(アヴィラ)
ご質問ありがとうございます。これだけ日本の産業界の皆さんが参加され、REACHに積極的に働きかけていらっしゃることを大変感銘を受けております。
このJAMPといったような試み、これはとてもいいことだと思います。特に、これによって、現行のやり方、トヨタのほうからもおっしゃったような、実施、このELVの指令等の取組があると思いますけれども、これによっていかにこの規制の課題に取り組むべきか、そしてここで学んだ教訓をこのREACHとのコンプライアンスにおいても生かすことができるのではないかと思います。
(織コーディネーター)
REACHを川上、川中、川下の業界の方々がそれぞれどう受け止めていらっしゃるのか、現在の課題、あるいは欧州委員会へのご要望について少し伺いたいと思います。
先ほど片岡さんから、正確なデータをどうやって出すかというお話しがありました。また市川さんからは、欧州ではもう情報のネットワークができている、日本ではできていない中、どうしていこうかというお話しもありました。奥村さんからは、実際にSIEFが3万もできて、実現可能かどうかというような課題も出されております。これに加えて、新しい問題がありましたら是非伺わせてください。それからアンケート結果で少し意外な結果が出ておりまして、私が産業界の方に今までお話を伺っていた感じでは、REACHについて否定的なご意見が圧倒的に多かったのですが、アンケートでは肯定的な意見も出ています。
ということは、REACHが何か日本の産業界にとってプラスに、ビジネスチャンスになってくるような、そういう側面のお話しも伺えればと思います。
では、時間も押していますので、申しわけないのですが、簡潔に、川上の奥村さんからお願いいたします。
(奥村)
先ほど申し上げたように、私は独占禁止法のことを一番心配しているのですが、それは置いておきまして、先ほど森下室長のお話の中に、サウンドサイエンスに基づくというか、そういう軸がなかったように――もしあったらごめんなさい、というのが残念だと思っているんですが、あくまでサウンドサイエンスに基づいて化学物質のリスク管理というのは考えていくべきであるというふうに我々は思っております。
サイエンスに基づく限り、これは世界中、共通ですから、ヨーロッパの会社ができることは日本の会社もできる、ただ人手とお金がかかる。これはヨーロッパも日本も同じことで、そこは法律ですから仕方がないんですが、一方、これがハードウェアとしますと、ハードウェアは対応できると。ところがソフトウェア、これが何とも難しいといいますか、文化というか、商習慣が違いますね。先ほどご紹介があったアンケート調査のようなことになるのかもしれませんけれども、社内でREACHとはこうである、という話をしますと、事業部門によって、一発で理解できるといいますか、スッとわかるところと、何べん言うてもわからないところと、これが違いがあります。
これはビジネスの性質にもよりますし、日ごろ、例えばヨーロッパで新しい物質をここ数年間上市してきたという人はかなりピンと来るわけですが、そんなこと、全然したことがないと。古いものを大事に、ビジネスを維持しているというような人は、そういう経験がありませんと、「はー? それ、なんや?」、そういう感じになりまして、アンケートのように「よくわかっている」ところと「よくわかっていない」というのが業態によって随分違うなというのが私の印象です。
特に、日本は世界に冠たる総合商社に代表されるように、商社機能が充実しておりまして、それはビジネスを助けてきたと思うんですが、こういうケース、それがどちらに転ぶのかなというふうに思っています。
したがって、ハードウェアについては人手とお金がかかるんですが、問題ない。ソフトウェアのほうは何か仕組みが必要だなと。JAMPももちろんその一つでしょうが、いろいろな業種があります、今、八十何社とおっしゃいましたね。正直、さみしいなというふうに感じております。
(織コーディネーター)
ありがとうございました。では片岡さん、川中の苦悩というか、あまり直接出てこないところですが、ぜひそのあたりを・・・。
(片岡)
このアンケートでもありましたように、会社の中で一般的に教育することに対してはまだまだこれからということですね。私どもでも同じでして、ただ、REACHはある意味では肯定的に評価しています。それは会社の中で、プレパレーションのものとアーティクルのものと混在しているんですね、川中があるえゆえにね。川中以外でも混在していますけれども、特に混在している。
そうすると、適正なものの判断をやはりプレパレーションであったり、アーティクルであったり、その役割について議論していかなくてはならない。そういう意味では、登録があって、届出があって、認可があって、制限がある、それは非常に適切な、正しい考え方だと思うんですね。
逆に、RoHSのほうは、最初から6物質禁止ありき、という形で欧州が入ってきましたので、今から思えば、REACHを先にやって、それからRoHSをやればすごくわかりが良かったのではないかと思っております。
(織コーディネーター)
なるほど、おもしろいご意見だと思います。市川さん、お願いいたします。
(市川)
今のRoHSのことにも関連しまして、私、REACHがいいなと思いましたのは、レストリクションから入った場合、ちゃんとした情報管理するということ以前に、遵法であるという部分のサインだけいただいて、あと自分たちは管理をしないで過ごすという人が実は非常に多かったと思うんですね。RoHS指令は、それでもまだ良かったかもしれないんですけれども、ある意味で、REACHというのはきちんと化学物質の含有についての情報を伝えていきましょうというポジティブな姿勢で、この大きな違いは、測る・測らないにも関係してくるんですね。
いまだに、RoHSの物質を測ろうという人がいるというわけなんですけれども、それはある意味でばかげた話でして、もしこのSVHCのリストが欧州委員会さんの言うように1,000物質を超えるほどのものであれば、測るという考え方は決定的にあり得ない。
ですから、やはりきちんと管理をしていきましょうというマネジメント側のアプローチがこれからむしろエンカレッジされてくる、これによって盛り上がってくると思いますので、その点では川下としても非常に評価したいと思います。
(織コーディネーター)
ありがとうございます。浅田さん、どうでしょうか。
(浅田)
REACHの評価についてでございますけれども、まず、一般的には、私たち組立メーカーが「材料の中のことをわかっていなかった」ということをもう一度見直すという意味では、非常に意味があると思っております。これはまた同時に、社会の中で、最近、化学物質のVOCとかいろいろなことで関心が高まっている中、これは非常に今の社会の動きに合致した動きだということで評価しております。
ただ、実際にお願いしたいことは、住友化学の奥村さんが言われたように、非常にたくさんの物質をいっぺんにやるのではなく、やはりプライオリティづけとか、実際にやれるのはどこかということを議論しながら、ある程度、企業の自主性をいかに伸ばすかという形で進めさせていただきたいと考えております。
(織コーディネーター)
はい、ありがとうございます。中下先生、NGOとしてどうでしょうか。
(中下)
REACHについては、本当に画期的な、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、画期的な法律だと思うんですね。それはなぜかというと、当たり前のことなんですけれども、私たちが使っているものについて何が含まれていて、これがどのぐらいの毒性があって、我々に対してどのくらい危険性があるのかというようなことがわからないで、やはり現実にはほとんどのものを使っているわけですね。
こういう体制では、持続可能ではないんですよ、と思うんですね。私は弁護士でこういうことをやっているものですから、やはりシックハウスであるとか、化学物質過敏症の患者さんのご相談を受けるんですけれども、残念ながら、これは何が原因でこうなったか、ということの特定は非常に難しい。でも、かかってしまうと、日常生活一つすら、まともにできない。あるいは、子どもさんは学校に行くことすらできない。こういう人権が奪われるわけなんですね。
私たちからすると、我々が人工のものをつくり出して、自分の生活の利便性のためにつくり出したわけですけれども、それによって被害をこうむってしまうのでは、何にもならないんですね。だから、やはり安全に管理して使うという発想に立ったときには、REACHのような基本的にデータはわかったものを使う、その中でも特に懸念なものについてはきっちりとしたリスク管理をした上で使う――これはもう当たり前のことだと思うんですが、残念ながら、日本の法制度というのはそういうふうになってこなかった。もちろん、日本だけではありません。各国でもなかなかそれは難しい問題でした、既存物質の問題は。
でも、それをEUはいち早く決断されて、転換されたということで、私は大変高く評価していますし、先ほど森下さんからお話もありましたように、化審法というのは、日本はカネミ油症事件が起きて、これを反省して、その教訓の中で、世界に先駆けて、これ、つくったんですね。今、日本が何をすべきか、ということだろうと思うんですね。ここを考えていきたいなというふうに思います。
(織コーディネーター)
熱く中下さんに語っていただきました。森下さん、いかがでしょうか。
(森下)
サプライチェーンでの情報共有ということについて、ちょっとお話しさせていただきますと、私はJAMPのように、自主的に事業者の方々が製品中の化学物質の情報を共有していこうという、すばらしい動きだというふうに思っています。ぜひ、こういった取組が進んで、さらに発展していくということが非常に望ましいと思っております。
こういうふうに製品中の化学物質情報を把握していくこと、これを何から何まで、例えば国が規制をかけてコントロールしていく、一から十まで目配りをしていくということはきっとあり得ないことだろうというふうに思っています。むしろ、事業者の方々の自主的な取組を尊重して、それをうまく機能するように、例えば私ども国はどういうふうな役割を今後担っていくべきなのか、そういったことを考えたいというふうに思っております。
ちなみに、ご参考でございますけれども、冒頭で、海外から流入してくる有害化学物質についても、国内のみならず目配りを行うべきだというふうに申し上げましたけれども、日本の市場に流通している化学物質の中で、例えば化学物質審査規制法の第1種特定化学物質に該当するようなものがごく微量含まれるというようなことも起こっております。私ども、来年度から「製品モニタリング」ということを始めようといたしております。これは製品中に、成形品とか製品とかいろいろ用語がありますけれども、どういった有害化学物質が含まれているのか、これを実際に分析するというようなこともやってみたい。
といいますのは、皆さまが自主的に取組を進めておられますけれども、そういうグループに入っていない方々も多数おられるわけで、せっかく頑張っておられる方の努力が水泡に帰すということがないように、製品の中に何が入っているのかということもチェックする仕組みというものがやはり必要なのではないだろうか、というふうに思っております。
(織コーディネーター)
ありがとうございます。会場の方からも、いろいろな細かい、「うちの製品はどうだろうか」という質問が多分あろうかと思いますが、少し大きな質問を私のほうからアヴィラさんに2つしたいと思います。先ほど、片岡さんや市川さん、浅田さんからもお話が出てきたように、今まで成形品と調剤を区別なくやっていたのが、今回はその区別をしなければいけないところが非常に大きいと思います。ところが、実際にはどれがプレパレーションなのか、アーティクルなのかというのが少しわかりにくいので、その辺の基本的な考え方はどういう思想に基づいているのかということ、また、認可の一番ポイントになる「意図的な放出」が、どれをもって意図的な放出になるかという2点をアヴィラさんに伺いたいと思います。
(アヴィラ)
ご質問、ありがとうございます。私、こういう機会を使って、いくつかコメントもしたいと思います。これまでほかのパネリストがおっしゃったことについてもコメントしたいと思います。
当初、私はあまりお話しするつもりはなかったのですが、しかし、いくつかどうしても申し上げたいことが出てきましたので、あえてお話しさせていただきたいと思います。
まず、欧州委員会の立場から見た場合、このREACHは決して課題が小さいとは思いません。これは些細な規制ではありません。このようにつくられ、そしてまたいろいろな当事者によって進化してきたものでありますので、コンプライアンスの実施が非常に難しいというものもあるということは十分わかっております。
もう一つ、解釈の上でもいろいろな課題があると思います。今、言われたようなご質問からもわかるように、解釈が難しい部分があると思います。これについてはあとでお話ししたいと思います。
また同時に、私たちは誇張してもいけない。ですから、課題が大きすぎると必要以上に誇張してはいけないと思います。例えば、独禁法に関してのお話もありましたけれども、REACHの存在によってすべての独禁法がだめになるということではありません。ヨーロッパにおいてもありますし、REACHに適用される、そしてまたこの法律に基づいて保護されることはあると思います。
それから、またシックハウス症候群が何であるかということについても、私たち、3万の物質を特定し、この3万の物質の1t以上のものに関しては登録しなくてはいけないと。そして、この3万のうち、2万が1から10tの間に該当すると思っております。ですから、この1から10tの間に含まれるものは非常に限られていると思います。私たちはコストを負担するということに関しては、既にあるもの、そしてないものということは、それだけの話であります。
それから、またこれは物理化学的性状の話をしている。いわゆる、これは非常に基本的な情報であるということを理解していただきたいと思います。必要以上にデータを共有してほしいということは申し上げていないので、これが3万物質に関することであります。
もちろん、これは非常にチャレンジであると。コンソーシアムを開き、そしてまた共同提出が難しいことであることはわかっておりますけれども、SIEFがあります。例えば、ある物質、100tのものと、これは2万のSIEFとおっしゃったのですけれども、それからまた1,000t以上のものは同じものとして考えてはいけないと思います。
それから、もう一つ、本当の課題は、先ほど話がありましたように、古いものであります。古き良きということでありますけれども、こういったものが問題だと思います。ですから、このREACHはもっと厳しい規制となっておりますし、既存物質に関しても非常に厳しいものになっております。今まで以上に多くの情報を求めることになります。既に上市されている10キロ以上のものですね。私たちは、新規物質に関してこの要件を変えているというのは、古いものがあるゆえにであります。これは課題であることはわかっておりますけれども、しかし、これはトレードオフとも言えるでしょう。この既存物質に関して、この99%の物質ですね、古いものについてもっと知りたいということで、むしろ古い物質の方の情報を欲しいと。そして、新規物質に関しては要件を少し緩めていると言えると思います。
それから、また、成形品と調剤の違いということに関してですが、これはなかなか解釈が難しいところだと思います。
さて、成形品ということの定義でありますけれども、成形品とは何か。これは、調剤の中でも特定の形、表面を持っている、機能上、機能を果たすためにこの形をとっているものを指しております。ですから、これは企業によってバランスをとることが必要でしょう。もちろん、私どもの方でもガイダンスを用意します。これに関して今仕上げている最中であります。これは非常にチャレンジの多い部分であることはわかっております。
私たちは、既にガイダンスがほとんどでき上がっていたんですけれども、いろいろな加盟国、利害関係者から線引きに関してコメントが来てしまいました。これはすべていずれウェブサイトに公表されます。それまで、私の言うことをちょっと注意をもって聞いていただきたいと思いますけれども、形、デザイン、表面ないしは化学構成、機能に基づいた形で決まっているか、ないしはそうではないのかということ――半々であったら、これは調剤に入ります。
もう一つ区別しなくてはいけないのは、ここで成形品の話をしているか、調剤の容器の話をしているか。例えば、調剤を含んだスプレー缶、これは調剤がたまたまパッケージに入っていると。缶そのものは成形品かもしれませんけれども、中に入っているもの、これは調剤で、別のものと考えていただきたいと思います。ですから、使い方も違ってきます。一方は調剤であり、もう一方はパッケージ、容器のほうは成形品になります。
これは、ほかのケースにも当てはまると思います。例えば、プリンターのカートリッジですけれども、この場合には調剤が一方であります。機能するための技術、カートリッジそのものがプラスチックでできておりますけれども、その他の材料を含んだものがあります。これは特定の形、特定のデザインを持って機能を果たしている、これは成形品ですが、中のインクは調剤になります。
それから、もう一つが「意図的な放出」ですね。これがどういう意味かということなんですけれども、私たちが使う場合は、通常、予見可能な使用条件のもとでの「意図的な放出」と言っております。「意図的」という言葉が、今、長い文章を申し上げた中で重要な部分であります。「予見可能」――例えば、成形品の製造者にある程度の本質があることが想定できると思いますが、場合によっては、これは使用上、意図的なものではないかもしれません。受け入れることは可能かもしれない。使用することの結果、そうなってしまうことはわかるけれども、しかし、機能のための意図的なものではない、というところ、これが重要であります。
例えば、繊維の例を挙げたいと思います。染料がありますね。染料が色落ちすると。色落ちしないほうがいいんですけれども、いつまでも新品同様であってほしいと思うんですけれども、しかし、通常の条件のもとで色落ちをするということがわかっていますが、これは意図的な放出ではありません。ただ、繊維によっては意図的に放出するものもあるわけです。例えば、ファッション上、そういったものもあるでしょう。特定のもの、ジーンズなどはそうですね。あたかもブリーチしたようなもの、あたかも色落ちしたかのように見せると。ただ、これはわざわざ色落ちを意図的にしているわけですね。これによって、洗えば洗うほど、その点が強調される、これは意図的な放出と言えるかもしれません。
なかなかわかりにくいことはわかります。細かいことは見なくてはなりません。今、ガイダンスをつくっている最中でありますので、近く、これが出されればと思っております。これを見ていただきますと、業界の皆さま方ももう少しわかってくれるのではないかと思います。皆さん、自問自答するしかないんですけれども、申し上げたとおり、業界の皆さんの責任のもと、判断をしなくてはいけないんですけれども、私たち、いろいろとお手伝いをしたいと思います。そのためのガイダンスも用意いたします。業界の方々がもっと簡単に質問に対する答えを見出せるようにしたいと思いますし、もう一つ、いろいろな事例のリストを作成いたします。例えば、調剤なのか、成形品なのか、容器の中に含まれている調剤なのか、どうかといったような事例も用意いたしますので、それを見て判断していただきたいと思います。
(織コーディネーター)
REACHはまだまだ完成したものではなくて、これからガイドライン等で詰めていくというお話でした。成形品、それから調剤との違い、シェープとファンクション、またコンテーナーとの違いというのも非常に重要になってくるでしょう。意図的な放出ということに関してはサプライヤーの意図というものが重要になっているということを、ジーンズを例にお話しいただきました。
これに関連してもしなくてもいいんですが、パネラーの方からアヴィラさんに何か質問がありますでしょうか。どうぞ。
(片岡)
昔、意図的というのは、インテンショナリーということで、ELVで使った定義は、REACHで使っている定義と意味がちょっと違うんですね。だから、ここを間違えないように、どこかのガイドラインにきっちりアナウンスしていただきたいと思います。
(織コーディネーター)
わかりました。ご要望ということですね。ほかに何か。
(市川)
情報伝達にきょうは時間がないので絞ってご質問しますけれども、33条では、最小限、物質の名前ということが言われていますね。一方で、7条のほうでは、「過去にだれかが登録をレジスターしたものについてはノーティファイは要らない」と書いてある。ここのところなんですけれども、では、過去にだれかがノーティファイしたものについて、ダブルでノーティファイ、川下の人がまたする必要があるのか。もっといえば、こういうことを知るために、物質の名前だけではなくて、だれかがいつレジスターしたとか、だれかがノーティファイしたという情報も一緒に33条で流さなくていいのかなと。これについては、実際上、どのようにお考えですか。
(アヴィラ)
ご質問とELVについてのコメント、ありがとうございました。
意図的な放出について、もちろん、はっきりわかるようにということを念頭に置きたいと思います。今、現在、私たちがいろいろな条項、それからその解釈を見るに当たっては、どんな解釈を加えようとも、この規制の精神にのっとった形でなされるようにということを考えております。
また、そのほかの規制にも合致した形で解釈されるようにということを考えております。ですから、ELVですとか、RoHS指令などのほうも念頭に置きながら、同じようなアプローチがとれるように、解釈できるようにということを考えております。ですから、その点をしっかりと見ていきたいと思っております。いろいろな意見が合致するようにしていきたいと思っております。
今のところの解釈は、暫定的なものであります。RoHSにしても、ELVにしても、例えばRoHSの場合、ホモジェナイゼーション(均質)の話があります。これははっきりと委員会の決定の中に出てきております。そういう点も考えながら、REACHについても取り組んでいきます。
さて、33条、7条の問題です。プレゼンテーションでも申し上げましたが、それぞれ背景が違いますし、意図も違います。非常に懸念される物質について、既に登録されていて、ほかの人が使用する場合であればこれは通知しません。というのは、これは既に登録されて、当局は情報を持っているからです。当局が既に情報を持っているというのであれば、もう要らないわけですけれども、33条、これはサプライチェーンのコミュニケーションに関するものです。それから、消費者に対する情報についてのパラグラフもあります。ですから、これは視点が違うのです。お互いに依存し合っているわけではないんですね。通知しなくてもいいと言ったからといって、消費者の方から質問があったら、安全に使用できるようにするために最低限の情報は出さなければならない、最低限、名前だけは出さなければなりません。
(市川)
BtoBの場合はどうなんだろうか、ということを考えております。
それから、7条のほうでは、もし、だれかが上流のほうで既に登録した場合にはやらなくていいということですが、例えば上流のほうで、だれかが通知したと。その場合は、やはり2度目も通知が必要なんでしょうか。
(アヴィラ)
これは7条のことですね、33条とは関係ないですね。
(市川)
ただ、33条と関連してお聞きしました。だれが通知をするのか、だれが登録するのか、そういう情報もあればとてもわかりやすいと思うんです。33条のもとでそういう情報も提供されれば、その情報を使うことができるからです。
(アヴィラ)
実は、7条のほうは、通知の義務がなくなるのは登録されている場合だけです。通知ではありません。
(市川)
では、だれかが通知をした、そして下流の方でも通知がされたと。また、別な人が、もっと下流の方の人が通知をした、同じ物質について、同じ成形品について、通知をするということはあり得るわけですね。
(アヴィラ)
はい。でも、通知というのは、届出というのは非常に基本的な情報であって、登録とは違います。
(織コーディネーター)
趣旨が違うということが一番のキーポイントになっているのかと思います。アローアンスとしていただいている時間があと5分ほどになってきましたので、最後に、皆さん方に、このREACHを受けて、日本の化学物質管理が今後どうあるべきかということについて、一言ずつご意見をいただきたいと思います。
特に、奥村さんには、住友化学は自主的に年間100t以上の化学物質のリスク評価を進めていらっしゃいますので、そのあたりも絡めて、既存化学物質対策への取組について、1分でお考えをいただきたいと思っております。よろしくお願いします。
(奥村)
中下さん、よく御存知のように、漢の劉邦は法三章と言いましたですね。秦の始皇帝が規則でがんじがらめにして世の中が動かなくなった、すぐ滅びましたね。したがって、規制はなるべく少ないほうがいいと。ただ、人健康とか環境が大事ですから、これは当然必要であると。
したがって、自主的な取組と法規制とのベストミックスといいますか、つまり化学物質というのは物質ごとに性格が千差万別ですので、なかなか一律に規制というのは難しいと。また、3万も4万もSIEFのようなものを日本でつくってやるのか、といったときに、電車が時刻表どおりに動くという珍しい国ですから、もうガチガチになったら、これはどうしようもない。REACHのほうは、私は、Learn by Doingといいますか、やりつつ学んでいくというか、試行錯誤といったら言い過ぎなんですが、そういう側面が非常にあるのではないかと理解しております。以上です。
(織コーディネーター)
片岡さん、お願いします。
(片岡)
川中ですと、アーティクルという概念が日本社会で初めて導入されます。ですから、これは教育とはもう切り離せないと。中学生、高校生はじめ、そういったところからアーティクルという用語がなじむような時代にならないと、実際の化学物質の適正管理というのはなかなか到達しない話ではないかなと、そんな気がします。
(織コーディネーター)
ありがとうございます。市川さん、お願いします。
(市川)
私どもは最後にヨーロッパにものを輸出しているという立場がありますので、法的責任を負うんですが、かといって、日立だけで、あるいはどこかの会社で単独にこれに対処するということではなく、サプライチェーンの企業の全体の協力の中で、一緒にこのコンプライアンスを実現していきたいと思います。
(織コーディネーター)
ありがとうございました。浅田さん、お願いいたします。
(浅田)
基本的には、昨年度の産構審での考え方と一緒ですけれども、規制と自主管理のミックス、あともう一つ、やはり先ほど皆さんが言われているようにサプライチェーンのみんなが一緒に議論して進めるということが重要だということで、これからもよろしくお願いしたいと思っております。
(織コーディネーター)
はい、中下さん、お願いいたします。
(中下)
私は、予防原則に基づく総合的管理のシステムをつくるということがすごく大事なことだと思うんですね。そういう点でいうと、確かに自主的取組は非常に重要なんですけれども、システムの大きな転換のときには、枠組みをきちんと決めないと正直者が損することになるんですよ。だから、ここは産業界も皆さん、一致合致して、どういうシステムにしていけばいいのかというところに叡知を結集していただきたいと思います。
それから、先ほど、サウンドサイエンスに基づくとおっしゃったんだけれども、気持ちはわかりますが、3万の物質の複合的影響なんていうのは、わかりようがないんですよ。それから、次世代の子どもたちの影響というのだって、今測ったって、この子たちが大きくなるまでといったら、また大分先の話なので、わかりようがないんですよ。人間の叡知にも限界があるんです。そこを私たちが「無知の知」を自覚して、という、これが予防原則だと思うんです、そういうことを働かせる。
ただし、それを働かせるにしても、総合的に管理システムがないと、省庁ごとに予防原則の温度差も相当違います。さっき成形品は化学物質の管理の対象、初めて導入とおっしゃったんだけれども、立派に日本では「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」という法律がございまして、それが本当は管理がかっているのに、かかっているという認識すらない。なぜか、それは20物質しか対象になっていないんです。そして、それは悪いんだけれども、厚労省の人数が非常に少ない――厚労省のせいではないんですよ、人数に偏りがある。そうすると、その省庁の予算によって、国民の健康の安全性に差が出てきていいんですか。そんなことはおかしいんじゃないですかと。
だから、これは化学物質安全庁みたいなものをやっぱり日本もつくって、そこで総合的な化学物質管理をして、届出の方法もみんな統一して、企業さんに余分な負担をかけないで済むようにしたらどうかと。ここは、産業界もNGOも、そういう点では一致団結して考えていったらどうかなと思っております。
(織コーディネーター)
ありがとうございます。森下さん。
(森下)
今後の化学物質対策、日本の対策を考えるに当たって、国際的な動きを踏まえることは非常に重要だと思っています。欧州のREACHを見てみますと、これは欧州委員会もおっしゃっていますけれども、非常にアンビシャスな、野心的なものだという内容でございまして、私ども、これから学ぶことはたくさんあるというふうに考えております。
ただ、欧州REACHの仕組みそのものが欧州域外でそのままベストな適用になるのか、ベストなスキームになるのかというと、それはちょっと違うだろうと。欧州REACH自身は、これまでの欧州の規制のベースの上に乗っかってできているというものでありまして、今後、我が国の対策を考えるに当たっては、我々が諸外国から学びつつ、どういった形のものが効率的で、本当に効果的な仕組みなのか、これを考えていきたいというふうに思っています。
自主的な取組と規制とのベストミックス、これは非常に重要なことだと私どもも思っております。自主的な取組、特にREACHへの対応ということを皆さま方がこれから進めていくに当たりまして、できるだけ私どももアシストさせていただきたいと思っています。
今日、いろいろアヴィラさんにQ&Aでお答えいただきましたけれども、実はお答えのものについては、きょうお配りしています資料集の中に答えが書いてございます。ぜひそういったものも参考にしていただきまして、またさらに私ども、情報提供も含めて、皆さま方にREACHの動向、あるいはそれ以外の欧州、アメリカ、カナダ、そういった国々の取組、そして中国、韓国の取組、情報提供をさせていただきたいと思っております。今後、皆さま方と情報共有をしながら、意見をお聞かせいただきながら、新しい仕組みをつくっていく、これが非常に重要なことではないかと考えております。
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