Q&A(平成29年度版、HTML形式)

第8章 食品中の放射性物質

QA8-2 ストロンチウムは骨に蓄積されるので、危険だと聞きました。食品中の放射性ストロンチウム量についての規制はないのですか。

  • ①存在比率が最も高く、測定が容易な放射性セシウムを測定することで、割合の少ない放射性ストロンチウムの影響を考慮した規制ができるようにしています。
  • ②放射性セシウムの基準値は、放射性セシウム以外の核種の被ばく量を合計しても年間1ミリシーベルト(mSv)を超えないように設定されています。
  • ③平成24年2月以降、厚生労働省は国内に、実際に流通する食品や一般家庭で調理された食品に含まれる放射性ストロンチウムの濃度を定期的に測定していますが、いずれも事故以前の範囲内でした。

食品中のストロンチウムを測って規制をしてはいませんが、セシウムを指標とした基準値は、ストロンチウムの影響も計算に含めた上で設定されています。食品の基準値の指標にセシウムだけが使われている理由は次のとおりです。
まず、基準設定の検討に当たり、東京電力福島第一原子力発電所事故後の長期的な状況に対応するものであることから、比較的半減期が長く、長期的な影響を考慮する必要がある核種を対象としています。具体的には、大気中に放出されたと考えられる核種のうち、半減期が1年以上の核種全て(セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム、ルテニウム106)が対象にされました。次に、規制対象の核種のうち、セシウム以外のストロンチウムなどの核種については測定に非常に時間が掛かることから、移行経路ごとに放射性セシウムとの比率を算出し、合計して年間1ミリシーベルト(mSv)を超えないように現実的により短時間で測定できる放射性セシウムの基準値が設定されています。他の放射性核種と放射性セシウムとの比率の計算では、穀類、乳製品といった食品分類ごとに行っており、放射性物質の移行に関する食品ごとの特性も考慮されています。具体的には、食品中のストロンチウムについては、事故後の土壌や河川水の試料の測定結果より、放射性核種の存在割合から、ストロンチウムはセシウムの土壌で0.3%、河川水で0.2%として、それぞれ農作物や水産物にこの割合で放射性ストロンチウムが含まれているとしています
ストロンチウムはカルシウムと化学的性質が似ているため、体内に入ると骨に集積しますが、徐々に代謝や排泄といった体の仕組みにより減少し、最終的には便などと共に排出されます。実効線量を計算する際には、こうした放射性物質の代謝や集積する場所での影響も考慮しています。つまり、食品の規制の年間1ミリシーベルト(mSv)の内訳には、骨へのストロンチウムの蓄積分も含まれています。なお、実効線量で表された線量(シーベルト、Sv)が同じであれば、外部被ばくも内部被ばくも影響は同じと考えられています。
*:薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会報告書「食品中の放射性物質に係る規格基準の設定について」(平成23年12月22日)より
(参考文献)
・厚生労働省 「飲食物摂取制限に関する指標について」(平成10年3月6日)
・文部科学省放射線モニタリング情報 「福島第1原子力発電所の事故に係る陸土及び植物の放射性ストロンチウム分析結果(平成23年3月16日、17日、19日)」
・文部科学省 「文部科学省による、プルトニウム、ストロンチウムの核種分析の結果について」

①量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所ウェブサイト「放射線被ばくに関するQ&A」、②厚生労働省「食品中の放射性ストロンチウム及びプルトニウムの測定結果」より作成

出典の公開日:①平成25年10月31日、②平成25年11月8日、平成26年5月23日、平成26年8月22日、平成27年5月15日、平成27年7月31日、平成28年6月3日、平成28年8月19日、平成29年6月23日、平成29年8月25日

本資料への収録日:平成29年3月31日

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