環境省地球環境・国際環境協力

OECD環境保全成果レビュー審査会合の結果について

平成22年5月

○5月3日(月)から4日(火)にかけて、パリ(フランス)の経済協力開発機構(OECD)本部において、OECD環境政策委員会・環境政策評価作業部会の第37回会合が開催されました。4日(火)には、我が国の環境政策の取組状況に関する審査が行われ、日本政府代表団は、大谷信盛環境大臣政務官を代表として審査に臨みました。

○本審査結果は、「評価及び勧告」という形で、同作業部会において承認されました。

○「評価及び勧告」の中では、中央環境審議会による環境政策に関する進捗点検及びその結果公表を始め、コペンハーゲン合意の下での温室効果ガスの25%削減目標の提示(気候変動分野)、ダイオキシンや移動発生源からの非メタン揮発性有機化合物(NMVOC)の排出削減の実現(大気保全分野)、循環型社会形成推進基本法の制定による資源管理政策の推進(廃棄物分野)などが評価されました。

○一方、[1]環境基本法(平成5年制定)の見直し及び改正、[2]環境関連の税の利用拡大、[3]義務的なキャップ・アンド・トレード制度の導入(気候変動分野)、[4]気候変動関連の税と組み合わせた排出量取引による炭素の価格付け(気候変動分野)などの必要性について勧告を受けました(総勧告数:38)。

○なお、当該審査に関する詳細な報告書については、本年10月頃にOECD事務局より公表される予定です。

【主な勧告の内容】(「評価及び勧告」全文は別途掲載)。

○現在の法体系を統合し、簡素化し、より一貫性のあるものとするため、1993年制定の環境基本法を見直し改正すること。

○異なる分野の計画と環境基本計画の間の関連及び優先順位を明確にすること。

○環境関連の税の利用を拡大することや、環境に悪影響をもたらす又は汚染者負担原則に矛盾する補助金等の削減を視野に入れ、2011年の税制改正においては環境配慮を中心に据えること。

○環境政策の経済的効率性を高めるため、取引制度や利用者課金等の経済的手法の利用を拡大すること。また、規制的手法及び企業の自主的な行動計画等の費用対効果を検証すること。

○自動車等の購入及び所有に係る税をその燃費効率に直接リンクさせることや、燃料税(fuel taxes)等を通じて自動車等の利用に伴う汚染(targeting pollution)を改善することを目的として、輸送関連の課税等に関する制度の見直しを行うこと。

○気候変動関連の税と組み合わせた排出量取引を通し、炭素に価格をつけること。試行的な排出量取引制度(ETS)を、他国の制度とできる限り互換性のある義務的なキャップ・アンド・トレード制度へと移行させること。

○国及び地方レベルで3R戦略の推進を続け、健全な循環型社会の形成に関する基本的な計画を実施すること([1]分野別の資源生産性に関する目標の設定、[2]貿易関連のフロー及びそれらによる環境への影響に関するより適切な評価を行うマテリアル・フロー分析の継続的支援)。

○気候変動の潜在的な影響を考慮しつつ、森林や河川などの生物多様性の回廊のための戦略を策定すること。

【参考】

1. 経済協力開発機構(OECD):

1) 概要
 ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め30ヶ国の先進国が加盟する国際機関。国際マクロ経済動向、貿易、開発援助といった分野に加え、最近では持続可能な開発、ガバナンスといった新たな分野についても分析・検討を行っている。
2) 設立経緯
 第二次大戦後、米国のマーシャル国務長官は経済的に混乱状態にあった欧州各国を救済すべきとの提案を行い、「マーシャルプラン」を発表した。これを契機として、1948年4月、欧州16か国でOEEC(欧州経済協力機構)が発足(OECDの前身)。その後、欧州経済の復興に伴い1961年9月、OEEC加盟国に米国及びカナダが加わり新たにOECD(経済協力開発機構)が発足。我が国は1964年に加盟。
3) 加盟国(現在30カ国)
(1)EU加盟国(19か国)
 イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フィンランド、スウェーデン、オーストリア、デンマーク、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア。
(2)その他(11か国)
 日本、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュー・ジーランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、韓国。

2.環境保全成果レビュー

 OECDの環境保全成果レビューは、1991年の経済協力開発機構(OECD)環境大臣会合の合意に基づき開始されたプロジェクト。OECD加盟国が、相互に、各国の環境保全に関する取組状況等を体系的に審査し、必要な勧告を行うもの。なお、本勧告は被審査国(今回の場合は日本)に法的な義務を課すものではなく、当該国による環境政策の進展を支援することが目的。
 これまでのところ、我が国は、1994年、2002年にそれぞれ審査を受けており、今回の審査が3回目。

3.今回の対日環境保全成果レビュー

 今回の対日審査については、昨年3月から、審査国(韓国、ドイツ、ノルウェー)の協力を得て、実施されてきたもの。昨年7月には、審査団(OECD事務局及び審査国の審査担当者)が来日し、我が国の環境政策に関するヒアリングが行われた。その後、OECD事務局及び審査国によるさらなる調査・検討を経て、当該審査報告に関する事務局案が取りまとめられた。今般、5月4日に行われた第37回OECD環境政策委員会・環境政策評価作業部会では、審査内容のうち、我が国の環境政策に関する「評価及び勧告」部分についての議論が行われ、当該部会として承認された。
 なお、当該審査に関する詳細な報告書(160ページ程度)については、本年10月頃にOECD事務局より公表される予定。

4.3R戦略

 3R戦略とは、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から脱却し、環境への負荷が少ない「循環型社会」を形成することを目的として、「循環型社会形成推進基本法(平成12年制定)」を初めとする法体系の下に推進している3R(リデュース・リユース・リサイクル)に関する戦略のこと。

5.生物多様性の回廊

 生物多様性の回廊とは、生物の分散・移動を可能にし、個体群の交流が促進されることで種や遺伝的な多様性が確保されるような、連続する森林・河川などのこと。

添付資料:

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