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主な略号及び毒性情報の説明



 
  発がん性

  動物の正常細胞に作用して、細胞をがん化する性質のことである。疫学調査、動物実験及び他の適切なデータに基づき、ヒトへの影響を検討し、発がん性の程度をランク付けした6つの機関の概要及び各組織におけるランクの意味を次に示す。

(1)International Agency for Research on Cancer (IARC:国際がん研究機関)

WHOにより1965年に設立。国際的なヒトのがんの原因に関する研究及び方向性の提示並びにがんを科学的に制御するための方策を研究することを目的としている。ランクの意味は次のとおり。

  1. 1  :ヒトに対して発がん性が有る
  2. 2A:ヒトに対して恐らく発がん性が有る
  3. 2B:ヒトに対して発がん性が有るかもしれない。
  4. 3  :ヒトに対する発がん性については分類できない
  5. 4  :ヒトに対して恐らく発がん性がない。
(2)Environmental Protection Agency (EPA:アメリカ環境保護庁)

米国における環境関連担当の行政機関である。Guidelines for Carcinogen Risk Assessmentに基づいて、発がん性の研究を実施している。ランクの意味は次のとおり。

  1. A  :ヒト発がん性物質
  2. B1:疫学的研究から限定されたヒトへの発がん性を示す証拠がある物質
  3. B2:動物での十分な証拠があり、かつ疫学的研究から、ヒトでの発がん性の不十分な証拠があるか、または証拠がない物質
  4. C  :動物において限られた発がん性の証拠があるが、ヒトに関するデータがない物質
  5. D  :ヒト及び動物において発がん性の証拠が不十分である物質または発がん性の証拠となるデータがない物質
  6. E  :異なった種を対象とした少なくとも2つの適切な動物試験で発がん性の証拠が得られなかった物質または適切な疫学的調査及び動物試験で発がん性の証拠が得られな かった物質
(3)European Union(EU:欧州連合)

欧州連合理事会は、「危険な物質の分類、輸送、表示に関する法律、規制、行政規定の近似化に関する指令67/548/EEC」の第7次修正指令において、危険な 物質を15のカテゴリーに分類して評価している。この中の1つに発がん性が入っている。ランクの意味は次のとおり。

  1. 1  :ヒトの物質への曝露とがんの発生の間に、因果関係を確立するのに十分な証拠がある物質
  2. 2  :ヒトの物質への曝露ががんを発生させる恐れがある強い推定を行うための適切な長期動物試験またはその他の関連する情報に基づく十分な証拠がある物質
  3. 3  :適当な動物試験からある程度の証拠があるが、カテゴリー2に入れるには不十分な物質
(4)National Toxicology Program (NTP:米国毒性プログラム)

情報提供のみを目的として発行されている発がん性年報のデータである。NIEHS(国立環境衛生研究所)科学審議委員会がIARCの調査結果及びNTPのテクニ カルレポート等の発がん性研究報告に基づいて候補物質リストの作成を行い、NTPの発がん性年報ワーキンググループがこのリストの検討を行っている。ランクの意味は次のとおり。

  1. a  :ヒトでの調査から化学物質とヒトとがんとの間に因果関係があることを示す発がん性の十分な証拠がある。
  2. b  :ヒトでの調査から発がん性の限定された証拠があるまたは実験動物での試験から発がん性の十分な証拠がある物質。
(5)American Conference of Governmental Industorial Hygienists(ACGIH:米国産業衛生専門家会議)

米国の産業衛生の専門家の組織であって、職業上及び環境上の健康についての管理及び技術的な分野を扱っている。毎年、化学物質や物理的作用及びバイオモニタリン グについての職業上の許容濃度の勧告値や化学物質の発がん性を公表し、世界的にも重要視されている。この機関が出す発がん性についての評価ランクは次のとおりである。

  1. A1:ヒトに対して発がん性が確認された物質
  2. A2:ヒトに対して発がん性が疑われる物質
  3. A3:動物実験で発がん性が認められた物質
  4. A4:発がん性物質として分類できない物質
  5. A5:ヒトに対して発がん性物質として疑えない物質
(6)日本産業衛生学会

この学会は、労働環境の改善と良好な環境の達成、維持に少しでも関心のある人々のための情報源として広く利用され、個別の勧告値の意味の理解に資するとともに、 許容濃度や許容基準の一般的性格についての理解にも役立つことを目的として、毎年機関紙に「許容濃度等の勧告」を掲載している。発がん性についての評価は次のランクに分類される。

  1. 1  :人間に対して発がん性のある物質
  2. 2A:人間に対しておそらく発がん性があると考えられる物質(証拠がより十分)
  3. 2B:人間に対しておそらく発がん性があると考えられる物質(証拠が比較的十分でない)

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  変異原性

  突然変異を引き起こす性質のことで、発がん性などと関連がある。
  発がん性の疑いのある化学物質のスクリーニング(ふるい分け)に変異原性試験が用いられている。試験管や培養器内のような人工環境を用いる実験系で行うin vitroの試験方法としては、微生物を用いる復帰変異試験(Ames試験)が代表的なものとされ、これを補うものとして、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験も行われている。さらに、生きた動物をそのまま用いる実験系で行うin vivoの各種試験法がある。
  なお、労働省通達で強い変異原性を示す物質が特定されている。また、EU指令では、変異原性を次のように分類している。

(1)EU(第25次修正指令)

ア  カテゴリー1
ヒトに対して変異原性があることが知られている物質。
物質への人の暴露と遺伝性の障害との間の因果関係を確立するのに十分な証拠がある。
イ  カテゴリー2
あたかもヒトに対して変異原性であるようにみなされるべき物質。その物質への人の暴露は、遺伝性の障害を生じさせる恐れがあるという強い推定を与えるための十分な証拠がある。
ウ  カテゴリー3
突然変異作用を及ぼす可能性があるためヒトに対する懸念を引き起こす物質。
適切な変異原性試験からの証拠があるが、これはその物質をカテゴリー2に入れるには不十分である。
(2)その他の毒性情報源

ア  EHC (Environmental Health Criteria)

環境保健クライテリア国連機関IPCSが刊行する化学物質ごとの人や環境に対する影響等に関する評価文書。
イ  BUA Report

Advisory Committee on Existing Chemicals of Environmental Relevance of German Chemical Sociaty(ドイツ化学会内の学界、産業界、官庁の代表で構成される委員会)で発行されている、既存化学物質に関する有害性評価文書。
ウ  ECETOC (European Center for Ecotoxicology and Toxicology of Chemicals)

欧州化学物質生態毒性・毒性センター欧州主要化学会社が化学物質の毒性、生態毒性について、科学的調査研究を共同で行うために設立された機関。試験法、分類、特定化学物質安全性レビュー等を発行。
エ  SIDS Report (Screening information data set)

スクリーニング用情報データセットを元に、OECD加盟国が作成する高生産量化学物質の初期リスク評価に関する報告書。

Advisory Committee on Existing Chemicals of Environmental Relevance of German Chemical Sociaty(ドイツ化学会内の学界、産業界、官庁の代表で構成される委員会)で発行されている、既存化学物質に関する有害性評価文書。
ウ  ECETOC (European Center for Ecotoxicology and Toxicology of Chemicals)

欧州化学物質生態毒性・毒性センター欧州主要化学会社が化学物質の毒性、生態毒性について、科学的調査研究を共同で行うために設立された機関。試験法、分類、特定化学物質安全性レビュー等 を発行。
エ  SIDS Report (Screening information data set)

スクリーニング用情報データセットを元に、OECD加盟国が作成する高生産量化学物質の初期リスク評価に関する報告書。

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  経口慢性毒性

  食物、飲料水または胃内への直接投与により、反復して長期間にわたって体内に入る化学物質による毒性である。毒性値は、NOAEL、LOAEL等で示される。

(1)毒性値の意味

ア  NOAEL(No Observed Adverse Effect Level)
無毒性量、無副作用量、最大有害無作用レベル、最大無毒性量と訳される。何段階かの投与用量群を用いた毒性試験において、投与物質による有害影響が観察されなかった最高の投与量のことである。この値に安全係数や不確定係数を乗じて、1日摂取許容量(ADI; Acceptable Daily Intake)や1日耐容摂取量(TDI; Tolerable Daily Intake)を求めることがある。
イ  NOEL(No Observed Effect Level)
複数の投与用量群を用いた毒性試験において、投与物質による影響が観察されなかった最高の投与量のことである。
ウ  LOAEL(Lowest Observed Adverse Effect Level)
最小副作用量のことで、毒性試験において、投与物質の有害影響が臓器に認められた最低の投与量をいう。
エ  LOEL(Lowest Observed Effect Level)
最小作用量のことで、毒性試験において、投与物質の何らかの影響が認められた最低の投与量をいう。
(2)WHO飲料水質ガイドライン

  ガイドライン値は、潜在的に有害な水中の成分について設定され、飲料水質を評価するための基礎となるものである。


ア  ガイドライン値は、生涯にわたって消費した場合、消費者の健康に重大なリスクを起さない濃度を表す。

イ  ガイドライン値は、生涯にわたる消費において受け入れられる水質を表しているが、飲料水の質を勧告値まで下げても良いということを意味すると考えるべきではない。可能な限り最も高いレベルに飲料水の質を維持するよう、絶えまない努力がなされなければならない。

ウ  ガイドライン値は、ヒトの健康を保護するために設定されており、水生生物の保護には適切でないかもしれない。ガイドライン値は、ヒトによる消費を目的とした瓶詰めの水や氷に適用されるもので、飲料水というよりむしろ飲み物(beverage)とみなされるべき天然のミネラルウォーターには適用されない。

(3) EPA水質クライテリア

  水質クライテリアは、米国の水質清浄法(Clean Water Act)第304条(a)(1)に定められており、EPAが公表・改訂するものである。性格は、

  • * 水質クライテリアは、最新の科学的知見を正確に反映させている。
  • * 水質クライテリアは、単にデータと科学的判断に基づいて決められており、技術的に実現可能な濃度か、あるいは経済的な影響の如何は考慮されていない。
  • * 水質クライテリアは、国家、団体(States and Tribes)が汚染物質の排出規制となる水質基準を定める根拠を提供するものである。

水質クライテリアには次の6種類がある。

  • * 淡水生物基準最大濃度(Freshwater CMC)
  • * 淡水生物基準連続濃度(Freshwater CCC)
  • * 海水生物基準最大濃度(Saltwater CMC)
  • * 海水生物基準連続濃度(Saltwater CCC)
  • * ヒト健康基準濃度(水+水生生物の摂取)
  • * ヒト健康基準濃度(水生生物のみの摂取)

CMC: Criterion Maximum Concentration CCC: Criterion Continuous Concentration

(4)IRIS (EPA)

 

 IRIS (Integrated Risk Information System)は、EPAにより作成され維持されているデータベースである。環境中の様々な化学物質への暴露から起こるヒトの健康影響についての情報が収載されている。IRISは当初、リスクアセスメントや意志決定、行政活動における利用のため、化学物質の一貫した情報に対する要求の高まりに応えるべく、EPAのスタッフ向けに構築された。IRISには次のカテゴリーの情報が収載されている。

  • * 非発がん性の慢性毒性評価(RfD、RfC)
  • * 発がん性評価
  • * 飲料水衛生勧告
  • * 法規制
  • * 物理化学的性状
  • * 参考文献
  • * 改訂履歴
制約
ア  RfDとRfCは生涯暴露の仮定に基づいているため、一生涯より短い暴露の状況では、適正な適用ができない可能性がある。


イ  一般的にIRISの値は、ヒトの発病率や、化学物質暴露がヒトにもたらす作用のタイプを正確に予測するには、有効に用いることができない。これは、動物からヒトへの、また高い試験用量から低い環境暴露への外挿に伴う不確実性のような、リスクアセスメントに含まれる多くの不確実性によるものである。化学物質の暴露から起こる有害な影響のタイプや標的器官は、実験動物とヒトでは異なる場合がある。さらに、化学物質への暴露以外の多くの要因がヒトの疾病の発生や程度に影響する。


ウ  IRISに収載されているRfD、RfC、スロープファクター、ユニットリスクを変更すると(例えば、RfDの算出に用いられた係数よりも大きい、または小さい不確実性係数を用いること)、化学物質暴露により引き起こされる健康リスクを推定する上で、RfD等の値を適用できなくしてしまったり、ゆがめてしまう。

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  吸入慢性毒性

  呼吸によって反復して長期間にわたって体内に入る化学物質による毒性である。何らかの障害が発生したときの濃度を発生した事象の種類別に示す。 毒性値は、経口慢性毒性と同様にNOAEL、LOAEL等で示される。

(1)WHO欧州地域事務局大気質ガイドライン

  WHO欧州地域事務局大気質ガイドラインの主な目的は、ヒトの健康と福祉に危害を与えることが知られている、または可能性のある大気汚染物質の有害な影響から公衆の健康を守ること、およびそれを除去するか、最小量にするための基礎を提供することである。
  大気質ガイドラインは、非発がん性物質の場合は有害な影響が予測されない量として、またヒトに対する発がん性物質であるか、ヒト発がん性の限定された証拠をもつ物質に対しては、生涯発がんリスクの推定値として、それぞれ暴露時間を考慮して示されている。
  ガイドラインについては、例えば次のようないくつかの注意書きがある。

  • * ガイドライン値は、事故や自然災害によって起こる、短期間の非常に高濃度の場合には適用されない。
  • * 他の化学物質の共存、または同一化学物質でも、吸入以外の他の暴露経路で暴露が加わった時には、ガイドライン値が満たされていても、健康に影響を与えるかもしれない。
  • * 職業暴露は評価の過程で考慮されたが、このガイドラインは一般大衆を対象にしたものであるため、職業暴露に焦点は置かれなかった。しかし、職業暴露は環境暴露に加算されるものであることは心に留めておくべきである。


(2)IRIS (EPA)

経口慢性毒性(4)参照。

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  作業環境許容濃度
(1)ACGIH

  ACGIHでは、作業環境許容濃度をTLV(Threshold Limit Value)と呼んでいる。TLVは、ほとんどすべての作業者が毎日繰り返し暴露しても、有害な健康影響が現れないと考えられる化学物質の気中濃度である。TLVは、産業界の経験、ヒトや動物による試験・研究などの利用可能な情報に基づいている。これら情報の量と質は物質によって異なるため、TLVの精度にも幅がある。TLVは、安全濃度と危険濃度の間のはっきりした線ではないし、毒性の相対的な指標でもない。
  TLVには次の3つのカテゴリーがある。

  • * TLV-TWA (Time-Weighted Average)
    1日 8時間、1週 40時間の時間荷重平均濃度
  • * TLV-STEL (Short-Term Exposure Limit)
    たとえ8時間TWAがTLV-TWA内にあっても、1日の作業のどの時間においても、超えてはならない15分間TWAとして定義される。当該物質に急性毒性が認められる場合、 TLV-TWAを補足するために設定されるものであり、独立して設定されるものではない。
  • * TLV-C (Ceiling)
    作業暴露のいかなる場合においても超えてはならない濃度
(2)日本産業衛生学会

許容濃度の定義

ア  許容濃度とは、労働者が1日8時間、1週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に暴露される場合に、当該有害物質の平均暴露濃度がこの数値以下 であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である。


イ  最大許容濃度とは、作業中のどの時間をとっても暴露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度であ る。一部の物質の許容濃度を最大許容濃度として勧告する理由は、その物質の毒性が、短時間で発現する刺激、中枢神経抑制等の生体影響を主とするためである。実際には、最大暴露濃度を含むと考え られる5分程度までの短時間の測定によって得られる最大の値を考えればよい。
許容濃度等の性格
ア  許容濃度等は、産業における経験、人および動物についての実験的研究から得られた多様な知見に基礎を置いており、許容濃度等の設定に用いられた情報の量と質は必ずしも同等のものではない。


イ  許容濃度等を決定する場合に考慮された生体影響の種類は物質等によって異なり、ある種のものでは、明瞭な健康障害に、また他のものでは、不快、刺激、中枢神経抑制などの生体影響に根拠が求められている。従って、許容濃度等の数値は、単純に、毒性の強さの相対的比較の尺度として用いてはならない。


ウ  許容濃度等は、安全と危険の明らかな境界を示したものと考えてはならない。

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  生殖/発生毒性

  雌雄の生殖及び発生機能に対する有害作用のことで、不妊や流産など出生力に影響を及ぼす性質などが含まれる。EUでは、受胎能力を害する恐れがある(R60)、胎児に有害である恐れがある(R61)、胎児に有害であるリスクの可能性(R63)、母乳で育てられた乳児に有害である恐れがある(R64)に分類されており、次のようなカテゴリー分けがなされている。

  ア  カテゴリー1
ヒトの受胎能力を害することが知られている物質。
その物質へのヒトの暴露と受胎能力障害との間の因果関係を確立するのに十分な証拠がある。
ヒトの発生に対する毒性を呈することが知られている物質。
その物質へのヒトの暴露とそれに続く子孫の発生に対する毒性影響との間の因果関係を確立するのに十分な証拠がある。
  イ  カテゴリー2
  あたかもヒトの受胎能力を害するとみなされるべき物質。
その物質へのヒトの暴露は、受胎能力を害する恐れがあるという強い推定を与えるための十分な証拠がある。
あたかもヒトに対して発生毒性を引き起こすとみなされるべき物質。
その物質へのヒトの暴露は、発生毒性を起こす恐れがあるという強い推定を与えるための十分な証拠がある。
  ウ  カテゴリー3
  ヒトの受胎能力に対する懸念を引き起こす物質。
発生毒性影響が想定されるためヒトに対する懸念を引き起こす物質。

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  感作性
(1)日本産業衛生学会

感作性物質を、反応の場としての気道と皮膚に分けて基準を設け、

  • * 人間に対して明らかに感作性がある物質(第1群)
  • * 人間に対して恐らく感作性があると考えられる物質(第2群)

に分類する。第1群および第2群の分類の基準は以下の通りである。

気道感作性物質
  1. 第1群
    1. 1) 暴露状況、呼吸器症状、特異抗体およびアレルギー素因との関連性を明確に示した疫学的研究があるとともに、
    2. 2) 呼吸器症状の有症者としての下記の条件のいずれかを満たす症例研究が、異なる研究機関から報告されていること。
      1. 1. 暴露と呼吸器症状との間に関連性があると同時に、同物質に対する特異抗体が検出されるか、皮内試験が陽性反応を示すこと。
      2. 2. 暴露と呼吸器症状との間に関連性があると同時に、特異的吸入誘発試験で陽性反応を呈すること。ただし、それが非アレルギー反応でないことを間接的にでも支持する証拠があること。
  2. 第2群

    上記に準ずるものであるが、疫学的研究では、必ずしも明確にされていない物質

皮膚感作性物質
  1. 第1群
    1. 1) 暴露状況、接触皮膚炎症状およびパッチテスト(皮膚貼付試験)との関連性を明確に示した疫学的研究があり、かつ、
    2. 2) 皮膚炎症状とパッチテストとの関係を検討した症例研究が異なる研究機関から報告されていること。実施されたパッチテストは、対照を設けた適切な方法のものであること。
  2. 第2群

    上記に準ずるものであるが、疫学的研究では、必ずしも明確にされていない物質

(2)ACGIH

  1. ア  採用値(Adopted Values)の欄の注書き(Notations)の部分に、"SEN"(Sensitizer)の記載があると、当該物質は皮膚接触および/または吸入暴露の結果として、作業者に対する感作性が確認されていることを表す。
  2. イ  TLV表の中には、TLVの基礎になった重要な作用が物質毎に記載されており、この中に"Sensitization"の記載がある。
(3)EU

次のリスク警句で表される。

  • R42 : 吸入すると感作を引き起こす恐れがある。
  • R43 : 皮膚と接触すると感作を引き起こす恐れがある。
  • R42/43 : 吸入すると、また皮膚と接触すると感作を引き起こす恐れがある。

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  生態毒性
(1)毒性値の意味

  主として魚、ミジンコ及び藻類に対する毒性が示され、魚については急性毒性試験及び延長毒性試験の結果、ミジンコについては急性遊泳阻害試験及び繁殖阻害試験の結果、藻類については生長阻害試験の結果により示される。

  1. ア  EC50
    急性遊泳阻害試験、繁殖阻害試験及び生長阻害試験から得られる数値で、試験対象の50%に影響が出る濃度。半数影響濃度。
  2. イ  NOEC
    試験対象に観察する影響が出ない最大の濃度。無影響濃度。
  3. ウ  LC50
    試験対象生物の50%が死亡する濃度。半数致死濃度。
(2)ECETOC

"Technical Report No.56, Aquatic Toxicity Data Evaluation, 1993" 本資料は、各種化学物質の淡水および塩水中の水生生物に対する毒性データベースで、ECETOCの専門家グループにより編集されたものである。

* データソースと採用基準

1970年から1991年までの公刊文献530編の中から、試験方法が明確で毒性濃度が実測されていることを基準に選定した結果、その内の42%が適格として採用され、毒性影響濃度を評価して編集された数値集である。

* データベースの内容

データベースの内容は農薬・洗剤・溶剤・その他の物質数368種、生物種122種につき、無影響濃度、最低影響濃度、半数影響濃度などのデータを含む。掲載件数は約2200件であるが、時代的背景から有機ハロゲン化合物および重金属のデータが多い。

(3)AQUIRE

 "Aquatic Toxicity Information Retrieval (AQUIRE)" AQUIREデータベースは、米国 Minnesota州 DuluthにあるEPAのEnvironmentalResearch Laboratoryの研究グループによって構築された。AQUIREの情報は、独立して個別に編集されたデータファイルから、また1970年以降の世界中で発表された文献から抽出されている。急性・慢性毒性、生物濃縮性、準致死影響についてのデータが含まれている。 淡水と塩水の両方の生物種が含まれているが、水生の哺乳類や鳥類、細菌は含まれていない。
 データは、個々の試験や観察ごとに記録されている。ある文献に複数の観察結果が報告されている場合、AQUIREのレコードは複数収載される。通常、一つの物質に対して多数のレコードがあり、一つの試験生物種に対しても複数のレコードがある。
(4)EU

  EUでは、水生生物に猛毒性(R50)、水生生物に毒性(R51),水生生物に有害性(R52)、水生環境中で長期の悪影響を起こす恐 れがある(R58)に分類されている。

* R50:水生生物に猛毒性(very toxic)

96時間 LC50(魚類) ≦1mg/l

or 48時間 EC50(ミジンコ類) ≦1mg/l

or 72時間 IC50(藻類) ≦1mg/l

* R51:水生生物に毒性(toxic)

96時間 LC50(魚類) 1mg/l< LC50 ≦10mg/l

or 48時間 EC50(ミジンコ類) 1mg/l< EC50 ≦10mg/l

or 72時間 IC50(藻類) 1mg/l< IC50 ≦10mg/l

* R52:水生生物に有害性(harmful)

96時間 LC50(魚類) 10mg/l< LC50 ≦100mg/l

or 48時間 EC50(ミジンコ類) 10mg/l< EC50 ≦100mg/l

or 72時間 IC50(藻類) 10mg/l< IC50 ≦100mg/l

* R50:水生生物に猛毒性、および
  R53:水系環境で長期の有害影響を及ぼす恐れがある

96時間 LC50(魚類に対して) ≦ 1mg/l

or  48時間 EC50(ミジンコに対して) ≦ 1mg/l

or  72時間 IC50 (藻類に対して) ≦ 1mg/l

and  物質は易分解性でない

or  log Pow(log オクタノール/水分配係数)≧ 3.0

(実験的に決定されたBCF≦100でない限り)

* R51:水生生物に毒性、および
  R53:水系環境で長期の有害影響を及ぼす恐れがある

96時間 LC50 (魚類に対して) 1mg/l < LC50 ≦ 10mg/l

or  48時間 EC50(ミジンコに対して) 1mg/l < EC50 ≦ 10mg/l

or  72時間 IC50(藻類に対して) 1mg/l < IC50 ≦ 10mg/l

and  物質は易分解性でない

or  log Pow ≧ 3.0(実験的に決定されたBCF≦100でない限り)

* R52:水生生物に有害性、および
  R53:水系環境で長期の有害影響を及ぼす恐れがある

96時間 LC50(魚類に対して) 10mg/l < LC50 ≦ 100mg/l

or  48時間 EC50(ミジンコに対して) 10mg/l < EC50 ≦ 100mg/l

or  72時間 IC50(藻類に対して) 10mg/l < IC50 ≦ 100mg/l

and  物質は易分解性でない

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