II. 地球温暖化対策を総合的に推進し、京都議定書に定める排出量の削減目標を達成するために

3. 京都議定書に対応するための総合的な制度の必要性

 以上のような仕組みと意義を有する京都議定書の中核的内容である法的拘束力のある数値目標を我が国が確実に達成するためには、地球温暖化防止を保護法益として明確に掲げた法的拘束力のある国内的な仕組み、すなわち、地球温暖化防止を目的とした新たな法律を整備することが望まれる。このような法律の必要性は、次のとおりである。
 温室効果ガスは経済社会の広範な活動から発生しており、それらの活動は国民の生活や企業活動に深く関わっている。このため、温室効果ガスの排出量の削減又は吸収量の増大のための対策には、国、地方公共団体、事業者、国民といったあらゆる主体が、その負担を公平に分かち合って対策を進めていくことについての国民的合意が不可欠である。
 また、このような温室効果ガスの発生の特性を考えると、その削減対策としては、特定の対象に限定してその諸活動に一定の制限を課す規制のような従来の環境対策で重用されている手法の活用のみならず、それ以外にも国、地方公共団体、事業者、国民などの各界各層の自主的取組を促進すること、さらには経済的措置など市場原理を活かした誘導的な新しい政策手法の開発や利用を行うことなど、様々な手法を用いるとともに、これらの政策手法間の役割分担が適切なものとなるように組み合わせ、各主体の努力を全体として適切なレベルにまで促す必要がある。
 さらに、「2008年から2012年までの第1約束期間に1990年レベルから6%削減」するとの数値目標を達成するだけでは温暖化を防止できず、今後、我が国を含めて、21世紀あるいはその先まで温室効果ガスを長期的・継続的に削減していかなければならないことを視野に入れ、短期間に効果を上げていく措置に加えて、現在の大量生産、大量消費、大量廃棄の社会システムを転換させていく中長期的観点からの対策を進めていくとの大きな方針についての国民的合意も必要である。
 京都議定書の内容を実行していくためには、このように、社会構成員の広範な賛同と参加を確保でき、多数の政策手法と多数の社会経済主体の取組を体系化することができる総合的な仕組みを構築する必要がある。しかも、この仕組みは社会的に透明性のある形で運用されていくべきであり、そのルールに関する国民的な合意は、国会における議論を経た法律という形式で定められることがむしろ当然である。


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