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環境協力に携わる方々へ

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「地球環境に関する援助機関ガイドライン」

経済協力開発機構 パリ 1991年

I.序

  1. 国境を越えて地域的または地球的規模になっている環境問題について1970年代初頭から関心が高まってきた。先進諸国民一般の関心がこうした地域的、地球的性格の問題に取り組む国際的協調を促進させるための、OECD加盟国政府のイニシアチブを増加させた。このような数多くの環境問題の起源は主に先進諸国の中にあることは広く認識されており、その結果、気候変化や生物多様性などの問題に取り組む国際的な努力においては、先進諸国の主導性が一段的に容認されている。OECD諸国はその責任を認識しており、地球環境問題へのマイナス貢献を減らすため各国の政策の枠組みの中で継続的に対処している。この援助機関のためのガイドラインにおいて提案されている対策の多くは、先進諸国の場合にはその国内政策と同様に適用することができる。しかしながら、世界的な効果を期待するためには、開発途上国の十分な参加が必要である。開発途上国がそうした地球的規模の活動に参加できるよう支援する際に重要は役割を担っているのが、二国間および多国間開発機関である。
  2. とくに注目されるのは、環境分野の国際協定に定められている義務を開発途上国が果たせるように支援する方法である。これまでのところ、そうした協定では、オゾン層を破壊する物質 (ウィーン条約およびモントリオール議定書による)や有害廃棄物の国境を越えた移動 (バーゼル条約による)が対象になっている。気候変化に関する枠組条約や生物多様性保全に関する条約を作成する作業が目下進行中であり、ともに1992年6月にブラジルで開催される「環境と開発に関する国連会議」 (UNCED)において重要な課題になるものと予想されている。世界の森林の保護と開発に関する国際協定についても議論が交わされており、また国際水域の汚染に関しても、数多くの地域協定がすでに成立しているか、または検討されている。
  3. 1989年の設置以来、開発援助および環境に関するDAC作業部会は、二国間援助機関が、開発途上国が地球環境問題に取り組むのを援助するに際してどのような役割を果たせるかということについて調査している。数多くの国際フォーラムで多数の加盟国が地球環境問題に取り組むためにはODA以外の資金も必要であることを認めている。多くの場合、援助機関がこうした問題を処理する際には、プログラムを提供するための効果的なメカニズムとして、また地元開発優先主義と地球環境保護とのバランスが取れている場合に適用されるODA資金の利用を通じて重要な役割を担うことになる。1980年代後半までは、ほとんどの援助機関ではこの地域の開発途上国の援助に関する経験や専門知識が不足していた。しかし、最近は援助機関の能力も強化されており、一部の援助機関はこうした面で数歩先を進んでいるケースもある。したがって、本報告に盛られている政策ガイドラインは、分担を要求された場合に他の政府機関でも実行できるような支援活動を提示する際にも役立つものと思われる。
  4. 作業部会は調査結果にもとづいて本報告を作成したが、それには一連の地球環境問題に関する援助機関のための政策ガイドラインが盛り込まれている。この報告に取り上げられている問題は、気候変化やオゾン層保護、有害廃棄物、国際水域の汚染、生物多様性の喪失などである。気候変化については、海面上昇、エネルギー、森林などの問題は別の章で取り上げられている。エネルギー、森林などの章では、気候変化に関するエネルギーや森林の問題にとくに重点が置かれているので、注意が必要である。エネルギーや森林に関連する広範な環境問題は、各援助機関の援助プログラムの部門政策において取り上げられるものと思われる。作業部会は、エネルギーと森林に関する問題のうち、気候に関連しない問題について、今後の取り組むべき方向を検討中である。
  5. 本報告で取り上げられないものに、開発途上国の地球環境問題に取り組むための活動費の資金調達の問題がある。地球環境問題に関する開発途上国への資金援助のために、一部のDAC加盟国は現行の支援プログラムとは別に、新たな特別協定をすでに結んでいる。オゾン層破壊物質に関しては、モントリオール議定書のもとに暫定多国間基金 (interim multilateral fund)が設立されている。また地球環境ファシリティが世界銀行、国連環境計画 (UNEP)、および国連開発計画 (UNDP)の支援のもとに設立され、オゾン層保護、温室効果ガス排出制限、生物多様性保全、および国際水域保護などの分野におけるプロジェクト活動に融資している。「環境と開発に関する国連会議」に備えて、気候変化や生物多様性に関する交渉のさ中、資金調達と基金のメカニズムについて現在集中的な討議が行われている。本報告ではそうした討議は取り上げないし、またそれに重きを置くものでもない。
  6. 同時に、地球環境が脅かされている中で、持続可能な経済・社会開発の促進という優先目標を損なうことなく援助の優先順位に変更を加えるため、既存の二国間援助のメカニズムの中で実行できることは多々ある。すなわち、OECDのメンバー政府は開発途上国の地球環境問題への取り組みを支援する活動において、各二国間開発機関がその特有の専門知識や経験を駆使してとくに主導的役割を果たすのである。
  7. 本報告のパートIIからパートVは、作業部会が予備的に行った作業であり、そこには支援分析とガイドラインが記載されている。個々の問題に関する推定値はある程度の誤差を前提としている。その推定値はOECDの公式数字ではないが、信頼すべき情報源から入手したものである。個々の問題ごとに政策的勧告が提示されている。そうした勧告には、援助機関が地球規模の問題を取り扱う場合に必要な制度上の機能や専門知識を生み出すための援助機関のための優先的措置や開発途上国への優先援助が盛り込まれている。これらの援助機関向けガイドラインは、現在行われている国際交渉の結果を踏まえて、今後の作業の過程で強化、改定される予定である。

Copyright OECD, 1991

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