環境省保健・化学物質対策化学物質をめぐる国際潮流について第2回シンポジウム
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【午前の部】
1. 開会挨拶

(司会)
皆さま、大変長らくお待たせいたしました。ただいまより「化学物質をめぐる国際潮流に関するシンポジウム(第2回)諸外国における化学物質管理の最新動向」を開始いたします。
 私は、本日の司会進行を務めさせていただきます勝元聡子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
 それでは、初めに、開会挨拶を行います。主催者を代表いたしまして、環境省環境保健部長上田博三よりご挨拶申し上げます。よろしくお願いいたします。

 
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(上田環境省保健部長)
 おはようございます。環境省環境保健部長の上田でございます。
 本日、「化学物質をめぐる国際潮流に関するシンポジウム」の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
 グローバリゼーションの進展に伴って、国境を越えて取り引きされる物品の量が特に東アジアを中心に急増していますし、物品のサプライチェーンも国際化が急速に進んでいるところであります。特に化学物質は、ある国で製造されたものが別の国に輸出されて、部品として成形され、それがさらに別の国に輸出されて、自動車や電気・電子機器など、このような最終製品に組み込まれるというように、極めて国際的に取り引きされているところでございます。
 一方で、化学物質に関する規制は、国、地域によって大きく異なっているのが現状であります。今後、我が国において適正な化学物質管理を進めていくためには、行政、事業者、市民、NGOを含むさまざま利害関係者が国際的な動向を把握した上で、仕組みをどのように改善していくかについて考える必要がございます。
 このため、今回のシンポジウムでは、欧州、米国、カナダ及び隣の中国、韓国の化学物質管理の担当官の方々からそれぞれの国、地域における最新動向をお話しいただくことになっております。
 ご承知のように、化学物質の取り組みは、近年、大きな動きが進んでおります。一つ例を挙げますと、昨年12月には、欧州で化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則、いわゆる欧州REACHが成立したところでございます。この欧州REACHでは、欧州内で製品の製造を行う事業者や、輸入を行う事業者は、製品にどのような化学物質が含まれているかを把握することが必要となっています。このため、我が国の事業者の方々も、欧州に対して、化学物質のみならず、自動車、電機製品などを輸出する場合には、あるいは供給する場合には、欧州REACHへの対応が求められるようになっているところでございます。
 このように、我が国においても行政や産業界が対応を求められる中で、私は我が国の自動車業界が環境規制への対応として、技術開発を行い、環境性能の極めて高い自動車を開発したことが世界への躍進につながったことを思い出すわけでございます。これは環境への取り組みが経済的にも成功している代表例ですけれども、欧州REACHへの対応についても、環境規制の対応が我が国の経済の発展にも寄与するという成功事例にすることが可能ではないかと思っているところでございます。
 この国際シンポジウムが諸外国における化学物質管理についての皆さま方の理解の促進に役立ちまして、今後の我が国の化学物質管理のあり方について考えるきっかけとなれば幸いと考えております。よろしくお願いいたします。(拍手)

(司会)
 主催者を代表いたしまして、開会のご挨拶をさせていただきました。

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  (司会)
 それでは、これより講演に移らせていただきます。
 まず、アメリカにおける化学物質管理について、アメリカ環境保護庁汚染防止・有害物質部長、Charles Auerさんにおこしいただく予定でしたが、急遽、来日できなくなりました。そのため、本日は、ワシントンDCと電話をおつなぎし、講演をお願いしております。
  それでは、Charles Auerさん、よろしくお願いいたします。

2.アメリカにおける化学物質管理

 
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(Mr. Charles Auer)
 おはようございます。きょうはこのような機会をいただきましてありがとうございます。
 化学物質の管理について、アメリカのアプローチについてお話しできることを大変うれしく思っております。会議の場に直接お伺いすることができなくて、大変申しわけなく思っております。飛行機便が運休になったりしまして、さまざまなことで来日することができなくなりました。電話での講演でご辛抱いただければと思います。
 私のスライドの資料については、お持ちのことと思います。どの資料について、私が今お話ししているのかについて、その都度、明確に申し上げていきたいと思います。

◎化学物質管理
 では、2枚目のスライドをごらんいただけますでしょうか。
 アメリカのアプローチは自主的取り組みと規制の取り組みと両方を組み合わせることによって、望ましい目標を化学物質管理について達成していくというものです。
 私どもの責任は、2つの主な分野になると考えています。
 まず、1つは門番あるいは保護者、ガーディアンの役割を果たすということです。これは、規制当局が幾つかの目的で活用されることになります。まずは、リスクの高い、新しい化学物質が市場に導入されるのを阻止する、もう一つは既に商用に使われている化学物質のリスクを管理するということです。
 門番の役割に関しては、それに加えまして、環境管理を促進していくことにも焦点を当てています。これは、市民社会のあらゆる側面から環境保護の改善に寄与するという意味で、それを促進していくということです。この環境管理ということに関しては、特に産業界に対しては情報や手段、助言を提供しています。そして、多くの場合、自主的な協定に依存し、このような環境管理の目標を達成しています。
 
◎化学物質管理
 では、3枚目のスライドに進みます。
 こうした役割は2つともにお互いが寄与することによって、化学物質が相当なリスクを提示しないようにということで、その役割を果たしています。まずは、汚染防止の推進をします。そして、より安全な化学物質の使用の推進を行っていきます。既存化学物質のばく露によるリスクの軽減も図っていきます。さらに、関連する情報を社会のあらゆる部門に対して提供していきます。環境保護団体であれ、産業界であれ、あるいは一般の市民であれ、重要な理解についての情報を得ることができ、適切な判断ができるようにということを支援しています。

◎化学物質管理
 では、4枚目のスライドに移ります。
 私どもの目標としては、有害物質規制法に基づいて特に行っていますが、もう一つ、汚染防止法という法律のもとでの権限も与えられています。私ども環境保護庁はこの2つの法律を施行していくことを行っています。この2つとも、さまざまな媒体に適用され、化学物質のライフサイクル全段階に適用されるものです。

◎有害物質規制法(TSCA)
 5枚目のスライドをお願いいたします。
有害物質規制法がアメリカでの基本的な法律で、化学物質を規制するものになっています。このスライドでは、その基本的な環境保護庁に与えられた権限が書かれています。この法律のもとでの権限です。企業によって情報を維持管理し、そして情報を提供することを求めています。
 また、商業用に使用されている化学物質のインベントリー、在庫の維持ということも求められています。また、新規化学物質を製造する前に、環境保護庁に届け出をすることになっています。つまり、現在の目録の中にない化学物質を製造する場合です。新規化学物質に関しては、製造される前に適切な評価を行います。

◎有害物質規制法(TSCA)
 6枚目のスライドにいきますが、企業に対して、化学物質についての試験を行うように要求することも環境保護庁はできます。また、ある一定の情報を求めることができます。特に、産業界に新しい情報があって、その化学物質が相当なリスクを提示することがわかれば、それは提出しなければいけないことになっています。
 また、この法律によって、環境保護庁は環境、人の健康に対して不当なリスクを引き起こす化学物質についての活動を禁止・制限する権限も与えられています。

◎汚染防止法(PPA)
 7枚目にいきますが、これは汚染防止法についてのスライドです。
 この法律で具体的な規制の権限を与えられているわけではありませんが、この法律は国家政策の主要な点を規定したものになっています。その一番重要な点は、汚染はできる限り汚染源において阻止する、あるいは低減しなければいけない、というものです。
 ある特定の汚染物質を規制するために、リコールをするということよりは、できる限り、その汚染を汚染源において阻止する、あるいは低減する、あらゆる規制阻止をとって防止・低減していくというものです。
 また、そういった汚染を汚染源で抑えられないということであれば、幾つかの階層を経ることになりますが、まず、環境に安全な方法でリサイクルするということがあります。その防止もできず、あるいはリサイクルもできない場合は、処理あるいは規制を行って、その汚染を阻止する。その汚染物質の投棄あるいは放出はあくまで最後の手段としてみなすという概念です。これが基本的な構造となっています。この2つの重要な法律で、アメリカでの化学物質管理を全般的に定めたものになっています。
 ほかに、それぞれ媒体特有の法律があります。大気汚染、水質汚濁、あるいは労働安全、ばく露に関する法律などもあります。汚染防止法、そして有害物質規制法は、ほかの法律ではカバーしていない部分を埋め、それぞれの法律がお互いに協力する形でアメリカでの目標を達成することができる支援をするものになっています。

◎TSCAによるリスク管理
 8枚目ですが、アメリカでのリスク管理に関して、有害物質規制法のもとでの規定を説明しています。
 新規化学物質と既存化学物質をこの法律のもとでは区別しています。新規化学物質を規制するコストのほうが、既に商業用に使われている既存化学物質を規制するよりも安くあがると考えています。ですから、新規化学物質の制限をする法的な閾値は比較的簡単に満たされることになりますが、既存化学物質の場合には制限を加えるための法律的な要件は厳しくなっています。

◎TSCAによるリスク管理
 9枚目のスライドですが、新規化学物質に関するプログラムが書かれています。新規化学物質に関しては、環境保護庁は情報が出されるまでは活動を阻止したり、あるいは制限する権限を与えられています。化学物質の効果の評価についての情報が不十分であると考えたとき、そして不当なリスクを提示する可能性があると判断したとき、あるいは相当な量が生産されている、そしてそれによって重大なばく露あるいは排出がこの化学物質についてなされる可能性があると判断した場合です。
 この場合には、EPAとしては、規制をする権限があるわけです。つまり、リスクの潜在的可能性があるときです。あるいは大量に生産されている、あるいは相当のばく露の可能性があるという理由があるだけでも、環境保護庁としては規制施策をとる権限があります。
 つまり、有害性、ばく露、化学物質のリスクについてきちんと情報が得られるまでは、そういった制限を加える権限があります。
 この不当なリスクについてですが、有害物質規制法はバランスをとるための規制となっております。EPAが環境、社会、経済的な観点もすべて考慮して、化学物質の管理を行うということになります。正しいバランスをコストと便益の間で図りながら規制していくということです。
 
◎TSCAによるリスク管理
 では、10枚目のスライドに移ります。
 新規化学物質及び既存化学物質についての管理ですが、EPAは、化学物質を直接管理する権限を持っています。十分な根拠をもとにして、ある活動が不当なリスクを引き起こしている、あるいは引き起こす可能性があると考えた場合です。不当なリスクを引き起こす可能性があるということをしっかりとした根拠のもとに判断します。また、ここでもコストと便益を考慮していくことになります。代替物質があるのかどうか、また私たちのとる措置が最も負担の軽い手段である、ということも判断材料となります。

◎TSCA新規化学物質プログラム
 11枚目のスライドです。
 新規化学物質に関する届け出プログラムについて書かれています。新規化学物質を商用に使おうと考える場合、つまり国内で製造する、あるいはこれを輸入する場合、EPAに対して製造あるいは輸入を行う90日前までに届け出をすることが義務付けられています。EPAでは、この届け出について調査し、そして化学物質に対して、措置をとる権限を持っています。
 アメリカの規制はほかの国と一部違うところがあります。事前にこうした届け出とともに、ありとあらゆるすべての情報を提供するというのではなく、そのときに入手可能な限りの情報を届け出とともに提出することになっております。
 このためにEPAでは、幾つかの分析ツールを使っております。これは、この30年の間にEPAでつくってきたものですが、構造活性相関あるいはSAR分析と呼んでおります。こうしたツールやモデルを使いまして、既に入手可能な化学物質の情報をもとにして、どういう危険が新規化学物質から出てくるのか、同じカテゴリーの化学物質であればどういう危険があるのかということを判断していきます。それによって、化学物質が不当なリスクをもたらすのかどうかということを判断していきます。
 こうしたツールはインターネットでも入手することができるようになっておりますし、世界各地でこうしたツールを利用していただいています。

◎TSCA新規化学物質プログラム
 では、スライドの12枚目に移ります。
 有害物質規制法の第5(e)のもとで措置をとる場合ですが、化学物質が不当なリスクを提示する、あるいは大量に生産される、あるいはばく露の危険性がある場合、私たちが必要と考える措置をとってリスクに対処することができるようになっております。ばく露あるいは放出に対する緩和を求めたり、使用について規制したり、あるいは試験をするように求めることもできるようになっております。これによって、化学物質についてさらに検討するための情報を求めることができます。
 また、有害性についてコミュニケーションをとるように求めることができますし、記録保持を要求する場合もあります。企業がしっかりとこうした要求に準拠しているかどうかを私たちのほうで見ていきます。また、交渉をもとにした同意指令という形で要求する場合もありますし、あるいはEPA から一方的に義務付けをするという形で企業に求める場合もあります。
 こうした命令は、製造前届け出を提出した企業にのみ適用されます。
 この製造前届け出あるいは第5(e)の命令を補完するようなものですが、これがスライドの13枚目に書かれています。

◎重要新規利用規則(SNUR)
 これは別の新規化学物質に対する規制ですけれども、既存化学物質に対しても適用することができますが、新規化学物質について説明したいと思います。重要新規利用規則(SNUR)というものです。
 EPAでは、特定の活動を重要な新規利用法であるというふうに指定することになりますが、指定に当たっては幾つかの要素を考慮します。どういう用途であるか、EPAとして検討する項目がスライドに書かれております。

◎重要新規利用規則(SNUR)
 この規制あるいは規則を適用する場合、14枚目のスライドに移っていただきますと、化学物質を重要な新しい用途のために製造または輸入するというのであれば、90日前にEPAに対して通知しなければならないと定めています。これによりまして、特定の新規用途については、EPAが事前に審査することを確保しています。重要新規利用規則では、製造あるいは化学物質の加工の前に私たちに届け出をすることになりますので、第5(e)の命令に沿わない形で化学物質を製造、処理する場合、これを事前に通知しなければならないということになります。ですので、アメリカで新規化学物質を製造したり、利用したりする場合にはこの義務が課されます。
 ですので、こうした化学物質を取り扱う企業は、全般的にこの規則が適用されることになります。これは新規化学物質だけではなく既存化学物質、両方に適用されます。既存化学物質について、全く新しい用途に使う場合には、事前にEPAに届け出てもらうことになっております。
 また、法律によりまして、EPAとしてとる手段がさまざまなものがありますが、例えば、直接、TSCAの第5(f)に関連する化学物質について措置をとることができます。これは不当なリスクを提示する化学物質ということになります。
 また、EPAの権限についてですが、おわかりいただくために幾つか統計を申し上げたいと思います。毎年、大体1,000件の90日前の届け出について製造事前通知をいただいておりますが、そのうち5%が規制の対象、さらに5%が製造業者が届け出を撤回することになります。これは、EPAが何らかの措置をとるということを考えた上で、企業側が撤回するものです。
 製造前届け出の場合は、調査の対象から外されます。さて、1,000件の製造前届け出についてですが、これに対して500ほど、例外の申請というものもいただきます。これは有害物質規制法の中で、法的な例外、あるいは規制の中でのEPAでとっている例外措置の対象となるものです。こうした例外措置の適用については、EPAが業界側からの情報提供をもとにして見直しをし、そして新規化学物質が商用に適用されるかどうか、これは例外の対象として商用に適用できるかどうか、新規化学物質のプログラムの中で大変重要なものとなってきております。500ほどの例外適用申請をいただいていますので、新規化学物質についての新しい届け出は、毎年、全体で1,500件ほどということになります。
 1979年以降、EPAは全体で4万5,000件で新規化学物質の届け出を受け取っています。それについては処理され、適切な対処がされています。
 それでは、もう一つ重要な有害物質規制法にいきたいと思います。これは15番目のスライドになります。

◎TSCAによる化学物質試験
 これは化学物質試験に関する権限として、この法律のもとでEPAが持っている権限です。この場合、EPAは規則を発効することができます。
 製造業者、輸入業者あるいは加工業者に対して、ある特定の健康あるいは環境影響についての試験を行う、あるいはばく露試験を行う、その他多くの試験を行うよう、要求することができます。これをすることによって、EPAは特定の調査事項を得なければならないことになっています。
 データが不十分だということで、化学物質が不当なリスクを提示するかもしれないというような結果、あるいは大量に生産され、そのために相当なばく露の可能性があるというような、2つのどちらかについて調査の結果を得なければならなくなります。最後の2つに関しては、新規化学物質の条項として設けられているものです。これは、ばく露調査の結果、その措置をとるかどうかについての閾値が低くなっています。つまり、化学物質を使うときには、EPAに対して試験を製造業者が提供し、ばく露、リスクについて情報を提供すれば規制の対象にならないかどうかということを決めるものになります。

◎TSCAによる化学物質試験
 16枚目にいきますが、規則を制定する権限のもとに、EPAは交渉によってメーカーあるいはその他関係者に行動を求めることができます。この交渉による合意、協定は、公開されたプロセスの中で行われます。関係者がそのプロセスに参加することを表明します、交渉に参加するわけです。その交渉の中で、政府そして企業、またはNGO、州の代表者、その他この問題に関心を持っている学会の人たちが、交渉に参加し、試験の条件について合意をします。
 さらに、執行力のある同意をもとにした協定を盛り込んでもいます。これは化学物質に管理に関してです。ある例では、汚染物質の排出、そして輸送の登録に関して、複数の企業に対して、ある特定の化学物質について排出レベルを低くするように求める、そしてばく露の削減要件を満たすことができれば、非常に高価な試験の要件を幾つか軽減して、放棄してもよいというような条件を課すものです。
 これによって、排出も削減され、ある特定の試験をする要件も要らなくなります。それによって、資金も節減できますし、その試験に使われる動物も保護することができます。

◎TSCA化学物質一覧
 17枚目になります。
 こちらでは、基本的な情報収集の権限について書いたものです。新規化学物質と既存化学物質について、そのインベントリーをつくっていることを申し上げました。既存化学物質のインベントリーに関してですが、このスライドではアメリカの化学物質のインベントリーについての基本的な情報が出ています。現在、8万ほどの化学物質がこのリストに収載されています。アメリカの枠組みの中では、新規化学物質がこのインベントリーのリストに加えられるのは製造が開始され、そして商業用に使われ始めたときです。およそ2万の新規化学物質がインベントリーに加えられます。
 一つここで重要なのは、適用除外、例外のもとで製造されている新規化学物質は、このインベントリーの中に入っていません。ですから、この2万という新規化学物質は、製造前、届け出の対象になっているものです。それがインベントリーに追加されます。
 また、規則制定の権限を使いまして、報告を定期的に求めます。そして、定期的にその情報の更新を求めます。インベントリーについての情報の更新です。これによって私たちの理解を最新のものにしておくことができます。つまり、どれだけの数の、そしてどの種類の化学物質が実際に商業用に使われているのか、どれだけの量であるのか、ということを把握することができます。
 最近、その規則を制定する権限が改定されまして、さらに追加的なばく露、そして使用に関する情報も求めることになっています。これによって、より良い理解を得ることができます。どういった使用方法なのか、どれだけの労働者がかかわっているのか、濃度はどうであるのか、そういった情報の高生産量の化学物質に関して入手することができるようになっています。

◎TSCAによる情報収集
 スライド18枚目にいきます。
 ほかにも多くの基本的な情報収集の権限がこの有害物質規制法のもとであります。これによって、記録保持あるいは報告をまとめることができます。それは、さまざまなトピックスに関してですが、例えば、化学物質の性質あるいは副産物あるいは生産輸入量、使用、ばく露、廃棄、処分のやり方等についてです。

◎TSCAによる情報収集
 19枚目にいきます。
 これもやはり情報収集に関してのそのほかの権限について書かれています。
 健康あるいは環境への影響についてのある特定の化学物質に関する試験の結果を求めることができます。これは業界が主導した試験で、私たちがこのように報告を求めない限りは、公開されないような情報を得ることができます。
また、こうした研究調査については、それをオンラインでも公開することにしています。ですから、ほかにこの情報を知りたいという人がいれば、簡単にその情報にアクセスし、それぞれの目的に使用することができるようになっています。

◎TSCAによる情報収集
 20枚目にいきます。
 こちらも情報収集の有害物質規制法のもとでの規定が書かれています。これは、産業界が相当なリスクの情報について、情報を提供する義務があるということを書いています。この規定のもとでは、化学物質を製造する企業は、EPAに対して、新しい情報が得られた場合には、即時にそれを報告しなければいけないことになっています。つまり、新しい情報では、相当なリスクがあるという結論か出た場合です。この規定は、非常に広範なデータの種類に適用されます。新しい毒性試験あるいはばく露に関する情報、あるいは毒性の副産物が存在する、あるいは不純物が商業用に使われている化学物質の中に存在する、そのようなものが存在することがこれまで知られていなかった場合などに適用されます。あるいは環境研究などについても適用されます。
 これは非常に重要な手段だと私たちは考えています。環境保護庁がこれを使って新しい情報について注視していくことができるわけです。それによって、どういったリスクがある特定の化学物質について考えられるかということを把握することができます。
 こうした情報収集の権限を使うことによりまして、環境保護庁のニーズを満たすことができます。収集した化学物質に関してのデータ、あるいは環境保護庁が義務付けた試験に関するデータなど、こうした収集した情報は、一般的に、一般の人たちに対して公開されます。産業界のほうで、ある特定の情報は社外秘、機密情報として扱うように求めることもできます。環境保護庁としても、そういった情報を保護する義務があります。その他の連邦政府の職員は共有するかもしれませんが、それ以外では開示できないことになります。
 機密の営業情報の訴えに対して、反論することができる条項もあります。それは、情報自由法の要求によって、一般の人がそういった要求を出すこともできますし、あるいは環境保護庁が不適切だと考えた場合には、企業側からの訴えに対して反論を申し出ることもできます。
 ここでの重要な規定は、健康と安全に関する情報は、一般的に機密情報には適用されないということです。これは非常に重要な条項で、これによって健康あるいは安全性についての調査、あるいはある特定の情報に関しては、一般に配布しなければいけないという考えに基づいています。

◎化学物質管理の例
 では、21枚目です。
 ここからはさまざまな有害化学物質規制のツールやプログラムについて、もう少し詳しくお話ししたいと思います。どのような形でEPAが実際にその権限を使って措置をとってきたか、お話ししていきたいと思います。
 ほんの一例のご紹介になりますが、おそらくこうしたお話をすれば、どういうことをやっているのか、具体的につかんでいただけるのではないかと思います。
 このスライドの21番目ですが、いわゆる「ペルフルオロ酸」についての活動ですが、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)あるいはペルフルオロオクタン酸(PFOA)として知られるものですが、大変残留性も高く、蓄積性も高い化学物質です。人あるいは環境の生物相の中で見られ、悪影響があるとして知られているものです。
 こうした化学物質の問題が最初にEPAで知られたのは、リスクについての通知が8(e)のもとで行われたときです。1990年、EPAはこうした化学物質が予想外の悪影響をもたらしているということを知るに至りました。こうした通知、またそのあとのEPAの内部での議論をもとにしまして、このペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の製造企業がこの製造をアメリカ国内では自主的にやめることになりました。この企業がアメリカ国内で唯一これを製造、輸入していた企業でしたので、私たちはここで重要新規利用規則を定めました。もし、この市場に新たに参入したいと考えている企業があるならば、そして、このPFOSという化学物質を使いたいというのであれば、EPAに対して事前通知をしなければならないというふうに定めました。
 このPFOSと関連しているのがPFOAですが、こちらもやはりかなり大きなリスクがあるという通知がなされましたので、EPAでは、どれくらいのリスクがあるのか、定量的に調べることにいたしました。そして、その中で懸念されることがいろいろあることがわかりました。それだけではなく、実は私たちの理解にはかなりのギャップがあることがわかりました。どういう経路でPFOAに対してばく露されるのか、あるいはこれがどのような形で環境中に放出されているのか、さらに人の体内に取り込まれていくのか、それについて理解がまだまだ不十分であるというふうに考えました。
 そこで、私たちは交渉をもとにした合意協定をして試験をしてもらったり、あるいは覚書などをEPAと特定の企業との間で結んだりしました。これは、もちろん文書にして署名する形で行われましたが、それだけではなく、自主的な試験も企業がやってくれるということになりました。
 こうした試験を通して集められたデータをもとにしまして、私たちは重要な問題について理解を深めることができました。PFOAやPFOSを放出する物質の生分解性はどうなのか、あるいは焼却した場合、どのようになるのか。例えば、市の焼却炉などで焼却した場合にどうなるのか。あるいはフライパンですとか、ダクトテープですとか、さまざまな商用で使われているものの中で、どのように放出されているのか。それから、こうした化学物質を製造している現場近くの環境モニタリングなども行いました。

◎化学物質管理の例
 スライドの22枚目に移ってください。
 こうしたことをもとにしまして、私たちは化学物質の管理を行うこととなりました。PFOAについてはリスク評価をまだ完了したわけではありませんでしたので、どれくらいのリスクがあるのか、結論を導き出したわけではありませんでしたが、しかし、この化学物質の懸念はかなり高いというふうに思いましたので、素早い措置が必要であると考えました。ということで、化学物質を製造している8社に協力を求め、PFOAの管理プログラムを行うことにしました。
 それは、ゴールが2つあります。まず第1に、PFOAの利用、製造を2010年までに95%削減するということです。そして、PFOA、それからその前駆物質あるいはより高次の同族体についても、同じように規制することになりまして。
 ということで、基準を設けまして、企業によって期限は違いましたけれども、2010年までには95%、PFOAあるいはその前駆物質については削減するのだ、というゴールを設定しました。
 さらに高い目標として、各企業に対して、PFOAを全くなくしていく、ということを求めました。PFOA、それからその前駆物質と同族体についても、同じく2015年までには完全になくすことを求めることにいたしました。
 このプログラムが始まったのが2006年からですが、業界に対して、ばく露あるいは放出のプロフィールを9年間かけて変えてくれ、ということを依頼したわけです。各企業に対しては、このコミットメントを達成するように求めましたが、これはアメリカ国内のオペレーションだけではなく、全世界的にも取り組んでもらうように依頼しました。というのも、この8社とも多国籍企業といいますか、いろいろな国で活躍している企業だったからです。
 この管理プログラムでは、各企業からの最初の報告を受けました。そして、2015年までの間、毎年10月に進捗状況を報告してもらうことになっています。
これは大変な重要な合意であると考えますが、それには幾つかの理由があります。特に全世界の人にとってこれは便益をもたらすだろうと思います。こうした企業はヨーロッパでも、日本でも、あるいは中国、韓国、それ以外の国でも操業しております。ですので、これはグローバルなコミットメントを求め、それに合意してもらったということで、こうした企業が操業している各国でもこのPFOA管理プログラムの恩恵を受けることになると考えております。

◎化学物質管理の例
 スライド23枚目に移ります。
 これは、また違った管理プログラムについて説明しております。高生産量(HPV)チャレンジプログラムと呼ばれております。
 1998年、EPAでは、化学物質で非常に高い生産量でつくられているものについてほとんど情報がないということに気がつきました。そこで、私たちはこうした化学物質を製造している企業に対し、スクリーニングレベルの基本情報を作成し、公開するように求めました。アメリカ国内で大量に生産されているものが対象ですが、「大量に生産」というのは、毎年500トン以上、生産されているものということです。およそ2,800種類の化学物質が対象になります。
 アメリカでのプログラムの実施ですが、OECDで行われていたプログラムとの整合性をとるような形で行いました。OECDのHPV SIDSプログラム、つまりスクリーニング情報データシートプログラムです。このような形ですることで、OECDのプログラムで行われているものと重複を避けることができました。逆にアメリカでしているプログラムもOECDのほうに貢献することができる、それによって国際的な化学物質分析のゴールに達することができると考えました。ここ数年間の間に、かなりの量の未公開あるいは新しいデータであったものが、こうしたスポンサー企業によって提供されています。1万4,000の研究結果について、このHPVチャレンジプログラムが始まった当時は公開されなかったデータがEPAにも提出されています。
 次のスライドでご説明させていただきますように、こうした研究結果は一般にも公開されています。
 また、規制の権限を活用して試験を要求することも行っています。高生産化学物質でスポンサーのついていないものに関してです。およそ200種の化学物質でそうしたスポンサーがついていない化学物質があります。対象となっている化学物質で、このプログラムでスポンサーがついていないのはわずか10%弱ということは、顕著な成果だと私たちは見ております。
 このHPVチャレンジプログラムに関して、提出されたデータは、私たちがそれを保管し、HPV有害データとして提供しています。また、基本的なばく露情報に関しての高生産量化学物質についての規制の報告の中にも盛り込んでいます。これは、私の先ほどの情報収集の側面でも触れたとおりです。
このHPVチャレンジデータとばく露情報を組み合わせることによりまして、EPAはリスク評価、そしてリスク管理の判断をこうした大量生産の化学物質について行うことに着手できるようになってきています。今年、それについて開始したところです。そういった活動を行うことによって、この化学物質でさらに追加的な何らかの活動が必要なものを特定することができます。高いばく露の試験、その他適切な試験を要求することができるようになっています。
 アメリカのHPVチャレンジプログラムは、日本のHPVチャレンジプログラムと非常に類似しています。日本のHPVチャレンジプログラムは、1年ほど前に発表されました。アメリカのHPVチャレンジプログラムと同様に、日本のチャレンジプログラムは、日本がそれによって必要なテストデータを入手することができるようになっています。日本のニーズを満たすために、ということです。そして、このプログラムの設計によって、日本の試験結果あるいは作業結果をOECDにも貢献されることになっています。それによって、アメリカその他の国も、その作業から恩恵を受けることができるようになっています。

◎化学物質管理の例
 次のスライドですが、これはHPVチャレンジプログラムに関する一般の人の情報アクセスについて書かれています。
 HPVチャレンジプログラムの情報システムを設けていますけれども、これは既に利用できます。HPVチャレンジで収集されたデータにインターネットでアクセスが可能です。ですから、政府の省庁、NGO、そして一般の人、とにかくインターネットのアクセスが可能な人であればこのシステムの中に入って、すぐにこの情報を入手することができます。検索能力もかなり用意されています。その能力については今後もさらに改善されていくでしょう。

 アメリカのこの貢献は、世界各国で行われているものの一部に過ぎません。この情報が化学物質について収集され、提供されているわけですが、そういった観点からアメリカのEPAは、欧州委員会、そして日本、カナダとも協力して、OECDという枠組みの中で、世界規模のHPVのグローバルポータルを開発しようとしています。このグローバルポータルができ上がれば、そこに行けば1カ所で化学物質の情報を得ることができます。EU、そして計画的にはカナダ、アメリカの持っている情報も得られる、そしてその他の政府の情報も得られることになります。ですから、これは非常に重要な開発であり、OECDがこれによって多くの重要なWSSDのコミットメントを満たす手段になります。化学物質についての情報をグローバルに提供することができるようになります。

◎環境管理(stewardship) の促進
 25枚目のスライドにいきます。
 このスライドでは、私たちが実施しているアメリカでの全体的なプログラムの環境管理の側面が書かれています。これによって、環境管理の役割を促進しています。リスクベースのアプローチを補完するものになります。リスクベースのアプローチとは、これまで私がお話ししたものです。
 こちらでは、革新的な計画を開発し、汚染防止そして環境管理に傾注するようにしています。ここでの基本的な考え方は、企業、州、そして先住民の種族等に対して権限を付与し、ツールやインセンティブを与え、より安全なそして環境にやさしい化学物質を開発、生産、供給、購入、使用することを進めています。これをするに当たって、EPAは主要な利害関係者と協力して、わかりやすく、使いやすい情報を提供しています。
 さて、この環境管理の概念のもとで行われている取り組みの例です。一つ、この取り組みの顕著な例としてあるのが26番のスライドにあります。

◎環境管理(stewardship) の促進
 環境適合設計(DfE)計画の計画です。これは産業界とその他利害関係者と協力して、リスクを低減しています。科学技術に関しての理解を活用することによって行っています。パートナーシップを組んでいますが、それによって、健康や環境に対する配慮をある特定の化学物質のパフォーマンスに盛り込んでいく、あるいは代替物質のパフォーマンスに盛り込んでいく。そして従来的な技術、材質、プロセスと、革新的なものとを比較する、それによって問題の多様性をきちんと考慮することができるようにしています。その問題とは、ある特定の化学物質に関して、問題の多様性があることを理解できるようにする、あるいは代替的な化学物質についての理解、あるいは代替的な技術である特定のニーズを満たすことができるということについての理解も高めることができるようになります。
 そして、このパートナーシップの努力においての参加、変更を推進する手段としてさまざまなツールをEPA が提供しています。そして、EPAは、専門知識も提供し、また懸念事項に関して、私たちの見方も提供しています。
 
◎環境適合設計(DfE)計画
 このDfEのパートナーシップの一例が27番に出ております。これはDfE家具難燃性パートナーシップです。
 このパートナーシップには、家具産業、化学物質製造業者、環境保護団体、そして火災安全擁護者、そして政府の代表者、連邦政府の省庁、その他州政府などが参加しています。
 ここでの焦点は、PentaBDEという、PBDEの一種ですけれども、アメリカの製造業者が自主的に生産を停止しました。環境に対する影響、人体に対する影響についての懸念があったためです。この生産停止の行動の前に、他国でもいろいろな措置がとられていました。例えば、EUがこうした化学物質を規制対象としていました。さまざまな懸念、そして問題があったために、アメリカのメーカーも商業用には使用を停止することになりました。
 これはメーカー側にとって非常に重大な判断でした。このPentaBDEは、アメリカの低密度柔軟性ポリウレタンフォームの家具の主な難燃剤として使われていたからです。いろいろなことについて考慮しなければなりませんでした。リスクの問題は、非常に効果的な難燃剤が生産を停止される、それは健康、環境上の懸念から停止される。そうなると、代替物の難燃性の性能はどうであるか、そして代替物質の毒性の性状はどうであるか、代替物質のその他の属性はどうか、コストはどうか、エネルギーの要件はどうであるか、そういったことについて考えなければなりませんでした。
 このパートナーシップのもとで、こうした問題はすべて取り組まれました。それも協調的な形で行われ、そして情報は公表されました。それによって、より安全な難燃剤が家具に使われるようにしました。
 リアルタイムベースで意思決定がフォームの製造業者でとられるようになりましたし、また化学物質の製造業者でも、リアルタイムで意思決定ができました。つまり、どういう代替物質を柔軟性フォームに使ったらよいのか、それによって、家具の難燃性を高め、また将来的な環境あるいは安全衛生上の問題を引き起こさないようにするということになりました。
 このプログラムは、各企業が意思決定を最大限有効にし、さらにパフォーマンスも達成し、さらにコストも最低限に抑え、そしてより安全な、環境にやさしい代替物質を探し、さらに難燃性という、家具に使われる要件も満たすことができました。

◎環境管理(stewardship)の促進
 では、スライド28枚目です。
 「持続可能な将来のプログラム」というものがありますが、これは新規化学物質に関するプログラムの一つです。
私たちは、業界に対してSARのツールを提供しました。これはEPAが環境、健康に対する影響を評価したり、そのほか化学物質の性質について評価し、その結果、新規化学物質については、研究開発段階からこうしたツールを使ってもらえるようにしております。
 こうしたツールを企業側に提供することによりまして、さらには技術支援、教育、規制による奨励、また認識を高めることによりまして、企業のほうもより良い代替物質を選ぶことができるようになりました。しかも、パフォーマンスの要求は満たしながら、それに伴うリスクや危険性は減らしていくことができる。 ですので、新規化学物質が導入されるときには、より環境にやさしく、より安全なものであるということを確保する上で大変重要なプログラムとなっております。
 
◎環境管理(stewardship)の促進
 また、環境管理に関する別のプログラムですが、サプライチェーンの中でやっていくことができるものです。スライドの29枚目ですが、例えば、自動車業界あるいは部品メーカーなどが協力することで、サプライチェーンを通して、より効率性を高め、一方で環境に対する影響は減らしていくことができるようにするためのプログラムです。サプライチェーンを通して使われる製造プロセスなどで、その影響を減らしていくためのものです。これは業界を通して、協力しており、またEPA、アメリカ標準技術局(NIST)でも製造拡張パートナーシップ(MEP)というプログラムを持っておりますが、それを通しまして、専門知識を各企業に対して提供しております。それによって、パフォーマンスを高め、オペレーションについてはより効率化をするということになります。
 そして、EPAのほうは、エネルギー効率あるいは有害廃棄物を減らしたり、より安全な代替物質を選べるように支援しております。そして、OEM企業との関係を通しまして、現在使われている製造のための仕様書を見直し、ここをこう変えればより問題を抑えることができる、あるいは効率を高め、環境パフォーマンスが良くなるということを指摘していきますが、それによってOEM企業も製造のための仕様書を変えて、より効率的で、さらに環境にやさしい製品をつくっていくことができるようになります。
 しかも、環境への影響を減らすだけではなく、利益も高めることができます。このグリーンサプライヤーズネットワーク、環境にやさしい化学物質供給者ネットワークのプログラムあるいは先ほどご紹介したプログラムについてもいろいろな調査をしておりますが、どのような便益がこうしたプログラムから得られるかも私たちは調べております。

◎課題と将来の取り組み
 スライド30枚目です。化学物質の問題に取り組んでいろいろな成果を上げてまいりましたが、それでもまだ課題は残されております。そして、将来的に、さらにEPAとして取り組んでいくべきことがあると思いますし、そのほかの関係者にも努力していただかなければなりません。
 まず、新しい技術がいろいろ出てまいりました。それによって、商業製品に使われる材料が大きく変わるでしょうし、そこから環境中に放出される物質も変わってくるでしょう。ナノ技術、バイオ技術による製品などが考えられます。また、試験のあり方、あるいはモニタリングのあり方を変える技術も出てきております。例えば、ゲノム情報によって、化学物質のゲノムに対する影響が理解されるようになりました。どういう遺伝子のスイッチがオンになるのか、オフになるのか、そういう理解をする、それによってどのようにして化学物質が毒性を帯びてくるのか、あるいはその毒性がなくなっていくのかということも考えていくことができると思います。
 また、生物モニタリング情報もかなり増えてきております。アメリカでも人間のバイオモニタリング、これはCDCで行っておりますが、これを保管しているのが環境モニタリングプログラム、あるいは生物モニタリングプログラムです。こうしたものを理解することで、どういう化学物質が人や環境の中に存在するのか、そのレベルが高くなっているのか、低くなっているのか、もし増えているのであれば、その結果はどういう影響があるのか、といったことの理解を深めることができます。
 また、毒性ということそのものの理解も変えるものが出てきました。例えば、コンピュータを使った毒性研究、あるいは新しい試験の方法なども出てきましたので、必ずしも動物実験をしないでも毒性について理解を深めていくことができるようになりました。
 幅広いツールが開発され、それを使って、毒性のメカニズムについて私たちは理解を深めることができましたし、またどういうメカニズムが働いて、動物に対して毒性が働くのかといったこともわかるようになってきました。
 それから、薬物動態研究という分野もあります。どんなふうに化学物質が薬物動態的な影響を及ぼすのか、それが毒性にどう影響を及ぼすのか。また、そうであるならば、動物実験をどのように理解したらいいのかということも変わってまいります。
 こうしたことを総合しますと、全く違った形で、これから先10年、15年、私たちはこの問題に取り組んでいくことができるのではないかと思います。
 
◎課題と将来の取り組み
 では、最後のスライド、31枚目です。
 ここでは、情報技術により、私たちがどのようにデータを収集し、管理し、それを普及し、使用していくか、これが革新的に変わっていくだろうということを書いております。電子的な形で情報をアメリカでは提供したりしています。あるいは、機密情報についても非常に高度な暗号化をかけて提出していますので、データの収集、管理あるいはその情報をどのように効果的に普及するか、それが情報技術によって変わっていくでしょう。また、社会的な変化、これも化学物質管理で一番重要なものは何かということを決定していくでしょう。各国それぞれが、何が最も重要な課題であるかを決めていくことになると思いますが、化学物質管理ということがアメリカでは関心が高まっています。そのほかの国々でも同じだと思います。
 今、最も重要な課題は、企業、政府、そして個人個人がこうした課題にどう取り組んでいくかということではないでしょうか。それによって、持続可能な経済を構築し、持続可能な環境も構築していく。その中でどういう課題があるのかをしっかりと理解し、その課題に取り組んでいくことができるようになるでしょう。
 以上です。ありがとうございました。(拍手)
 

 
会場1

質疑応答
(司会)
 ありがとうございます。それでは、質疑応答に移らせていただきます。お一人の方のみ、受け付けさせていただきたいと思いますので、ご質問のございます方、お席にてお手をお挙げください。どうぞ。

(質問者A)
 一つご質問させてください。
 アメリカのEPAで化学物質のこういった管理をされていることはよくわかっておりますが、実際に消費者が製品として化学物質にばく露される状態で、私たち自動車会社などファイナルアセンブリメーカーはどういったものが含まれているか、また消費者もどういったものが含まれているか、ほとんどの場合、わからないことが非常に多いのが現状だと思います。そういった情報開示、サプライチェーンを通じた情報の流し方は、アメリカは今後どのように考えられているのでしょうか。

(Mr. Charles Auer)
 大変良いご質問をいただきました。その点についてはしばしば指摘される点です。州政府の人、あるいは消費者団体の代表の方とお会いするときにはよく指摘されます。
 この問題は、少なくとも環境保護庁の観点から申し上げますと、企業が情報を機密情報だと主張する権利はあるわけです。その情報が不適切な情報であるとか、あるいは機密情報ではないという反論がない限り、環境保護庁はその訴えを尊重します。
 ただ、問題として指摘されたのは、非常に重要なのは、川下使用者がそのニーズを知らせるということだと思います。供給業者に対して、そのニーズを知らせることです。そうした情報を安全な形で共有するやり方はあります。つまり、化学物質の下流使用者が安全に共有するやり方があります。それによって御社のような企業がどういった化学物質がさまざまな製品の中に入っているかということを知ることができます。
 それが完全に満足いくやり方とは言えませんけれども、現在のアメリカでの法的枠組みを見てみますと、万能薬のような解決策はないわけです。

(司会)
 よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 ただいまの時間は、アメリカ環境保護庁汚染防止有害物質部長Charles Auerさんより、電話にしてご講演をいただきました。Charles Auerさん、ありがとうございました。

(Mr. Charles Auer)
 この機会をいただきましてありがとうございました。実りの多い会議となることをお祈りしております。ありがとうございました。(拍手)

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(司会)
 それでは、続きまして、「カナダにおける化学物質管理への取組」についてご講演いただきたいと思います。ご講演くださいますのは、カナダ保健省ホリゾンタル・インターナショナル・プログラム課長Patricia Hoesさんです。それでは、よろしくお願いします。

3.カナダにおける化学物質管理への取組:保健と環境に焦点を置いて

 
hoes

(Ms. Patricia Hoes)
 皆さま、おはようございます。日本政府の皆さま方にこのようにお招きいただき、お話をする機会をいただくことに謝意を表したいと思います。森下さんから、このような会合を開きたい、そしてまたこのトピックに関して関心のある方を何人か呼びたいと言われたのですが、これほど人気があると思いませんでした。これほど大勢の方々が来てくださったと。しかも、雨が降っている朝に来てくださったことを大変感謝申し上げたいと思います。日本政府はほんとうにすばらしいリーダーシップをこの分野において発揮されたと思います。私個人としても、私がここに到着するまで、桜の開花を遅らせていただいたことに対してお礼申し上げましたと思います。
 カナダにおいて、私たちは化学物質管理に関してはかなり包括的な取り組みをしております。これは、大勢の人たちがセクター横断的に参画するべきことであると思っております。
 皆さま方、寝ないように質問したいと思います。
 公共セクターないしは学者の先生方は何人くらいいらっしゃいますか。あまりいらっしゃいませんね。
 では、民間セクター、ないしは産業界からの方、どのくらいいらっしゃいますか。もう少し多いですね。
 では、どこから来たか自分はわからないという方、いらっしゃいますか。哲学者も必要ですから、たまには。

◎カナダ全体図
 私は、いつもプレゼンテーションをする際に、地図をお見せするようにしております。まず、最初にカナダの大きさを見ていただきたいと思うからであります。
 それから、私たちは連邦制度をとっていることをわかっていただきたいと思います。州政府機関で取り組まなくてはいけないということで、お互い、何かを強制することはできません。ですから、私たちは集団的アプローチをとらなくてはいけないと思っております。連携が必要であるということであります。
 また、私たちカナダは、化学物質はそれほど製造しておりません。例えば、これからあとのEUのプレゼンテーションを見ていただきますと、「その他」の中にカナダが入ってくるのですね。そのくらい少ないというところでありますけれども、私たちが見る限りにおいて、この地図を見て、ぜひ理解していただきたいのは、人口はほとんどアメリカ国境沿いに集中している。北に行きますと寒いので、南へ集中しがちなのかもしれませんけれども、北の部分には先住民のイヌイットの人たちがいます。そういった中で、DDTですとか、PCBといった汚染物質の影響、これは特にこういった先住民に被害が大きい。彼らは伝統的な食事をしておりますし、伝統的な生活様式を維持しております。その中で、水銀ですとか、鉛ですとか、そういったものが蓄積されていることが確認されております。
 ですから、私たちとしては、ぜひ全国的に、すべての当事者が参加する形で取り組みたいと考えております。

◎プレゼンテーション概要
 さて、化学物質の管理ということについて考えたいと思いますけれども、カナダにおいては、健康・環境に関する取り組みが中心となっております。皆さんと違いまして、私は保健省の者であります。ですから、カナダにおいて、私たちは健康と環境の両方を見ます。「健康と環境」は、一つの言葉として捉えられていると言ってもいいと思います。 
 私たちカナダの環境保護法があります。これについて簡単に申し上げますけれども、これはまさに私たちの化学管理の中核をなす法律であります。また、既存化学物質とカテゴライゼーションという、最近のものにおいてお話ししたいと思います。
 それから、また全く新しい、この化学物質管理計画、最後に国際的な機会について、お話ができればと思っております。

◎カナダによる化学物質管理への取り組み健康と環境に焦点を置く理由
 疑うことなく、化学物質は経済、そして社会に大きな貢献をもたらしております。しかしながら、同時に、化学物質というのは、水から、食物、衣服、また体内にも蓄積しております。こういった化学物質のほとんどはリスクを伴わないものであります。しかし、カナダ政府、またカナダ全体がますますこういった毒性のある物質に対するばく露、また環境への影響を危惧するようになっております。例えば、人の健康と環境は緊密に関連していることがわかっております。自然環境の劣化、有害物質が存在するということは、人々の健康に大きな影響をもたらしています。カナダにおいて、がんの発生率が高まっているというこことがありますし、また発達においても問題が生じております。ですから、今現在、ますます新しい化学物質、例えばバイオテクとかナノテクといったものに至るまでさまざまなものがある中で、こういった化学物質の管理の課題、困難さはますます高まると思っております。
 カナダにおいては、多少違ったアプローチをとっております。私たちは、持続可能な開発のためには、統合的なアプローチが必要であると。ですから、こういった化学物質がもたらす影響について、統合的な管理が必要であると考えております。
 私たちは、化学物質一つひとつを管理するのではなく、もっと成果を中心に見るべきであると。ですから、私たちの方法は、もっとバランスのある、近代化されたものにしなくてはいけないと考えます。
 では、成果志向型のアプローチは何なのかと聞かれますけれども、「着手したものは最後までやり通す」という意味であります。私たちの本来のねらいは、優れたリスクマネジメント、そして化学物質のリスク評価をするのは、環境に対して、また人体に対してプラスの効果をもたらしたいためであります。ですから、カナダにおいては、化学物質を見て評価するだけでは不十分であると考えます。私たちとしては、それをきちんと管理することが重要であると考えております。
 そして、健康という観点からいいますと、保健省ですから多少PRをさせていただきたいのですけれども、私たちのヘルスケア、医療制度ですけれども、世界のほとんどがそうでありますけれども、医療費がますます高まるといった問題に直面しております。私たちは、これはいい投資であると考えます。例えば、医療費を下げたいといった場合、とにかく病気になる人を減らせばいいのです、それだけです。ですから、私たちはこういった活動がコスト削減につながると確信しております。

◎カナダにおける健康増進・環境保護体制
 カナダにおいて、健康、そして環境を保護する、これは共有された責任であります。それぞれの州から連邦政府に至るまでの責任であります。申し上げたとおり、25の異なる法律が今あります。何らかの形で健康、そして環境に関連するものであります。一部のものは、アメリカのプレゼンテーションに出てきたものに近いと思います。例えば、有害物質ですとか、食品、医薬品ですとか、そういった中で、カナダの環境保護法が重要な法律となっております。

◎カナダ環境保護法
 このカナダ環境保護法、略してCEPAと呼んでおりますけれども、これは汚染の防止、そして環境保全、そして人体を保全するものであり、持続可能な開発を目指すものであります。
 さて、CEPAの指針でありますけれども、これは「汚染防止」があります。これこそが、汚染の対策としては最善である、最初から予防するというものであります。次に、「予防原則」があります。もし、私たちが何らかの化学物質の影響が命にかかわるものであると考えた場合、科学的に立証されるまで待つことはありません。また、同時に「政府間協力」が一つの指針となっております。これも私たちにとっては大きな課題であります。申し上げたとおり、いろいろな政府の部署があります。その中で調整を図るということ、これは困難なことであります。私が最初に経験したNGOとの会合のことをよく覚えておりますけれども、そのとき、「鉛」がテーマでありました。全員が「鉛はいいものではない。人体に入った場合、特に子どもにとっては安全ではない」と言われたものでありました。
 皆さん、非常に情熱的に、そして多少怒鳴り声で議論し、鉛の塗装はいいものではないと合意したのは2年。ところが、それを除去するのに20年かかってしまいました。というのは、いろいろな人たちが、例えば塗装、ペンキの製造にかかわっていたからであります。カナダだけではありません。こういった管理する課題はいろいろなところに見られると思います。
 それから、もう一つ、このCEPAの指針、これは全国的な基準を設けるというものであります。私たちは、できるだけ国家統一の基準、アプローチをとろうということもしております。汚染者負担原則もあります。個人であれ、企業であれ、ないしは利用者であれ、汚染にかかわった者は、すべて浄化するための負担をすべきであると考えます。
 もう一つは、科学に基づいた意志決定という指針があります。ここでは、科学が意志決定において非常に重要な役割を果たすという考え方があります。
 私たちは同時にまた社会経済、技術的な側面も見ております。環境保全といっても、こういった側面も重要であると考えます。申し上げたとおり、先住民が非常に多いカナダでありますので、私たちとしてはこういった伝統的な知識に頼る部分も多いと思います。
 またCEPAのもう一つの要素、最も重要なものと言っていいと思いますけれども、市民社会の参加があります。CEPAは、いろいろな機会の場において、個人であれ、NGOであれ、また学者であれ、だれでもそうでありますけれども、発言する機会を提供しております。意志決定に参加する機会があります。
CEPAにおける一つの課題、これは組み込まれた特徴と言ってもいいと思いますけれども、できるだけ法律をダイナミックなものにしようと。具体的には5年に1度、法律を見直し、果たして機能しているのか、何かを見落としていないかということをチェックします。特に、私たちは、今、5年目に入っておりますので、今まさにCEPAを見直す年に入ってきております。このプロセスが終わった段階で、政府から見て、私たちは非常に忙しい年になるでしょう。法律の改正を手がけなくてはいけなくなりますので、忙しくなりそうだと思います。

◎カナダ環境保護法
 さて、このCEPAの重要な要素ですが、これは申し上げたとおり、保健相と環境相、双方によって管理運営されております。私がお招きいただいたのもそういった背景があります。
 それから、化学物質の管理は、できるだけ環境また人への影響のリスクを低減することであります。CEPAの中では、新規物質、例えば排気ガスですとか、燃料ですとか、また危険物質、廃棄物、例えば事故による流出などもあります。私たちは、いろいろな新規物質の評価、管理をするということ、これがCEPAの重要な柱であると考えております。
 この会場は業界の方が多いということでありますので、CEPAにおいてどのようなリスク評価、管理をしているかについてお話ししたいと思います。
 私は科学者ではありません。私はむしろ政策の専門であります。ですから、厳しい質問があれば、自分で答えられなくても人は紹介できますので、そのようにお願いしたいと思います。
 さて、リスク評価でありますけれども、これは化学的な、化学物質の分析であります。リスクというのは、例えば物質の特性ゆえにもたらされる危険、またどこでそういったばく露が起きているかを見ます。ですから、果たして、そこで管理する必要があるのかどうかを見ます。そして、どういった種類の管理が必要であるかを検討します。それによって、できれば、そのようなリスクを軽減する、ないしは完全になくすことを目指します。しかも、それに際しては商業的な活動、また産業の発展を損なうことなく、やりたいと考えます。このプロセスで目指すリスク管理は、いろいろな条件を考えます。例えば、その化学物質がいかに環境に放出されるのか、だれが使うのか、どういった方法で使うのか等々を見ます。
 このような管理方法は、規制ですとか、どのくらいの使用量まで認めるといった規制もあるでしょう、またガイドラインをつくるという方法があります。例えば、行動規範のようなものをつくります。きちんとその化学物質の管理ができているとわかった場合、規制するのではなく、その代わりに、例えばこの取り扱い方について合意をしましょう、といったアプローチもあり得ます。
 さて、新規物質対既存物質の関係についてお話ししたいと思います。きょうのほとんどの話は、既存物質を中心にしたいと思いますけれども、しかし、ごく簡単に、こういった新規物質についてお話ししたいと思います。
 カナダはアメリカのモデルと近いと思いますけれども、新規物質が出てきたとき、ほとんどの場合は業界側がこれが何らかの有害な影響をもたらさないことを担保しなくてはなりません。ですから、個人であれ、製造業者であれ、何かを製造する、輸入するといった場合、それは政府に通知しなくてはならず、それによって評価が始まります。それによって、カナダは新たな汚染源の発生を防ぐことができます。こういった物質はカナダの市場に上市されますけれども、例えば完全に有害性がないかどうかをきちんと評価する前に出ます。毎年800くらいのものがチェックされますが、通知時点から決定まで大体60日間かかります。
 既存物質に関してですけれども、これはもっと課題が多いと思います。
 さて、既存物質でありますけれども、2万3,000種ほどの物質が既にCEPAが出る前に存在しておりました。このCEPAの一番新しいバージョンですけれども、5年に1度見直しますから、一番新しいバージョンと言っていいと思いますが、カナダ政府に対してすべて2万3,000種の化学物質のカテゴライゼーション、分類をするようにとの命題が出されました。幸いにも、かなりのものが評価済みでありましたので、このカテゴライゼーションは7年くらいで済みました。
 この間、私たちは79の化学物質のグループ、ですから物質の数にしますと1,000くらいの化学物質の評価を行うことができました。

◎分類プロセス
 さて、このカテゴライゼーションのプロセス、分離プロセスですけれども、新たな医学的な表現でありますけれども、このカテゴライゼーションというのは、完全なる評価ではありませんでした。伝統的なやり方ではありませんでした。むしろ、トリアージのようなものでありました。
 私たちは幾つかシンプルな、しかし科学者が仕事をしなかったということではありませんけれども、比較的シンプルなプロセスとなっておりまして、暫定的にそれを見るということをしました。カナダの保健省、環境省は、それぞれ2万3,000物質を見るにあたって、似ているが、多少違う基準を使っております。というのは、有害物質は人に対する影響と環境に対する影響が違うケースがあります。例えば、ものによっては、動物には大きな影響がある、しかし人に対しては影響が少ないというケースがありますし、逆も真なりでありまして、残念ながら、例えば環境において発現するのに時間がかかった、ところが人に対する影響は早い段階であらわれたというケースもあるでしょう。
 ですから、いろいろな化学物質を健康という観点から見た場合、私たちは当然、人に対する毒性を見ますけれども、同時に、人のばく露の危険性も見ました。そのための一つの要素として、例えばある物質が非常に毒性が高い、しかしながら非常に限定的なエリアでしかこれはばく露しないといった場合には、そのリスクは非常に少ないがために、果たしてそういったものに関してきちんと管理すべきなのかということを考えてしまうでしょう。
 一方、環境という観点から見ますと、彼らはその物質が果たして残留性があるのか、蓄積性があるのか、また動物等に関して毒性があるのかどうかを見ました。

◎カテゴライゼーションの結果
 朗報は、私たちはこのカテゴライゼーションを時間どおりに終えることができました。2006年9月に終えることができました。もう一つ良かったことは、この2万3,000の既存化学物質のうち85%はそれ以上何もしなくてもいいという結果になりました。
 しかし、悪いほうの話もあります。このプロセスにおいて、4,300種類の既存化学物質について問題がありました。4,000種類はCEPAの基準を満たしましたが、人の健康の観点から、ばく露から見て、懸念されるものに関してはもっと検討すべきということで、そういったものが300種類ありました。
 こういったカテゴライゼーションが新しい情報をもたらしてきました。このカテゴライゼーションでありますけれども、これまでアメリカでやってきたもの、またEUでやってきたものとは違っておりました。というのは、私たちは化学物質を大量につくっておりませんので、リスクアセスメントやリスクマネジメント、こういった大量生産をするものに関してする方法は、私たちにとってはあまり意味がありませんでした。
 ということで、すべての化学物質――既に存在したものに関して、そして新たに存在するものに関して、全部を見ようということになりました。

◎化学物質管理計画
 環境上の問題は、現政権の優先課題です。そして、目に見える結果をカナダの健康の改善のためにもたらすというコミットをしています。そのために、昨年の秋、カナダ政府は包括的な取り組みを環境に関して行うようになりました。
 その一つの要素が、化学物質管理計画の発表です。この計画の目標は、基本的には、評価、そして規制のプロセスをCEPAのもとでの化学物質に関して加速させる、そして目標は2020年です。まだまだ先ということですけれども、しかし、こうした化学物質管理計画のようなシステムがないと、おそらくは「2050年くらいまでにはできるかな」ということになりがちです。これまでの化学物質についての評価は、一つずつ見ていたということですから、おそらく1年に10~12の物資しか見れなかったわけです。
カナダの一般の人たちに聞いても、いつも注意を払っているわけではありません。「2万3,000種類、だれもまだ検討したことがない化学物質がある」と言ったのは、国民にとって実際には衝撃だったと思います。そして、実際には4,000種類、特定したと。そして、あと50年後に、これについての管理を発表する、あるいはインパクトがどうであるかを発表する、と言ったのでは、国民は納得しません。ですから、もう少し積極的にやる必要があったわけです。

◎化学物質管理計画
 新しい化学物質管理計画ですが、その主な目的は、既存化学物質の枠組みをこの分類によって特定された優先上位付けに基づいて強化するということです。
 政府の活動をより調整を図っていく、統合していくということです。
 先ほど、一つの課題として、私たちのシステムは少し細分化されているということを言いました。有害物質を管理している人が殺虫剤の管理あるいは害虫の管理の人たち、あるいは食品の安全性を管理する人たちとうまく話し合いをしていないかもしれません。ですから、この計画があることによって、もう少し協力が強制されることになります。それが一つプラスの点だと思います。
 もう一つの要素としては、産業界の役割がさらに強化され、積極的に化学物質に関するリスクを特定するということを働きかけていくことになります。これは、カナダの政府にとっては、産業界が非常に重要な役割を果たす存在と見ています。
 もう一度、挙手で皆さま方にお聞きしたいのですけれども、環境と人間の健康を保護するべきか、というふうに皆さまに聞けば、おそらく、皆さま、手を挙げられると思います。そういう意味では目標は全員一緒なわけです。ですから、悪者はいないということです。
 最後に、政府の説明責任を強化するということがあります。特に、モニタリング、監視、研究、そしてリスクのコミュニケーションに関しての活動を強化するということがあります。リスクを伝えるということは、この新しい計画の中の非常に重要な要素です。
 カナダの国民に対して、最新の情報を提供する、それは科学を根拠にしたものである。有害化学物質に関しての情報提供をする、そのために新しいウェブポータルを立ち上げました。これはカナダの保健省の観点から見ても、懸念がある場合、あるいは懸念があるとわかっている場合に、このように管理していますと、積極的に情報を出せば出すほど、国民からの信頼も得ることができるということがわかったからです。
 そうではなくて、新聞が報道するのを待っている。そして、それがもしかしたらきちんとした科学の根拠に基づいていないかもしれない。それに対して、「待っている」ということであれば、事後処理を迫られるということで、あまり効果的とは言えません。

◎23,000種類から4,300種類の化学物質へ
 分類の見方ですが、まず、500の最優先物質を特定し、また2,600種類の中程度の優先物質、1,200種類の低優先度物質を特定しました。私たちの課題としては、これについてどのように作業を進めていくかということです。4,300種類ということであれば、一時に全部を行うことはできません。ですから、もう少し現実的なアプローチをとりました。化学物質管理計画によって、実際的な、体系的なやり方ができるようになったと思います。
 主な要素としては、リスクや有害性の程度はどうであるか、どういった商業的な活動がカナダで行われているか、どのような継続的なリスク評価、そしてリスク軽減のものが今あるか。最後に一番重要なこととして、どのように国際的にかかわっていくかということです。そして、作業をいかに分担していくことができるかということです。それについては、また後ほどのスライドでご説明します。

◎化学物質管理計画-構成
 先ほど申しましたように、化学物質管理計画の焦点としては、まず優先順位付けをしていくということです。特定したものの中で最悪のものから取り組んでいこうということです。そのときに、規制、執行ということがあります。5つの化学物質がこの分類プロセスを通じた結果として、すぐに管理しなければいけないということになりました。ですから、それについての措置が今とられています。
 また、CEPAによって、実質上の廃絶リストを作成することになっています。この中で、比較的短期間に存在する化学物質の量を削減し、環境上に存在するよう、最低限に抑える必要があるというもののリストを作成したということです。
 アメリカでも触れられましたが、産業界に対するチャレンジプログラムがあります。人または環境に対して有害性を持つ可能性のある、200種類の化学物質を最優先の物質として特定しています。産業界に対して、私たちが働きかけて、情報を提供してくれるように求めています。どのように、安全にこういった化学物質を管理しているか、についての情報です。基本的には責任は産業界側にあります。つまり、「化学物質を使用する際に、有害性はつくり出していない」ということを証明する責任があります。このチャレンジプログラムの中で、200種類の化学物質を別個に扱い、50~60種類くらいずつに分けて、3カ月ごとに結果を公開しています。産業界は4~6カ月間かけて、私たちから求められた情報を提供することになっています。これによって、リスク情報について、改善可能なところを改善していくことができます。
 また、産業界が良好事例を持っているということを実証する機会でもあります。化学物質の管理について、きちんと行っているということを実証するチャンスにもなります。さらに、環境への排出、そしてばく露、化学物質の使用についての情報を収集する機会にもなります。
 政府は、こうした産業界から得た情報を活用しています。そして、国際的な情報源から同じ化学物質について得られた情報も活用していきます。また環境保健グループから得た情報も活用し、その中でベストのアプローチは何かということを決めていきます。
 200種類の化学物質については、3年間で取り組むことになっています。先ほど申しましたが、通常だったら1つの化学物質について3年かけているわけですから、これは全く新しいやり方だということが言えると思います。
 もう一つの要素は、再導入、新規用途の規制です。アメリカも同じような取り組みがあったと思いますが、重要新規活動規制と呼んでいますが、これはSNACと略しています。
  この分類プロセスの中で、あらゆる化学物質について検討したということで、そのうちの多くがあまり現時点では使われていないということにも気づきました。2006年12月に、政府がこの重要新規活動規制を発表しました。150種類の化学物質が環境に対して高い有害性があるということで特定し、それを発表しました。今後、もし産業界、そして製造業者がその化学物質を再び使いたい、あるいは何か別のアプローチに再導入したいというときには、その化学物質を新規の化学物質として扱わなければいけないことになっています。新規化学物質に関しては、より厳密なアプローチがとられ、責任に関しては産業界側に置かれていることを先ほど申し上げました。

◎化学物質管理計画-構成(続き)
 もう一つ、迅速なスクリーニングを低有害性、低リスク化学物質に対して行っています。これは、この分類プロセスの中でわかったことですが、一部の物質については、この分類の基準に関しては基準を満たしている、しかしながら潜在的なリスクという意味では、その検討の優先順位が低いというものです。この場合、1,200種類の化学物質を特定しています。その場合には、最悪のシナリオを適用して、さらに措置が必要かどうかを迅速なプロセスの中で判断することになっています。今年、後半にその結果を一般に公開します。
 カナダ政府の化学物質関連活動の統合ということももう一つの要素です。新たな情報が化学物質に関して出てきた、どのように、どこで使用されているか、などの情報が得られたということで、これによってもう一度ほかで行っている現在の活動を見直す機会にもなりました。
 さらに、リスク評価をしなければいけない、例えば古い殺虫剤などについて、新しい、より安全な物質に置き換えることができないか、などを検討することにもなります。あるいは、より良い規制の措置をとって、カナダの食品が化学物質のリスクから安全であることを担保する、あるいは一定の規制を課して、環境に対して放出される、医薬品あるいはパーソナルケア製品からのリスクということを見直すことになりました。つまり、環境あるいは人間の健康にマイナスの影響を見直すものについて見直すということです。

◎化学物質管理計画-構成(続き)
 また、モニタリングということも非常に重要です。これは、研究活動をもう少し的を絞ったものにし、リスク評価の科学者が情報を必要としているところに的を絞るということです。
 健康モニタリング、監視に関して、結果ベースのアプローチで重要なのは、何らかの手法をもって、どれくらい効果を上げているかということも測定しなければいけないということです。
 カナダがこの情報の根拠としているのは、健康及び環境モニタリング・監視国家計画の実行をするということです。また、人間に対する人体のモニタリングも行っていきます。カナダのNGOの一つが、「毒性のある国」というタイトルで12人に対する調査を行いました。血液や尿、そして組織のサンプルを採取して、どういった化学物質が人体に存在しているかを調べました。驚くことではありません。化学物質がそれほどない世界に住んでいるわけではないので、たくさんの化学物質が人体の中に入っていたわけです。
 当初は、一般の人が非常に憤りを表明しました。「どうして、こんな化学物質が自分たちの体内に入ったのだ」と、怒りがあったわけです。しかし、健康という観点からいえば、その化学物質の大半は全く懸念の必要はない、そして一部の場合には、それは単に通過しているだけであるということで、その化学物質が入り込んで、反応が起きたら懸念する必要があるわけです。
 ですから、必要なのは、人間のバイオモニタリングに関して知識を増やし、基準を設定し、どれくらい効果的に測定ができているかということも見ていかなければなりません。
 もう一つの側面として具体的に見ている点は、子どもの健康に対する影響です。子どもは体が小さいということ、そして成長のパターンなどによっても、また身長が低いので地面に近いということ、そして、接触したもの、手に触れたものはみんな口に入れる可能性があるということで、脆弱だということが言えます。
 ですから、子どもに関して、どういった化学物質が体内に入り込んでいるのかを見て、それをどのように回避するかということも見ていくことを考えています。
 最後に、カナダの産業界の効果的な管理ですが、大半の場合、産業界、そして製造業界は非常に良いリーダーシップを発揮しています。化学物質の管理は、非常に保守的な形で、また保護的な形で行っています。ですから、一つ、化学物質管理計画で行いたいと思っているのは、産業界と協力して、その良好事例をまとめてもらい、それを全国で共有していくということです。その一つとして、リスクコミュニケーションの効果性、そして情報の普及ということが必要になってきます。既に第1のステップとしてウェブサイトを立ち上げたということを申し上げましたが、さらに情報を一般の人に対して提供していくことについては、強化していきます。もっとユーザーフレンドリーな形で行っていきます。
 私は、科学者ではありません。科学者が説明をすると、ともに「全く彼らの言っていることがわからない」と目を丸くしてしまうことがあります。ですから、少し解釈をしてあげる必要があります。つまり、一般の人の常識で、リスクとは何かということを理解してもらい、自分たちで情報に基づいた判断ができるようにするということです。
 リスクを完全に回避することはできません。何か囲われた、保護された中で暮らしていくことはできないわけです。ですから、情報を提供し、適切な判断を自分自身でできるようにするということが最良のやり方です。

◎国際的な機会
 国際的な機会ということについてお話しします。
 国際的な行動を通じてのみ、化学物質は効果的に管理できるということは間違いありません。現実的には、ほとんどの国がリスク評価、リスク管理の問題を同じ化学物質について書かれています。今週は、化学物質の管理の問題について、日本、そして韓国、中国の担当者の方々、そして仮想的にということですけれども、アメリカの方ともお話しする機会がありました。そして、私たちが直面する問題は非常に似通っているということに驚きました。また、その取り組みの仕方も似ているということがわかりました。ですから、良き考え方を持った人は同じように考えるということだと思います。
 カナダのやり方が、例えばEU、あるいはアメリカ、日本とは違う点は、大量生産に関して絞っていないということがあります。しかしながら、4,300種類のうち、600種類が他の国際プログラムによって特定されているということは理解しています。ですから、プロセスや科学、そして良好な事例を共有するということは非常に効果的だと思っています。
 ですから、その他の機会も通じて協力を模索していきたいと思います。そのために、日本の政府の方がリーダーシップを発揮して、このようなシンポジウムを開催してくださったこと、そして国際的に担当者が一堂に会する機会を与えてくださったことに感謝したいと思います。
 また、カナダは国際的な化学物質管理の戦略的アプローチ、SAICMも支持しております。皆さま方もこの取り組みについてはご存じかと思います。これは、グローバルな化学物質管理のアプローチが必要だということを訴えているわけです。
 カナダの観点からいいますと、WHOを支援して、SAICMのようなやり方がきちんと行われていくようにしたいと思います。私は、いつも保健省ということにちょっと偏りがちですけれども、それは先ほど申し上げたとおりです。
 もう一つの提案あるいは取り組みとして北米で行っていることについて触れたいと思います。これは、健全な化学物質の管理、SMOCというものです。アメリカとカナダとメキシコが協力して、共通の課題に取り組むやり方がないかということを考えていくものです。

◎新しい取組の利点
 これが最後のスライドになります。
 ここでは、移行前、移行後ということでお話ししたいと思います。化学物質管理に関する環境と保健という焦点によって、より結果ベースのアプローチに近づいていると思います。ですから、一つずつ化学物質を管理していくというよりは、もっと結果ベースの体系的なものにする、それによって健康や環境への影響を改善していくことができるということになっています。
 また、事後対応的な、あるいは型にはまった手順ではなく、柔軟でタイムリーな措置へと移行しています。
 また、以前は非常に細分化したシステムでしたが、今は統合されたシステムを持っており、カナダ環境保護法などを使って、適切な法令や管轄区域を確定し、あらゆる媒介物に対してリスクが管理できるようにしています。
 最後に、情報収集あるいはリスク評価、リスク管理に関しての負担、責任は、以前は政府の肩にかかっていたわけですが、これを産業界、そして消費者とその負担を共有するという方向で動いています。
 以上、ご清聴、ありがとうございました。このような機会をいただきましたことを感謝いたします。皆さま方、次のEUの方のプレゼンテーションに非常に関心をお持ちだと思います。ですから、難しい質問は、すべて次のEUの方にお願いしたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

質疑応答
(司会)
 ありがとうございました。それでは、これより10分ほど、質疑応答の時間とさせていただきたいと思います。どうぞ、ご質問のございます方は、お席にて挙手をお願いいたします。

(質問者B)
 難しい質問はしませんので、よろしくお願いします。
 カナダの取り組みについて聞かせていただいてありがとうございます。難しい質問ではないんですけれども、化学物質のリスクのコミュニケーションに関して一つ教えてください。
 ご存じのように、化学物質なしでは今の世界は成り立たないわけですけれども、消費者の方々とコミュニケーションすると、ゼロリスクの議論にすぐなってしまうんですね。そういった意味で、企業として消費者とディスカッションするのが非常に難しい中、カナダ政府はこういった消費者への情報開示の中でどのような工夫をして、リスクをある程度前提で進めていくという理解を得るような仕組みの工夫をされているのか、教えていただきたいと思っております。

(Ms. Patricia Hoes)
 決して容易なプロセスではないと申し上げたと思います。今のご質問、とてもいいご質問だと思います。
 一般の人たちは、得てしてゼロリスクを求める傾向があると思います。私たちはどんな話し合いをする場合であっても、まず最初に申し上げることは、「リスク、これはもう避けることはできないものである。しかしながら、人々が情報を持っていれば、自ら選択することができる」と言います。
 最近、ちょっと行き過ぎがあった問題があったんですけれども、テフロン製品に関してでありました。一時期、テフロンのフライパンなんか使えない、テフロン製のようなすべすべした表面のものは使えない、といった時期がありました。私たちは「それは行き過ぎである。累積的にものごとを考えなくてはいけない」と言いました。こういった化学物質に関しては、ある一定部分は受け入れるしかないと。
ですから、こういった化学物質は存在するのだ、いろいろな場所に存在するのだということをまず理解させる。例えば、家庭で使う洗剤もそうです。こういったことを説明しはじめますと、一部の人たちはもう少し理解できるようになります。ただ、10分くらい、じっくりその辺の基本的なことを話さないと、皆さん、理解できないということも事実だと思います。

(質問者B)
 そういった中で、産業界が直接、消費者の方々にというのは非常に難しいと。政府と、あともう一つ、私たちが期待しているのは、大学とか第三者の方々なんですけれども、そういう方々はどういうふうな関わり合いをされているのでしょうか。

(Ms. Patricia Hoes)
 非常に良い点をご指摘いただいたと思います。提供されている情報は信頼の一つにもなるわけです。政府は、カナダの保健に関しては、マスコミよりも先に発表するということを心がけています。消費者は、政府が言っていることは正しいだろうとかなり信頼感を持っています。
 通常、私たちのやり方としては、産業界も巻き込むようにしています。また、NGO、非政府団体も巻き込むことにしています。カナダでは多くの環境団体、そして保健団体などもいます。そして政府と協力しています。そうした場合、メッセージを消費者に出すということをすれば、非常に水平的な、広範な、包括的なアプローチになります。そうなると、消費者は信頼してくれる、正しいことを語ってくれると思ってくれるわけです。もし、わからない場合には、「それはわからない」ということを伝えるわけです。それがリスクの管理につながると思いますし、違いをもたらすことになると思います。

(質問者B)
 ありがとうございました。

(質問者C)
 私もやさしい質問をさせていただきます。
 最後にお話がございました、アメリカ、カナダ、メキシコのSMOCでは、どういうテーマを取り上げているのか教えていただきたいんですが。

(Ms. Patricia Hoes)
  SMOCは10年ほど前にスタートしたものであります。これは3つの政府がサポートしているものでありますけれども、環境協力委員会と呼ばれる組織を中心にしたものであります。私たちはこの中で、北米においてきちんと管理すべきものがあるということで考えました。そこで、能力育成が重要と考えました。例えば、カナダ、アメリカのほうが化学物質の管理に関してはもっと進んでいると思いますけれども、そういった中で、メキシコはきちんとした資源がない、それだけの管理をする能力がないという現状の中で、私たちは安全性に対して情報共有することによって生産性を高められるのではないかと考えました。これは決して、カナダ政府、アメリカ政府がお金をメキシコに提供するものではありません。私たちはむしろ情報を交換する、そしてまた科学的な能力を一部共有するというものでありました。
 この健全な化学物質管理のアプローチをとりはじめた当初、私たちは古いやり方をとっておりました。つまり、幾つかの化学物質、特に懸念されるものを見て、北米のアクションプランをつくりました。私がかかわったものの一つでありますけれども、皆さん、ご存じのリンデンという殺虫剤の管理にかかわるものでありました。3カ国が一緒になってリンデンの生産を制限しようとしました。今は、カナダにおいては、医薬品の製造においては使っていると思いますけれども、基本は禁止されております。7ポンドくらい年間つくっているということで、大した量ではないと理解しています。
 現在、健全な化学物質管理プロジェクトは一部変わりつつあると思います。これはカナダの化学物質の管理が変わっているため、またアメリカのやり方も変わっているためだと思います。私、日本から戻って1週間後、モントレ、メキシコに行きましてそこで会合を開きます。そこでは全く新しいアプローチについて話すことになります。健全な化学物質管理、北米のプロジェクトに関して新しいアプローチをとろうとしております。産業界、そして利害関係者と話をすることになっております。彼らは、私たちにとっての強力なパートナーです。
 そういった中で、新しい方法、もっとセクター別のアプローチをとろうということを考えております。もちろん、一部、化学物質で共通するものもあるでしょうけれども、今後は、例えば電子製品の廃棄物ですとか、製造ですとか、特に自動車産業においてそういった向きが強いと思いますけれども、そういったところに特化して何かできないかということを今後考えていきたいと思っております。
 何か話を避けているように聞こえてはいけないと思いますけれども、今後、議論がされる予定でありますので、確定的なことが申し上げられませんが、ただ3週間後にはもっと確固たる路線がしかれていることを期待したいと思います。

(質問者C)
 どうもありがとうございました。もう一つだけお伺いしたいんですけれども、カナダはアメリカからの化学物質の輸入品が多いと思うんですけれども、アメリカの企業とはどういう協調関係をとっているのでしょうか。あるいは、インポーターの責任ということになっているんでしょうか。直接、アメリカの化学メーカーなどと連絡をとって何かしておられるんでしょうか。

(Ms. Patricia Hoes)
 まずお答えする前に付け加えておきたいと思いますけれども、私はあくまで保健省の人間であるということですので、私の得意な分野とは言えないかもしれませんけれども、大変良い点をご指摘いただきました。
 カナダは、化学物質の大規模な生産業者はいないと申し上げましたけれども、しかし、ほとんどの企業は多国籍企業です。ですから、グローバルな活動が必要です。EUが産業界とやっていること、あるいはメーカーが産業界とやっていることと関係を全く断ち切ったような形で、カナダが産業界と関係を持つということはできません。ですから、できるだけ業界と協力しています。
 そして、カナダが何か基準を課す、あるいは何らかの規制を強化する、アメリカよりももっと厳密な規制を課すということになると、業界としても必ず何か意見を言ってくるわけです。カナダの政府が産業界あるいは生産者に対してあまりフレンドリーでない、という形にはなりたくないと思っています。ですから、協力を行っています。これでお答えになったでしょうか。

(質問者C)
 どうもありがとうございました。

(司会) 
ありがとうございました。ただいまご講演いただきましたのは、カナダ保健省ホリゾンタル・インターナショナル・プログラム課長、Patricia Hoesさんでした。(拍手)

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(司会) 
 それでは、続きまして、「EUにおける化学物質管理と工業製品への適用」について、欧州委員会企業・産業総局化学物質ユニット副長、Wolfgang Hehn さんよりご講演いただきます。それでは、よろしくお願いいたします。

4.EUにおける化学物質管理と工業製品への適用

 
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(Mr. Wolfgang Hehn)
 皆さま、どうもありがとうございます。拍手していただきましたけれども、皆さまをがっかりさせないように頑張ってやっていきたいと思います。
 まず最初に、日本政府の方に、このような場にお招きいただきましたことを感謝したいと思います。大変重要で、すばらしい会議に呼んでくださいました。
 この招待状をいただきましたとき、そして日本政府ができるだけたくさんの方々、700人くらいの方々が集まる会議をするのだと聞いたとき、一体どうやったらそんなことができるのかと考えました。というのも、ヨーロッパでは、通常、これは専門家だけが取り扱う、そんな会議になると思ったからです。でも、こうして満員御礼状態であるというふうに考えますと、国際的な化学物質管理において、大変良い機会ではないかというふうに思います。ですので、もう一度、お招きいただきまして、ほんとうにありがとうございます。
 きょうはヨーロッパの制度についてご紹介するというのが私の役目です。

◎本発表の目的
 最初に、欧州の制度の構造についてお話しし、そのあとで一番重要な法律などについて触れていきたいと思います。そして、なぜこういう法律になったのか、どういう政策のもとでこういう答えを私たちは導き出したのか、お話ししたいと思います。アメリカ、そしてカナダでも取り組んでいる同じ問題になぜ欧州はこういう答えを出したのかを説明していきます。今現在の欧州での化学物質管理システムですが、これを理解していただければREACHもわかっていただけると思います。
 ということで、REACHはどういう問題に答えを見出そうとしているのか、またそのきっかけになったのは何なのかを説明していきたいと思います。技術的なお話をするつもりはありません。技術関係については、私の同僚がこれまでにも来ましたし、また今後の説明のためにやってくるのではないかと思います。ただ、どうすれば情報を皆さんに探していただけるかも紹介していきたいと思います。

◎全体概要
 きょうの概要です。
 まず、最初に申し上げましたとおり、欧州の状況についてご紹介していきます。その次に、現在の法規制についてご説明したいと思っております。そのあとで、簡単に、新しいREACH 規制について説明し、その主な要素をご説明します。そして、最後に、若干ではありますけれども、これから先の課題、またどのようにして努力していくのかということを国際的な観点からお話し申し上げたいと思います。

◎状況(1)EU化学産業の分野別構成
 カナダの方が「EUの化学産業は、カナダの産業よりも大きい」とおっしゃっていました。でも、その点を申し上げたいわけではありません。私が申し上げたいのは、EUの化学産業は非常に多様であるということです。ほとんど化学物質と言えるもののすべてがヨーロッパではつくられていると言っても過言ではないでしょう。

◎状況(2)世界の化学品の生産
 また、この産業は、確かに非常に大きい産業となっております。ほかの国と比べれば、かなり大きい状態です。ただ、アジアと比べてみますと、今ではEUの化学産業よりもずっと大きくなっております。この傾向は、おそらくますます顕著になっていくだろうと思います。
 また、ヨーロッパの化学産業はアジアの化学産業と密接に結びついています。ですので、国際協力は大変重要なものとなります。

◎状況(3)EU-発展する共同体
 さて、ヨーロッパです。ヨーロッパをアメリカ、カナダあるいは日本と比べてみますと、大変重要な大きな違いがあります。EUはまだ生まれて間もない組織です。ちょうど50歳の誕生日を迎えたばかりです。もちろん、これは一つの国民国家ではありません。現在は27カ国からなる一つの組織です。そして、さらに加盟したいという国も増えております。話されている言語は20以上、そして人口はおよそ5億人、ここに住んでおります。常に変化する組織であるということも、統治という観点からいいますと大変大きな課題であります。経済学者として言いますと、これは業界にとってかなりプラスの機会を提供しているものだと言えると思います。5億人が住んでいて、同じ制度のもとで暮らしているということも一つの大きなチャンスとなってはおります。

◎状況(4)欧州の化学物質法制の発展に影響を及ぼす主な要因
 ヨーロッパの法規制を見てみますと、一つ覚えておいていただきたいことがあります。取り組むべき主要な目的は、ヨーロッパの中で加盟国同士の法規制、それを調和させていかなければならない、そうでなければ域内市場の機能を保つことはできません。
 カナダでは、さまざまな州の間に国境のようなものはありませんし、あるいは中国の各省や県の間にも国境があるわけではありません。しかし、ヨーロッパでは、これまでの間、加盟各国の間にしっかりとした国境がしかれておりました。欧州の化学物質法規制の主要な目的、まずは、やはり衛生・保健という側面がありますが、それだけではなく、より多くのことを果たそうとしております。もともとは職場での安全衛生が目的でありましたが、そこから一般大衆、つまり消費者の保護というところに観点を移してまいりました。そして、今では、特に、社会的な弱者に目を向けるということを考えておりますが、これはリスク評価という観点でいえば簡単なことではありません。同じような状況は、環境の面でも言えると思います。
 もともとは、従来の環境問題であります大気汚染ですとか、そういう問題に取り組むところから始めました。しかし、今では、例えばオゾン層保護や気候変動、あるいは生物多様性の保護といったような問題にも取り組まなければならなくなりました。ということで、制度そのものもますます複雑化しております。

◎状況(5)欧州の化学物質法制の発展に影響を及ぼす主な要因
 政治的な要素を見てみましょう。
 環境に対する懸念あるいは安全衛生面への懸念というのは、やはりヨーロッパでは非常に強い関心の対象です。こういう分野はNGOも活発に活動している分野です。一般市民はこれまでのような対症療法的なアプローチから予防的なアプローチへと移行するよう求めてきています。また、ライフサイクルアプローチも必要であると見られております。ただ単純に工場の中の安全性を確保するだけではだめで、下流域の使用者の安全ということも確保しなければならないし、その製品が寿命を終えた後のことも考えなければならない、と言われております。
 ですので、ヨーロッパでは、「最も有害な物質については代替物質が必要である」というふうによく言われておりますが、後ほどREACHの話をするときにもう少し詳しく説明したいと思います。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(1)
 では、ヨーロッパの構造を見てみたいと思います。
 ここには3つのルールのグループがあり、これが相互に関係し合っていますが、しばしば忘れられてしまいます。
 まず第1に、水平型の規制があります。これはすべての化学物質に適用されます。ヨーロッパでの化学物質規制という場合には、このことを指して言っております。
 しかし、それ以外にも特定の製品群に対する規制があります。例えば、顕著な例が化粧品ですとか化学肥料です。しかし、化粧品のほうがおそらく市場という点でいえば非常に重要でありましょう。
 そして、3つ目が、環境に関する法規制。これもやはり化学物質管理においては大きな意味を持ちます。特定の物質の使用を考えますと、これが大変重要になります。例えば、こういうビルを管理するのであれば冷媒を使うことになりますが、こうした冷媒はオゾンを破壊したりしますので、それに対する規制もいろいろあります。また、廃棄物に関する規制も化学物質に対するものがあります。一番よく知られているのが電気・電子機器に使用される特定有害物質使用規制(RoHS) でしょう。
 ほかの方々もおっしゃっていましたけれども、化学物質管理における主な課題は、政府の観点から見れば、この制度が一貫性を持っているということです。非常に幅広いシステムでありますし、いろいろな目的を網羅しております。できるだけギャップがないように、あるいは重複がないように、また矛盾がないようにしていかなければいけません。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(2)水平型の規制
 では、化学物質に関する主要な現行法制についてお話ししたいと思います。
 これは危険物質に関する指令(Directive 667/548/EEC)でありますが、ここでは危険な物質・調剤の分類・包装・表示がテーマとなっております。一見、簡単に聞こえるかもしれませんけれども、実践するということを考えた場合、これは中心的なものであります。分類がきちんとできないことには話になりませんし、またヨーロッパの制度においては、法的拘束力を持つ分類・包装・表示制度がこういった危険物質に関してはしかれております。これが現在、世界調和システム(GHS)を担保する規制に置き換えられようとしております。これは、今後の国際的な化学物質管理においては大きな前進になると思っております。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(3)すべての化学物質に適用される水平型の規制
 さて、分類・包装・表示は安全性データシートにおいても重要であります。この安全性データシートは、化学物質の取引において重要な意味を持ちます。供給する側はこの分類、表示ですとか、きちんとした使用方法、リスク管理措置などについて、また緊急事態における対策等々について、この安全性データシートに記載することが求められます。
 この化学物質を受け取った側は、このデータシートに書かれている情報を使って、自らの職場における安全性の評価を行います。ここでの義務付け、これはヨーロッパにおいて比較的厳しいものとなっておりますので、安全性データシートは実際のシステム管理において重要な役割を果たしております。しかし、残念ながら、ヨーロッパのこれまでのデータを見ますと、多くの安全性データシートは質的には問題がある。したがって、職場における実践ということになりますと、特に中小企業においては問題があるように思われております。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(4)すべての化学物質に適用される水平型の規制
 アメリカ、カナダ同様、ヨーロッパにおいても新規と既存物質の違いがあります。しかしながらヨーロッパにおいては、ある特定のデータを新規物質の通知に際して提出義務があります。
 さて、どういったデータを出すかということは数量によって変わってきます。ヨーロッパの新規物質に関するルールは、ほかの世界の国々の規制よりも厳しくなっております。それによって、新規物質と既存物質の間で大きな違いが出てきました。アメリカもそうでありますけれども、私たちは既存物質の登録もあります、また目録もあります。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(5)すべての化学物質に適用される水平型の規制
 さて、既存物質と新規物質との間の情報のギャップがあります。アメリカと日本との間にも違いがありますし、ヨーロッパの間でも違いがあるのですけれども、ヨーロッパにおいては、このデータのギャップに対して、ある特定の規制を設けております。非常に生産量の高い生産者の場合にはデータの提出を求めております。また、加盟国はリスク評価に当たっては、優先順位をつけるということで合意しております。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(5)すべての化学物質に適用される水平型の規制- 続き-
  こういったリスク評価を行った際、これはリスクを軽減するために使われます。原則論でいいますと、非常に理に適った内容に聞こえると思いますが、しかし、非常にゆっくりとしたペースで進んでおります。私たちは貿易相手国と同じような問題を抱えている、もっと顕著であると言ってもいいと思います。
 私たちは15年間かけて、141のリスク評価をしています。これは既存化学物質のケースですけれども、しかしながら、私たちが直面している問題のかなりの部分はヨーロッパ固有のものであったと思います。ほとんどの場合、こういったリスク評価のドラフトを作成するという点では問題はなかったのですけれども、25ないしは27の加盟国が結果について合意するとなった場合、2年かかる、3年かかる、5年かかる、場合によってはまだ合意に至っていないという問題が生じてしまっています。
 そういったことがありますので、私たちは制度を変えなくてはいけないという意識を持つに至りました。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(6)すべての化学物質に適用される水平型の規制
 さて、リスク評価のあとにはリスク管理が来ます。最も危険な物質に関して、私たちは「制限指令(76/769/EC)」を設けております。これは、上市と使用の制限に関する指令には複数のものがこれまでありましたが、これをまとめたものであります。
 この指令は、何回も改正されたものであります。最も危険なアスベスト、砒素、臭素化難燃剤等々といったものがありますが、これらについて取りまとめたものであります。
 上市と使用の制限に関する指令というのは、決して容易に可決されるものではありません。まず、最初にリスク評価をし、そして影響評価をし、最後は理事会、そして議会を通らなくてはいけないというものであります。ですから、非常に鋭い武器ではありますけれども、プロセスが問題で、遅々として進んでおりません。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(7)特定製品群に関する法制
 では、次の法律に移りたいと思います。こういった化学物質の取引をする際、相手国のほうから、例えば日本、韓国、中国といった貿易相手国からいろいろな問い合わせを受けることがあります。私たちとしては、どういった化学物質であるのかを理解しなくてはいけない、そして何のためにこれを使うのかを知る必要があるでしょう。こういった化学物質に関してはいろいろな用途があります。
 さて、そういった中で、医薬品は全く別の分野として扱われております。もう一つ、重要な分野としては、化粧品、植物保護製品、殺生物性製品、食品接触材料)等がありますが、いずれにもおいても、危険な物質という、この指令に基づいてなされなくてはいけない。ところが、リスク管理に関しては、もっと具体的な特別なルールを設定するというのが原則であります。EUは、ほとんどすべての国際化学物質関連の条約の締約国となっています。ロッテルダム、ストックホルム条約、また、京都議定書ももちろんそうであります。これもまた一部化学物質に関連する部分があります。
 これらすべての条約は、EUの法律に反映されます。これが2番目の層ということになるでしょう。
 そして、最終的には環境に関する法制があります。環境に関する法制の中で、廃棄物に関する法制があります。こういった文書を読みますとおわかりになると思いますが、ここにはいろいろな化学物質に関するパラメーター、基準が設けられております。これは化学物質に関する法制でないにしても、化学物質の使用に関して規定しているものもあります。例えば、RoHSなどがあります。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(8)特定製品群に関する法制特定有害物質使用規制(RoHS)指令の例
 もう少し、電気・電子機器の特定有害物質使用規制(RoHS)に関してお話しするようにという要請がありました。というのは、日本はこういった電気・電子機器の主要な生産国でありますので、少しお話しします。
 そもそもこのRoHSが出てきた背景には、廃棄物の問題がありました。今、ますます増えつつある電気・電子機器の廃棄物をどうにかしなくてはいけない、なかなかこの処理が進まないという問題がありました。なぜ、処理が難しいかといいますと、重金属が含まれているからでありますし、また問題となる難燃剤などもあるからであります。この問題を解決するためには、唯一、生産者が製品の設計の段階で対応することが必要であると考えました。
 そこで、重金属――水銀、鉛、カドミウム、六価クロムという金属の制限、これは最終的にはこれらの物質をこの流れから排除する、そして最初からこれを取り除くということがねらいでありました。それから、もう一つ、ポリ臭化難燃剤も制限対象となりました。その他、危険化学物質を追加することはできますけれども、今のところは、そういった追加をする予定はありません。

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(9)特定製品群に関する法制 RoHS指令の例(つづき)
 化学物質管理に関して、これは大変興味深いと思います。なぜならば、一番最初に出てきたテストケース、どのようにすれば物質管理を非常に複雑なものの中でやっていくかという問題が出てきました。通常、化学物質といいますと、一つの化学物質あるいは調剤について取り組むわけで、そういうものが組み合わさった、例えば自動車とか携帯電話のような製品を対象としているものではありません。RoHS指令が欧州議会を通って今の形になった6年前以来、私たちは多くのことを学んだと言えると思います。一番最初に学んだことは、実際上は、かなり多くの例外を設けて、それによって、移行期を乗り越えなければならないということでした。
 2つ目の複雑な問題は、濃度の上限を設定するということです。多くの化学物質は、皆さんのほうがよくご存じだと思いますが、不純物が混じります。ですので、その不純物の濃度といいますか、どれくらいを上限にするかということが設けられるわけですけれども、一つの製品であれば、いろいろなものから成り立っているので、その中に例えば鉛を何%含むかどうかということを設定するのは容易なことではありません。
 RoHS指令の中では、この濃度の上限値は一つひとつの均一の物質にのみ適用される、つまり、ここから先、機械的に切り分けることができない、そういうものに対して適用することになりました。そうなりますと、例えばコンピュータであれば、5万以上ものこうした均一な物質が使われて一つの製品として成り立っているわけですから、非常に難しい問題となりました。
 また、EUの各加盟国がこの指令の実施の責任を負うことになりましたが、しかし、その実施のあり方はそれぞれ違っていました。今、何とかそれを是正しようとしております。そして、RoHS指令もより遵守しやすい形にするように今見直しをしているところです。もし、もっと情報が欲しいという方はこちらのウェブサイトのほうをごらんいただければと思います。
(http://ec.europa.eu/environment/waste/weee_index.htm)

◎EUにおける化学物質管理に関する現行法制(10)特定製品群に関する法制 RoHS指令の例(つづき)
 RoHS指令について学んだ教訓ですが、コンピュータ関連の廃棄物、例えば日本や中国は、同じような解決策をこの問題については見出したと思います。それから、基本的には業界に対して、有害物質の使用は設計段階からしっかりと考えるようにというふうに求めましたが、そのやり方も一般的に認められたと思います。
 ただ、さまざまな製品について、一つひとつ法律を定めるかよいかどうかはまだわかりません。もともとの考えは、電気・電子製品から始めました。それから、自動車、次はどの製品、どの製品……というふうに考えていくわけですが、このようなやり方はこれから先続けることは考えておりません。これから先、製品の中の有害物質についてはREACH のもとで取り扱うことになります。

◎新たなREACH規制(1)新たな法制度が必要な理由
 では、REACHそのものについてお話しする前に、既存のシステムの問題点についてもう一度整理したいと思います。
 既存のシステムは、実はつぎはぎだらけの制度となっております。40年にわたって形成されてきた制度ですので、これまでの歴史そのものを反映するような形でつぎはぎだらけとなっております。そして、60以上の法規制があります。今、プレゼンテーションの中で、60すべてを説明しているわけではありませんが、専門家であってもなかなか理解しにくい制度となっております。また、業界と政府が、リスクがどこにあるか特定するのも難しければ、それを管理するのも大変困難となっております。
 また、ほとんどの既存化学物質については、十分な情報が揃っているとは言えません。そして公的な機関、あるいは政府にばかり、情報収集に当たっての負担が今まではかかっていたと言えると思います。
 新規化学物質についての新しいシステムですが、あまりにも厳しかったので、革新を阻むものとなってしまいました。これは環境にとっても良くないことでありました。というのも、新規化学物質のほうが既存化学物質よりもずっと安全な場合が多いからです。それに、ビジネスにとっても、こうした厳しい規制は大変良くない面もありました。

◎新たなREACH規制 (2) 特徴と目的
 では、REACH規制で何を私たちは目指しているのでしょうか。
 まず第1に、今までの制度の簡素化であるというふうに見ております。すべて化学物質管理のルールは、REACHという一つの規制の中に盛り込まれることになります。これは物質そのもの、調剤、そしてある程度、成形品についても適用されます。
 全体的な目的は今までの制度と変わりません。一つ、新たに付け加えられたのは、国際的な側面です。これは、今後ますます重要になってくるでしょう。ここでは、世界調和システム(GHS)と国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)を挙げております。

◎新たなREACH規制(3)重要な要素(つづき)
 では、この新しい制度は今までの制度と、どこがどう違うのでしょうか。
一つのシステムで新規化学物質と既存化学物質、両方を見ようというものです。この点がわりあい新しい考え方ではないかと思います。
 2つ目、既存化学物質については登録が必要となります。しかもデータを伴った登録です。一斉に全部というわけにはいきません。一つのプログラムをしいた上でやることになっております。
 また、サプライチェーンを通して情報を提供することになっております。これまでのところ、リスク評価はこの点に弱点がありました。政府がある物質についてリスク評価をしたとしても、下流域での使用者についての十分な情報がないまま、行われてまいりました。
 また、より集中的な統治のシステムがつくられます。欧州化学物質庁というものがつくられまして、各加盟国の活動を一つに束ねていくことになります。それから、優先順位をつけることも大変重要な課題です。どうやって優先順位をつけるか、これはいつも難しいものでありますので、昔ながらのやり方として、まずその量に焦点を当てて優先順位をつける、そして、懸念が非常に高いものは優先順位を高くするというふうにしました。
 日本と比較して申し上げますと、ヨーロッパでは、発がん性、変異原性、そして生殖毒性のある物質に特に重きを置いております。日本では、いわゆる残留性、蓄積性、毒性物質、PBT物質のほうに重きを置いています。もちろんPBTも私たちは懸念が高いものであるというふうに考えておりますが、発がん性、変異原性、そして生殖毒性のあるCMR物質、こちらのほうにより私たちは焦点を当てています。
  それから、責任の所在も変わりました。現行制度のもとでは、公的な機関への負担が非常に大きかったというふうに申し上げました。これから先はもっと多くの責任を業界側に負ってもらおうと考えております。
 
◎新たなREACH規制(4)対象に関する重要な要素
 次のスライドですが、ここでは1点だけ、重要な点を申し上げたいと思います。既存の制度とREACHの制度の違いです。
 これまで、現行制度のもとでは、いわゆる上市が中心でありました。取引に当たっての障壁を加盟国の間で取り払うということだけを焦点において、あとは国内で頑張ってもらうということを考えておりましたが、これから先は、化学物質の製造ですとか、あるいはその使用に至るまで、すべてを見るようになります。
 ヨーロッパで規制されるということは、これから先は輸出用に生産することもできないということになります。

◎新たなREACH規制(5)登録:製造者・ 輸入者の義務
 REACHの最初の要素、これは物質の登録であります。登録の要件は、一製造者当たり、年間1トン以上からスタートします。ですから、わずかな量であれば、こういった登録要件はありません。1トンというのは、大した量に思えないかもしれませんけれども、特殊な物質ですとか、また輸出といったことを考えた場合、たとえ1トン以上という規定であっても、助かるところもあると思っております。
 さて、一方、輸入ですけれども、私たちの言う輸入は、皆さんにとっての輸出になると思いますけれども、この場合には、輸入者側で登録をしなくてはなりません。ただし、皆さんのほうで「唯一の代理人」を指名された場合は、その「唯一の代理人」がEUに対する皆さんの代表となります。
 さて、年間10トン以上の物質の場合には、化学物質安全性報告(CSR)をつくらなくてはなりません。この報告ですけれども、これは、物質の使用に関する文書、またどういったばく露の可能性があるかということを、ライフサイクルを通して書かなくてはなりませんし、リスク評価も含むものであります。ですから、将来的には、こういった化学物質の生産者がリスク評価をしなくてはいけないと。
 そして、また同時に、必要とあらば試験が実施できる体制になっていなくてはなりません。しかしながら、私たちは多くの試験を実行していただきたいとは考えませんし、特に脊椎動物に関してはやっていただきたくないと思いますので、私たちは生産者に対し、物質情報交換フォーラム(SIEFs)に参加していただき、実験に関しては協力できる体制をつくろうと考えております。時間があまりないようですので、今後の主要なスケジュールについて簡単にお話ししたいと思います。

◎新たなREACH規制(7)登録:スケジュール
 ここでの主要な点ですが、REACHは今年6月から施行されます。しかしながら、6月1日に発効されたとしても、すべてがそこからスタートするということはありません。域外の皆さんにとっては、さほど大きな変化は初年度はないと思います。初年度は言うなれば準備期間です。
 その中で重要なのが「予備登録」であります。生産者、そして輸入者は、既存物質が予備登録されることを担保しなくてはなりません。しなければ、これは新規物質として扱われます。ですから、上市する前に、新規物質として扱われますし、段階的な導入のさまざまな特典を享受することができません。
 さて、段階的な導入期間ですが、かなり長い期間にわたります。
 まず、最初の期限、2010年末、これは大量生産されるものでありますけれども、そしてまた非常に危険性の高い物質であります。最終的には2018年、少量のものに関しては、2018年が期限となっております。

◎新たなREACH規制(8)川下利用者の権利義務
 さて、川下の利用者の統合化に関してですけれども、これは重要な要素であると思います。

◎新たなREACH規制(9)成形品に含まれる物質(第7条)
 新しい政策において、私たちは化学物質の生産者は川下の利用者、サプライチェーンを通じて対話をする、そして情報収集をすることを求めています。これは、成形品における使用においても同じであります。
 また、例えば、印刷のように意図的に放出されるものなのか、ないしは通常はこのような放出は想定されないものかによって違ってきます。このように、放出が直接的に起きないという前提に立った製品であった場合には、義務はもっと少ないものであります。
特に、非常に懸念が高い物質のみに限定されておりますし、それらがさらなる優先順位付けのためのリストに載らない限りにおいては、それ以上のことはありません。

◎新たなREACH規制(10)認可・ 制限
 しかしながら、非常に懸念が高い物質であった場合には、これは認可を受ける必要があります。時間がありませんので、その詳細については申し上げませんが、このように非常に懸念が高い物質は、長期的にはできる限り、ほかのものに置き換えられなくてはならない、代替されなくてはなりません。

◎新たなREACH規制(11)認可と代替(第62条)
 そのため、だれかがこのような物質の認可が必要であると考えた場合には、政府に対して、その人はどのくらいの期間、その物質を使うつもりなのか、代替品があり得るのか。ないのであれば、こういった代替品をつくるためにどういった試みがなされるべきかを明確に示さなくてはなりませんし、そのための研究開発の考え方も表明しなくてはなりません。

◎新たなREACH規制(12)欧州委員会の早急な実施目標
 ですから、現在、REACHの実践のための準備をしております。多くの実践のためのツールはまだ準備ができておりませんが、しかし、最善を尽くし、すべてが必要なときに準備できているようにしなくてはいけないと考えておりますので、皆さん、どうか、我慢強く待っていただきたいと思います。

◎新たなREACH規制(13)ヘルプデスクのネットワーク
 今ないにしても、あと数カ月うちに出てくるであろうものはたくさんあります。
 同時に、かなりの数のヘルプデスクを設けております。例えば、産業界、加盟国のヘルプデスクもあります。

◎新たなREACH規制(14)EU域外企業の直接の関わりについてのポイント
 というのは、新しい制度の切り換えは決して容易なものではないと思いますので、これほど準備が必要とされた規制はこれまでなかったのではないかと思うほどの変化であります。

◎新たなREACH規制(15)政策的観点からの結論
 まとめに入りたいと思いますけれども、REACHは革命でありません。あくまでも、これはいろいろなアイデアを既存の制度に基づいて結集したものであります。今、REACHに存在するそれぞれの要素は、何らかの形で過去の法規制において、例えばRoHSなどにおいて採用されたものであります。ですから、まず既存物質に関しては今まで以上に情報を集める必要がありますし、そして川下利用者の強いかかわり、深いかかわりを求めておりますし、また一般の人々のニーズを考え、こういった化学物質の成形品に含まれるものももっと取り組みが必要であると考えております。

◎概観:課題と今後の一層の努力
 すべてが新しいものではありませんけれども、やはり実施となりますと、ある程度、困難を伴うと思います。したがいまして、これからの課題は、どこまで実施できるようにするか、そして、コストではなかろうかと思います。
 ほとんど最後になりましたけれども、2020年のこの目標がありますけれども、これに向けてどうなるか。これはREACHがかなり中心になりますけれども、JHSがREACHの一部となると思います。今現在、この文書はかなり完成していると思います。またこの先、国際協力ももっと重要になると思います。国際協力は、特に、新たに出現する問題において重要になってくると思います。例えば、ナノテクなどであります。アメリカの同僚が言ったこと、私もそのまま、そうであると申し上げていいと思います。

◎更に詳しい情報を得たい場合は
 もっと詳しいことを読みたいという方々のために、この3つのポータルサイトがありますので、これを見ていただきたいと思います。
 ただ、環境のサイト、このほうが一般の人にとって読みやすい内容だと思います。というのは、これは一般の方々を対象に書かれたものであります。
 企業側のこのサイトですけれども、これは産業界の皆さんのニーズに合わせたものであります。
 そして、最後になりますけれども、欧州化学物質局のサイトがあります。具体的なリスク評価に関して質問がある、ないしは何かREACHの実施、プロジェクトの技術的な情報が必要な場合には、このサイトを見ていただきたいと思います。ほとんどの皆さんの細かい質問の答えがここにあればと期待します。
 カナダの同僚がプレゼンテーションの最後に提言されましたけれども、「私に全部難しい問題を回せ」という、あの部分は忘れていただいて、やさしい質問をぜひお願いしたいと思います。(拍手)

 

 
会場2

質疑応答
(司会)
 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移らせていただきたいと思います。
 10分ほどのお時間をちょうだいしたいと思います。それでは、ご質問のございます方、どうぞ。

(質問者D)
 RoHSについてお聞きしたいんですが、日本の解釈が間違っているかどうかお聞きしたいんですが、中国版RoHSの場合、規制はバルクで、電子部品のリード線にメッキしてあった場合、バルクで評価するんですが、日本ではリード線の上に薄いメッキがかかった場合、その薄いメッキの中の鉛を管理せよというと、ごく微量のものだと思うんですが、どちらのほうが正しいのか、ちょっと教えてほしいんですが。

(Mr. Wolfgang Hehn)
 日本の法規の解釈について聞かされたのではないかというふうに理解しておりますので、どのようにお答えしたらよいかと今悩んでおります。
 ただ、ご質問は、ヨーロッパ版のRoHS指令のもとで、濃度の上限値の話に関連した質問だと思います。
 EUの場合、均一の物質という概念に基づいております。ですので、鉛が使われているこの電線の場合、例えば、携帯電話の中で使われていたとしましょう。まず、どれくらい、鉛がそのワイヤーの中で使われているか見なければなりません。携帯電話全体の中で何%ではなく、電線の中で何%です。REACHのもとでは、この上限値は、携帯電話全体に対して何%というふうに見られることになりますが、REACHについてはこうした条項の解釈、例えば上限値の解釈、これは各加盟国の中で決めるということになっております。国内で議論して、その解釈については決めるということになっております。これでご質問の答えになるでしょうか。

(質問者D)
 電線の話は合っているのですが、電線の上に薄くメッキがかかっていて、その中に鉛が入っている場合、電線そのものの上限値の0.1%なのか、メッキ層でも0.1%を守らなければいけないのか、そこをちょっと聞きたいのです。

(Mr. Wolfgang Hehn)
 私の理解では、コーティングの性質によると思います。例えば、プラスチックのコーティングをワイヤーに付けていて、ワイヤーとプラスチックの部分を引き離すことができるのであれば、コーティングの中で何%なのか、そしてワイヤー全体で何%なのか見なければなりません。薄いコーティングであって、引き離すことができないのであれば、濃度の上限値はコーティングも含めたワイヤー全体のパーセンテージという適用になります。
 ただ、確実にしておくためには、各加盟国の当局に問い合わせをするべきだと思います。というのも、解釈がどちらに転ぶかわからない、非常に解釈が難しい適用方法をとる場合もあり得るので。皆さん、今の答えを聞いて頷いている方がいっぱいいらっしゃいます。そのことはわかっているよ、とおっしゃってくださっているのだと思います。ありがとうございました。

(司会)
 よろしいでしょうか。

(質問者D)
 どうもありがとうございました。

(司会)
 ほかにご質問のございます方、どうぞご遠慮なく。まだ、少々お時間がございますので。では、前方の方。

(質問者E)
 資料の24ページの質問なんですが、EU域外のものが登録する場合には、唯一の代理人が必要ですということなんですけれども、この代理人はどういう資格とか要件とかを持つべきなのでしょうか。

(Mr. Wolfgang Hehn)
 唯一の代理人の条件ということでありますけれども、これはこの加盟国に登録された域内の法人でなくてはなりません。したがいまして、ヨーロッパ、EUをベースにした法人であることが条件です。そして、もちろん幾つか技術的な要件もあります。
 もし、唯一の代理人を指定する場合には、その法人が事実上、皆さんを代表できる法人であることを確認されなくてはなりません。例えば、郵便の私書箱――金融世界であればそれでいいんでしょうけれども、この場合、私書箱はだめです。

(質問者E)
 ありがとうございました。

(司会)
 そのほかにご質問をお持ちの方、いかがでしょうか。あとお一方、受け付けることができます。

(質問者F)
 RoHSに追加する物質はないということをお聞きして安心したんですけれども、最近、REACHは将来、1トン以下も対象にする可能性がある、あるいはポリマーに対する規制も厳しくなる可能性があるというのをコンサルタントから聞いたんですけれども、それは事実でしょうか。

(Mr. Wolfgang Hehn)
 ほんとうかどうかというのは、大変答えにくい、難しい質問です。今現在の議論の方向性ということでお答えしたいと思います。
 1トン未満の分量について、通常で考えれば、これも対象にすることは考えておりません。しかし、今、ナノ材料の問題が出てきております。すべての加盟国は、現在、可能性のあるリスクをどのように規制するのかということを議論しております。ナノ材料が提示するリスクについてです。ナノ材料は非常に小さいものですので、専門家の中には、化学物質規制のようなトン数による規制では、ナノ材料については適切ではないのではないか、と見ております。ですので、トン数による制限はもしかしたら見直す必要があるかもしれない、とも言われております。
 ただ、この議論はまだ始まったばかりであります。ですので、やはりトン数制限を拡大するのであれば、私たちは慎重にやっていくことになるだろうと思います。ナノ材料についていえば、EUとしては国際的な解決策を見出したいと考えております。OECDのワーキンググループの中で、何か実際的な、実施可能な解決策が出てくるようにと願っております。そこで解決策が出てこないうちは、まずはどういうリスクがナノ材料から出てくるのかということを理解しなくてはならないと思います。ご質問はわかりますが、確たる答えを提供する上では、まだ時期が早すぎるとしか申し上げようがありません。
 さて、ポリマーについて答えるのはもうちょっと簡単です。
 ポリマーの適用除外、これは今見直しの過程にあります。今ではREACHの中に織り込まれようとしております。これもOECDのレベルでの取り組みとなっております。ですが、国際的に同じようにポリマーに対する取り扱いをやっていくのかどうか、これはまだはっきりしておりませんが、ヨーロッパのレベルにおいては、まだ議論が始まったばかりの段階であります。今までのところ、どういう方向に進んでいくのか、それを明確に示すような提案は出てきておりません。ただ、ポリマーについては見直しをしているところだとだけ申し上げておきます。以上です。

(質問者F)
 大変貴重なお話、ありがとうございました。

(司会)
 ありがとうございました。欧州委員会企業・産業総局化学物質ユニット副長、Wolfgang Hehnさんよりご講演いただきました。ありがとうございました。(拍手)
 それでは、これより約1時間の休憩とさせていただきます。

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【午後の部】

(司会)
 午後の部の最初のプログラムは、「国内事業者のREACHへの対応に関するアンケート結果報告(二次報告)」につきまして、環境省環境保健部化学物質審査室、平塚二朗より発表させていただきます。では、よろしくお願いいたします。

5.国内事業者のREACHへの対応に関するアンケート結果報告(二次報告)

 
hitatsuka

(平塚)
 環境省化学物質審査室の平塚でございます。
 時間も限られておりますので、当初20分の予定でしたが、15分程度で、「国内事業者のREACHへの対応に関するアンケート調査(二次報告)」ということでさせていただきます。二次といいますのは、3月2日の第1回のシンポジウムでも発表させていただいておりますので、それの集計結果が若干増えましたので、追加報告という形にさせていただいております。
 ほぼ最終なのですが、まだ最終的に数字を精査しているところがございますので、あくまで現時点の解析というふうにお考えください。

◎アンケート実施の背景
 今回のアンケート実施の背景でございます。昨年12月のREACHの成立を受けまして、国内の製造・流通事業者への影響が考えられるということでございます。
 REACHへの理解度はどのようなものか、あるいは国内事業者の方がどのような情報を求めているのかというようなことを調査いたしまして、環境省が的確な情報発信を行うための情報を収集するということを目的としております。
 修正ありと入れましたけれども、若干、お手元の資料と数字が変わっておりますので、可能であれば直していただければと思います。環境省のホームページにも、修正した資料を載せますので、そちらも後日ご確認いただければと思います。

◎アンケートの実施方法
 調査方法を製造事業者、流通事業者と2種類に分けまして、製造事業者につきましては、PRTR届出事業場を有する事業者688社としております。PRTRの事業場を事業所区分、業種ごとに分けたものから無作為抽出した企業と、比較的大きな企業の情報を知りたいということで、従業員数の上位1%の企業を選んでおります。
 流通事業者については、日本貿易会にご協力いただきまして、REACHに関心を持っている企業の方、それから日本化学工業品輸出組合、輸入協会の方にご協力いただきまして、こちらは会員企業の皆さま全社にお送りしております。
 ということで、貿易会のほうはREACH に関心のある方に偏っているというところがありまして、必ずしもこれが流通業全体を的確にあらわしているかということは、ちょっと検討が必要だと思っております。
 あわせて任意回答ということで、請負先のホームページに掲載いたしまして、ご自由にご回答いただけるようになっております。

◎アンケートの構成・調査項目
 アンケートの構成はこちらにあります4つになっております。
調査票Ⅱで全般的な話を聞きまして、調査票Ⅲで具体的なREACHについての対応と課題を伺っております。

◎結果(1) 回答状況・回答企業の属性
 こちらもちょっと修正ありになっております。恐縮ですが、もし可能であれば、お手元を直していただければと思っております。調査票の発送数の合計が772社、任意回答が6社ございますので、調査票の発送の回収は50%強、それとあわせまして全部で395社の方からご回答をいただいております。
 回答企業の属性ということで、製造事業者、川上、川中、川下と3種類に分けております。定義の仕方はいろいろあると思いますが、今回のアンケート調査では、主として化学物質・調剤を製造されている事業者の方を川上、部品を製造されている方を川中、最終製品を主として製造されている方を川下というふうに分けております。
 それから、大企業、中小企業という分け方をしておりますが、こちらは中小企業基本法の定義に基づいて分けております。
 川上、川中、川下のバランス、あるいは大企業、中小企業のバランスが大体とれているかと思いますが、若干、川中で大企業のほうが多いというような形になっております。
 流通業は44社の方からご回答をいただいております。

◎結果(2)-1欧州REACHへの理解
 早速ですが、結果に移らせていただきます。
  一番最初に、「欧州でREACHが導入されること自体をご存じですか」と理解度を問う質問でございますが、3月2日時点の結果とほぼ一緒でございます。7割以上の方がREACHの導入を知っていました。知っているというのは、「よく知っている」「ある程度知っている」というふうにご回答になっております。回答数は全部で389です。

◎結果(2)-2欧州REACHへの理解
 大企業、中小企業で分けますと、こちらは傾向が分かれておりまして、大企業が約9割がご存じでした。それに対して、中小企業企業は約半分程度ということで、認識度に違いがあるということがわかっております。

◎結果(2)-3欧州REACHへの理解
 それからサプライチェーンの中の位置づけに応じて、川上、川中、川下、あるいは流通事業者という形で分けたところ、ほぼ同じですが、川中が若干低めでした。一方、流通事業者については、かなり高い認識をお持ちだということでございます。
 
◎結果(2)-4欧州REACHへの理解
 それから、ご担当者本人だけでなく、御社の中でのREACHに対する理解度についてお伺いしております。まだ「社内ではほとんど理解されていない」とほぼ半数の事業者の方にお答えいただいております。これは複数回答でございますが、中には「理解を深めたいが、何をすればよいかわからない」という方もいらっしゃいました。
 
◎結果(2)-5欧州REACHへの理解
 続いて、REACHの基本的な内容でございますが、「既存化学物質についても新規化学物質と同等に事業者ごとに登録が必要になることをご存じですか」という質問でございますが、REACHについての認識7割に対して、登録についても約6割の方はご存じでした。大企業、中小企業で見ますと、やはり大企業が認識は高く、中小企業はあまり理解されていないという状況でございます。

◎結果(2)-6欧州REACHへの理解
 それから、事業者のリスク評価でございますが、「事業者がリスク評価を行い、リスク管理方法を提案しなければならないことをご存じですか」という質問でございますが、こちらも理解は全体で6割程度でした。大、中小、あるいはサプライチェーンごとに分けたもので見ますと、これもほぼ同じ傾向でございまして、川上、川下がやや高め、流通が高い、川中が若干低いというような形になっております。

◎調査票Ⅲ(REACHへの対応と課題)の選択
 調査票Ⅲは、川上、川中、川下、流通という形でそれぞれ分けた調査票をご用意しております。

◎結果(3)-1対応と課題(化学物質製造事業者)
 まず、最初は化学物質製造事業者、調剤も含めますが、川上の事業者の方にお伺いしております。EU化学物質庁への登録についての検討状況をお伺いしておりますが、「現時点ですべて終了」あるいは「一部進行中」というふうにお答えになった企業が3分の1程度と。この中の企業の方には、「欧州のビジネスを断念した物質もある」というご回答もいただいております。

◎結果(3)-2対応と課題(化学物質製造事業者)
 登録の実施方法の予定でございますが、今の時点では、「わからない」「検討していない」という方が4割を占めておりますので、登録方法の具体的な検討はこれからであるというふうに考えております。

◎結果(3)-3対応と課題(化学物質製造事業者)
 続きまして、「データ収集は複数事業者が原則として共同で行うことをご存じですか」という問いでございます。こちらは、全体は6割強でございますけれども、大企業が高く、中小企業は低いという、同じような傾向が出てきております。

◎結果(3)-4対応と課題(化学物質製造事業者)
 共同データ収集でございますが、「その際の問題点はどのようなものがありますか」ということで、こちらで選択肢を幾つか示しましたが、コストの配分方法、人材の確保、情報管理――情報管理というのは、データの外部の漏洩防止といったような課題が基本的に高いというような形になっております。

◎結果(3)-5対応と課題(化学物質製造事業者)
 続きまして、認可でございますが、「製造する化学物質が認可の対象とされた場合、どのような対応をとる予定ですか」ということで、3月2日と少しスライドを変えておりますが、大企業と中小企業で数字を分けております。中小企業の方で「まだ検討していない」というのが大分高いかなというのが一つと、あと一番高いのが「認可不要物質への代替化」ということでございますので、環境負荷の低い物質への代替化が期待されるということでございます。

◎結果(4)-1対応と課題(成形品製造事業者)
 続きまして、成形品、アーティクルの製造事業者、川中、川下の事業者にお伺いしております。「意図的に放出するケースの特定を進めていますか」という問いに対しては、現時点で、「すべて終了」あるいは「一部終了」という方が2割程度、「未着手」は2種類ございまして、「現時点で進め方を検討している」方、あるいは「意図的放出の定義が明らかになってから検討する」という方がございます。いずれにしても、これらの方は今の時点では非常に多いということです。
 
◎結果(4)-2対応と課題(成形品製造事業者)
 続きまして、「成形品中の高懸念物質への対応について、どのようにお考えですか」ということでございます。これも半数の方が「進め方検討中」、それから「候補物質リストが明らかになってから進める」という方も4分の1いらっしゃいます。

◎結果(4)-3対応と課題(成形品製造事業者)
 続きまして、「成形品に含まれる高懸念物質の情報を川下事業者に提供しなければならないことをご存じですか」ということについては、6割程度の方がご存じというふうにお答えになっております。

◎結果(4)-4対応と課題(成形品製造事業者)
 この方あるいはほとんど知らないという方も一部お答えいただいておりますが、次にそういった方を対象に「どのような準備が必要とお考えですか」とお聞きしたところ、「川上事業者からデータが提供されない場合の対応」ということの準備が必要とお答えになった方が一番多い結果となりました。

◎結果(4)-5対応と課題(成形品製造事業者)
 その場合の対応ということで、皆さまにお伺いしたところ、「どのようにデータを収集することになるとお考えですか」との問いについては、「他の川上事業者に変更する」という答えが一番多かったのですが、これも「対応を検討中」「まだ検討していない」という方が相当数いらっしゃいますので、現時点ではそういう結果になっているということでございます。

◎結果(4)-6対応と課題(成形品製造事業者)
 続きまして、再生原料――リサイクルされた原料でございますけれども、これに含まれる化学物質については、情報の収集が困難であることも考えられますが、それについてはどのように対応される予定ですか、という問いにつきましては、一番度数が高かったのが「データが入手可能な再生原料のみ調達する」という答えをいただいておりまして、情報の入手可能性というのが原料調達の一つの判断基準になるのではないかというふうに考えております。

◎結果(5)-1対応と課題(EUに輸出されるか不明な場合)
 続きまして、自社製品が直接あるいは他社を経由して、別の製品になって、最終的にEUに輸出されるかどうかを把握されていない事業者の方、国内事業者に引き渡しているが、それが最終的にEUに行っているかわからないという方についても質問しております。まず、「REACHによって製品を納入する事業者がどのような対応を求められることになるか、ご存じですか」ということをお伺いしたところ、今の時点で把握している方は2割程度でした。そもそもREACHへの対応が必要かということのご認識が不明ということですので、十分でないということだと思われます。

◎結果(5)-2対応と課題(EUに輸出されるか不明な場合)
 「化学物質に関連するデータを納入先に提出する必要が生じる場合の準備を進められていますか」ということについても、「準備中」「進めている」あわせて2割程度ということになっております。

◎結果(6)-1対応と課題(流通事業者)
 最後に、流通事業者の方にお伺いしております。「流通事業者であってもREACHへの対応が必要になると認識されていますか」という問いにつきましては、7割の方が必要性を認識されていました。

◎結果(6)-2対応と課題(流通事業者)
 具体的な作業ですが、まずEU域内に供給する製品のリストの作成、それから取扱物質の登録をどのように進めるか。「どのように」というのは、登録が必要かどうか、あるいはだれが登録をするのかということでございますが、これについては、6割から7割が「これから作業を進める予定」ということで、現時点ではまだ準備段階ということでございます。

◎結果(7)-1 REACHに対する全般的な評価
 最後でございます。こちらはすべての事業者の皆さまにお伺いしましたが、REACHに対する全般的な評価ということで、「御社ではREACHをどのようにとらえていますか」という質問です。選択肢は、「肯定的」「どちらかと言えば肯定的」「どちらかと言えば否定的」「否定的」「どちらでもない」「関心がない」という6種類にしておりますが、「肯定的」「どちらかと言えば肯定的」あわせると34%、一方、「否定的派」が21%ということになっております。肯定的な評価が否定的な評価を上回るということですが、あと現時点で「どちらでもない」という方が相当数いらっしゃいますので、これがREACHの施行に向けて準備を進めるに当たって、どちらかに分かれていくものだと思われます。

◎結果(7)-2 REACHに対する全般的な評価
 これを実際に大企業、中小企業あるいはサプライチェーンの中での位置づけで分けてみますと、大企業、中小企業かかわらず、あるいはサプライチェーンの立場にかかわらず、「肯定的」ととらえる方は現時点では多いという結果になっております。

◎結果(7)-3 REACHに対する全般的な評価
 それから、もう一つ、「REACHの導入は御社の事業分野にどのような変化を与えるとお考えですか」ということでございます。これも複数選択にしておりますが、一つは国内での競争力、もう一つは、国際的な競争力、そのほかの選択肢として製品の絞り込みとその他ということにしております。
 全体で見ますと、国内競争力あるいは国際的な競争力、いずれも「向上する」ということを期待されている事業者の方が多い結果となりました。ただし、川上事業者を内数で示しておりますけれども、国内の競争力は、ほぼ同数でございますが、国際的な競争力については、川上事業者が低下を懸念されている方のほうが多かったという結果が今のところ出ております。
 その他、大企業、中小企業で分けた場合、あるいは川中、川下の事業者につきましては、「向上する」という期待をされているという結果になっております。
 いずれにせよ、その他がかなり大多数になっている状況でございますので、これも実際にとるべき対応が明らかになってから評価がなされるものであるというふうに考えております。
 簡単でございましたが、以上で発表を終わらせていただきます。ご協力いただきました企業の皆さまに感謝申し上げます。
 アンケート結果はほぼ最終と申し上げましたが、最終的なものは環境省のウェブサイトに公表し、あとパンフレットの形にして、皆さまにお配りできるような形にしたいと思っておりますので、そちらもごらんいただければと思っております。以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

(司会)
 ありがとうございました。

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(司会)
 それでは、続きまして、午後の部の講演に移らせていただきます。
 まずは、「中国における化学物質に関する環境管理について」、中国国家環境保護総局化学品登記中心主任、Gao Yingxin さんよりご講演いただきます。Gao Yingxinさん、よろしくお願いいたします。

6.中国における化学物質に関する環境管理

 
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(Mr. Gao Yingxin)
 きょう、このような機会を得まして、皆さまに中国の化学物質の管理情報につきましてお話しできますことを大変うれしく思います。特に主催者である環境省、そしてIGESの皆さまに心から感謝申し上げます。

 

◎発表の内容
 私は、きょう、4つについてご説明したいと考えております。
 まず、中国の化学物資管理の法体系についてお話しいたします。
 それから、特にここでは2003年に制定されたばかりの新規化学物質環境管理規定について重点的にお話ししたいと思います。それから、10年前から実施されている化学物質の登録について、そして、最後に廃棄される危険化学品の管理の問題についてお話ししたいと考えております。

◎化学物質管理の法規制システム
 中国の法体系というのは皆さまもご存じのように、まず全国人民代表大会が定める法律があります。それから、国務院が定める行政法規があり、その下には各省庁、委員会が定める部局規則、行政規則というものがあります。そして、さらにその下に地方で定める法規、それから国家や地方の基準というものがあります。
 
◎化学物質管理に関する法律
 環境保護につきましては、中国には環境保護法という法律があります。これは、明確に専門的に規定を定めたものであります。そのほか、さまざまな専門分野を限った法律があります。水汚染防止法などがその一つです。それから、大気汚染防止法もそうです。このような特定のものに限った法律があります。
 これらの法律は、皆さん、スクリーンをごらんいただければおわかりかと思います。
 それから、今、政府のさまざまなウェブサイトでも紹介しておりますので、簡単に調べることができるものであります。
 
◎化学物質管理に関する行政規制
 それから、この法律の下に条例があります。つまり、国務院が定める行政法規があります。主な重要なものといたしましては、危険化学品安全管理条例というものがあります。それから、農薬、医薬品の管理の法や条例。

◎化学物質管理に関する部局規制
 このほか、部門規則といたしましては、次のようなものがあります。これはかなり数も多くなっています。環境保護法というところから見ますと、皆さまもよくご存じのように、1994年から施行されています有毒化学品に対する制限を定めた規定があります。
 それから、2003年から施行が始まりました新規化学物質環境管理規則というものもあります。
 このほか、2005年、これは出たばかりですけれども、危険化学品に関する法規、規則もあります。

◎化学物質管理に関する基準
 それから、一番下には、中国では標準と呼ばれる基準があります。ここに幾つかの化学品管理に関する基準を出してあります。中国の体制におきましては、法律は「何をすべきか」ということを定めています。条例と部門法規というのは、「いかにそれを実施するか」ということを定めています。そして、基準というのは、「どの程度までやるべきなのか」ということを規定しています。
 例えば、皆さん、よくご存じのGHSですけれども、中国も2008年に実施するということを約束しています。しかし、中国におきましては、関連する基準をその前に改正する必要があります。法律には手をつけず、基準を変えて対応することになっています。

◎化学物質管理に関する産業リスト
 それから、かなり影響力のあるものといたしましては、「産業目録」というものがあります。産業目録と私たちは呼んでおります。この目録は、中国の国家発展改革委員会が公布しているものであります。この中には、奨励する産業分野、制限する分野、それから淘汰する分野、また関連する製品が定められております。

◎新規化学物質の管理-新規化学物質の環境管轄に関する規定
 では、次に、皆さんに新規化学物質環境管理規則についてご説明いたします。
 これは、環境保護総局(SEPA)が2003年9月12日に公布いたしました。同年10月15日から施行されています。
 この法律ができました背景というものは、このようなものです。まず1つは、中国がWTOに加盟するときの約束を履行するためであります。中国は、以前、化学品を初めて輸入するときの規定があったんですけれども、これを新規化学物質の届け出の方法に変えました。この素案をつくったときに、国際的な慣行も十分に考えました。
 
◎新規化学物質の管理-新規化学物質の環境管轄に関する規定
 中国のSEPAはこの新しい規則のために、かなり早いうちから準備を進めています。特に、既存化学物質のリストをつくる上で、非常に時間がかかりました。94年末からリストづくりを始めまして、5回ほど追加届け出をしています。皆さんもよくご存じだと思います。多分、このリストにかかわることをさまざまされていらっしゃるのではないかと思います。
 このリストについて、正しい情報といたしましては、今年1月にSEPAがこのリストの補充に関する問題について通達を出しています。これは、私たちSEPAのサイト、それから私の勤めております登記センターのネットでも詳細については見ることができます。
 新規化学物質環境管理規則を実施するために、3つのガイドラインを定めました。
 1つは、化学品試験ガイドライン、もう一つ、新規物質有害性評価ガイドライン、そしてもう一つは、GLP(優良試験所基準)のガイドラインを公布いたしました。

◎新規化学物質の管理-新規化学物質の環境管轄に関する規定
 また、同時に、私たち登記センターは、SEPAから授権されて、申請の部門を設置しています。SEPAから専門審査委員会を設置するという通達がありました。このほか、国内の生態試験を実施できる実験室のリストも公布いたしました。こういったことを基礎にいたしまして、中国の新規化学物質環境管理規則というものが実施されるようになったのであります。

◎適用可能範囲
 この規則の具体的な内容についてご説明したいと思います。
 まず、適用範囲についてお話しいたしましょう。
 中国では、適用範囲と呼んでいます。どういった対象に適用するのかということです。これは4つの要因があります。まず第1は、物質、それから行為、行為の主体、地域も入ります。地域は、中国といいますけれども、香港、マカオ、台湾は除きます。それから、中国の大陸にある保税区と輸出加工区も除かれます。
 物質につきましては、既存化学物質リストに収録されていないものはすべて当たります。
 それから、調剤に含まれる物質の中に、新規化学物質が入った場合は、これも適用の範囲となります。

◎活動及び届出者
 それから、行為ですけれども、中国国内での生産、第2は中国への輸入、それから輸出ですね。※中国の外にあるメーカーが中国に対して輸出するとき、それから中国国内が外国から輸入するとき、両方とも当たります。(両方とも中国は輸入?)
 それから、保税区と輸出加工区から中国の関税区の区域内に入ってくるものについても適用されます。そういった行為も適用されます。
 それから、行為の主体ですけれども、国内の生産者、国内の輸入者、それから特殊な例といたしましては中国外にある業者も対象となります。その中に香港、マカオ、台湾、保税区、輸出加工区内にある業者も含みます。中国に輸出を準備している、こういった業者が対象となります。

◎対象となる物質と例外
 それから、これまでと同じように、除外と免除の規定もあります。
 幾つか申請が必要のないものがあります。まず、第1は、ほかの法律で既に管理されている化学品がそれに当たります。ここには、13の物質があります。放射性物質、医薬品などがそれに当たります。これは、新規化学物質の届け出が必要ありません。

◎対象となる物質と例外(つづき(1))
 それから、2番目のタイプとしましては、自然界に存在する物質。これらの物質は届け出が必要ありません。これは主管部門が管理することになっていますので、必要ありません。

◎対象となる物質と例外(つづき(2))
 それから、もう一つ、特殊な物質があります。ガラス、それからセラミック、成形品がそれに当たります。

◎対象となる物質と例外(つづき(3))
 4番目の種類は、不純物などです。それから、非意図的に製造されたものもこれに入ります。
 しかし、こういったものは商品として直接上市されるものではありません。もし、商品として上市される場合には、届け出が必要となります。

◎届出の種類
 次に、新規化学物質の届け出について、申請の方法のタイプを幾つかご紹介したいと思います。一般的な、一般申告、これが通常的なやり方の申告です。提出しなければならない情報、資料が最もたくさん必要な申請方法でもあります。
 次に、系列申請というものがあります。これは、簡易申請の一つといってもよいと思います。幾つかの物質がある場合には、それを系列申請として、一緒に申請することができます。しかしながら、それは、3つの条件に合っていなければいけません。まず、分子構造が類似していること、それから用途が同じもしくは近いもの、さらに試験データが類似しているもの、こういった条件を満たす必要があります。これは申請者の便宜を払う申請であります。
 もう一つは、共同申請であります。複数の申請者が一つの物質もしくは近い物質を申請する場合に使います。これについても、提出する文書が少なくて済むので、作業量を減らすことができます。
 それから、もう一つ、簡易申請というものがあります。これは非常に特殊なものでありまして、申請する物質が4つ以上の国、もしくは経済共同体組織の既存化学物質名簿に既に収載されているものであるという条件が必要です。

◎届出の免除
 それから、もう一つ、申告免除の手続という申請方法があります。ここに免除というふうに書かれていますけれども、免除してもらうための手続をとる必要がありますので、ご注意ください。これについては、あとでもう少し詳しくご説明しますが、今、移行期――テスト的な期間における特殊な配慮といっていいと思います。それから、ポリマーの届け出があります。
 届け出の免除の手続につきましては、4つの条件のどれかに適合しなければなりません。1つは、研究目的のものであること、第2は、ポリマーの中でのある条件を満たすもの、それからプロセスや技術研究のために用いる物質であること、4番目は、サンプル、生態毒性の試験などの試料として使う試験用のサンプルなどがこれに当たります。

◎ポリマーの届出
 ポリマーの届け出についても細かく分かれております。まず、ポリマーを普通の化学物質として私たちは見なしています。ですから、ポリマーであればさまざまな免除、届け出免除の申請なども行えるほか、先ほどいったような一般申請とか、簡易申請、系列申請などの申請の方法をとることができます。
 届け出免除の手続には、また5つ細かく分かれています。この5つのどれかに当てはまれば、申告免除の手続をとることができます。

◎データ要件
 では、次に一般的な申請に必要なデータについてご説明します。
 中国の現在の管理システムにおきましては、新規化学物質に関するこの届出人、申告者、つまりだれが新規化学物質の届け出を出すか、そしてその資料はどのようなものが求められるかということでありますが、この4つの部分に分かれます。
 まず、第1には、申請者とその物質、それからその物質の固有の特性、そしてまた特に環境、安全についての情報、その次は、非強制的な資料、つまり自らが進んで申請するかどうかであります。
 この中におきまして、「固有の特性を備えた」ということでありますが、実験のデータですが、非常に厳しく、またそのデータも大変多いものであります。

◎物質(materials) に関する要件-原則-
 先ほども申し上げましたように、中国では、届出人は情報を自ら責任をもって提供しなければなりません。ですから、この情報提供に関する原則を定義いたしました。つまり、その情報は、量的にも質的にも審査委員会が客観的な評価を与えることができるようなデータを提供しなければなりません。つまり、この評価委員会が最終的に結論を出すことができないというような場合、まず一つは、引き続き、そのデータの捕捉をする、それからもう一つは拒否されるということであります。その2つしかありません。ですから、この有害物質の規則に則って、自らもあらかじめいろいろ評価を行わなければなりません。
 このように、有害性の評価につきましては、自らもこの準則に則って、届出人も事前にそれを評価するということが可能であります。

◎物質に関する要件-最低限の物理化学的性状-
 また、この新規化学物質でありますが、その最低のデータの要求でありますが、最低のデータと申しますのは、この審査を受けるときに、必ず提供しなければならない情報であります。この情報は、固体、気体、液体――すみません、これは物理化学的な特性の箇所であります。
 私がまず最初にご説明申し上げたいのは、これは最低限提供しなければならないとしておりますが、これらは時には必要ない場合もあります。つまり、この物質そのものの特性によってであります。

◎物質に関する要件-最低限の毒性学的データ-
 では、毒性学的な面から求められる最低の資料でありますけれども、これは3つに分かれております。急性毒性、また短期反復投与毒性、それから変異誘発性。毒性学的に見ますと、中国国内のシステムといたしましては、申請される量によってかなり影響されます。

◎物質に関する要件-最低限の毒性学的データ-
もし、基礎レベル、求められる数量が10トン以下の場合、それから10~1000トンまで、それが第1レベル、それ以上になった場合には第2レベル、これは次のページに書いてあります。つまり、これらのすべての実験は、基礎レベル以上のものであります。もしこの数量が第1レベルの場合には、基礎レベルのデータ、それと同時に第1レベルのデータが求められます。

◎物質に関する要件-最低限の環境毒性学的データ-
 それから、その次の生態毒性学の面からでありますが、基礎レベルといたしましては、これらの6つのデータが求められます。若干の企業は、中国の管理規則におきまして大変特殊性があります。つまり、生態毒性学の中には、中国の実験生物を使ってしなければならない。では、どれくらいの実験をやるのかと。簡単に言いますと、最低2つ、それは急性毒性、もう一つ生物分解性。例えば、活性汚泥です。
第1レベルと第2レベルでありますと、先ほど申しました基礎レベルの情報以外に、例えば生物関連のテストが求められます。第1、第2の場合は、より多くの情報が求められ、そしてまた専門家による判断を待たなければなりません。

◎中国の試験用の生物
 また、先ほど中国国内、そして中国国内で指定されている生物というふうに申しました。その定義といたしましては、中国国内で栽培あるいは繁殖され、そして技術的な要求にマッチするもの、そして特定の実験の生物であります。それは以下の4種類です。

◎実験の方法
 実験の方法につきましても条件が求められます。この中で毒性学、また生態性物学の角度から申しますと、SEPAのほうで提起されているテスト方法によらなければなりません。これはHJ/T153です。そして、またこの基準によって、具体的に求められるテスト方法によらなければなりません。
また、国外でテストが行われる場合には、まず中国が指定しているところの測定の方法を使うこともできますし、OECD、また国際的に通用している慣例の方法でも結構です。
 物理化学的な特性につきましては、一つは環境保護局が出している基準、あるいは中国の国家基準、また業界基準による。それから、OECD、ISOなど、国際的な慣例の方法で行うことも可能であります。
 主に中国について申しますと、物理化学的な特性の基準というのは、まだあまり完全ではありません。ですから、そういう意味におきまして、今、かなり緩和されております。

◎試験所への資格付与
 それから、実験室ですけれども、要するに、テスト機関の資格であります。
 中国の4つの組織のうちの一つ、まず、一つは国家実験室があります、その認可。もう一つは、衛生部、衛生省の認証によるもの、また食品医薬品監督管理局(GLP)の認可、それから、また国家レベルの計量認証。計量認証というところは、物理化学的な性質のテストのみに限られます。
 もし、このテストが中国外で行われる場合、自らの国でその主管部門がそれを認めた場合に、中国もそれを認める。また、もし、その国の主管部門が認めなかった場合には、中国もそれを認めることができないということであります。このようなことが求められます。

◎評価方法
 では、中国の主管部門がこのような届け出を受けたと。そうしますと、これを専門家委員会というのがありまして、そちらに渡します。そこで、技術的な評価が行われます。専門家委員会は申請を受けて、この有害物質の評価を、特に人健康については、その危害が非常に高い、高い、中程度あるいは低いというふうに4つのグレードに分けます。それから、また生態毒性の面の有害性は5つに分けられます。

◎評価結果
 先ほどの評価の方法により、専門家委員会のほうで、管理の面における提案をします。この物質について、その有害性について審査します。現在は、中国の国家基準に則って行います。中国では、GHSを行っていますが、将来的にはGHSの方法によって分類を行っていくということであります。
 人健康、それから生態毒性に関する評価でありますが、これは4つの提案であります。この有害性が非常に高い場合には認可をしない、つまり生産を禁止するということであります。有害性が大変低い、あるいは無害であると認められた場合には、いかなる特別な要求も出さない。

◎有害化学物質の輸出入に関する環境管理-化学物質の初輸入及び有害化学物質の輸出入に関する環境管理規制-
 その次が有毒化学物質の輸出入環境管理であります。この管理規定は、国家環境保護局また税関、それからもとの対外経済貿易部、現在では商務省と申しておりますが、そこが管轄しております。
 この背景といたしましては、中国はロンドン準則に則りまして、国務院の有害化学物質安全管理条例を実施しております。この管理規則は、有害化学物質の輸出入、もう一つは、化学物質を初めて輸入する際、中国としましては、WTOに加盟した関係によりまして、2001年に始めたわけであります。

◎有害化学物質の輸出入に関する環境管理-化学物質の初輸入及び有害化学物質の輸出入に関する環境管理規制-
 しかし、有害化学物質は、この輸出入を現在も引き続き行っております。
 この管理規則にかかわる、つまり禁止するあるいは厳しく制限する有害化学物質のリスト、これは1994年に発効されましたときには、有害物質が全部で27種類でした。その後、2003年にさらに補足いたしました。それは、硫化水銀(?)であります。

◎有害化学物質の輸出入に関する環境管理-化学物質の初輸入及び有害化学物質の輸出入に関する環境管理規制-
 それから、また2005年、このリストに対して修正を行いました。そのときにかなりの種類を足しました。そして実際に発効されたのは2006年1月1日です。具体的な状況については、企業のほうでよく知らなかった関係で、物品が足りないという状況も発生しました。私たちは、輸出入業者のことを配慮いたしまして、これを急いで行ったわけであります。
 最近、2006年末にさらにリストの修正を行いました。実施は2007年1月1日であります。これは主として3種類増やしました。これは3種類の混合物であります。ロッテルダム条約の要求にのっとって行ったわけであります。それともう一つは、税関のほうで、HSコードの調整を行いましたが、それに基づくものです。

◎有害化学物質の輸出入に関する環境管理-化学物質の初輸入及び有害化学物質の輸出入に関する環境管理規制-
 登録の過程におきまして、SEPA、それから税関は協定を結びました。これらのデータは直接税関のコンピュータとつながっているということであります。
 そのときの状況によりますと、SEPAとしましては、申請票、それからデータの上における要求を手直ししました。そして、将来、中国としましては、この有害化学物質の輸出入面におきましては、宣言通知というものを出すと。

◎登録申請
  それから、この有害化学物質の登録におけるいろいろな条件であります。
  これは、例えば外国企業が登録する場合、そのときはまずこの申告票、また国内の輸入業者との契約、現在に至るまでこれらは有料であります。毎回登録するたびごとに1万ドルの登録費用が求められます。
 そして、審査期間は30日、有効期限は2年になっております。登録の量につきましては、はっきりと規定はありませんが、今までの例から見て合理的な量ということになっています。

◎宣言通知申請
 もう一つは、宣言通知。中国の税関で通関の手続を行う、その中国国内の輸入業者、つまり正式な認可の文書をもらわなければなりません。
 先ほどのSEPAと税関の間で、これらの宣言通知の情報を税関申告システムのほうに提供いたします。これは国内の輸入業者がこれを行います。そのデータといたしましては、申告票、それから外国企業の登録書のコピー、資格証明書、契約書、それから川下のユーザーの状況の説明。
 この登録料は無料です。また、SEPAの求めているのは一応20日となっていますが、今、我々はこれを10日くらい、有効期限は6カ月、これはさらに延期することはないと。もし6カ月過ぎたら、これは破棄されてしまうということになります。

◎特別カタログ
 その次は、特殊な類別な化学物質です。特殊な種類です。
 これはロッテルダム条約によるもの、残留性有機汚染物質(POPs)条約によるものですが、中国としましてはこの2つの条約を認めているわけであります。その中にあるリストでありますが、この条約に基づいて処理するわけであります。もし、そうでなければ、やはり時間がかかってしまいます。
 そして、砒素の輸出、シアン化ナトリウムの輸出、これも特別な条件があります。また水銀の輸出入でありますが、これらの特別な条件は、我々はサイトの中でも具体的なデータを出しております。

◎関連資料
それから、これに関する情報、実施細則等々、我々のサイトに掲載されております。
 
◎その他の情報
 そのほかの情報でありますが、我々の登録センターでありますが、ものによってはネットを通して申し込みを行うこともできます。
 去年12月に私たちはトレーニングを行いました。3月14日に、第2回目のトレーニングを行いました。4月17日にも第3回目のトレーニングを行います。5月には有害化学物質のネット上の申し込みを実施することになります。

◎連絡先
 どうぞ、皆さま方、ご参考になってください。

◎廃棄された危険化学物質の管理
 廃棄された危険化学物質の問題であります。中国ではこれに関連するいろいろな規定があります。

◎廃棄された危険化学物質の管理
 廃棄された危険化学物質でありますが、ここにおきましては、経営者、取扱者は省クラスのライセンスがなければだめです。
 それから、閉鎖した企業ですね。それらの企業の場合、もともとの工場のあったところの汚染度について、測定を行わなければなりません。モニタリングをいたします。
 また、それらの化学物質を処分する場合の費用は、責任者が責任を持って行う。ところが、その責任者がはっきりしない、当事者がはっきりしない場合、政府がそれを請け負います。
 以上、私の紹介をこれで終わります。(拍手)

質疑応答
(司会)
 それでは、質疑応答に移らせていただきます。ご質問のある方は、どうぞ、お席にて挙手をお願いいたします。質疑応答の時間、約10分程度とらせていただきたいと思いますので、せっかくのチャンスでございます。ぜひ、積極的にどうぞ。
恐れ入りますが、ご所属とお名前からおっしゃってください。

(質問者G)
 新規化学物質の免除申告についてご意見を伺いたいと思うんですけれども、現在の免除申告はすべて30日間の審査期間が設けられております。試験研究用の免除申告について、もっと審査期間を短縮化して、簡素化するというようなお考えはないでしょうか。

(Mr. Gao Yingxin)
 私は登記センターの主任をしていますが、さまざまな情報があります。申請に必要な処理時間を短縮してほしいという意見はよく聞いております。しかし、私の今知っているところによりますと、現在は、技術的な問題ではなく、行政的な手続の問題のために時間がかかっているという面があります。30日間というのは、SEPAにおいては2つの段階に分かれています。1つの段階は、登記の段階、それからSEPAの行政のほうの手続です。これは中国の政府部門の行政手続に触れる問題ですので、ここではなかなか短縮するのは難しいということしかお答えできません。

(司会)
 ありがとうございました。ほかにご質問のある方、いらっしゃいましたら、どうぞご遠慮なく、お手をお挙げください。

(質問者H)
 欧州連合でREACHという法律がありますけれども、その法律は成形品を対象にしています。中国でもREACHと同じような法律を制定する計画はあるんでしょうか。

(Mr. Gao Yingxin)
 この問題については、大変うれしい質問なんですけれども、ここでは私個人の考えしかお答えできません。私の考えですが、中国もぜひ中国のREACHをつくってほしいと考えています。しかしながら、環境省の平塚さんからもお話がありましたが、日本のかなりの企業もREACHをなかなか受け入れられないという状況があるようですが、中国はさらに受け入れられない企業がたくさんありますので、なかなか難しいと思います。

(質問者H)
 ありがとうございました。

(司会)
 ほかにご質問のある方、ご遠慮なく、どうぞ。

(質問者I)
 現在の新規物質届出の規則を改正するような予定はあるんでしょうか。何かあるような話も聞いたんですが。

(Mr. Gao Yingxin)
 改正ではなく、さらに整備する計画です。皆さんもご存じのように、17号令が出ましてから、一部の業界や業界団体から「さらに法規を整備するように」という要求が出ております。ですから、少量の化学物質については対象になるのではないかと言えます。しかしながら、改正については考えておりません。調剤については、1グラムでも含まれていれば、やはり届け出が必要ということは変わりありません。
 科学的に考えればちょっと合理的ではないかもしれませんけれども、しかしながら、ほかの側面からも考える必要があります。この新しい管理制度はでき上がったばかりであり、システムとしてはまだ不十分な点がありまして、今後、さらにブレークダウンして細かくしていく必要があります。ですから、これらの問題については、現在、SEPAにおきましても検討しているところであります。2005年の後半から2006年、私たちはずっと検討を重ねてきました。皆さんもおそらく私たちのためにさまざまな資料の提供などをしてくださっています。ほかの国からの資料の提供もありました。今の段階では、情報、資料が揃いましたので、今後の仕事といたしましては、さらにさまざまな意見を求め、検討を重ね、さらに整備をしていく、完全なものに近づけていくという予定です。
 しかしながら、いつそれをするのか、行政手続がいつ終わるのかについてはお答えできません。可能性はありますが、いつになるかはお答えできません。

(質問者I)
 「整備する」という内容を具体的にもう少し教えていただけませんでしょうか。

(Mr. Gao Yingxin)
 具体的にどのようにするかということについては、私の管轄ではないんですけれども、このような問題が既に出されています。量が少ない、また研究開発に関連していること、それからポリマーのもの、これらの3つの問題につきましては、多くの企業が大変関心を寄せています。

(質問者I)
 生態影響については、中国内の試験機関で中国の指定した内容で試験をするということが義務付けられていますけれども、外国のデータを受け入れるというような計画はないんでしょうか。

(Mr. Gao Yingxin)
 外国のデータですね。それは完全に我々は受け入れます。つまり、先ほどの資格に関する条件が整っていれば。しかし、中国は、それ以外に、一つは生態毒性学的なものを足している、つまりもともとにある分にそれをさらに足しているわけであって、それでは海外のものを排斥するかというと、そういうことではありません。

(質問者I)
 どうもありがとうございました。

(司会)
 ありがとうございました。それではお時間となりましたので、質疑応答は終了とさせていただきます。ただいまのご講演は中国国家環境保護総局化学品登記中心主任、Gao Yingxinさんでした。どうもありがとうございました。(拍手)

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(司会)
 続きまして、「韓国における化学物質管理政策」について、ご講演をいただくのですが、ここで準備がございますので、整いますので少々お待ちくださいませ。
 なお、これからの講演で使われる資料につきまして、受付にてお渡しさせていただきましたお手元の資料と若干変更されておりますで、あらかじめご了承くださいませ。
 それでは、お待たせいたしました。これより「韓国における化学物質管理政策について」、韓国環境部化学物質安全課長、Min-Ho Leeさんよりご講演いただきます。

7.韓国における化学物質管理政策

 
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(Dr. Min-Ho Lee)
 こんにちは、Min-Ho Leeと申します。韓国の環境省から参りました。
 資料を変更させていただきまして、ご面倒をおかけいたします。
 プレゼンテーションを始める前に、まず主催者であります日本の環境省の皆さま、そしてIGESの方々にお礼を申し上げます。このような場で、韓国の化学物質管理について発表させていただくのは、大変うれしく思います。この美しい港町で発表できるのは大変うれしく思います。
 今回のプレゼンテーションによりまして、皆さまに韓国の化学物質管理政策についても知っていただく機会となればと思っております。
 先ほど司会の方から言っていただきましたとおり、私が使う資料は、皆さんのお手元にあるものと少し違いますので、ぜひスクリーンのほうをごらんになりながら聞いていただければと思います。

◎目次
 これが発表の内容になります。

◎概観
 まず最初は概観からお話ししたいと思います。そのあとで、化学物質管理の歴史を振り返り、その後、法的な枠組みの説明をさせていただきます。

◎背景
 韓国の化学産業ですが、韓国経済の中でも大きな位置を占めております。国内の製造業の10%ほどを化学産業が占めております。そして、世界的にも、世界の化学物質産業の中では第7位の位置を占めております。

◎背景(つづき)
 現在、化学物質としましては、韓国では4万物質ほど扱っております。そして、毎年400ほど新しい化学物質が製造されたり、輸入されたりしております。
2002年、大体どれくらいの分量が出回っているか、調査をしました。2億8, 740万トンほどが出回っているということがわかりました。また、生産量が高い化学物質、年間1,000トン以上の生産量があるものについては、287種類あるということがわかりました。

◎化学物質管理政策の歴史
 では、少し化学物質管理の歴史を見ていきたいと思います。
 こうした化学物質管理政策が始まったのは1990年、これはちょうど有害化学物質規制法の制定から本格的な政策がとられるようになりました。
 有害性の調査をしたり、化学物質の目録もつくりました。既存の化学物質について、つまり1990年以前に韓国で売られていたものについては、目録をつくりました。そして、1996年、これが転換点となりまして、化学物質管理がさらに加速することとなりました。ちょうどこの年、私たちはOECDに加盟しました。OECDへの加盟によりまして、国内の政策を制定するように要請を受けました。それに基づきまして、 TRI(有害化学物質排出目録)をつくることになりました。これは日本でやっているPRTRと非常によく似ています。
 それから、GLP(優良試験所基準)、それからリスク評価の導入が行われました。去年もまた大きな変更が加えられました。保健衛生ということも考えた上での管理をすることになりました。
 そして、2004年には化学物質の自己確認制度というものがつくられまして、制限されたり、禁止されたりする化学物質の枠が広がりました。

◎法的な枠組み
 こちらが法的な枠組みをあらわしております。有害化学物質規制法が基本的な化学物質管理の法律となります。
 この法律の目的は、化学物質による人間の健康や環境に対する影響を防止すること、そしてこれは5つの章から成り立っております。まず、TRIですとか、危険な化学物質管理の枠組み計画、2つ目としましてはリスク評価などについて書かれております。
 第3章では、有害化学物質の安全管理、あるいは禁止もしくは制限された化学物質の抑制といったことが書かれておりまして、第4章、5章は補足的な状況となっております。

◎法的な枠組み(つづき)
 この法律以外に関連する省庁もそれぞれに化学物質管理にかかわる法律を持っております。労働省ですが、産業安全衛生法というものを持っておりまして、これはMSDSあるいは職業安全衛生管理を行っております。そして爆発物については、爆発物安全管理法が国家緊急管理庁のもとでつくられております。農薬管理については、農林水産省が法律を定めておりますし、肥料管理についても同じく農林水産省のほうで法律を制定しております。

◎組織の枠組み
 では、少し組織の枠組みについて申し上げたいと思います。環境省が一般的な化学物質管理を担当する機関であります。現在、ここには3つの部門があります。化学物質安全課、それから保健衛生政策課、それから有害化学物質管理課があります。2004年にこの3部門から成り立つようになったのですが、それまでは一つしかありませんでした。
 そして、昨年から、各河川流域事務所あるいは地域の環境事務所が化学管理部というものも設けておりますので、あわせて全部で7つの部門が担当することになりました。それから、国立環境研究院でも化学物質にかかわる評価などを行っているところがあります。それから、関係省庁の話、先ほど申し上げました労働省、商務省、それから緊急管理庁であります。

◎化学物質管理システム
 では、少し、韓国の化学物質管理というほうに今度は話を移していきたいと思います。

◎管理の枠組みの概観
 これが管理の枠組みをあらわしています。まず、基本的なデータ収集、リスク評価、リスク管理とコミュニケーションというふうに分かれておりますが、データ収集については2つのアプローチがあります。
 新規化学物質がその一つですが、大体、毎年400種類ほど新規化学物質が出てきます。産業あるいは企業が責任を負ってデータを提供し、これを政府に提出するということになっております。この中には、有害性の評価、どれくらいの分量を使うのか、またどういった化学物質を使うのかという情報が含まれます。
 既存化学物質については、政府のほうがイニシアティブをとることになっております。政府が安全試験を行ったり、また環境モニタリングも行った上で、TRIの制度のもとで、情報を提供したりしております。
 リスク評価のところでは、影響評価とばく露評価があります。それをもとにしまして、それぞれの化学物質についてはどのような管理をするかを決めます。制限あるいは禁止するのか、場合によっては管理に当たっての基準を制定したり、あるいは事故防止策をとったりという形で対応しております。

◎化学物質の分類法
 これが韓国でとっている化学物質の分類法です。
 大体、4万1,000種類の化学物質が韓国では使われておりますが、その中に有毒な化学物質があります。あとでこの定義についてはお話ししますが、禁止制限化学物質、事故警戒化学物質、それから観察化学物質というふうに分かれております。
 それから、一般的な化学物質、これについては特に規制といったものはございません。

◎定義
 では、先ほどの定義ですけれども、まず有害化学物質、これは人の健康または環境に有害なものであります。化学物質そのものが大変危険な影響を及ぼすというものです。
観察化学物質というのは、有害化学物質になる可能性がある候補物質であります。ですから、人の健康や環境に害を及ぼす可能性があると思われるもの、今ははっきりしないけれども、まだわからないということで、しばらく観察し、数年たってから、政府が「これは一般の化学物質に入るのか、有害化学物質に入るのか」ということを決めます。
制限または禁止されている化学物質ですが、人の健康または環境に重大な害を及ぼすものというふうに定義されております。ということで、政府はこうした化学物質については、製造あるいは輸入、使用については制限または禁止するということになります。
 事故警戒化学物質ですが、事故を防止する必要があるもの、事故が起こったら、甚大な被害が起こる可能性がある、極めて高い毒性があったり、爆発の危険がある、だから、事故の危険が高いというような物質がこの分類に入ります。
 
◎化学物質の自己確認
 では、化学物質の自己確認についてお話しします。
 これは企業が化学物質を輸入あるいは製造しようとするときの第1ステップになります。化学物質の製造業者、そして輸入業者が化学物質の自己確認シートを環境省に提出します。それは、製造や輸入を行う前になります。
 つまり、これが新規化学物質なのか、有害化学物質なのか、あるいは制限される化学物質なのか、などについて届け出をしなければいけません。
 同じ化学物質については、一回提出すればいいことになっています。また、海外の輸出業者は、化学物質の情報を韓国の輸入業者に提供して、この手続がスムーズにいくようにしなければなりません。
 2006年に、初めてこのシステムが導入されました。そして、21万の自己確認シートをそれ以来受理しています。

◎新規化学物質及び既存化学物質の評価
 また新規化学物質、そして既存化学物質の評価ということですが、すみません、これは間違っていますね。1990年が正しい年度です。1990年から2006年まで4,600の化学物質の評価を新規化学物質について行いました。また、有害化学物質125、そして観察物質として12、特定しています。
 この毒性検査については、6項目について評価しています。これはあくまで毒性ということですが、物理化学的情報ももちろん必要ですけれども、毒性に関しては6項目だけです。つまり、急性健康毒性、遺伝毒性、生分解性、魚類急性毒性、ミジンコ毒性、藻類毒性です。
 この評価項目の数字は、OECDの勧告である13項目に比べて大分少なくなっています。6しかありません。ですから、現在、これをさらに強化することを検討しています。
 
◎新規化学物質及び既存化学物質の評価(つづき)
 既存化学物質に関してですが、先ほどご説明しましたように、政府が安全性試験を1年に15種類ずつ行っています。これは化学物質の分布、そしてその有害性に基づいた優先順位付けによるものです。
 1,000ほどの化学物質が昨年は評価されました。そして、440種の化学物質が有害化学物質として指定されています。リスク評価に関しては、年次ごとに段階的にリスク評価を行っていますが、これについてはまた後ほど詳しくご説明します。

◎有害化学物質の規制
 有害化学物質の規制に関してですが、これは、有害化学物質を生産、販売、保存、輸送、使用したいという人たちが登録を要求される規制です。
 現在、570ほどの有害性化学物質が登録されています。また、輸入業者としては、環境省に対して、その化学物質の種類、そして用途について、届け出をすることになっていますが、同じ化学物質については1回で構わないということになっています。
 しかし、試験あるいは研究、検査に使われる試薬は例外です。

◎有害化学物質の規制(つづき)
 また、有害化学物質を扱う企業に関しては、定期的あるいは不定期の安全性検査が当局によって行われています。毎年、定期検査が行われ、安全性検査が必要であれば行われます。
そして、環境省は、有害化学物質の貯蔵、輸送、そして販売、流通に関して、その管理のガイダンスを出しています。また、有害化学物質を扱う業者の自己管理ということですが、そういったものの保存、販売、製造に関しての年間の実績を翌年2月までに報告することになっています。
 そして、そういった資料は、3年間保存する義務があります。
 
◎制限される化学物質の規制
 また、制限される化学物質の規制ですが、これについてより厳密な規制があります。企業は、まず事業認可を得る必要があります。登録だけではありません。
 今のところ、5種類の制限されている化学物質があります。臭化メチル、マラカイトグリーン、四塩化炭素などがその中に入っています。また、58種の禁止された化学物質があります。これは、研究といったような、非常に例外的な場合を除いては使用が禁止されています。
 そして、こうした制限された化学物質の管理のガイダンスがあります。そして、制限されている化学物質を輸入する必要がある場合は、事前に認可を政府から取得する場合があります。

◎事故警戒化学物質
 事故警戒化学物質、これは56種、指定されています。ホスゲン、ベンゼン、アンモニア、塩素などです。
 企業はある一定の規模以上になりますと、緊急時対応計画をこういった化学物質については策定しておかなければなりません。そして、事故については報告します。つまり、報告義務を負っているということです。
 
◎化学物質事故対応情報システム(CARIS)
 こちらはコンピュータプログラムです。
 化学物質事故対応情報システム、CARISと呼ばれています。このシステムは消防局あるいは警察など、事故が発生したときに対応する支援となります。このコンピュータによって必要な情報が提供されます。例えば、事故現場からの避難経路、風速、風の方向、そしてどういった化学物質が排出されているか、あるいはその化学物質を中和するための情報などが提供されます。環境省がこれを開発しました。そして、これを政府の当局に対して提供していますので、これは使用されることが可能です。

◎残留性有機汚染物質(POPs)の管理
 また、残留性有機汚染物質(POPs)についてですが、政府が残留性有機汚染物質規制法を今年1月に制定しています。目的は、排出基準を設定すること、そしてPOPsの廃棄物の処理法、そしてリサイクルの基準を制定しています。この法律を制定して直後に、この1月にストックホルム条約を批准しました。
 
◎残留性有機汚染物質(POPs)の管理(つづき)
 ダイオキシンの管理についてですが、現在、リスク評価プロジェクトがダイオキシンに関して進められています。ダイオキシンの韓国における現在の汚染水準を評価しています。これは、既存のダイオキシンの測定データを使っています。また、ダイオキシンリスク評価委員会が2005年に設置されました。
 このPOPs規制法によって、ダイオキシン排出許容基準を来年1月までに規定しなければならないことになっています。ですから、今、必要な排出許容基準を検討中です。利害関係者の意見などを取り込んでいます。企業やNGO、そして研究機関、あるいは大学の専門家などの意見を聞きながら、各業界の現状を考慮しています。

◎残留性有機汚染物質(POPs)の管理
 PCB、これは非常に悪名高い残留性汚染物質の一つですが、PCBを含有している在庫、例えば変圧器などについて検査をしています。そして、それについてのデータベースを維持管理しています。
 そして、IDタグをPCBの廃棄物に対して、無線IDの技術を使って追跡しています。これはID、識別するための技術を使っています。

◎リスク評価
 リスク評価につきまして、実際、傾向が従来的な有害性評価からリスク評価へと移ってきています。韓国でもそういった方向性への潮流の変化が見られます。
近年、リスク評価を始めたところです。2003年、107の高リスク優先化学物質が選択されました。それは有害性、そして分布量に応じてです。その後、107選ばれたうちから17についての初期リスク評価を行いました。スクリーニングテスト、そしてばく露評価などを行いました。そのあと、今年、より詳細なリスク評価を、17のうちの7つの化学物質について行いました。先ほど申しましたのは、初期のリスク評価ということで、17の化学物質について行ったわけです。それに対して今度は7つ、鉛、カドミウム、水銀等、こういった化学物質はもっと詳細に評価する必要があるということで、詳細なリスク評価をそれぞれの分野で着手しました。
 
◎有害化学物質排出目録 (TRI)
 さて、化学物質管理の情報システムについてお話ししたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、OECDの勧告に従って、有害化学物質排出目録システムを設定しました。
 TRIは、つまり製造、使用、あるいは輸送中にどれくらいの有害化学物質が排出されるのかについての目録となります。これは義務化されたり、あるいは自主的に企業が参加してやってくれていますが、現在、30人以上の従業員がいる企業、そして36の政府が指定している業界に所属する企業は、TRIの報告を毎年することが義務付けられています。
 現在、388種類の化学物質がこのシステムのもとに置かれています。ですから、企業はこの388の化学物質のうち、どれを使っているのか、どれをつくっているかということを調べて、そして政府から出されている報告書に記入しなければなりません。紙でも、あるいはディスクでも提出することができます。
 もう一つ、情報を収集する方法ですが、化学物質分布総量調査です。これは4年ごとに98年以来行われております。98年、それから2002年に2回の調査が行われており、今年、第3回目の調査が全国的に行われることになります。
 100キロ以上の化学物質を製造または使用する施設は、どれくらいの量を使ったり、つくったりしているのかを報告することになっています。ここにもミスタイプがありました、申しわけありません。化学物質については、報告をする義務があるということです。

◎化学物質排出量
 どのくらいの分量の化学物質がTRI制度のもとで排出されていることをつかんでいるかということをあらわしております。私たちは制度を常に変えてきておりますので、比較するのがちょっと難しいのですが、2004年、2005年、同じフォーマットを使った調査の結果が出ておりますので、比較していただくことができると思うんですが、取扱量はほとんど変わらないのに、排出される化学物質の量は大きく減っているのがよくわかると思います。

◎有害化学物質排出目録(TRI)情報システム
 さて、データを業界側から集めたりする場合、集めた結果ですけれども、このTRIのシステムを使いまして、政府が一般に対して報告することになっております。
 このような形でコンピュータに出ておりますが、政府が地域ごとあるいは業界別、産業別に統計を発表しております。
 個々の企業や施設について、もちろん政府はデータを持ってはおりますが、今のところは、これはまだ公表されておりません。ただ、2008年からは法律によりまして、このデータについても公開するということになっておりますので、どのような形で一般にこのデータを公表するか、いつ、検討中です。
 
◎国家化学物質情報システム(NCIS)
 それから、化学物質の全国的な情報システム、これも大変重要なものです。これは2009年まで続くプロジェクトとなっております。このシステムを使いまして、国内の化学物質データ、あるいは有害物質情報規制を提供することになっております。韓国語と英語で情報は提供されることになります。化学物質について、例えば、輸入をしたい、製造したいということで、何か調べたいというときには、このサイトを見て、これが有害化学物質なのか、一般的な化学物質なのかといったことを調べることができます。
 画面上ではちょっと見えないかもしれませんが、ncis.nier.go.krがアドレスとなっております。

◎利害関係者の参加
 さて、利害関係者の参加を確保するために、いろいろな方法を政府はとっております。その一つが化学物質政策審議会であります。有害化学物質管理委員会というのが法律のもとで定められておりました。現在、26人がこの委員会のメンバーとなっております。10人が政府から、16人が産業、NGO、あるいは研究機関、大学などから参加しております。そして、リスク管理政策あるいは毒性の確認、それからこれをどのように公表するのかといったような話し合いをすることになっております。
 それから、PCB委員会、ダイオキシンリスク評価委員会、NGOと政府の間の委員会などがありますが、すべての利害関係者の代表者がこの委員会に含められるようにと私たちは努力をしているところです。

◎企業とのパートナーシップ
 では、企業とのパートナーシップについてです。
 30/50プログラムというものがあります。これは自主的な合意を企業と政府の間で結んでおります。これは地方公共団体もNGOも含まれる合意ですが、そのほかの利害関係者も含まれております。企業は、自主的に化学物質の排出を、例えば施設から削減したいという場合、2007年までは30%削減、2009年までに50%削減するということを企業は努力するということになります。これは、2001年に対して30%、50%の削減ということになります。
 そういうことをやりたいという企業は参加してもらうことになっておりますが、このプログラムに参加している企業は、現在、167社あります。おそらく今年の末には200社参加してくれているのではないかと思っております。化学物質の排出は、このプログラムに参加したあと、大分削減されております。2001年と比べますと、順調に、既に50%ほど削減しているということがグラフで見ておわかりいただけると思います。

◎企業とのパートナーシップ(つづき)
 また、こうした自主的合意によりまして、PCBもなくしていくということをやっております。
 発電企業7社がPCBをなくすということで参加してくれていますし、ダイオキシンに関しては19社が同じく自主的な合意に加わってくれています。

◎能力育成
 次は、能力育成、キャパシティビルディングですね。これは、フィールドで活動する人たち、つまり民間部門の企業に対するキャパシティビルディングです。
 定期的に研修することを義務化しております。特に、有害化学物質に携わる人たちは、この研修を受けることになっております。政府側からは有害化学物質規制法についての最新情報を提供します。そして、有害化学物質の性状ですとか、一般的な化学的な情報などを提供しております。
 また、政府関係者、私たち環境省や、あるいは地方自治体向けにもプログラムを提供しております。それぞれの能力形成のために参加してもらっております。そして、例えば、消防署や警察署などのような緊急事態に対応する機関も、化学物質事故の予防のための研修なども受けてもらっています。

◎能力育成
 これは、一つの例としてお示ししております。これは一般の人たちに配られているパンフレットです。
 勧告5番ですけれども、有害化学物質規制法に関するガイドラインのパンフレット、それからTRIについてのパンフレットです。

◎新たな問題
 次に、どういう問題が韓国でさらに出てきているのかをお話ししたいと思います。

◎子どものための健康保護政策
 子どもの保健が国民の懸念事項の中心となっております。というのも、子どもたちは環境汚染に大変敏感に反応します、あるいは化学物質に対しても、非常に弱い立場でありますので、政府としても子どもたちに注目しております。数年前、韓国で社会問題になったのはシックハウス症候群です。皆さんもご存じではないでしょうか。新しくつくられたアパートや建物の中の内装から出てくる揮発性有機化合物、VOCが排出されることで病気になってしまうというものです。これが大気中に出て、人間の肌に付着したり、あるいは吸い込んでしまったために、健康上の被害が起こるという問題でした。
 これを受けて、政府は、こうした内装に使われる物質について、規制を設けました。もっと環境にやさしいものになるように、基準を設けました。こうした子どもたちの健康保護政策はこういう背景のもとにつくられたわけですけれども、有害化学物質が子どもたちのオモチャや、子どもたちが扱う製品からも出ているということがわかりました。ということで、リコール制度を設けることとなりました。
 また、子どもを対象としたリスク評価の構築をしております。そして、例えば、教育プログラムですとか、危険なものなどを示すようなシンボルマークも含めたリスクコミュニケーションの開発をしております。
 
◎REACH対応システムの構築
 REACHに対する対応ですが、既にEUの方から午前中にご説明があったと思います。環境省がREACHの初期段階での対応では主導的役割を果たしてきました。目標は、この対応システムによって、関連産業に対して体系的な支援を提供する、そして国内の化学管理システムを改善するということです。
 環境省がREACHのタスクフォースを昨年9月に設置しました。そして、現在、ヘルプデスクを業界向けに運営しています。ホームページもあります。特別なREACHの対応に関するリストをつくっております。
 
◎化学物質の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)
 GHSについてですが、政府が省庁間委員会を2004年以降、運営してきています。その中には環境省、労働省、国家危機管理庁、商業産業省などが参加しています。そして、この委員会が国連のGHSパープルブックを韓国語で2年前に出版しました。たしか2年前だったと思います。
 現在、国内のGHSの規制の策定を行っています。2008年には完全に実施の予定です。環境省が有害化学物質については、規制を今年末までに策定します。現在のところ、法律のもとでは、環境省が分類や表示の情報をそれぞれの有害化学物質について提供しなければいけません。具体的な情報だけではなく、その分類の仕方についてもです。それぞれの有害化学物質に関してです。混合物もありますので、およそ2,000種類の有害化学物質が環境省の管轄下に置かれることになります。現在、その分類を行い、適切な表示を策定中です。
 GHSのガイドライン、そして産業界向けの教育プログラムも開発中です。また、一方で、労働省が労働安全衛生法をGHSに関して改定しています。そして、詳細な通達は昨年なされました。これは新しいGHSの適用を今年ではなく来年7月以降、適用することを義務付けしています。それまでは新しいシステムと古いシステムを並行して使うことができます。

◎国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)
 SAICMに関して、SAICM推進評議会を設置しました。これは政府、業界、そして専門家からなる評議会で、国内実施計画をSAICMについて策定しています。環境省がこの作業に関しては国内の中心的な役割を果たす部署となっています。

◎将来的な政策の方向
 これは、私のプレゼンテーションの最後の部分になります。将来の方向性についてです。

◎有害化学物質管理の枠組み計画(2006-2010)
 これは、2006年から今後5年間の有害化学物質管理についての枠組み計画です。これは法体系の計画です。化学物質管理法に基づくものです。そして、最終的な目標としては人の健康、そして環境を有害の化学物質から保護するということです。
そのために3つの戦略があります。既存の有害性というところからリスクへと管理の幅を広げる、そして多様な政策、規制のツールを活用していく、そして経済的なツールも使う。また、あらゆる利害関係者間の協力の仕組みをつくる。それは、産業界、NGO、そして学会も含めてです。
 そして、有害化学物質の安全な管理の基礎を強化するということが、具体的なタスクになります。人の健康の保護という観点から化学物質のリスク管理を行う、そしてPOPsのような特定の有害化学物質に焦点を当てた管理システムを確立する。そして、リスクコミュニケーションを強化する。また、新しい化学物質の登録、評価システムを導入するということがあります。

◎新化学物質評価システム
 新規の化学物質評価システムですが、現在、REACHのように国際社会でさまざまな変化が起こってきています。ですから、この新しいシステムを2010年までに、世界的な潮流に対応するために導入する計画です。
 評価項目をOECDの勧告に合わせ、現在の6項目から13項目へと拡大します。
また、化学物質のデータ生成に関しては、業界の役割を強化します。既存のデータに関しては、有害性についての試験を行い、そして政府がその情報を収集してきました。しかし、その責任が産業界へと移行しています。これがREACHの精神でもあると思います。ですから、韓国政府もやはりそういった考え方になっています。ですから、将来的には、産業界の責任が拡大します。業界側がHPV、大量生産の化学物質などについてのデータも生成しなければいけません。
 また、サプライチェーンを通じた化学物質の情報共有も強化していきます。つまり、川上使用者がこうしたデータを川下使用者に提供する、そして最終的には消費者に対して提供していくことが求められます。

◎公衆衛生に基づく化学物質のリスク管理
 また、公衆衛生をもとにした化学物質のリスク管理ですが、昨年、10年計画を環境衛生に関して発表しました。それが環境政策の一つの主要な要になっていきます。その関係で、リスク管理が強化していきます。つまり、受容体指向のリスク評価システムが確立されます。
 今のところは媒体、つまり大気、土壌、そして水といった媒介物を見てきたわけですが、今後は受容体に焦点を当ててきます。つまり、人体、あるいは生態系、そして動物など、受容体に焦点を当てたリスク評価システムを強化していきます。
 そして、有害な物質を含む、生きたもののライフサイクル管理を行っていきます。つまり、化学物質のばく露の日々のモニタリングということも行っていきます。また、有害物質に対するばく露の定期的なモニタリング、そしてそれは子どもの製品に関して行っていき、管理システムを確立していきます。

◎統合的リスクアセスメント及び管理 (IRAM)
 最後に、統合リスク評価管理システムですが、大気、水、そして土壌などということを申してきましたが、この統合リスク評価の基準は非常に複雑なシステムになります。ヨーロッパで非常にこれについて進んだ国がこうした統合された基準を採択しています。今のところ、韓国では大気、土壌、水、水質に対して、それぞれ別個に環境基準を設けていますが、こういった統合された基準を策定しようとしているところです。しかし、今のところ、進捗は満足できるものではなく、まだ今後、年数がかかるでしょうが、方向性としては、この統合された環境基準を策定する方法を模索していくということになっています。
 リスク評価管理の計画の第一段階を完了したばかりです。そして、昨年、統合リスク評価管理のタスクフォースとフォーラムを設置しました。このタスクフォースとフォーラムを活用して、実施プラン、リスク評価管理の実施計画の第2段階を行っていきます。
 これが私の最後のスライドになります。ご清聴、ありがとうございました。(拍手)

 

 
韓国質疑

質疑応答
(司会)
ありがとうございました。
 それでは、10分ほど、質疑応答の時間とさせていただきたいと思います。ご質問のある方は、どうぞ挙手をお願いいたします。

(質問者J)
 韓国の化学物質政策の策定におけるステークホルダーズ、特に市民やNGOの参加はどうなっているかということが 1点と、SAICMを策定されるということですけれども、その策定に当たって、このようなステークホルダーズが参加するようになっているか、あるいはその委員会が開かれた、公開されているものになっているかどうか、これについてお答えください。

(Dr. Min-Ho Lee)
 ご質問いただきましてありがとうございます。ステークホルダーの参加、特にNGOの参加を確保するためにということですが、先ほどプレゼンテーションの中でも言いましたとおり、いろいろな委員会があります。化学物質管理に関するいろいろな委員会、化学物質管理の政策だけではなく、例えば政府の政策づくりに当たって、政府から要請いたしまして、NGOなどにも積極的に参加してもらっています。参加してもらうのが義務というところがあります。ですので、NGO枠のようなものが一部あります。
 2つ目のご質問ですが、SAICMについて、ここでもやはりNGOや市民社会もこの推進評議会には加わってもらっています。まだ作業は始まったばかりの段階でありますので、公聴会とか大きなフォーラムやシンポジウムはできておりませんが、今、テストケースとして少しずつ進めているところです。これからは大きな公開セミナーなどのようなものも行っていくことになると思います。そこでいろいろな方々の意見を聞いて、それを織り込んでいけるようにしたいと考えているところです。

(質問者J)
 ありがとうございます。

(司会)
 はい、それでは前のお席の方、どうぞ。

(質問者K)
 シックハウス症候群についてお話がありました。日本でも厚生労働省等は基準を設けたりしておるんですけれども、具体的に物質を指定されて、どのようにシックハウス症候群に対応しておられるのでしょうか。

(Dr. Min-Ho Lee)
 2005年だったでしょうか、年ははっきりしていないのですが、何年か前に政府が法律を設けました。室内空気管理法というものですが、これはシックハウス症候群の問題が出た後でできた法律です。法律に基づきまして、いろいろな措置を講じるように求めております。そのうちの一つが、まずモニタリングをする。例えば、内装で使われる物質、材料についてモニターをするということになっております。1万とか2万とかいろいろな項目があげられておりますが、いろいろな試験を行うことを求めております。もちろん、優先順位を第一につけなければいけません、どのアイテムから試験をしていくかの優先順位です。毎年、試験を行っております。我々といいますか、業界側が試験をすることが求められております。そういう措置をもとにしまして、室内空気あるいはその空気に対して影響を及ぼす材料などの規制を行っているところです。
 どういう物質ということについて、ちょっとはっきりとお答えできないんですけれども、どういうふうにガイドラインを設定するのか、どういう措置が含まれているのか、記憶からお話し申し上げておりますので、今すぐには具体的なことはお答えできません。こんなお答えでよろしいでしょうか。

(質問者K)
 ありがとうございました。もう一つお伺いしたいんですけれども、endocrine disruptor について、韓国はどのような対応をしているのでしょうか。

(Dr. Min-Ho Lee)
 内分泌かく乱物質、EDCと呼んでいますが、それに関しては政府が基本的な計画を持って います。これについての対応策です。そして、環境モニタリングを行っています。1999年からだと思います。全国的な環境モニタリングを具体的なEDCの候補、あるいはEDCと思われる、内分泌かく乱物質と思われるものに関して行っています。環境省だけではなくて、海洋省もこのプロジェクトにかかわっています。
 内分泌かく乱物質の生態系、環境における濃度を測定しています。現在のところ、中間的な結論としては、特に深刻な生態系への影響はないということですけれども、これはあくまで暫定的な報告ということで、最終結論ではありません。まだ環境モニタリングを行っています。この件に関しては、2カ国間の協力の手段が日本と韓国の間にあると思います。そして、合同セミナーなどを政府のチャネルを通じて、日本と韓国の間で行っています。

(質問者K)
 最後に一つ、要望ですけれども、TCCAなどに関する韓国政府のホームページにもう少しアップデートな英語版をつくっていただきたいんです。中国のCRCの場合は、かなり英語版が充実して、我々も参考にしているんですけれども、韓国もぜひそうしていただきたいと思うんですが。

(Dr. Min-Ho Lee)
 はい。英語版の有害化学物質管理法についての内容ですが、ホームページにも、少なくともその法律の英語版はあると思います。ただ、それが古いものか最新版かは確認しなければなりません。
 きのう、こうした議論を中国、日本、韓国の間で行いました。どのようにして、この化学物質管理の分野で3カ国の協力を強化するかについて議論をし、いわゆるホームページのようなものも3カ国間で立ち上げることで合意しました。そして、必要な情報をアップロードします。法律、あるいはガイドライン、あらゆる提供できるものを提示します。今年半ばには、ホームページでお互いにリンクが張られることになります。それぞれ各国の環境省のホームページに関してです。英語版に関しては、ちょっと話は違ってきますが、現在、有害化学物質管理法に関しての英語版はあります。私、今、手元に持っております。これは確認して、きちんと最新版になるようにしたいと思います。ありがとうございました。

(司会)
 ありがとうございました。ただいまのこのお話につきまして、補足させていただきます。

(環境省)
 環境省の化学物質審査室の森下と申します。
 今、 Lee Min-Hoさんからお話がありましたように、昨日、中国、韓国の方と環境省、経産省、厚労省の方もご参加していただいて、3カ国で議論しまして、こういった化学物質管理に関する情報交換を積極的にもっと進めていこうということで合意をいたしております。この合意自身は、昨年12月に、第8回日中韓三カ国環境大臣会合が北京で開かれておりますけれども、そこでこういった合意がなされておりまして、昨日開かれた会議はそれを実際に進めるためのキックオフ会合ということで、事務レベルで打ち合わせをいたしました。今、お話がありましたように、いろいろなレギュレーション、それにかかわるようなリスク評価のやり方、あるいはさまざまなクライテリア、判断基準、あるいは対象になっている物質といったようなデータを、皆さま方もご自由にアクセスしていただけるような、そんなホームページをつくって情報提供を進めさせていただこうということで、これから3カ国で努力していこうということで意見が一致しております。また後ほど進捗状況については、ご説明させていただく機会があればと思っております。

(司会)
 ただいまの補足説明をさせていただきました。今、お手が挙がっておりますので、もうお一方、質問を受け付けたいと思います。

(質問者L)
 大変興味深いご発表、ありがとうございました。2つ質問がございます。1つは、ダイオキシンについて、これは環境省の所管事項でないんだと思うんですけれども、食品についてもダイオキシンについての基準があるというふうに伺ったのですが、そのことについてご存じでしたら教えていただけますでしょうか。
 第2点目は、子どものための健康保護政策についてですけれども、子どものためのリスク評価の構築というふうにこのスライドの中に書かれているのですけれども、これをもう少し具体的に、どのようなリスク評価をおやりになっているのかということについて教えていただけますでしょうか。以上2点です。よろしくお願いいたします。

(Dr. Min-Ho Lee)
 ご質問ありがとうございます。この2つのご質問につきまして、ご回答するのが大変難しいのですが、まず最初の質問は、環境省の管轄分野ではありません。少し話は聞いておりますが、それほど私も詳しくはありません。ですから、申しわけありませんが、ここで必要な情報をご提供することは難しいと思います。
 それから、2番目の子どもの保護に関してですが、先ほど申しましたように、現在、リスク評価手法を策定中です。1つの側面としては、政府が今準備をしているところですが、包括的な子どもの健康についての計画を発表する予定です。今年中、もしかしたら今年、上半期中かもしれません。そのタイミングについてははっきりしていませんが、政府がその準備を進めており、環境省がその取り組みの中心的な役割を果たしています。それが一般的な政府の中での流れです。
 先ほど申しましたように、まだ詳細なリスク評価の手法について、子ども向けに完全にできたわけではありません。ですから、まだその内容についてはご説明することができません。

(司会)
 ありがとうございました。それでは、お時間となりましたので、質疑応答はここまでとさせていただきます。ただいまの講演は韓国環境部化学物質安全課長、Min-Ho Leeさんでした。どうもありがとうございました。(拍手)

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(司会)
 続きまして、「北東アジアにおける化学物質管理についての動向」について、IGES副所長、森秀行より発表させていただきます。なお、これらの発表の資料につきましては、講演資料集とは別にお配りさせていただいておりますので、そちらをどうぞごらんください。それでは、森副所長、よろしくお願いいたします。

8.北東アジアにおける化学物質管理についての動向

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(森)
 ご紹介ありがとうございます。IGESの森と申します。よろしくお願い申し上げます。
 本日のシンポジウムの最後のプレゼンテーションになります。「北東アジアにおける化学物質管理についての動向」についてということですが、基本的にはもう既に何人かの方から言及されております、昨日までIGESにおいて開催されておりました北東アジアにおける化学物質管理に関するワークショップ、その主なポイントをご紹介するということでございます。

◎概略
 概略ですが、まず全体的なコンテクストを簡単に触れさせていただきます。そのあと、今、申し上げましたワークショップの参加者等の概略をご紹介します。そのあとに、化学物質に関する大きな政策動向ということに触れさせていただきまして、そのあと、ワークショップでは2つの大きなクエスチョンがございまして、1つ目は国際的な動向にどのように対応するのかというクエスチョン、それとの関係で、GHS、REACH、SAICMについて触れさせていただきます。
 2つ目のクエスチョンが、化学物質アセスメント、管理、コミュニケーションに対してどのようにアプローチを改善するかというクエスチョンでございまして、それとの関係で、既存物質、代替物質、マルチステークホルダーの参加、ライフサイクルアプローチ、そして日中韓の地域協力という点について順番にポイントを紹介させていただきます。

◎全体的コンテクスト # 1
 最初に全体的コンテクスト、円グラフが示されております。これは、81年以降、新規化学物質がどのような国で開発されたかということを示すものですが、明らかに日本、アメリカ、ヨーロッパ、3つのところが中心だということが示されておりますが、近年、これに韓国はもちろんのこと、中国、そしてインドというようなアジアの国々が急速にキャッチアップしてきております。
 生産面において、このように化学物質のグローバル化が進んでおりますが、消費面においても国際貿易を通じまして、化学物質の国際化がどんどん進んできているという状況にあります。

◎全体的コンテクスト #2
 そういう中で、幾つかの重要な国際的なプロセスが今年、それから来年に向けて実施されていきます。ご承知のように、2002年、ヨハネスブルグのサミットで「2020年までに化学物質の製造と使用による人の健康と環境への悪影響の最小化を目指す」という合意がなされまして、それを受けて、2006年にSAICMという国際的なプロセスが始まりました。このSAICMのプロセス、2006年の合意を受けて、各アジアですとか、アメリカですとか、そういう地域でのプロセスが始まっておりまして、アジアのSAICMプロセスは今年の5月からスタートいたします。
 それから、もう何度も紹介のありましたREACH、これは2006年の12月に成立いたしまして、本年7月以降、段階的に実施されていくということでありまして、EUにおきまして化学品リスクからの健康や環境の保護を改善するだけではなく、EUの化学工業の競争力を高めるというねらいを持ったものであります。
 それから、GHS。これも何度も言及があったと思いますが、化学品の分類及び表示に関する世界調和システムで、これの実施を2008年ということで予定されております。
 こういうことで、国際的に今年、それから来年に向かって、化学品に関するいろいろなプロセスが進められていくという状況になっております。

◎2.世界潮流を踏まえた日中韓の化学物質管理に関する国際ワークショップ
 こういう全体的な状況を受けまして、昨日まで2日間、IGESにおきまして、日中韓の化学物質管理に関する国際ワークショップが行われました。目的は3つ、情報の共有、それから3国が直面している課題の同定、それから連携の可能性、これを探ることでありました。
 日本、中国、韓国の専門家に加えまして、EU、それからアメリカ、カナダの専門家にもご参加いただきまして、ディスカッションを行いました。ディスカッションの主なポイントということで、これから幾つか紹介申し上げます。

◎3. 化学物質に関する政策動向
 まず、世界の化学物質に関する大きな政策動向はなんだろうというところで、5つほどポイントがアイデンティファイされております。
 1つは、もう何度も紹介いたしておりますが、国内的な化学物質の管理というものから、国際的動向を踏まえた化学物質の管理の方向がより強く出てきているということが指摘されております。
 それから、もう一つ、化学物質はいろいろなセクターで使われてきているわけですが、いろいろなセクターにある化学物質を個別に管理するのではなくて、より統合的なアプローチが主流になっていくだろうということが指摘されました。
 さらに、今まではどちらかというと、毒性とかハザードを中心にした化学物質管理が原則でしたが、今後、さらにリスクを基礎にした化学物質管理が進んでいくだろうということが指摘されました。
 それから、既に何度もREACHとの関係で言われていると思いますが、例えば、化学物質の有害情報とか、あるいはエクスポージャーの情報を集める上で産業界の果たす役割が大きくなるなど、ほかのステークホルダーの役割が増大していくだろうということが指摘されました。
 さらに、化学物質はいろいろな形で使用されていくわけですから、NGO、それからコミュニティの方々も含めまして、いろいろな方の参加、それから参加を保証するための情報の共有等が大事だということが指摘されました。
 大きなこういう5つの政策動向があるわけですが、これを具体的にそれぞれの国に当てはめていきます上では、やはりそれぞれの国の社会・経済状況等を十分に勘案する必要があろうと。例えば、途上国ではリスク管理と申しましても、リスクを管理するキャパシティが欠けておりますので、そういうところでは別のアプローチが必要ではないかということが指摘されております。
 
◎4. 国際的な動向にどのように対応するか? -GHS-
 具体論に入ります。国際的な動向にどう対応するかに関しまして、まずGHSに関してですが、基本的な認識として、GHSに関しましては、国内では関連する省庁の間の調整が非常に難しいということが指摘されました。国際的にも各国の間での分類の違いがあるなど、非常に難しい点があるという基本的な認識が示されました。
 それに対するアクションとして、例えば国内的には省庁間の委員会などをつくりまして、調整を進める。あるいは各国の間では情報共有を進める。あるいは、2008年から実施ということですが、実施に混乱がないように暫定的な期間を設けてやっていったらどうかと。そういう可能性についても指摘がございました。

◎4. 国際的な動向にどのように対応するか? #2 -REACH-
 次に、REACHに関してですが、もちろん、REACHが実施されますと、日本、中国、韓国にございますいろいろな輸出型の企業に対しまして、大きな影響が及ぶだろうという基本認識がありました。
 もう一方、忘れられがちですが、今度はEUで規制された化学品あるいは化学品を含んでいるアーティクルが、特に中古品とかリサイクル目的などで外に流出する可能性があろうという、もう一つの流れのほうにも注目する必要があるのではないかという点が指摘されました。
 REACHに関しましては、この実施に関して、各国においてフォーカルポイントをつくるなどして、情報提供をきちんとすることが大事であろう。
それから、必要に応じて、REACHに対応した仕組みの導入も必要ではないか。例えば、中国では、ご紹介があったと思いますけれども、中国版のRoHSを導入するということが実施されました。それから、REACHを実施することによりまして、EUの化学物質庁に蓄積される毒性情報等をできるだけ共有していくことが大事ではないかという点も指摘されました。
 
◎4.国際的な動向にどのように対応するか? #3 -SAICM-
 次にSAICMです。SAICMにつきましても、既に何度も紹介があったと思いますが、アジアのプロセスが今年から始まるということで、このプロセスは化学物質に関する国際的協力の促進のために非常に重要な機会をアジアに与えるのではないかという点が基本的な認識として指摘されております。
 これに対しまして、例えば、日中韓、先ほども紹介がありましたように、いろいろな情報を共有しますとか、あるいはグッドプラクティスを進め、さらにその情報を共有するとかいうことで、日中韓の間の具体的な協力を進めましたら、これは例えばASEANの国ですとか、あるいはほかのアジアの国に対する一つの良い参考事例になるのではないかという指摘がございました。また、さらに日本でしたらJICA、あるいは韓国や中国もそれぞれの国際協力機関を通じて、ほかのアジアの国に対して、能力向上に対する支援ができるのではないかという指摘もございました。

◎3.化学物質のアセスメント、管理及びコミュニケーション-既存化学物質-
 次に、2つ目のワークショップでのポイントの「化学物質のアセスメント、管理及びコミュニケーション」についてですが、まず最初として既存化学物質についてですが、基本的な認識として、REACHは既存化学物質と新規化学物質の区別なく、同一に扱っていくというシステムになっております。
 それから、既存化学物質については、従来から言われておりますような、アセスメントを促進するための地球的規模での取り組みが大切だという認識が共有されております。
 日本やアメリカがやっていますチャレンジプログラムの推進ですとか、あるいは情報交換、技術移転等の促進というような点が指摘されております。
 
◎3.化学物質のアセスメント、管理及びコミュニケーション #2 -代替物質-
 次に、代替物質についてです。代替物質につきましては、当然のことですが、より安全な化学物質の管理をやっていきます上で極めて重要なことであると。高懸念物質の代替物質の開発は、特に重要度が高い。この点、北東アジア、日中韓では、取り組みが総体的に弱いのではないかという点が指摘されました。
 これに対する対応ですが、例えばヨーロッパですけれども、ヨーロッパでのREACHでは、特に高懸念物質につきましては、代替物質をつくるための計画をつくるようにという対応がなされるようであります。そういう形でヨーロッパでは代替物質の開発を進める。
 2番目のポイント、これはアメリカなんですが、Design For Environmentを促進するための技術ガイダンスあるいはツールを策定することによって、代替物質の開発を進めるというポイントがアメリカのほうから指摘されております。
 そういうことで、この地域でも代替物質を開発するための研究開発、それに対するいろいろな支援が必要ではないかというポイントが指摘されております。

◎3.化学物質のアセスメント、管理及びコミュニケーション #3 -マルチステークホルダーの参加-
 次に、マルチステークホルダーの参加です。マルチステークホルダーの参加は、リスク管理、リスクコミュニケーションをやっていく上で不可欠という認識のもと、意思決定過程における参加の確保、それから、参加をするための基礎になる、例えば化学物質の地域ごとの排出状況などの情報へのアクセスの確保ですとか、グッドプラクティスの推進あるいは確保、その中へのいろいろなステークホルダーの関与、あるいはSDSという、安全データシートの情報共有の徹底というようなことが指摘されております。

◎3.化学物質のアセスメント、管理及びコミュニケーション #4 -ライフサイクルアプローチ
 それから、ライフサイクルアプローチです。製造から廃棄までを対象としたライフサイクルアプローチは極めて重要という認識が根底にございまして、そういう中で、例えば、環境に配慮した製品やサービスの提供、Design For Environmentの促進が極めて大切で、できるだけ廃棄物ストリームにそういう危険な物質が入らないと。しかし、リサイクルあるいは廃棄物のほうに入っていくような場合には、そういうところに化学物質に関する情報がいくように徹底することが必要だということが指摘されました。
 また、化学物質管理政策とリサイクルあるいは廃棄物政策とのリンケージを、当然のことですが、さらに強化していくことが必要だと。例えば、EUではRoHSとWEEEのように、その点、極めてしっかりしたリンケージが図られているという点が指摘されました。

◎3.化学物質のアセスメント、管理及びコミュニケーション #5 -地域レベルでの協力-
 最後に、地域レベルでの協力。地域レベルというのは、例えば、日中韓のような、そういう国際的な地域レベルでの協力ということを言っております。地域レベルでの適切な化学物質管理に関する協力は極めて大切であるという認識のもと、例えば、北米ではNAFTAがございまして、カナダ、アメリカ、メキシコが化学物質についても特定の重要セクターにフォーカスを置きながら、地域協力を進めているという話がありまして、そういうアプローチが一つ参考になるのではないかという指摘がございました。
 それから、先ほども紹介されておりましたが、日中韓の環境大臣会のTEMMとか、あるいはほかのさまざまなチャネルを通じて、北東アジアにおいて化学物質管理に関するポリシーダイアローグを進めていくことが大事だという指摘がございました。
 これが最後のスライドになります。
以上で私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

質疑応答
(司会)
 ありがとうございました。それでは、ただいまの発表につきまして、ご質問のある方はどうぞ挙手をお願いいたします。

(質問者M)
 REACH によって、中古品、リサイクル品などの流入の可能性をおっしゃっているのですが、これがよくわからないので、これを説明していただきたいことが一つと、このことをポジティブに評価されているのか、ネガティブに評価されているのか、ご説明ください。

(森)
 REACH は、基本的にヨーロッパにおいて安全な化学物質管理を推進するということで、特に、輸入ですとか、生産、流通、これを規制することになっております。輸出については輸入と同じような規定があるわけではありません。しかしながら、例えば、純粋に輸出目的のそういう化学品をヨーロッパでつくることができるのかというと、つくるということ自身はREACHの対象になるわけですから、そういうことはないのですが、現に市場にある化学品あるいはそれを使った製品については、既に規制が入ったときに市場にあるわけですから、それに関する特別の規制はないということであります。
 したがいまして、そういうものがREACHにより規制が入った後に、ヨーロッパからヨーロッパ域外に流出する可能性はあるということが指摘されました、ということです。

(質問者M)
 あまりよくわかりませんけれども、結構です。

(森)
 要するに、REACHの中では輸出に関する規制は予定されていないということです。

(質問者M)
 それと中古品とどういう関係があるのでしょうか。

(森)
 規制が入ったときに、既に市場に出ているものがございます。そういうものは、新品ではなくて中古品なわけですね。あるいはそういうものがヨーロッパ域外に出るときはリサイクル目的で出るとか、そういうことになります。そういうものに関する規制は、REACHの中では予定されていないということです。

(質問者M)
 ありがとうございました。

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(司会)
 最後に、主催者を代表いたしまして、ただいま発表させていただきましたIGES副所長、森秀行より、閉会のご挨拶をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

9.閉会挨拶(IGES) 

(森)
 引き続きになりまして申しわけございません。
 本日はお忙しい中、「化学物質をめぐる国際潮流に関するシンポジウム」に多くの方々にご参加をいただき、まことにありがとうございました。
 この問題に対する関心の高さを改めて認識することができました。私たちの生活は数多くの化学物質をさまざまな用途に使うことによって成り立っております。これらの化学物質が人の健康や生態系に悪影響を及ぼすことがないよう、化学物質の製造、使用、廃棄などを各段階で適切な管理をしていく必要があります。
 有害な化学物質の中には、国境を越えて、環境中を移動したり、国際的に取り引きされることにより、地球規模のリスクを生じるものがありますし、欧州の新たな化学物質規制REACHに見られますように、一つの国の規制が他の国の産業活動に影響を及ぼすことがあります。
 化学物質の安全性の評価は、国によって違いがあり、国際的に調和した手法により、国際分担のもとで進めることが求められております。また、開発途上国におきましては、化学物質管理の体制は必ずしも十分でなく、先進国による協力が求められています。
 こうした中で、2006年SAICMが合意され、世界の国々が共同して、化学物質の適正な管理に取り組んでいくことが決まりました。化学物質の適正な管理には、国際的な視点が必要なことは言うまでもありません。今のプレゼンの中で紹介させていただきましたように、このシンポジウムに先立ちまして、IGESでは日中韓のワークショップを開催し、いろいろな議論をいたしました。本日は、そのワークショップの参加者の方々を中心にシンポジウムを構成させていただいたということになっております。
 本日のシンポジウムによりまして、少しでも皆さま方のビジネスを行っていきます上で、あるいはそれぞれの生活の中で参考になることがございましたら、私ども主催者にとりまして望外の喜びでございます。今後とも、折りに触れまして、このような機会を開催させていただければ幸いと考えております。そのような場で、今後とも産業界や市民の皆さま方と化学物質管理についての理解を共有いたしますとともに、国際的な化学物質の管理のあり方について議論させていただけることを祈念いたしております。
 最後に、中国、韓国、EU、カナダ、アメリカから参加されましたエキスパートの方々にお礼を申し上げまして、私の閉会のご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

(司会)
 ありがとうございました。以上をもちまして「化学物質をめぐる国際潮流に関するシンポジウム(第2回)諸外国における化学物質管理の最新動向」を終了させていただきます。
                                   -以上-

※日本語以外の言語による発言は、同時通訳されたものを文章に起こしています。実際の発言との整合について環境省では十分に精査していませんので、御了承願います。

 
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