質疑応答の時間中に参加者から出された国内排出量取引制度に関する質問は以下の通り。
(割当対象)
- ベンチマークを用いてキャップを設定する方法について、効率の良い大企業をもとにベンチマークを設定すると、効率の悪い中小企業に対しより多くの削減義務が課される。削減義務が達成できない者に対して削減を求めても、結局は単に罰金などが科せられるだけとなり、効率の悪いところの効率改善に逆につながらなくなってしまうのではないか。
- 国内排出量取引において、小口の中小企業がプレーヤーとして入っていないように感じたが、本来参加させるべきではないか。
- 割当対象者として、大口需要家という表現があるが、これは資本金を言うのか、それともエネルギーの使用量を基準に考えられてるのか。
- 自治体に対しての排出枠は今後設けられるのか。
(モニタリング・算定・報告・検証)
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国内排出量取引制度の前提となるモニタリングと検証は、大変な労力と人力が伴うが、中小企業内のモニタリングの組織に援助するような方針はあるのか。また国内排出量取引制度を広げていく上で、検証機関や検証人の資格などをきちんと決める必要があると思うが、そのあたりの見通しはどうなっているのか。
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中小企業は1990年基準の排出量を把握できていないので、どの年を基準にするかなど、中小企業の排出量測定のスタンダード化が必要と思われるが、それに関してどのように考えているのか。
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CO2排出量を正確に測定することが必要だが、例えば、電力会社によって原単位が異なるなど、CO2排出量の算定には懸念すべき問題がある。また、その他の温室効果ガス排出量の算定は曖昧である。ガス排出量を一定の精度で測定するために、どのようにしていくのか。
(競争力)
- 排出量取引の導入によって、製造コストがどれほど増加するのか。
(国内クレジット)
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国内排出量取引の導入はやむをえないと思うが、費用対効果の点から考えると、海外での新エネ、省エネプロジェクトに傾きやすく、国内の新エネ・省エネプロジェクトに資金を回すという観点からは少し弊害が出てくるのではないか。国内排出量取引を導入するのであれば、国内CDMとか、グリーン電力証書の制度といったような取組も同時に導入されないと国内での新エネ、省エネプロジェクトへの投資を優先して強力に誘導するインセンティブが働かないのではないだろうか。例えば、北海道は、全国と比べて石油依存度が非常に高いエリアであり、新エネ・省エネプロジェクトの必要性が高いが、北海道ブランドのカーボン・クレジットを国内外の企業に買ってもらえるような市場があれば、インセンティブとして非常に有効であると思う。
- 信頼性の高い国内クレジットをどんどん作っていかねばならないということだが、具体的にどういうふうに作っていくのか。
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国内での植林と、森林によるCO2吸収もクレジットとして考えているのか。もし植林を考えているのならば、今から植林をする人に対するだけではなく、現時点で森林を管理している人も対象にすべきでなはいか。
(その他)
- 排出量取引が排出削減にどの程度貢献するのか。
- これまで環境省は自主参加型排出取引制度というものを3年間位意欲的にやってきたが、これでどの位削減できたという試算はあるのか。
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先日の新聞報道で、福田総理は産業界の一部にある強い懸念を踏まえて、当面キャップのないトレーディングシステムを考えていくという話があったが、キャップのないトレーディングシステムというのがどういうものか。
- 今秋からの国内排出量取引の試行と、本格的に取り組みを目指していくというところのつなぎをどう考えているのか。
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今秋からの国内排出量取引の試行に関して、事業ベースの現在の自主行動計画と、企業ベースの国内排出量取引制度とのリンクできるのか。今後の目標設定に関して、現在の自主行動計画のように、自主的に設定すると、緩い目標となってしまうのではないか。もしそうなった場合、どの程度トレードが成立するのか。
- 国内排出量取引制度において、都市と地方の間における排出量取引を今後検討する予定はあるか。
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CO2に価格をつけることによって、個人がCO2排出枠を寄付したり、カーボン・オフセットをしたりと、それぞれの行動の集大成として、社会全体としてCO2を削減できることをわかりやすく国民に伝えることで、排出量取引制度の導入を受け入れる人がもっと増えるのではないだろうか。
- 国内排出量取引の対象にならない中小企業向けの排出量削減の啓発活動はどのように行っているのか。
- 実際に各家庭が努力すれば、それだけのメリットがあるというものを、国内排出量取引制度に是非入れて欲しい。
- 国内排出量取引制度やカーボン・オフセットのクレジットがどのように使われているか見える形のものがあれば教えて欲しい。
- 国内排出権取引によって、炭素がマネー化しするということが懸念されるが、どのように考えているのか。
- 国内排出量取引によるクレジットを銀行がいつから取り扱えるようになるのか。
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排出量取引コストは1トン当たり約2、3千円となるようであるが、1トンあたり数千円という低い価格は海外へのコストの流出を招く懸念がある。これに関して、環境省はどのような考えを持っているのか。
- 炭素税と排出量取引制度の効果の違いをもう少し説明して欲しい。また、排出量取引が一般市民にどのように影響するのか教えて欲しい。
(以上)