1 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)の検討について
1-1.資料説明
2.議題2 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)(案)について
2-1.資料説明
- 各WG座長、事務局:資料2 地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(議論のたたき台)(案)について説明
2-2.質疑
(1) 住宅・建築物分野について村上委員より説明
- 伴委員 :住宅や家庭がどういう形でCO2削減に立ち向かうかという話だが、さきほどの説明では、断熱に関するリフォームは高額の費用が必要だが、そのリターンには長い時間が掛かるということだった。もう1つ、これは国立環境研究所が試算している投資回収年がベースになっていると思うが、電気製品は10年で元が取れるので問題ない。断熱は200万円ほど費用を掛けた際、その元手を回収するという考え方より、住宅の価値を上げるという考え方だと思う。10年住み、転売しようと思った場合の再転売価格がいくらになるかを含めてコスト計算した方がよい。投資回収を皆さん知りたがるが、元手を取るのに何十年掛かると書くのではなく、国として住宅の価値を挙げる方向に向かうべきではないか。この点に関する試算もあると望ましい。
- 増井委員:断熱等の波及効果について、素材等の高機能化の視点が欠けている。金額的には非常に大きな市場になるので、積極的に書くことも重要だと思う。もう1点は、建築物の改修ということが、今回のロードマップでは弱いと見える。業務部門の建築物の改修についてどう考えているのか。
- 村上委員:日本社会で断熱気密による建物の価値の向上は認められにくい。ロードマップでも、性能表示と書いたが、評価制度の仕組みを広く普及させ、金額に換算させるのがよい。断熱すれば電気代が減るということは分かるが、健康性も向上し、国全体で見ると効果がある。健康に加え快適や遮音性を金額換算し示すべきだと考え、改修住宅の資産の価値の向上を図っていきたい。増井委員の、素材の断熱化だが、例えば窓も既に機能が成熟しており特出しはしなかった。建築物の改修の話だが、全体的にデータが整備されていないのが難点。伴委員の御提案はひとつの突破口で強く出せるように修正したい。
- 荻本委員:気候・風土の考慮と詳細なデータ収集の方向性は極めてその通りだと思う。しかし、実際にはデータは情報として整備されておらず、多くの人が利用可能な状態ではない。また、機器の性能に、COP5というものがあるが、実際には家には大きな容量の機器が設置され、COPが低い状態で運転されている。色々な視点で検討できる人が揃っていないので、方向性はこれでよいが、基本的データの整備と、データを扱う人を育てることを、同時にやらなければならない。事務局は十分な作戦を立て、この方向に向えるような方法をとってほしい。また、ロードマップのなかに実証やモデル事業があるが、これはお金が掛かる話なので、データ整備や人を育てることが揃ってから取り掛かるべき。
- 飯田委員:次のステージの整合性の話になるが、エネルギー供給分野では再生可能エネルギーの将来的なグリーンオブリゲーションを睨んでいる。だが、住宅・建築物分野では高効率給湯器や太陽熱を十把一絡げに扱い、トップランナーでよいものが普及するというようにアプローチが違っている。再生可能エネルギーのところをうまく入れてほしい。グリーンなものがデフォルトで入るのが将来像だと入れていただき、単純にトップランナーで良いものが広がるということとはアプローチが違うことを書いていただきたい。省エネ基準の義務化の記載はすばらしい。実現するにはヨーロッパ、アメリカのような空気の漏洩調査を含んだ全数検査などの検査体制の整備と、そのための自治体のキャパシティービルディングを含めて実行していただきたい。
- 村上委員:日本は住宅のデータはよいが、建築物のデータがほとんどない。また、小さい家に大きな機器を設置してCOPが低いというのはその通り。既存機器は夏と冬の一番厳しい時期に合わせた大きさで、クレーム防止のための設計思想になっている。情報発信や規制を通じて、これも変えていきたい。飯田委員の御指摘も、需要側の機器と太陽光等の創エネについては、別にしているが、統一できるよう表現方法を整えたい。また、検査体制がしっかりしている国は世界でも少ない。設計段階と運用段階だけでは実効性に限界があり、検査体制を整備していくことは不可欠だと思う。
- 赤井委員:副次的効果の試算は、どういう数字を出しても攻撃される。日本を対象に評価するための日本で取った基礎データは不足しており、海外の基礎データに頼らざるを得ない。しかし、このようなデータでも一つの評価として出てしまいがちなので、扱いは工夫して欲しい。
- 藤野委員:各専門家の方から御検討いただき、具体的になってきたのは価値がある。地球温暖化対策基本法に地球温暖化対策税と排出量取引が入っているが、それぞれのWGでそれらがどのような役割を演じるのか、具体的な検討はされているのか。各WGでの議論や財源、具体的に、誰が何をするのか、どれぐらいの人が必要かについて教えていただきたい。
- 村上委員:建物での評価イメージのグラフは分権等から引用できるデータのみ記載している。副次的効果は、人は体験すれば分かるが、社会としてそれを評価する仕組みが必要で、副次的評価の金額換算が必要だと思う。藤野委員の温暖化対策税と排出量取引の検討は住宅・建築物WGではほとんど行っていないので、来年度のタスクにしたい。地球温暖化税と排出量取引は各WGから人を出すなどして、全委員会的枠組みで取り組むべき来年度最も主要な課題だと考えている。
- 大塚委員:資料2の53、54、55頁のエネルギー供給分野のロードマップには国内排出量取引と地球温暖化対策税の両方について記載している。エネルギー供給分野では再生可能エネルギーの推進や化石燃料需要減少のための基盤になる非常に重要な制度だと認識して検討している。
(2) 自動車分野について草鹿委員より説明、鉄道・船舶・航空分野について事務局より説明
- 伴委員 :資料2、22頁の電池関連ビジネスの確立によるコスト低減(イメージ)についてだが、電池をリース代にするから安くなるという表現は間違っている。本体価格や電池価格はストック費用に相当し、それを何年使うかで利子や減価償却をふくめた年ごとに分けた費用として計算する。今回のリース代がそれにあたる。統計上、国民経済計算、いわゆるGDPの統計のなかで使われている概念でもある。例えば、住宅はストックとして扱われており消費ではない。このとき、持ち家の人は家賃を払っていないが、統計上は家賃を払った形にして処理している。自分が自分に対して払うということだが、統計上大きな額となっている帰属家賃という概念である。資産価値の評価に関しては、不確実性や利子率が関わるが、統計ではストック費用とフロー費用を分けており、、リースにすれば安くなるという言い方だと誤解を招く。
- 赤井委員:質問だが、資料2、18頁に排出量と削減量の数字が出ているが、2005年に2億2,500万t-CO2と置いて、2020年1億3,500~1億4,900万t-CO2となっている。削減効果を見ると、どう見ても3000万t-CO2ちょっとで、1億t-CO2はいかないのでないか。ここには主要な対策とあって、他にもいろいろあるのかもしれないが、数字の見方を教えていただきたい。
- 荻本委員:20頁に自動車の日当たり走行量という表現があり、中型トラックと大型トラック(運送業)があるが、どちらからやるのか。軽乗用車・トラックで短いものからやるのか。自分は、たくさん毎日コンスタントに走る車で量が少なくても対応できるものから、やるべきだと思う。一日何百キロと走るものから電気自動車にはできないが、ただし年間1000キロしか乗らない車に入れてもしてもしょうがない。電気自動車に転換できるちょうど良い走行量が確保できるものからやるという意味であればよいがということが第一点。それから、電池の二次利用ビジネスの可能性の否定はできないが、電池は極めて早いスピードで改良されており、今の電池がこうだからということで、ビジネスで回ると考えられたかもしれないが、5年後にガラッと変わった電池が出ると一瞬で不要になる。大きなリスクがあるということで、今はこういうビジネスが考えられるという風にお考えいただいた方がよい。
- 草鹿委員:伴委員へのコメントは良く分かった。減価償却も含め、リースにした場合は必ずしも安くならないという値段ということで再検討したい。逆に言えば、消費者として購入する部分が必ずしも安くならないという理解でよいか。
- 伴委員 :基本的にはそう。
- 草鹿委員:分かりました。
- 伴委員 :つまり、誰が負担するかで、お金を借りて電池を買うか、自分のキャッシュで買うか、その違いになる。
- 草鹿委員:赤井委員へのコメントだが、排出量の値には電源構成変化の分も含んでいる。走行量の話は、基本的には大型トラックの輸送距離が長いものは具体的方策が難しい。やりやすいものは距離が短いもので、優先順位は高い。電池改良の話はその通りで、明日にも高性能の電池ができるかもしれない。最長で2030年を見たので、それまでには新型電池が出るという予想を持っている。その場合ビジネスが変わる可能性は否めない。
- 事務局 :排出量についての追加情報だが、自動車輸送量が2020年に下がるシナリオになっているため、その分の排出量の減少がある。また、ここに上げている対策は単体対策のみだが、交通量自体の対策も別途検討しており、その削減分もある。この差がこの表に出てきていない。電源構成の変化は電気自動車の部分だけなので、それほど大きな量ではない。
- 大塚委員:経済的手法に関して、自動車関連税制の運用があるが、現在既に自動車関連税制があるので、これを環境税化するのは一つ重要なことになる。しかし、CAFE規制や排出量取引の考えを自動車の分野でも導入することもある。アメリカには既にCAFE規制があるが、そういうのと環境税、自動車関連税制を環境税化するのとどっちが望ましいのか、どっちもやったほうがよいのかの検討は今回のこの分野でやるには難しいかもしれないが問題としてはある。この検討会で検討しなければないと思う。
- 荻本委員:先ほどのコメントへのフォローだが、恐らく日当たり走行量が少ないところからやるのではなく、その時代、時代でバッテリーの容量に限りがあるので、走行量に限りがある。そのため、時代のなかで最大の走行量が望める車種からやればよいのではないか。電池の二次利用ビジネスは、民間が自分でリスクをとってやるのはかまわないが、これを国が支援するのは長い目で見て慎重になっていただきたいということ。魅力的に見えるかもしれないが、リスキーだと思う。
- 草鹿委員:承知した。
(3) 地域づくり分野について松橋委員より説明、農山村地域分野について事務局より説明
- 村上委員:地域で排出量が一番大きいのは民生分野になるが、自治体が指導し、建物群、あるいは建築群、群としての取扱を強化していただきたい。住宅・建築物WGでも取り扱うが、まとまった対応策には自治体が非常に大きな力を持っているので、そのような取組を強化していただけるとありがたい。
- 伴委員 :地方分権を通じて地域づくりのなかで対策をやれと言えば、必ず市の目標計画を作り、それに向かうということになる。しかし、地方分権というが、我々の活動は地域だけでは留まらない。CO2の削減といった場合、石炭火力が多くなったためにCO2が増加している。1995年から近年までのCO2の増加は、石炭火力発電の増加で説明できる。しかし、地方自治体はその部分をコントロールできない。エネルギーの構成について市がコントロールできないとなると、電気を減らすことなるが、地域自治体ができることは限られている。基本的には都市計画などに限定し、地域で何をやるかとしていただきたい。つまり、市レベルでできることとできないことがあり、できることについてやりなさいという方向性が必要。できないことも含めると、例えば、その市に大きな工場があるかないか、発電所があるかないかで変わってしまう。
- 荻本委員:脱炭素化への気運は今急速に高まっているが、それに適応可能な製品はまだ揃っておらず、今後、急速にできてくるだろう。そして、住宅の場合はより優れた製品を組み合わせるとどうなるのかがあと数年で分かってくる。来年のWGでこれをやろうとすると、検討対象がまだ揃っていないのでできないが、自治体や地域で検討する際には段階的にやっていくということを、実行の段階では注意していただきたい。また、34頁に都市未利用熱の最大限の活用とあるが、熱については活用できるものを活用するのは良いことだと思う。しかし、エクセルギーという言葉があり、あったかいものがあれば価値があるというわけではないと専門家の方は良く御存知だと思う。非常にお金と手間の掛かるものなので、本当に価値があるかどうかを判断してやることがこの分野は重要だと思う。
- 松橋委員:それぞれ留意点をいただいた。建物としての対策は自治体主導でやっていくにあたり、建物群としての対策・取組強化はおっしゃる通りだと思う。2点目にできることできないことだが、本質的にできないことは入れるべきではないので十分留意して書きたい。ただ、その上で今できないことでも、分権を進めていく上で市などが対応できる範囲に関しては、分権を通じた計画実行の強化ということで触れていく。このなかで、本質的にできることとできないことが混ざっていかないようにするという留意点をいただいたと思う。3点目に、製品に関して十分技術が固まっていない、或いは時間が掛かるということがあるかと思う。計画に関しても環境面の計画だけ立てても、土地計画や緑地計画もある。他の分野で低炭素といったとき、何ができるのかを精緻に検討したうえで、また全体として温暖化実行計画の見直しをするということで2015年までにかけて計画をやっていく。時間的余裕を持ってやるということを書いてはいるが、そのようにまとめていきたい。また、未利用熱のエクセルギーに関しても、有効なものがあれば優先順位をつけて分かりやすく伝えていきたい。
- 増井委員:地域といえば、日本は気候風土が全く違う。基本的な姿勢なので、ロードマップに書き込む必要はないかもしれないが、気候や人口密度等の違いで対策も違ってくると思うが、どの点がどう検討されていたのか。また、「地域資源」という言葉があったが、ロードマップは誰に対するロードマップなのか。地方自治体職員なのか、住んでいる地域住民かで書き方が変わってくる。地域資源という言葉についても、イメージするものが全く変わってくるので、可能であればブレークダウンしていただきたい。
- 赤井委員:未利用熱の利用だが、34頁にある都市未利用熱(排水、地中熱、下水熱等)利用技術開発の促進を書くと、必ず供給サイドの技術開発の話になるが、熱については多少いい加減でもよいので、年間平均である程度の量が供給されればよいという使い方もある。ベストエフォート型の熱供給という方向の技術があってもよい。いい加減だが、総量や平均でこのくらいということが取引できるとよい。そもそも都市で、熱の取引は不透明な部分がある。また、農村分野だが、人口減少社会における農山村のあり方というのは、農業従事人口が減るということか、総人口が減るということかどちらか。人口減少社会を認め前提とするのであれば子ども手当ては逆行している。農業従事人口が減るということでは、書いてもよいとは思う。ここを超える話になるが、海外の農産物を買いあさるより、国内の農地をどうするか、と考えることが、低炭素社会においても農山村地域の開発や位置づけを明確にするのではないか。
- 松橋委員:増井委員からの気候や人口についての1点目だが、個別には突っ込んだ議論はしていない。委員は地域の専門家なので、多様性を認識しながら議論はしていたが、明確な場合分けはしていない。ただ、話の折で確認し、人口密度を上げるところは地方の中核都市とするなどの但し書きをしている。魅力ある資源に関して、お客さんが住民なのか職員なのか、ブレークダウンした記述が必要だということだが、その記述については深めていきたい。熱利用技術について、ベストエフォート型の熱供給も書いていきたい。
- 事務局 :農山村サブWGからもお答えする、増井委員からの気候等の地域特性についてだが、農山村サブWGでは類型化し検討を進めていた。ロードマップのなかでは、「山村・林業型」、「農業・林業型」、「農村・畜産型」に分けて検討している。ただ、十分に検討の成果は資料には表せていないので、引き続き検討を行う。人口減少社会のあり方については、基本的には日本全体人口を想定している。徐々に人口減少を見込まれるというなかで、農山村を考えるべきだという意見に基づき資料には書いている。
- 西岡座長:既に農山村サブWGの内容に入っているが、サブWGも含めた意見をどうぞ。
- 増井委員:48頁のゼロカーボン地域の定義だが、再生可能エネルギー利用(地域外への供給)でマイナスを表現している。他の地域で使うことでCO2の排出量を減らすことを考えていると思うが、これは農山村サブWGだけの問題ではなく全体として、再生可能エネルギーの計算方法を統一しておくべきだと思う。魅力的な書き方だが、ダブルカウントになる可能性があるので、留意してほしい。
- 飯田委員:地域づくりで、コンパクトシティなどの話は地域でどこでも言われているが、地域の現場を考慮し規制改革や行政改革についても入れていただきたい。同じ意味で、再生可能エネルギーは入れているが、全般にバイオマスによっている。小水力発電をしようと思うと、水利権の問題があったり、洋上風力には漁業権の壁があるとか、地熱開発には自然公園局が頑張って入り口で立ちはだかるなど、際限ない規制、縦割りの壁がある。その当たりもここで書き込んでいただきたい。再生可能エネルギーについてはっきり共通認識を持っていただく必要があるが、例えば、電車の中では話さない、など、携帯電話が10年前にほとんど普及していなかったときにはなかったルールだが、普及すると新たなルールが必要になる。これまでの発電所は、火力にせよ原発にせよ大規模電源がほとんどで、分散型の創エネルギーはごく一部であったので、電力を生み出すことをあまり気にする必要がなかった。だが、小水力は小川があれば誰でも地域合意があれば発電機をおけるというようになれば、ルールが必要になる。風力の三大話としての鳥、低周波、景観は際限なく広がることによる最初の社会的ぶつかりあいの入り口だが、今後ますます大きくなる。再生可能エネルギーには書き込んであるが、今後益々普及するなかで、分散型エネルギーであるが故に、新しいルールが必要だということを農山村にも書き込んでほしいし、その上での規制改革も必要だと思う。
- 荻本委員:幹線熱導管の整備資金の供給はまさに供給側のテーマ、都市未利用熱(廃熱、地中熱、下水熱等)利用技術開発の促進は、可能性はあるかもしれない。ただ、数年前にバイオマスが話題になったが、考えた技術やシステムは良かったが、よく考えたらバイオマスの供給自体が難しかった。そのため、検討した技術は全滅まではいっていないが半滅ぐらいにはなっている。熱も同じことにならないように気をつけていただきたい。
- 村上委員:農山村全般に、低炭素化は日本の国全体にとって良いことだとやや上から目線な気がする。片方で、人は農村を離れて都市に住みたがるので、農村に住む人がもっと魅力に感じられる地域づくりの視点を入れた方が良い。
- 松橋委員:ゼロカーボンに関するダブルカウントの問題は、WG内でも指摘があったので、全体の中での整理をお願いしたい。2点目の縦割りと規制の壁は、分権をしていくことである程度総合的に捉えて、連携できると書けばよいと思っている。ただ、自治体内でも縦割りが実態としてあるので、その部分についても書いていく必要がある。また、規制をどうするのかについては、計画のことでしか述べていないので新しいルールを含め規制を適切に考えるということは重要な指摘だったと思う。未利用熱に関して、需給マップの作成は再生可能エネルギーを中心にした部分にだけ書いてあるので、未利用熱についても、どのくらいの利用可能性があるのかも含め計画を立て、モデル事業を通じた検討をするということが重要ということかと思う。
- 事務局 :農山村サブWGでも、増井委員からのダブルカウントの指摘は、その通りで、現在の式のままではダブルカウントが起こりえる。ただ、農山村地域としてこういうものを目指すというメッセージとして捉えていただきたい。飯田委員からの今後起こりうる紛争防止のルール作りの必要性はその通りなので、記述ぶりの検討をしたい。荻本委員からのバイオマス同様、熱も難航が見込まれるのではないかという指摘や、村上委員からの農山村の魅力の視点も今後反映させたい。
(4) エネルギー供給分野について大塚委員より説明
- 赤井委員:スマートグリッドという言葉が散見されるが、一種のはやり言葉だと思う。しばらく前は、マイクログリッドが流行だったが、最近はとんと聞かない。はやり言葉を書いてよいのか。58頁の参考資料で、化石エネルギーの輸入総額が約23兆円になってしまったことだが、同じことが他のエネルギー源、例えばPVでも起こりうるのではないか。このように書くのであれば、他のエネルギーについても同じように書き、外にいくら流れていくのか、バリューチェーンの評価をしなければないので、バランスを考慮いただきたい。56頁の再生可能エネルギーの普及実績効果で、色々なよいことがあるのは認識している。しかし、EUの雇用の例について、IPCCの再生可能エネルギー特別報告書の会合で話題になったのが、スペインのある大学はスペインの導入施策は間違っていた、雇用は大幅に失われたということを発表した。アメリカも同様にすれば、このぐらい損失するという試算を出した。それに対してアメリカの再生可能エネルギー研究所が反論しているペーパーを出したらしい。そこまで入れ込む必要はなく、また、レポート発信の人たちのバックグラウンドを知っておく必要があるかも知れないが、この点については、論争があるということは知っておいてほしい。
- 伴委員 :同じで、再生可能エネルギーの雇用が何百万人というのは、胡散臭いと思っている。モデルで計算しているが、新エネルギー関係の直接の雇用効果は1万人ほど見込めるが、火力発電所が衰退するのでプラスマイナスゼロというところだと思う。ただ、基本的には他にも波及効果が出るので、最終的には20~26万人ぐらい。100万人を超える数字は私のモデルでは出ない。前提をどうしているのかが重要なので、それを把握しないといけない。オバマ政権の試算方法は今の日本と同じやり方なのだが、私としては反対だ。恐らくスペインの人の方法は私に似ていると思う。あと、枯渇性エネルギーの輸入額が20兆円ぐらい増えているのに、相変わらずそれに目を向けずにちょっとした負担を「負担だ」というのはおかしい。ここでの意味は、化石燃料の輸入を少なくするために、自然エネルギーや原子力を活用しようということだと思う。エネルギー問題はこの検討会の範囲でないようなので、自然エネルギーになるかと思うが、本当に問われているのはエネルギー政策そのものだと思う。ロードマップ検討会としては経済産業省がいるので難しいとは思うが、政府として出してほしい。細かいことだが、太陽光発電の導入について言えば、必ず屋根のない人は損をするとマスコミは書くが、例えば、公共施設の屋根はすべて開放し、やりたい人たちが資金集めて事業を起こせばよい。買取制度をやろうとすると不公平だ言う人がいるので、公共施設の無料開放を打ち出し、そういった意見を先につぶすのがよい。公共施設への導入義務化を言うと、予算がないといわれて皆は納得してしまうが、無料で解放すれば、やりたい人はリスクをとれば屋根のあるなしに関わらず自由に参加できる。大事なのは機会の公平性で、それを担保すればつまらない意見をつぶすことはできる。
- 大塚委員:赤井委員御指摘のところは追加する。伴委員からの御指摘も重要だったので追加したい。
- 事務局 :雇用の試算はお見せしたデータが一面的なところもあるので、前提をきっちり書くということと、一面的だけではない裏返しの部分も事例を拾って書いていきたい。伴委員からいただいた、公共施設の開放の視点は検討していきたい。いずれにせよPVはかなり入れなくてはならないので、必要なこととして書いていきたい。
- 増井委員:56頁にエネルギー供給の副次的効果、新産業の創出で、国内向けのメッセージが書かれているように見える。他の分野にもいえることかもしれないが、これから国際マーケットをどう取り込んでいくのかの視点で展開することができないか。新しい技術は規格化するなども重要で、日本が主導権を握るなどの視点も必要だと思う。2点目は、太陽光発電について、屋根はあるが資金余裕がなく設置できない人が、屋根を貸すという施策も考えられる。
- 飯田委員:来週提案しようと思っているメモを紹介する。消費者関係団体の方と一緒に、再生可能エネルギーや温暖化対策への費用は果たして負担なのか、消費者にとっては消費で環境に影響を与え、更に将来世代にまで影響するという一定の責任があるのか、そして将来への投資なのかという検討をした。最終的には、3つの側面があるという、一定のコンセンサス文章を作ったので来週提案したい。先ほどの、公共施設の屋根だけでなく、メガソーラープロジェクトでも、一般家庭の屋根でも再生可能エネルギーが作る側に事業採算性があるのであれば、オランダのトリオドス銀行のように自然エネルギー銀行が民間からお金を集め、そのリターンを一般の屋根のない人に含め戻していくとまさに環境金融の仕組みができる。きちんとした流れを作れば屋根がないから不公平だという局所的な反論ではない、大きなお金の流れとしてのメリットを視野に入れられるのではないか。一方で、電気料金の負担という意味で、原子力発電と再処理負担金で月に300円ぐらい負担をしている。化石燃料が上昇した2009年には燃料費調整制度で500、600円と電気料金は増加した。横で水平に見たときに電気料金で何を負担し、何を支えているのかの見える化も含め、水平と長期的な時間軸の視点で議論しながら進めていくことが必要。
- 荻本委員:飯田委員の時間軸の視点と同じ意見だが、低炭素化ということが検討会のメインテーマだが、エネルギー供給を考えるには、安定供給の視点が必要になる。カーボンフリーエネルギーである再生可能エネルギーと原子力発電は増出力できないという特色を持っている。1000万kW作ろうと思ったけど、900万kWしかできなくて、他で増やそうと思っても増出力できない。太陽光も、太陽からの光の量は決まっているのでそれ以上できない。もし、計画が甘くなった場合は、エネルギーの供給量が足りなくなるということがすぐに起きるという特色を持っている。ここで原子力も含めカーボンフリーエネルギーをこのようにやればよいという計画を立てるのはよいが、同時にうまくいかないとき、また需要が増えた場合は大丈夫なのかという観点を入れていただきたい。55頁に、発電の建設、運用における低炭素化という言葉があり、地球温暖化対策税とキャップ&トレードが書いてあるが、低炭素を考慮した電源計画はすでに始まっているとなっている。これには疑問だが、この意味は少なくすることだけを考えて、そうでないことがおこれば大変なことになるので、その可能性をぜひ記入してほしい。2020年から電力システムの再構築に応じた火力発電の設備容量・発電量の低減の検討及び実施は本当に見極めて大丈夫だったらやるのは自由だが、これありきでは全くない。世の中全部バランスを考えてやらなくてはならない。飛びついて将来ひどい目にあう。例えば、天然ガスの代金が将来上がった時に、非常にたくさんの天然ガスの代金を払うようなことがあるのか、色々なことを考えなければならない。2点目としてPV、風力についてだが、2年ぐらい前に、2020年に1400万kW、2030年に5300万kWという数字を見た時代とは随分違う時代になったと思う。しかし、今日の値は2020年に3700~5000万kWと、更に数字が増えているがこれは、実現するならよいが、実現しなかった場合どうなるかを御検討いただきたい。たまたま、ネットワークというのが系統に接続できるのかが議論になったが、1400万kWの段階でネットワークに問題があるかということは3月での経済産業省で検討結果が出て、ある程度は大丈夫ということになったが、この委員会では3700万kWから値が始まるので、これはまた足りないのではないかと思う。2020年にどれぐらい入るのか、2030年にどれくらい入るのかに向けて、ネットワークは10年、20年かけて整備していかなければならないが、見込みが間違っていると極めて大きな先行投資をすることになるので、固い数字を出していただきたい。最後に、石炭火力については、悪者にされている。しかし、税金が掛かり、キャップ&トレードに掛かれば、3年も経てば石炭火力も火力発電も勝手に死んでいく。死なないでくれといわれても、経済的に成り立たないものは死んでしまう。おそらく、国レベルで考えることは、自然に死んでいくことを放っておいてよいのか、全体のバランスで考えるときに、どこまで考えるのかが重要だと思う。金の計算だけでなく、危ないか危なくないかそういう不確定性も入れて御検討いただきたい。
- 大塚委員:増井委員からの御指摘はその通りで、日本版スマートグリッドや火力の高効率やCCSについても海外に向けてマーケットを取り込んでいくことをぜひ入れたい。飯田委員の意見御意見もその通りなので取り込みたい。荻本委員の御指摘だが、55頁の発電の建設・運用における低炭素化の表現については考えさせていただきたいが、PVは前回7000万kWぐらいで出していて、それよりかは減らしているが、なおかつ無理だという指摘もあるので、前提を明らかにし、数字の精査をしていきたい。石炭火力も御指摘のような問題はあると思うが、90年代から増えてきているので、この辺については若干の意見の違いがあるかもしれないが、エネルギー安全保障の観点は重要なので、考慮しながらしかしある程度は減らすという方向性は出していきたい。
- 伴委員 :石炭火力は、全滅はないが、3分の2ぐらいにはなると思う。荻本委員は天然ガスが高価と考えられているが、石炭も結構高くなってしまったし、石炭火力は原子力同様あまり出力変動ができない。これを考えたとき、自然エネルギーが多くなってきたら頼るのは変動させやすい天然ガスしかない。世界中がそれを狙っているわけだが、石炭よりも環境の問題には対応できるし、値段に関しても天然ガスだけが暴騰する状況にもない。また、エネルギーセキュリティーの面で石炭が望ましいといつも言われるが、石炭火力のこれ以上の増設は止める政策をとらないと、その負担を将来世代が背負い込むことになる。
- 荻本委員:56頁に風力発電があり、洋上風力の場合は、日本は浅い海がないので、浮体式となるが、それができるかどうか。ここにあるヨーロッパのケースは、浅い海であっても非常にお金が掛かると聞いた。本当にペイするのかには大きな議論が行われている。日本と違い、浅い海で台風が来ないというよい条件のところでもそれだけの問題があって、実はメーカーでは、ここはやりたくないという人もいる。このままのイメージだと、2020年に向かい、洋上風力の技術開発をやるということになるが、やる場合に問題なのは機器メーカーではなく、浮体がどのくらいのコストで作れるかがポイントになる。上の方には問題がなく、下をどこまで安くできるかを検証することが必要になる。
(5) ものづくり分野について事務局より説明
- 藤野委員:現状の課題のところで、我が国の削減努力を国際貢献に結び付けていくというところが謳われているが、12月末に出た新成長戦略でも、国内の技術を使い世界のCO2排出量を12億トン減らすという目標が書かれている。そちらの定量的な試算のトライアルまではできていないが、日本のものづくりがどういうようにアジアや世界に具体的に貢献できていくのかという点については今後議論すべきだと思う。また、今回の検討委員の構成は学術経験者が主で、産業界の方がいないので、ものづくり分野の迫力や実現性についての検討が弱い。4月以降チャンスがあれば深めるための委員会の仕組みを作ってほしい。
- 赤井委員:60頁の対策の目標で、2050年エネルギー消費現状比3割~4割削減とあるが、エネルギー消費とはどういう意味か。最終需要エネルギーなのか、一次消費エネルギーなのか。場合によっては、理想的にいってPVが安く安定したエネルギーを供給するのであれば最終需要はいくらになってもよいという理屈もあり得る。言葉の定義を教えてください。全体が「低炭素」とCO2ばかりが注目されているが、元々は温暖化対策やGHG削減であることからすれば、Fガスの話はこれまで御説明もなかった。これによる2020年2000万トン削減ということで、いくつか施策が書いてあるが、実際フロンからCFC、HCFCの流れが出てきたなかで、それぞれ使用されるものは変わって、今はHFCのストックが多くなっているはずだが、そのストックが2020年までそのまま残る分も相当あるので、それをどういう手をつけるのかも含め、より具体的対策を検討していく必要がある。方向性として掲げていることはよいが、数字に落とすときに具体策が必要になる。その対策にはリサイクルや回収の仕組みが必要になり、地域づくりWGと絡んでくると思う。いずれにせよ、ものづくり分野は全体検討会のテーマだといわれているが、各WGの報告の場なので、ほとんど検討する時間がない。今後の課題として、仮のロードマップという位置づけでやっていただいていたらよい。
- 事務局 :3割~4割の数字は、国立環境研究所の脱温暖化2050プロジェクトで全体のバランスのなかで産業はどの程度減らさなくてはいけないのかを見たときの値。最終エネルギーのなかで、3割4割削減しなければならないということで引用している。Fガスは、検討を進めているので、可能な段階で対策について御提示いただき、地域の方でそういったものをベースに検討を進めてくださるのであればお互いの情報交換をして、検討を進めていきたい。フロンの件に関しては、具体的な対策が必要ということは、赤井委員がおっしゃる通りで、これからそこを深めておきたい。ストック対策が必要ということで、今考えている対策としては、使用時の漏洩防止と、回収時をメインに考えている。
- 赤井委員:例えば、回収面になると、お金を払ったのにどこかに不法投棄されているなど、実際の社会の動きと検討会の机上議論とではギャップが相当ある気がするので、過去の実績やプラクティスを含めたロバストなロードマップを作っていただきたい。
- 事務局 :承りました。
3. 全体討論
- 西岡委員:全体討論ということだが、既にいくつか項目が挙がった。大塚委員からはCAFE規制と税とでどちらの方がよいのかが上げられたが、地球温暖化対策税の使い方については全体のどこかで再検討の必要がある。地域ではできる範囲を限るべきということは、その際に電力構成を別途考えなければない。全体として長期のプランが要るということで、技術進歩の話もそうだが、様々な観点からそういう問題ができており、慌て過ぎない方がよい。なんと言ってもデータがしっかりしなければ施策の手が打てないということと、人を育てるということがもっと前に出てもよいということもあった。縦割り行政はいつも問題にあがるが、どう考えるかは少し大きすぎる問題かもしれないが、一言二言触れても良いと思う。費用負担の話はまだ十分に検討されていない。エネルギー政策については、化石燃料輸入額の23兆円に基づいた議論があったが、この検討会は日本全体のロードマップを考えているスタンスなので全体を考えて検討していただきたい。国際マーケットは、どの分野でも日本の力をどうやってつけていくのかの検討をする必要はある。これらに大きく付け加える必要はあるか。
- 村上委員:費用負担の問題は、ぜひ来年度マクロ経済の上から視線と積み上げた下からの視点の両方からからやったらよい。例えば、副次的効果を評価しようとしても、費用負担の問題がはっきりしなければ評価しようがない。
- 荻本委員:いろんな場所にある住宅や農山村や地域というところで、スタディが重要というところで、人を育てなければいけないというところまで来た。ただ、レポートを書いて検討するにあたり、自由な構造でやらせると結果はすべて成功としかでない。厳し目の構造でぜひやってくれと、雛形を中央から提示して、それに批判的、或いは従ったスタディができるようにすればよい。あとは、費用の話だが、いろんな議論をこの1年でしたが、費用の考え方や切り口が毎回違い、比較の仕方がない。できれば、継続性ある費用の捉え方、或いは家計や企業と主体にのっとった費用の出し方など継続性を持った費用の出し方ができないか。もし、来週に向けて何らかの案が出せるようであればお示しいただければよい。
- 赤井委員:ロードマップの資料が出された時、こうやればできるのかというよりも、これだけやなくてはならないのか、大変なものだと思った。これだけやらなくてはという理由だが、資金だけではなく、電気事業法など制度設計に関わるものが相当多いと思う。現行法の改正や新しいルール作成の必要性も相当ある。そこを急がないと、スキャンダルの議論ばかりしている国会で議論が進むか心配になる。これだけの法律を扱うとなると、関係者の労力はものすごく、しかも叩かれ、それにもめげずこれだけのことをやらなくてはならないとなると、非常に大変だと思う。国自体の方向性を決め、みんなが気持ちよく作業できる国になってほしい。
- 飯田委員:制度化の話で、検討会が昨年末から始まったが、地球温暖化対策基本法と寄り添ったものだという理解をしている。膨大な制度の話を整備していくということもあるが、直近のキャップ&トレードの型の国内排出量取引の話が1年で制度化をするということもあるので、ある程度の頭だしのところは税に加えてやっていけたらよい。もう1点は、真水の部分とそうではない部分の話で、そこをどう出すのかの議論が抜けている。出し方の難しさはあるが、スコープの中に入れておくことは必要かと思う。目標達成計画のように、几帳面に分けて、結局どちらも外れたという間抜けなことはやめた方がよいが、鳩山イニシアティブもあり、地球温暖化問題に関する閣僚委員会の事務局長としての小沢環境大臣が出されるものであると、全体像をカバーしているものではければならない。
4.資料3、資料4について藤野委員より御説明分
- 西岡座長:資料4はミクロに描いてみた費用負担の一つの例ということで、資料3はベースとなっているモデルの分析結果で、この裏打ちを持って、このモデルが技術的にも経済的にもどういう意味を持っているのかを出したいということかと思う。最初に、書いてあるとおり、前提によって結果はだいぶ違うので前提を議論することは非常に重要になる。このモデルの作業は将来の予測ではなく、目的達成のためにはこういうことをやらなくてはならないし、分担はこうでなければならないということを示したこと。前回のタスクフォースは条件つきで分析を行ったが、今回はその後技術的あるいは政策的にも様々な変化があった分を置きなおしてやった作業ということになる。何か御質問はあるか。
- 飯田委員:一番気になるのは、原子力発電所のパラメーターだが、この間の日本の温室効果ガスの増分のほとんどは石炭火力の増分につきる。それが、原子力発電と表裏になっていて稼働率が下がった分を石炭で埋めるということが起きている。ここでは、更にそこを強化している。設備容量は2005年に4,958万kWだが、2008年は2,795万kWに落ちている。これが2020年には6,015万kWということは、運転開始が予定されている9基が全て動き、なお発電量として80%ということがベースケースになっているが、これが落ちるケースが全くない。これしかないとなれば、日本の原子力発電所は、今後稼動年数40年越えが続々出てきて、稼働率を上げることは非常に大変になる。規制緩和など他に余地があるのかもしれないが、現実のデファクトとしての厳しさが相当ある。なお、9基の増設という両方良い方に向かった場合がベースケースにあるので、これに失敗したらまた石炭火力になりかねない。私は、目標達成計画のときから言っているが、これをベースケースにするのはよいが、コンティンジェンシープランを作りましょうと。つまり、原子力は全部取れたらよいが、宝くじが当たるような生活を描いていて、当たらなかったらどう暮らすのかの姿を作らないといけない。これまでの過去の経験は生かすべき。ここに弱点があると思う。
- 伴委員 :計算すると、原子力が余ってしまうぐらい電力が少なくなる可能性が高く、正直皆さんの考えと随分違うかもしれない。荻本委員がおっしゃっていたが、費用をどう見るかに尽きると思う。見方はいろいろあるが、モデルの数字は大きくは変わらない。出てきた数字の見方や細工の仕方で大きく違う。資料3の19頁では費用ではなく追加投資といっているが、追加投資とは何か。そこでのリターンが追加投資のなかにマイナスに入っているかどうかでまた違う。一つの数字の見方次第で、25%削減を真水でやると百兆円掛かるというが、その追加投資が本当に追加投資なのかは精査しないといけない。精査するといっても、見る人で違った尺度を持って見るので、難しい。我々としては、数字を多方面に出して評価を仰ぐ。つまみ食いされる可能性があり危険性は高いが、きれいと見るか汚いと見るかの判断は個性なので、難しい。本当に費用の計算だけでよいのか。更に、被害に関しては全く考慮しておらず、経済的損失しか考えていない。経済学者でもこれはおかしいと思うので、温暖化による被害などもを考える必要がある。
- 赤井委員:いろんな分野でいろんなことをさせるのであれば、バランス的にCCSが少ない。同じレベルの努力をするなら、もっとできると思う。原子力のリスクは同じように考えるが、他についても多かれ少なかれあるので、ある部門のシナリオが達成できなかったときにどうするのか。コンティンジェンシープランも必要かと思う。
- 西岡座長:たたき台より前の段階なので、更に意見があれば伺いたい。
- 藤野委員:原子力発電だけではなく、各門に対してリスクがあるということだが、タスクフォースでも感度分析を行ったので、26日までに間に合わないかもしれないが、キーになるところで、シナリオが変わったらどれぐらいCO2に影響があるのかの分析は進めたい。費用の見方だが、御指摘の通りで、追加投資額は競合となる既存の技術に対し、省エネとなる機器がどれぐらい高くなってまた、どれぐらい効率が良くなってというような見方をしている。そもそも既存の技術をどう見るのかで答えは違う。タスクフォースは止まっているが、本来であればコストの議論はもっとオープンな場で、真剣にやらないといけない。被害については、2020年、2030年で見ると額はでてこないが、今回は2050年まで見ているので、どこまで入れられるか検討したい。
- 荻本委員:寄与率は非常に有効な見方だと思うので、コンティンジェンシーを見通すということでもお出しいただきたい。どんなことが起こりうるかということは、人間側が判断する上で大事だと思う。2030年は参考的に出ているが、2020年を検討してきて、2020年は良くも悪くもこれしか対策を打てないなかで最大限にストレッチしているのでまだやりようがある。しかし、2030年になると、いろんな前提が変わるので2050年を仮置きにしてバックキャストでやったということについては、まだ色々な余地があるので参考にしておくのがよい。
- 藤野委員:その方向で検討する。
- 西岡座長:費用負担の話や家庭あたりいくらの話も、いろんな見方があり、しばしばつまみ食いされることはあると思う。今やろうとしていることは、今までのようなやり方では損になるので、方向性を変え、このなかでどれが一番よい案なのか、できるのかを検討している。方向によって、高い低いが出てくるが、それは変えようということとは全く違う話だと思っていて、いつもつまみ食いされる。きちっと体系付けて話していくのが必要だと思っている。今日はたたき台の段階だが、慎重を期したお話だった。いくつかの大きな宿題が出たが、本ロードマップ検討会でも取り上げていきたい。今年度の最終回は次回の3月26日になるが、新しい議題として経済波及効果の分析結果についてと、今日の議論のたたき台の整理を行う。
以上