(1) 化学物質環境安全性総点検調査 |
a) 調査の体系化の経緯 |
| 化学物質審査規制法の成立を契機として、昭和49年度から環境省は、化学物質判定基準設定調査(化学物質の各種テスト手法に関する研究、これに関する各種情報の収集)、既存化学物質検討調査(環境中における化学物質についての検索及び生態影響に関する研究)、化学物質環境追跡調査(環境実態調査)その他関連各種研究調査を開始した。このうち、化学物質環境追跡調査としてスタートした化学物質環境調査では、当初調査対象物質の選定に当たって、環境残留性が問題となっていたり、あるいは問題が提起されているものに重点が置かれた。昭和50年度においてはPCB等に関連し、有機塩素化合物の難分解性が特に注目されるようになり、これらの化合物の調査を行った。
膨大な数の既存化学物質の調査を系統的に進めるため、昭和51年度には人に対する影響という点に着目して暫定的な有害物質リストを作成し、その中から優先順位(プライオリティ)に配慮した調査を行うこととなり、(1)有害性の強いものとして法律上規制されて いる物質、(2)内外の研究において分解性が悪いと報告されている物質、(3)PCB等問題既存物質と化学構造が類似するか、同様の用途に使用されている代替物質としてリストアップされた物質が対象となった。昭和52年度及び53年度調査もこの有害物質リストをもとに継続して行い、あわせて経済産業省が行っている既存化学物質についての分解度試験又は濃縮度試験からみて問題のある物質も調査対象として加えた。
このように調査対象物質が多岐にわたってくるにつれて、調査の実施に当たって物質ごとに分析法の開発を要するものがほとんどとなってきたため、昭和52年度以降調査の内容を分析法の開発、一般環境調査及び精密環境調査の三体系に分割した。
また、調査の実施にあたって、調査区域を有する地方自治体公害試験研究機関に分析法開発、サンプリング及び分析の実施について全面的協力を得ることとなり、調査実施主体の組織化が図られることとなった。
一方、膨大な化学物質の中には環境汚染の観点から着目する必要のないものも多く、既存の資料・情報を集約化して調査対象物質を選択することが大きな課題となってきたため、過去において有害性(LD50等の動物実験による毒性、労働環境における人体への毒性、発がん性、生物濃縮性、難分解性等の内外の情報に基づき有害性に一定の評価を加えたもの)が知られている物質をリストアップした上、これに生産量、使用形態も考慮し、環境汚染の観点から今後調査対象として検討することが必要と考えられる約 2,000物質を選択し、昭和53年度に「プライオリティリスト」として作成した(昭和54年版「化学物質と環境」第3部参照)。そしてこのリストに基づき化学物質環境安全性総点検調査が、昭和54年度より開始された。 |
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b) 調査の内容 |
(ア) 第1次化学物質環境安全性総点検調査 |
| これまでに実施されていた各種調査を体系化し、「プライオリティリスト」に基づき昭和54年度から63年度までの10ケ年計画で第1次化学物質環境安全性総点検調査(以下「第1次総点検調査」という)を実施した。 |
(イ) 第2次化学物質環境安全性総点検調査 |
| 第1次総点検調査により、化学物質の環境汚染実態に関する貴重なデータが集積されるとともに、化学物質に係る各種調査手法の実用化が図られるなど着実な成果が得られてきた。一方これまでの第1次総点検調査の実施の積み重ねを通じ、調査方法等に関する種々な問題も明かになってきた。また、廃棄物の焼却過程等で非意図的に生成されるダイオキシン類、地下水汚染等が問題とされた有機塩素系化合物等による環境汚染の可能性が指摘されるなど、化学物質審査規制法の改正によって一部対応がなされたものの、新たなタイプの物質による環境汚染問題が残された。
このような状況を踏まえ、専門家よりなる化学物質調査検討会において、これまでの総点検調査の実施状況がレビューされるとともに化学物質問題への新たな対応が検討され、昭和63年2月、第2次総点検調査の在り方をとりまとめた「化学物質環境安全性総点検調査の今後の在り方(最終報告)」が報告された。同報告は、中央公害対策審議会環境保健部会化学物質専門委員会で検討後、昭和63年5月に公表された。この報告を受けて平成元年度から第2次総点検調査が実施されている。以下は、同報告の概要であり、図3は、第2次総点検調査体系及び第1次総点検調査からの拡充の要点である。
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| a.調査対象物質の拡大
| これまでの総点検調査において対象としてきた既存化学物質のほかに、新たに審査済み新規化学物質及び非意図的生成化学物質を対象物質に加える。
具体的な調査対象物質については、これら3分野の化学物質を対象にプライオリティリストの改訂( 1,145物質を収載)を行い、この中から順次調査対象物質を選定する。 |
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| b.調査方式の改善
| 調査の効率性及び分野相互の関連性を重視する観点から、調査対象物質は原則として有機塩素系化合物、多環芳香族炭化水素類、有機金属類、といったクラス毎に取り上げる。
また、調査を行う環境媒体及び地区を固定した一定方式によるこれまでの環境調査を、各物質の特性に応じた環境媒体及び地区に変えるメニュー方式の環境調査に改めるとともに、対象物質を広範囲に取り上げることよりも重点物質について精度の高い調査を実施することに主眼を置く。 |
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| c.環境安全性評価の充実
| 予備的な評価においては、主として影響面に考慮したプライオリティリストの改訂を行い、構造等により化学物質をクラス分けし、この中から運命予測手法を用いて暴露面から環境調査を実施すべき代表的な物質を原則として各クラス別に選定する。環境調査をベースとした評価においては、環境調査結果に基づいて暴露面の評価を行うとともに、既知見に基づいた影響評価を行う。 |
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c) 調査における検出状況 |
| 昭和49年度から平成12年度までに化学物質環境調査を実施したものは794物質であり、333物質が一般環境中より検出されている。検出物質の中で、残留性化学物質として、継続的に経年変化を監視すべきと判断された要注意化学物質と化学物質審査規制法に基づく第一種特定化学物質等が生物モニタリング、水質・底質モニタリングの対象となっている。 |
| 化学物質環境調査における検出状況(昭和49~平成12年度)
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水 質 |
底 質 |
魚 類 |
大 気 |
総 数 |
調 査 物 質 数 |
761 |
737 |
247 |
235 |
794 |
検 出 物 質 数 |
146 |
232 |
100 |
151 |
333 |
検 出 割 合(%) |
19.2 |
31.5 |
40.5 |
64.3 |
41.9 |
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(2) 指定化学物質等検討調査 |
| 指定化学物質については、環境中の残留状況によって有害性の調査の指示がなされ、その結果により、有害性が認められれば、第二種特定化学物質に指定される。また、第二種特定化学物質は、製造・輸入予定数量の事前届出のほか、必要に応じ、製造・輸入量の制限等が行われる。
このため、環境省ではこれら物質について、環境中の残留状況を把握することを目的として、「指定化学物質等環境残留性検討調査」を昭和63年度から開始した。さらに、平成2年度より、新たに暴露経路調査(日常生活において人がさらされている媒体別の化学物質量に関する調査)を開始し、調査名を「指定化学物質等検討調査」と改めた。
本調査は、「第2次総点検調査の今後の在り方(最終報告)」において、「指定化学物質及び第二種特定化学物質についても対象物質として充分配慮すること」とされていることから、第2次総点検調査の一環として、特に区別して調査を行っているものである。 |
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(3) 非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査 |
| ダイオキシン類のように製造、廃棄等の人為的過程や環境中での反応等の自然的過程を経て生成される有害化学物質による環境汚染が社会問題となっており、このような直接的には化学物質審査規制法の対象とならない非意図的に生成される有害化学物質についても、有効な対策に資するため適切な調査を行う必要が高まってきた。
このため、昭和60年度から人の健康や生態系に影響を及ぼすと考えられる非意図的生成物について、環境中における存在を調査することにより、当該化学物質による環境汚染の未然防止の対策の立案に資することを目的として「有害化学物質汚染実態追跡調査」を開始した。
これまでにポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ポリ臭化ジベンゾ-p-ジオキシン(PBDD)、ポリ臭化ジベンゾフラン(PBDF)及びニトロソアミン類等について調査を実施してきた。
平成10年度には、「ダイオキシン緊急全国一斉調査」が実施されることとなり、重複を避けるためダイオキシン類を調査対象として取り扱うことを中止し、これに代わり、臭素化ダイオキシン類の環境調査を開始し、平成12年度は、PCB類を追加した。
なお、本調査が非意図的生成化学物質の環境残留性を把握することを目的とすることから、平成5年度から調査名を「非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査」と改めた。 |
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